鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

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第16話:冒険者としての第一歩

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俺はルナを連れて、安宿に戻った。部屋は一つしか取っていないが、今は仕方ない。まずは彼女の体を清めることが先決だった。

「風呂がある。まずは使ってくれ。着替えは俺が買ってくる」

俺がそう言うと、ルナはこくこくと頷いた。しかし、その場から動こうとしない。どうしたのかと尋ねると、彼女はもじもじと俯きながら、か細い声で言った。

「お風呂の……入り方が、分かりません……」

その言葉に、俺は胸を突かれた。彼女は、どれだけ過酷な環境で生きてきたのだろう。俺は湯の張り方から体の洗い方まで、できるだけ事務的に、しかし丁寧に説明した。彼女はようやく理解したようで、小さな背中を丸めながら風呂場へと消えていった。

俺はその間に、街の衣料品店へ走り、彼女の年頃に合いそうな簡素なワンピースと下着、そして頑丈そうなブーツを買い揃えた。金はかかるが、これは必要な投資だった。

宿に戻ると、ちょうどルナが風呂から上がったところだった。湯気でほんのりと頬を上気させた彼女は、俺が用意した服を見て、大きな瞳をきらきらと輝かせた。

「こ、これを私が……着てもいいんですか?」

「ああ。君のだ」

彼女は恐る恐る、しかし嬉しそうにワンピースを受け取ると、部屋の隅で着替え始めた。

しばらくして、俺の前に現れた彼女の姿に、俺は思わず言葉を失った。

薄汚れた奴隷の服を脱ぎ捨て、清潔なワンピースを身にまとった彼女は、まるで別人のようだった。洗い清められた銀髪は月の光のように輝き、翡翠色の瞳は宝石のように澄んでいる。これまで隠されていた、本来の美しさがそこにあった。

「あ、あの……似合いますか?」

不安そうに尋ねる彼女に、俺は少し照れながらも正直に答えた。

「ああ。すごく、似合ってる」

俺の言葉に、彼女の顔がぱっと華やぐ。その笑顔は、どんな花よりも可憐だった。

その後、俺たちは宿の食堂で遅い夕食をとった。硬いパンと薄いスープ。決してご馳走ではなかったが、ルナは一口食べるごとに、幸せそうな表情を浮かべた。

「美味しい……。こんなに温かくて、美味しいもの、初めて食べました……」

その姿を見ていると、胸が締め付けられるようだった。俺は自分の分のパンも、彼女の皿に分けてやった。

食事を終え、部屋に戻る。俺はベッドを彼女に譲り、自分は床で眠ることにした。

「そんな! アレン様が床だなんて……私が床で寝ます!」

「いいから。君は疲れているはずだ。それに、俺は野宿に慣れている」

半ば強引に彼女をベッドに促すと、ルナは申し訳なさそうに、しかし心地よさそうに毛布にくるまった。すぐに、すうすうと安らかな寝息が聞こえ始める。

俺は彼女の寝顔を見ながら、これからのことを考えた。彼女を助けたのはいいが、この先どうするのか。俺一人ならどうとでもなるが、彼女を養っていくには、安定した収入が必要だ。

やはり、冒険者として身を立てるしかない。

翌朝、俺たちは冒D冒険者ギルドへと向かっていた。朝日を浴びながら隣を歩くルナは、少し緊張した面持ちだった。

「なあ、ルナ。君はこれからどうしたい?」

俺が尋ねると、彼女はぴたりと足を止め、俺の顔を真剣な眼差しで見上げた。

「私は、アレン様のお役に立ちたいです! 命の恩人であるアレン様に、この身を捧げたいと思っています!」

その瞳は、昨日見た黄金色の信頼に満ち溢れていた。

「捧げるなんて大げさだ。君は自由なんだから、自分の好きなように生きていいんだ」

「私の『好き』は、アレン様のおそばにいることです!」

彼女はきっぱりと言い切った。その意志は、驚くほど固い。

俺は彼女の潜在能力を知っている。だが、それを理由に彼女を戦いに巻き込むのは躊躇われた。しかし、彼女自身の強い意志があるのなら、話は別だ。

「……分かった。俺は、この街で冒険者として生きていこうと思っている。危険な仕事だ。それでも、一緒に来てくれるか?」

俺は彼女に、正式な誘いの言葉をかけた。

「俺のパーティーに、入ってほしい」

その瞬間、ルナの顔が喜びで輝いた。

「はいっ! 喜んで!」

迷いのない即答だった。こうして、俺とルナの二人だけのパーティーが、正式に結成された。

ギルドに着くと、昨日と同じように受付のミリーが笑顔で迎えてくれた。俺の隣にいるルナの姿を見て、彼女は少し驚いた顔をした。

「あら、アレンさん。その子は?」

「俺のパーティーメンバーだ。今日、冒険者登録をお願いしたい」

ミリーはルナの姿を値踏みするように見た後、すぐに professional な表情に戻った。彼女の思考が聞こえる。『綺麗な獣人の子ね……。奴隷だったのかしら。でも、アレンさんが連れてきたのなら、悪い子じゃないんでしょう』。彼女は偏見を持たない、善良な人物のようだった。

ルナの登録は、俺の時と同じようにスムーズに進んだ。彼女のレベルは1のままだったが、ミリーは何も言わず、銅のギルドカードを手渡してくれた。

「二人とも、頑張ってね!」

ミリーの応援を背に、俺たちは依頼の掲示板へと向かう。

「さて、最初の仕事だ」

俺は掲示板を見渡し、一番簡単で、安全そうな依頼を探した。

【依頼内容:鎮静効果のある『セリーン草』を10本採取】
【報酬:銀貨五枚】
【場所:ラトナ東の森】

これだ。報酬は安いが、今の俺たちにはちょうどいい。

「この依頼を受けよう。薬草採取なら、危険も少ない」

「はい! 頑張ります!」

ルナはやる気に満ち溢れていた。

俺たちは早速、街の東門から森へと入った。俺は【万物解析】を使い、セリーン草の自生場所を探す。ただ探すだけではない。どうせなら、最高の品質のものを納品したい。

【情報:北西へ三百メートル。小川のほとりにある魔力溜まりの周辺に、高品質のセリーン草が群生している】

脳内のナビゲーションに従い、俺たちは森の奥へと進んでいく。道中、俺はルナに薬草の見分け方を教えた。彼女は驚くほど覚えが早く、俺が一度説明しただけで、セリーン草の特徴を完璧に記憶してしまった。

やがて、目的の場所にたどり着く。そこには、鑑定情報通り、青紫色の美しい花を咲かせたセリーン草が一面に広がっていた。

「わあ……綺麗……」

ルナが感嘆の声を上げる。

「これがセリーン草だ。根を傷つけないように、丁寧に採取するんだ」

俺たちは二人で、採取を始めた。初めての共同作業だったが、息はぴったりだった。俺が鑑定で最高の品質のものを選び出し、ルナが獣人ならではのしなやかな指先で、丁寧に摘み取っていく。

その時、ルナがぴくりと耳を動かし、警戒するように辺りを見回した。

「どうした?」

「……何か、茂みの向こうで音がします」

俺がスキルで確認すると、そこにいたのは臆病な森ウサギが一匹だけだった。危険はない。だが、俺は彼女の聴覚の鋭さに驚かされた。これも、彼女の才能の一つなのだろう。

一時間ほどで、俺たちは依頼量を遥かに超える、三十本以上もの最高品質のセリーン草を採取することに成功した。

ギルドに戻り、依頼達成を報告する。ちょうど依頼主である薬屋の店主が来ており、俺たちが納品したセリーン草を見るなり、目を剥いて驚愕した。

「こ、これは……なんと見事なセリーン草だ! まるで魔力を帯びているかのように瑞々しい! こんな上物は、何年も見たことがないぞ!」

店主は大興奮で、報酬の銀貨五枚に加えて、さらに銀貨三枚を色つけてくれた。

ミリーも「あなたたち、すごいじゃない!」と目を輝かせている。ギルド内の他の冒険者たちも、俺たちを少し見る目が変わったようだった。

ギルドを出て、夕暮れの道を歩きながら、ルナが嬉しそうに俺を見上げた。

「私、アレン様のお役に立てましたか?」

その問いに、俺は心からの笑顔で頷いた。

「ああ。ルナがいてくれたから、大成功だった。ありがとう」

俺はそう言って、彼女の頭を優しく撫でた。猫の耳が、気持ちよさそうにぴこぴこと動く。彼女の頭上には、昨日よりもさらに強く、温かい黄金色の光が輝いていた。

冒険者としての第一歩は、これ以上ないほど順調な滑り出しだった。俺は隣で微笑む初めての仲間と共に、明日への希望で胸を膨らませるのだった。
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