死闘を求めた戦闘狂、異世界で最強スキル【闘神】を授かる 〜強敵と戦うほど無限に強くなるので、神だろうが殴りに行きます〜

夏見ナイ

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第六十三話 守るための戦い

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「これより、反撃を開始します」

リリアナの宣言は、エルフたちの前線基地に新たな活気をもたらした。
絶望的な状況の中で、彼らは王女の帰還と俺たちという未知の援軍の存在に、最後の希望を見出していた。
すぐに臨時の作戦会議が開かれた。
広げられた森の地図を囲み、リリアナと部隊長のライエル、そして俺たち『闘神旅団』が顔を突き合わせる。

「敵の本拠地は、世界樹の根本にある古代の神殿です。ですが、そこに至る道は三つの主要な拠点で固められています」
ライエルが、地図上の三つの地点を指し示した。
「一つは森の水源である『嘆きの泉』。そこは強力な呪術師によって汚染され、毒の沼と化しています」
「二つ目は古の英雄たちが眠る『戦士の墓所』。死者を冒涜するネクロマンサーが、アンデッドの軍勢を率いて待ち構えているでしょう」
「そして三つ目、世界樹に最も近い『賢者の塔』。そこには教団の中でも指折りの実力を持つ幹部が直接陣取っているはずです」

三つの拠点。それぞれに厄介な敵がいる。
これを一つずつ潰していかなければ、世界樹にはたどり着けない。

「我々エルフの部隊が陽動を行い、敵の注意を引きつけます。その隙に闘神旅団の皆様には、この三つの拠点を電撃的に叩いていただきたい。……無茶な願いであることは承知しております」
ライエルが深々と頭を下げた。

「無茶じゃなきゃ、面白くねえ」
ガロウがウォーハンマーを肩で弾き、獰猛に笑った。
「三つか。上等じゃねえか。半日で全部片付けてやるよ」

その言葉に、エルフの戦士たちが息を呑んだ。
彼らにとって絶望の象徴であった拠点を半日で陥落させる。それは神話の英雄譚に等しい、信じがたい宣言だった。

だが、俺もリリアナも、ガロウの言葉を疑わなかった。
俺たちなら、やれる。
神々の墓場での死闘を乗り越えた俺たちにとって、この程度の障害はもはや試練ですら感じられなかった。

作戦は決まった。
陽動部隊の準備が整うのを待つ間、俺は一人、基地の外れにある大樹の根元に座り、静かに闘気を練っていた。
目を閉じ、意識を内側へと沈めていく。

俺の戦う理由は常に一つだった。
強い奴と戦い、己の渇きを癒すこと。
だが今、俺の心の中には、それとは違う新たな感情が芽生え始めていた。

リリアナの故郷を想う悲しげな瞳。
ガロウの仲間を想う不器用な優しさ。
そして、この美しい森を穢す教団への静かな怒り。

守る。
そのために戦う。
前世の俺には決して理解できなかったであろう、その感情。
それが俺の闘気を、これまでとは違う、より温かく、そしてより強固なものへと変質させているのを感じた。
破壊のためだけの力ではない。
何かを守るための力。

「……ジン様」
静かな声に、俺は目を開けた。
リリアナが、俺の隣に静かに立っていた。

「……何か用か」
「いいえ。ただ、お礼を言いたくて」
彼女は俺の隣にそっと腰を下ろした。
「私に戦う覚悟をくださって、ありがとうございます。あなたたちがいなければ、私はきっと絶望に打ちひしがれていたでしょう」

「お前が自分で立ち上がっただけだ」
「ふふっ。そうかもしれません。ですが、立ち上がるきっかけをくださったのはあなたです」
彼女は森の奥、瘴気が渦巻く方向を見つめた。
「……怖くない、と言えば嘘になります。この先にどんな恐ろしい敵が待っているのか……。ですが、不思議と負ける気はしないのです。あなたとガロウ様と一緒なら」

その言葉には絶対的な信頼が込められていた。
俺は何も答えなかった。
ただ同じように、森の奥を見据える。

やがて準備が整ったことを告げる角笛の音が、基地に響き渡った。
俺たちは立ち上がった。

エルフの戦士たちが俺たちの前に整列し、胸に手を当てて敬礼する。
「……リリアナ様。そして闘神旅団の皆様。森の未来をお預けいたします」
ライエルの言葉に、俺たちは無言で頷いた。

俺たちは三つの影となって、森の奥深くへと駆け出した。
最初の目標は、水源を汚す呪術師が潜む『嘆きの泉』。

風が、俺たちの頬を撫でていく。
それは森の悲鳴のようにも、あるいは俺たちへの声援のようにも聞こえた。

俺の心は不思議なほどに澄み渡っていた。
渇きを満たすための戦いではない。
仲間を、故郷を、この世界の美しいものを守るための戦い。
その戦いの果てに、俺が求める本当の強さがあるのかもしれない。

俺はまだ見ぬ敵の気配を探りながら、ただひたすらに前へと突き進んだ。
この一戦で、俺はまた一つ新たな領域へと足を踏み入れることになるだろう。
その予感が俺の全身を、静かな高揚感で満たしていた。
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