鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

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第23話:街の英雄へ

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地上に戻ると、夕暮れの赤い光が目に染みた。カビ臭い地下の空気とは違う、澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込むと、生きていることを実感できた。

地下水道の入り口で待っていた衛兵は、俺たちが返り血を浴びながらも無事な姿で現れたことに、心底驚いた顔をしていた。

「お、おい! 生きていたのか! 中はどうだったんだ!?」

「元凶は討伐しました。これで、病も収まるはずです」

俺はそう言って、証拠品として持ち帰ったプレイグラットの魔石の欠片と、紫色の牙を彼に見せた。衛兵はそれを信じられないといった表情で見つめていたが、やがて俺たちへの態度を改め、深い敬意のこもった敬礼をした。

「ご苦労だった! すぐにギルドと領主様にご報告する!」

俺たちは衛兵に後を任せ、冒険者ギルドへと向かった。疲労はピークに達していたが、報告を済ませるまでは気は抜けない。

ギルドに俺たちが姿を現すと、その場にいた冒険者たちが一斉にこちらを向いた。すでに衛兵から連絡が行っていたのだろう。その視線は、もはや新人を見るものではなかった。そこにあるのは、畏敬と、そして称賛の色だった。

「アレンさん! ルナちゃん!」

カウンターから飛び出してきたミリーが、目に涙を浮かべて俺たちに駆け寄ってきた。

「本当によく……! 本当によく、無事で……!」

彼女は俺たちの無事を心から喜んでくれていた。その純粋な感情が、疲れた心に温かく染みる。

俺はミリーに依頼の完了を報告し、証拠品を提出した。ギルドマスターも奥から出てきて、俺たちの肩を力強く叩き、「街を救ってくれて、感謝する」と何度も頭を下げた。

約束の報酬、金貨三枚。それに加えて、街の領主からの特別報奨金として、さらに金貨五枚が俺たちに手渡された。合計金貨八枚。もはや、一生遊んで暮らせるとまではいかないが、当面の生活には全く困らない大金だ。

その日の夜、ラトナの街はお祭り騒ぎになった。原因不明の病の元凶が討伐されたというニュースは瞬く間に広まり、人々は不安から解放された喜びに沸いていた。そして、その中心にいたのは、間違いなく俺たちだった。

俺とルナが通りを歩けば、「ありがとう、冒険者さん!」「あんたたちのおかげだ!」と、人々が次々に声をかけてくる。食堂に入れば、勘定はいらないと言われ、酒場では見知らぬ冒険者たちが次々と奢ってくれた。

俺は人々から向けられる、純粋な感謝の念に少し戸惑っていた。追放され、誰からも必要とされていないと思っていた俺が、今、こんなにも多くの人から感謝されている。その事実が、まだどこか現実味を帯びていなかった。

俺は自分に向けられる人々の感情を、【万物解析】でそっと見てみた。

【街のパン屋の主人からアレンへの好感度:70/100(感謝と尊敬/明るい緑色)】
【衛兵の青年からアレンへの好感度:65/100(憧憬/水色)】
【小さな女の子からアレンへの好感度:80/100(大好き/純粋な黄色)】

そこには、打算も、下心もない、温かい感情の色だけが溢れていた。黄金色に輝くルナの信頼とはまた違う、様々な色合いの好意。それらが俺を包み込み、胸の奥をじんわりと温めていく。

「アレンさん、なんだかすごいことになっちゃいましたね」

隣で、ルナが少し困ったように、しかし嬉しそうに微笑んだ。彼女もまた、人々からの感謝の言葉に、これまでの人生では味わったことのない感情を抱いているようだった。

「ああ。だが、悪い気はしないな」

俺は素直にそう答えた。

誰かの役に立つこと。誰かを守ること。それが、これほどまでに心を温かくするものだとは、知らなかった。勇者パーティーにいた頃、俺はただ「役立たず」だと蔑まれ、自分の存在価値を見出せずにいた。

だが、今は違う。俺には【万物解析】という力がある。そして、その力を信じてくれるルナという仲間がいる。俺たちは、この街で、確かに誰かの役に立つことができたのだ。

その夜、宿の部屋で、俺たちは手に入れた金貨をテーブルの上に並べてみた。きらきらと輝く金貨の山を前に、ルナはごくりと唾を飲んだ。

「これだけあれば……毎日、あの鳥の丸焼きが食べられますか?」

彼女の歳相応の問いに、俺は思わず吹き出してしまった。

「ああ、もちろんだ。もっと良い服も、もっと良い武器も買える。それに、もっと良い部屋に引っ越すことだってできる」

「本当ですか!?」

目を輝かせるルナを見て、俺は自分の心に新たな目標が芽生えていることに気づいた。

ただ生き延びるだけじゃない。この街で、ルナと共に、もっと豊かで、もっと幸せな生活を築いていく。そのための力も、資金も、俺たちは手に入れたのだ。

ラトナの街の英雄。人々は俺たちをそう呼ぶ。その称号は、少しばかり気恥ずかしいが、同時に誇らしくもあった。

追放された鑑定士の物語は、ここで一つの大きな転機を迎えた。俺はもう、過去に囚われた孤独な存在ではない。この辺境の街で、俺は確かに自分の居場所を見つけ始めていた。
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