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第61話:【ヒーロー視点】守るべき至宝
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(聖女…)
その言葉が、雷鳴のように俺の頭の中で響き渡った。
ハンスの報告を聞きながら、俺は全てのピースが嵌っていくのを感じていた。
エルミール王国のあまりにも急激な衰退。原因不明の凶作、魔物の活性化。そして、聖なる加護が消えかけたという神官たちの嘆き。
全ては彼女が国を追われたことから始まっていたのだ。
彼らは自分たちの国の生命線そのものである聖女を、悪女の烙印を押して追放した。その愚かさのツケを、今、国全体で支払っているに過ぎない。
そして、俺は。
その国一つ分の価値を持つ至宝を、偶然にもこの手にした。
夢の中で見た名も知らぬ少女。
彼女に惹かれ探し求めていたのは、単なる気まぐれではなかったのかもしれない。俺の魂が本能的に、この世界に必要な光の在り処を察知していたのだとしたら…?
俺はハンスに後を任せると、足早に城館の中へと向かった。頭の中は混乱していた。だが、確かめなければならない。自分の目で。
彼女の部屋の扉を静かに開ける。
ベッドの上でリリアンナは静かな寝息を立てていた。マーサが付き添っていたが、俺の姿を認めると静かに会釈して部屋を出ていった。
俺はベッドのそばに膝をついた。
彼女の顔は青白く、その表情には深い疲労の色が浮かんでいる。あの強大な力を使った代償だろうか。そのか弱い姿を見ていると、胸が締め付けられるようだった。
俺はそっと彼女の頬に触れた。
温かい。まだ、確かにここにいる。
彼女が聖女だとしても、そうでなくても、俺のやるべきことは変わらない。
いや、むしろより明確になった。
彼女が聖女であるならば、その力を欲し悪用しようとする者たちが、これから山のように現れるだろう。
エルミール王国の愚かな王子は、その筆頭だ。彼は自分の犯した過ちの大きさに気づき、今頃血眼になって彼女を取り戻そうとしているに違いない。
それだけではない。
聖女の存在が公になれば、ガルヴァニア帝国の皇帝陛下も黙ってはいないだろう。帝国の繁栄のために、彼女を政治の道具として利用しようとするかもしれない。近隣諸国もその奇跡の力を奪い合って、争いの火種になりかねない。
彼女はあまりにも無防備で、そして優しすぎる。
その力を自分のために使うことなど、きっと考えもしないだろう。それどころか、聖女としての宿命を知れば、人々のためにその身を削ることさえ厭わないかもしれない。
冗談ではない。
俺は静かに、そして固く決意した。
彼女が聖女であろうとなかろうと、そんなことは些事だ。
彼女はリリアンナだ。
俺が愛し守ると誓った、ただ一人の女性。
それ以上でも、それ以下でもない。
彼女の力を誰にも利用させはしない。
彼女を誰の犠牲にもさせはしない。
彼女を苦しめる全ての運命から、この俺が守り抜く。
たとえそれが全世界を敵に回すことであっても。
俺は彼女の額に落ちかかった銀色の髪をそっと指で払った。
その寝顔はひどく穏やかで、あどけない。
この寝顔を、俺が永遠に守らなければならない。
彼女は俺だけの光だ。
俺だけの至宝なのだ。
誰にも渡すものか。神にさえも。
俺は彼女の手をそっと握りしめた。
その小さな手をもう二度と離さないと、己の魂に誓いを立てる。
彼女が目覚めた時、何と声をかければいいのだろうか。
真実を告げるべきか。それとも何も知らないまま、穏やかな日々を送らせてやるべきか。
答えはまだ出なかった。
だが、一つだけ確かなことがある。
俺たちの運命は、もう後戻りのできない場所まで来てしまったのだということ。
静かな部屋に彼女の寝息と、俺の荒い呼吸の音だけが響いていた。
外では彼女を『聖女様』と呼ぶ人々の声がまだ止むことはなかった。
その声が、これから始まる嵐の予兆のように俺の耳には聞こえていた。
その言葉が、雷鳴のように俺の頭の中で響き渡った。
ハンスの報告を聞きながら、俺は全てのピースが嵌っていくのを感じていた。
エルミール王国のあまりにも急激な衰退。原因不明の凶作、魔物の活性化。そして、聖なる加護が消えかけたという神官たちの嘆き。
全ては彼女が国を追われたことから始まっていたのだ。
彼らは自分たちの国の生命線そのものである聖女を、悪女の烙印を押して追放した。その愚かさのツケを、今、国全体で支払っているに過ぎない。
そして、俺は。
その国一つ分の価値を持つ至宝を、偶然にもこの手にした。
夢の中で見た名も知らぬ少女。
彼女に惹かれ探し求めていたのは、単なる気まぐれではなかったのかもしれない。俺の魂が本能的に、この世界に必要な光の在り処を察知していたのだとしたら…?
俺はハンスに後を任せると、足早に城館の中へと向かった。頭の中は混乱していた。だが、確かめなければならない。自分の目で。
彼女の部屋の扉を静かに開ける。
ベッドの上でリリアンナは静かな寝息を立てていた。マーサが付き添っていたが、俺の姿を認めると静かに会釈して部屋を出ていった。
俺はベッドのそばに膝をついた。
彼女の顔は青白く、その表情には深い疲労の色が浮かんでいる。あの強大な力を使った代償だろうか。そのか弱い姿を見ていると、胸が締め付けられるようだった。
俺はそっと彼女の頬に触れた。
温かい。まだ、確かにここにいる。
彼女が聖女だとしても、そうでなくても、俺のやるべきことは変わらない。
いや、むしろより明確になった。
彼女が聖女であるならば、その力を欲し悪用しようとする者たちが、これから山のように現れるだろう。
エルミール王国の愚かな王子は、その筆頭だ。彼は自分の犯した過ちの大きさに気づき、今頃血眼になって彼女を取り戻そうとしているに違いない。
それだけではない。
聖女の存在が公になれば、ガルヴァニア帝国の皇帝陛下も黙ってはいないだろう。帝国の繁栄のために、彼女を政治の道具として利用しようとするかもしれない。近隣諸国もその奇跡の力を奪い合って、争いの火種になりかねない。
彼女はあまりにも無防備で、そして優しすぎる。
その力を自分のために使うことなど、きっと考えもしないだろう。それどころか、聖女としての宿命を知れば、人々のためにその身を削ることさえ厭わないかもしれない。
冗談ではない。
俺は静かに、そして固く決意した。
彼女が聖女であろうとなかろうと、そんなことは些事だ。
彼女はリリアンナだ。
俺が愛し守ると誓った、ただ一人の女性。
それ以上でも、それ以下でもない。
彼女の力を誰にも利用させはしない。
彼女を誰の犠牲にもさせはしない。
彼女を苦しめる全ての運命から、この俺が守り抜く。
たとえそれが全世界を敵に回すことであっても。
俺は彼女の額に落ちかかった銀色の髪をそっと指で払った。
その寝顔はひどく穏やかで、あどけない。
この寝顔を、俺が永遠に守らなければならない。
彼女は俺だけの光だ。
俺だけの至宝なのだ。
誰にも渡すものか。神にさえも。
俺は彼女の手をそっと握りしめた。
その小さな手をもう二度と離さないと、己の魂に誓いを立てる。
彼女が目覚めた時、何と声をかければいいのだろうか。
真実を告げるべきか。それとも何も知らないまま、穏やかな日々を送らせてやるべきか。
答えはまだ出なかった。
だが、一つだけ確かなことがある。
俺たちの運命は、もう後戻りのできない場所まで来てしまったのだということ。
静かな部屋に彼女の寝息と、俺の荒い呼吸の音だけが響いていた。
外では彼女を『聖女様』と呼ぶ人々の声がまだ止むことはなかった。
その声が、これから始まる嵐の予兆のように俺の耳には聞こえていた。
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