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第15話:初めての仲間
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どれくらいの時間が経っただろうか。路地裏の冷たい空気に、ルナのしゃくり上げる声だけが小さく響いていた。俺は何も言わず、ただそばに膝をつき、彼女の心が落ち着くのを待った。
やがて、嗚咽が少しずつ収まっていく。ルナは涙で濡れた袖でごしごしと目をこすると、おずおずと顔を上げた。大きな翡翠色の瞳が、まだ潤んだまま俺をまっすぐに見つめている。
「あ、あの……」
か細く、掠れた声だった。長年の虐待で、大きな声を出すことさえ忘れてしまったのかもしれない。
「本当に……ありがとう、ございます……」
彼女はそう言うと、地面に頭がつくほど深く、深くお辞儀をした。その小さな背中が、まだ小刻みに震えている。
「どうして……見ず知らずの、私なんかを……助けてくれたんですか?」
純粋な疑問だった。彼女にとって、誰かから無償の優しさを受けることなど、想像もつかないことだったのだろう。
俺は少しだけ言葉に迷った後、正直な気持ちを口にした。
「君が、助けを求めているように見えたからだ。それだけだよ」
俺の答えに、ルナはきょとんとした顔で俺を見上げた。もっと複雑な理由を想像していたのかもしれない。だが、本当にそれだけだった。彼女の瞳に宿った『希望』という小さな光を、俺は見過ごせなかった。ただ、それだけのことだ。
俺は彼女の状態を確認するため、そっと【万物解析】を使った。
【名称:ルナ】
【種族:銀月猫(シルバームーン・リンクス)族】
【レベル:1】
【状態:安堵、解放感、軽度の疲労】
【スキル:なし】
【潜在能力:『縮地』(覚醒の兆し)、高い身体能力、暗視】
隷属の首輪が外れたことで、彼女の状態は明らかに改善していた。『極度の疲労』や『精神的苦痛』といった項目は消え、『覚醒の兆し』という新たな文字が見える。
そして、何よりも俺の目を奪ったのは、その次に表示された情報だった。
【アレン・ウォーカーへの好感度:90/100(感謝と絶対的な信頼/黄金色)】
90。それは、あの幸せそうな恋人たちに匹敵するほどの高い数値だった。だが、彼らの愛情を示す『桃色』とは違う。ルナの感情は、まばゆいばかりの『黄金色』に輝いていた。
まるで、太陽の光をそのまま固めたような、温かく、神々しいほどの輝き。これが、純粋な感謝と信頼の色なのか。
俺は、その黄金色の光から目が離せなかった。
追放されて以来、俺の周りにあったのは侮蔑や同情といった、冷たい色ばかりだった。誰からも必要とされず、ただ一人で生きていくのだと覚悟を決めていた。
だが、今、目の前にいる少女は、俺に絶対的な信頼を寄せてくれている。その事実が、凍てついていた俺の心を、じんわりと溶かしていくのを感じた。
初めてだった。この世界で、誰かと温かい繋がりを持てたのは。
「俺はアレンだ。アレン・ウォーカー」
俺が名乗ると、彼女はこくりと頷いた。
「君の名前は?」
「ルナ……です」
「ルナ。これからどうするんだ? 行くあてはあるのか?」
俺の問いに、ルナは力なく首を横に振った。奴隷だった彼女に、帰る場所などあるはずもない。その姿は、少し前の俺自身と重なって見えた。
俺は一瞬ためらった。だが、答えはもう決まっていた。この少女を、一人にはしておけない。
「なら」
俺は立ち上がり、彼女に向かって手を差し伸べた。
「俺と一緒に来るか?」
それは、俺にとっても大きな一歩だった。誰かと共に歩むことを、俺は自ら選んだのだ。
俺の言葉に、ルナは大きく目を見開いた。その翡翠色の瞳が、驚きと、そして信じられないほどの喜びに揺れる。
差し出された俺の手を、彼女は両手でそっと、しかし力強く握り返した。その手は驚くほど冷たかったが、確かに温もりが感じられた。
「……はいっ!」
彼女は満面の笑みを浮かべて、力強く頷いた。それは、俺が彼女と出会ってから、初めて見る心からの笑顔だった。涙の跡が残るその顔は、どんな宝石よりも美しく輝いて見えた。
俺は彼女の手を引き、立ち上がらせる。
「まずはここを出よう。汚れたままだし、腹も減っているだろう」
「……はい、アレン様!」
「様はつけなくていい。アレンでいい」
「は、はい! アレン……さん!」
少しぎこちないやり取りに、俺たちは思わず顔を見合わせて小さく笑った。
路地裏の闇を抜け、俺たちは街の明かりが灯る通りへと出た。隣を歩くルナの存在が、ひどく新鮮で、そして心地よかった。
もう俺は一人ではない。初めての仲間ができた。
孤独な鑑定士の旅は、ここで終わりを告げたのだ。そして、アレンとルナ、二人の新しい物語が、この辺境の街ラトナで、今、静かに幕を開けた。
やがて、嗚咽が少しずつ収まっていく。ルナは涙で濡れた袖でごしごしと目をこすると、おずおずと顔を上げた。大きな翡翠色の瞳が、まだ潤んだまま俺をまっすぐに見つめている。
「あ、あの……」
か細く、掠れた声だった。長年の虐待で、大きな声を出すことさえ忘れてしまったのかもしれない。
「本当に……ありがとう、ございます……」
彼女はそう言うと、地面に頭がつくほど深く、深くお辞儀をした。その小さな背中が、まだ小刻みに震えている。
「どうして……見ず知らずの、私なんかを……助けてくれたんですか?」
純粋な疑問だった。彼女にとって、誰かから無償の優しさを受けることなど、想像もつかないことだったのだろう。
俺は少しだけ言葉に迷った後、正直な気持ちを口にした。
「君が、助けを求めているように見えたからだ。それだけだよ」
俺の答えに、ルナはきょとんとした顔で俺を見上げた。もっと複雑な理由を想像していたのかもしれない。だが、本当にそれだけだった。彼女の瞳に宿った『希望』という小さな光を、俺は見過ごせなかった。ただ、それだけのことだ。
俺は彼女の状態を確認するため、そっと【万物解析】を使った。
【名称:ルナ】
【種族:銀月猫(シルバームーン・リンクス)族】
【レベル:1】
【状態:安堵、解放感、軽度の疲労】
【スキル:なし】
【潜在能力:『縮地』(覚醒の兆し)、高い身体能力、暗視】
隷属の首輪が外れたことで、彼女の状態は明らかに改善していた。『極度の疲労』や『精神的苦痛』といった項目は消え、『覚醒の兆し』という新たな文字が見える。
そして、何よりも俺の目を奪ったのは、その次に表示された情報だった。
【アレン・ウォーカーへの好感度:90/100(感謝と絶対的な信頼/黄金色)】
90。それは、あの幸せそうな恋人たちに匹敵するほどの高い数値だった。だが、彼らの愛情を示す『桃色』とは違う。ルナの感情は、まばゆいばかりの『黄金色』に輝いていた。
まるで、太陽の光をそのまま固めたような、温かく、神々しいほどの輝き。これが、純粋な感謝と信頼の色なのか。
俺は、その黄金色の光から目が離せなかった。
追放されて以来、俺の周りにあったのは侮蔑や同情といった、冷たい色ばかりだった。誰からも必要とされず、ただ一人で生きていくのだと覚悟を決めていた。
だが、今、目の前にいる少女は、俺に絶対的な信頼を寄せてくれている。その事実が、凍てついていた俺の心を、じんわりと溶かしていくのを感じた。
初めてだった。この世界で、誰かと温かい繋がりを持てたのは。
「俺はアレンだ。アレン・ウォーカー」
俺が名乗ると、彼女はこくりと頷いた。
「君の名前は?」
「ルナ……です」
「ルナ。これからどうするんだ? 行くあてはあるのか?」
俺の問いに、ルナは力なく首を横に振った。奴隷だった彼女に、帰る場所などあるはずもない。その姿は、少し前の俺自身と重なって見えた。
俺は一瞬ためらった。だが、答えはもう決まっていた。この少女を、一人にはしておけない。
「なら」
俺は立ち上がり、彼女に向かって手を差し伸べた。
「俺と一緒に来るか?」
それは、俺にとっても大きな一歩だった。誰かと共に歩むことを、俺は自ら選んだのだ。
俺の言葉に、ルナは大きく目を見開いた。その翡翠色の瞳が、驚きと、そして信じられないほどの喜びに揺れる。
差し出された俺の手を、彼女は両手でそっと、しかし力強く握り返した。その手は驚くほど冷たかったが、確かに温もりが感じられた。
「……はいっ!」
彼女は満面の笑みを浮かべて、力強く頷いた。それは、俺が彼女と出会ってから、初めて見る心からの笑顔だった。涙の跡が残るその顔は、どんな宝石よりも美しく輝いて見えた。
俺は彼女の手を引き、立ち上がらせる。
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「……はい、アレン様!」
「様はつけなくていい。アレンでいい」
「は、はい! アレン……さん!」
少しぎこちないやり取りに、俺たちは思わず顔を見合わせて小さく笑った。
路地裏の闇を抜け、俺たちは街の明かりが灯る通りへと出た。隣を歩くルナの存在が、ひどく新鮮で、そして心地よかった。
もう俺は一人ではない。初めての仲間ができた。
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