曲がり角でぶつかった少女に回復魔法を使ったら不治の病と盲目なのを治してしまってめちゃくちゃ懐かれてた

夏見ナイ

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第18話 ブティックでのお洋服選び

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クレープの一件以来、俺たちの間にはどこか気まずく、それでいて甘酸っぱい空気が流れていた。
手を繋ぎ直すのにも数分を要し、お互いに視線を合わせるたびに、どちらからともなく逸らしてしまう。
だが、その気まずさすらも、初めてのデートならではのスパイスのように感じられた。

「次は、どこへ行こうか」
俺がそう切り出すと、ルナリアは少し考えた後、ある店の前で足を止めた。
そこは、流行の最先端を行く婦人服を扱う、洒落たブティックだった。
ショーウィンドウには、春らしい色合いの軽やかなドレスやブラウスが飾られている。

「素敵なお洋服ですわね…」
ルナリアは、ガラスに顔を近づけんばかりの勢いで、うっとりとショーウィンドウを眺めていた。
その瞳は、綺麗なものへの純粋な憧れでキラキラと輝いている。
彼女が普段着ている服は、公爵家が用意した最高級品ばかりだろう。だが、こうして自分の意思で店を選び、服を眺めるという経験は、きっと初めてに違いなかった。

「入ってみるか?」
俺がそう提案すると、彼女は一瞬ためらったように俺を見た。
「でも…このようなお洒落なお店、私なんかが入ってもよろしいのでしょうか…」
その謙虚すぎる言葉に、俺は思わず苦笑した。
「君以上に、この店が似合う人はいないと思うけどな」
俺が本心からそう言うと、彼女は嬉しそうに頬を染めた。

店の扉を開けると、上品な花の香りと共に「いらっしゃいませ」という店員の穏やかな声に迎えられた。
店内には、様々なデザインの服が美しく陳列されている。
ルナリアは、まるで宝の山に迷い込んだ子供のように、目を輝かせながら服を見て回った。

「ユウキ様、このドレス、見てください! 小さな鳥の刺繍がとても可愛らしいですわ!」
「ああ、本当だ。君の髪の色にも合いそうだな」
「まあ! では、こちらのブラウスはいかがでしょう? ユウキ様がお好きそうな、落ち着いたデザインですわ」

彼女は、自分の服を見るのと同じくらい、楽しそうに俺に似合いそうな服を探してくれる。
その姿を見ているうちに、俺の中に一つの考えが浮かんだ。

「なあ、ルナリアさん」
「はい、なんでしょう?」
「お互いに、相手に似合う服を選んでみるっていうのはどうだ?」

俺の提案に、彼女はきょとんとした顔で目を瞬かせた。
そして、その言葉の意味を理解すると、ぱあっと顔を輝かせた。
「まあ! ユウキ様が、私のために…? なんて素敵なご提案でしょう! ぜひ、お願いいたしますわ!」
その食いつきっぷりに、俺も自然と笑みがこぼれた。

まずは俺から、彼女の服を選ぶことになった。
俺は店内をぐるりと見渡し、ある一着の服の前で足を止めた。
それは、彼女がいつも着ているワンピースとは少し趣の違う、ミントグリーンの軽やかなブラウスと、純白のフレアスカートの組み合わせだった。

「これなんか、どうかな。少し活動的な感じだけど、君ならきっと似合うと思う」
俺がそう言って差し出すと、ルナリアは宝物を受け取るかのように、その服を両手でそっと受け取った。
「ユウキ様が、私のために選んでくださったお洋服…」
彼女は、それだけで感極まった様子で、うっとりと服を見つめている。

「よかったら、試着してみてくれないか?」
俺が頼むと、彼女は「はいっ!」と元気よく返事をして、店員に案内されながら試着室へと向かった。
待つこと、数分。

「お待たせいたしました」
試着室のカーテンが、静かに開かれる。
そして、そこに現れた彼女の姿を見て、俺は完全に言葉を失った。

いつものお姫様のような雰囲気とは少し違う、爽やかで、そしてどこか親しみやすい可憐さ。
ミントグリーンのブラウスは彼女の透き通るような白い肌をより一層引き立て、ふわりと広がるスカートは、彼女が動くたびに軽やかに揺れる。
それは、あまりにも完璧な着こなしだった。

「どう、でしょうか…? 変では、ありませんか…?」
不安そうに尋ねる彼女に、俺はようやく絞り出すように答えた。
「…すごく、いい。今まで見た中で、一番可愛いかもしれない」
我ながら、あまりにもストレートすぎる感想だった。
だが、嘘偽りのない本心だった。

俺の言葉に、彼女は顔を真っ赤にして俯いた。
その場にいた女性店員も、うっとりとしたため息を漏らしている。
「まあ、お客様…。本当にお似合いですわ。まるで、春の妖精さんのようです」

次は、ルナリアが俺の服を選ぶ番になった。
彼女は先ほど以上に真剣な表情で店内を歩き回り、やがて一着の服を手に取って、俺の元へやってきた。
それは、落ち着いたチャコールグレーのカーディガンと、中に合わせるシンプルな白のカットソーだった。

「ユウキ様には、いつも優しく微笑んでいてほしいのです。このお洋服なら、ユウキ様の穏やかな雰囲気が、より一層引き立つかと思いまして…」
彼女は少し照れながら、そう言って服を差し出してきた。
自分のことを、そんな風に見てくれていたのか。
そのことが、なんだか無性に嬉しかった。

俺がその服を試着して出てくると、今度はルナリアが息を呑む番だった。
彼女は、うっとりとした瞳で俺の姿をじっと見つめ、その頬を桜色に染めていた。
そして、小さな声で、ぽつりと呟いた。
「やっぱり…ユウキ様は、世界で一番素敵ですわ…」

その熱烈な呟きに、今度は俺が赤面する番だった。
俺たちのそんなやり取りを、近くにいた他のお客さんが微笑ましそうに見ていた。

「あら、見て。あそこのお二人、まるで新婚さんのようね」
「本当だわ。お互いの服を選び合って…まあ、可愛らしい」

そんな囁き声が、俺たちの耳に届く。
その瞬間、俺とルナリアは、同時にびくりと体を震わせ、顔を見合わせた。
そして、どちらからともなく、ぷっと吹き出してしまった。

「し、新婚夫婦だってさ」
「ふふっ…なんだか、照れてしまいますわね」

俺たちは、顔を見合わせて笑い合った。
その時、俺たちの間の距離が、また少しだけ縮まったような気がした。

結局、俺たちはお互いが選んだ服を、両方とも購入することにした。
支払いは、もちろんルナリアがいつの間にか取り出した、シルフィード家の紋章が入った黒いカードで一括だった。

ブティックを出て、再び手を繋いで歩き出す。
手には、お互いのために選んだ服が入った紙袋。
その重みが、なんだか心地よかった。

「なあ、ルナリアさん」
「はい、ユウキ様」
「今度、今日買った服を着て、またどこかに出かけないか?」
俺の提案に、彼女は今日一番の輝く笑顔で、力強く頷いた。

「はいっ! 喜んで!」

お互いを想い、選び合った服。
それは、俺たちの初めてのデートを記念する、大切な宝物になった。
そして、それは同時に、次なるデートへの甘い約束の証でもあった。
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