鑑定スキルで万物を見抜く俺、実は女の子の好感度も丸見えです

夏見ナイ

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第73話:連携攻撃

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マリウスを撃破したものの、俺たちの消耗は激しかった。特に精神攻撃を受けた俺とシルフィ、そして魔力を使い果たしたフィオナは、しばらくその場から動けそうになかった。

「……アレン。大丈夫か」

床に座り込んだままシルフィが心配そうに声をかけてきた。彼女の顔色はまだ青白い。

「ああ、なんとか……。君の方こそ」

「フン。これくらい、どうということはない」

彼女は強がって見せたが、その声には疲労の色が隠しきれていなかった。

俺たちはしばらくの間、荒い息を整えながら互いの無事を確認し合った。先ほどの戦いはこれまで経験した中でも、間違いなく最も過酷なものだった。一歩間違えれば、俺たちの精神は完全に破壊され、マリウスの実験体と同じ運命を辿っていたかもしれない。

「先生……シルフィ様……ご無事で何よりですわ」

フィオナが壁に寄りかかりながら、安堵のため息を漏らした。彼女もまた最後の最後で力を振り絞ったのだろう。その額には玉のような汗が浮かんでいる。

俺は、そんな仲間たちの姿を見渡し、心からの感謝とそして誇らしさを感じていた。

俺が敵の弱点を見抜けたのも、フィオナが魔法で敵の動きを封じてくれたからだ。そして、シルフィが精神攻撃の苦痛に耐えながらも、俺の指示を信じて突撃してくれたからこそ、俺たちは勝てたのだ。

誰か一人でも欠けていたら、この勝利はなかった。

『連携攻撃』。その言葉の意味を、俺たちはこの死闘の中で本当の意味で体得したのかもしれない。

俺は、廃人と化したマリウスに一瞥をくれた。彼はもはや何の脅威でもない。だが、彼から情報を引き出すことももう不可能だろう。逃げた二人の暗殺者も、すでにこの遺跡のどこかへ姿を消してしまっている。

「……とにかく、今はここから離れよう。ルナがもうすぐ応援を連れて戻ってくるはずだ」

俺は残った力を振り絞って立ち上がった。そして、シルフィとフィオナに肩を貸し、俺たちはゆっくりと書斎を後にした。

儀式場に戻ると、眠らせた被害者たちはまだ穏やかな寝息を立てていた。彼らの胸に埋め込まれた宝珠は主を失ったためか、その禍々しい輝きを少しだけ失っているように見えた。

俺たちは遺跡の入り口へと向かい、外の新鮮な空気を吸った。森の木々の間から差し込む月光が、疲れた俺たちの体を優しく照らしている。

「……アレン」

不意に、シルフィが俺の名前を呼んだ。

「なんだ?」

「……お前がいなければ、私はあそこで負けていた」

彼女は、そっぽを向きながらぽつりと言った。それは彼女なりの最大限の感謝の言葉だった。

「先生のあの時の言葉……私、一生忘れませんわ。『俺を信じろ』って……。あの言葉があったから、私は最後まで戦えました」

フィオナもまた、潤んだ瞳で俺を見つめていた。

俺は、そんな二人の言葉に少し照れくささを感じながらも、首を振った。

「違う。俺じゃない。俺たち、みんなで勝ったんだ」

俺の言葉に、二人は顔を見合わせ、そして小さく、しかし確かに微笑み合った。

その時だった。

森の奥からものすごい速さで駆けてくる、一つの小さな影があった。

「アレン様ー!」

ルナの声だった。彼女は俺たちの姿を認めると、その速度をさらに上げ弾丸のように俺の胸へと飛び込んできた。

「アレン様! ご無事で……! よかった……!」

彼女は俺の胸に顔をうずめ、わんわんと泣き出した。俺の匂いを嗅ぎ、俺の心臓の音を聞いて、俺が無事であることを全身で確かめているようだった。

「大丈夫だ、ルナ。よく戻ってきてくれたな」

俺は彼女の小さな体を優しく抱きしめ、その背中を撫でてやった。

ルナの後方からは松明の光と共に、ラトナの衛兵隊とギルドから派遣された治癒術師たちがぞろぞろと姿を現した。

「アレン殿! 無事であったか!」

衛兵隊の隊長が安堵の声を上げる。

「ええ、なんとか。それより、中に被害者たちが。彼らの救護をお願いします」

俺は状況を簡潔に説明し、後処理を彼らに任せた。衛兵隊は廃人と化したマリウスと儀式場の惨状を見て言葉を失っていたが、すぐにテキパキと動き始めた。

治癒術師たちが眠っている被害者たちの元へと駆けつけていく。彼らの呪いが解けるかどうかはまだ分からない。だが、少なくとも最善の手は尽くせるはずだ。

俺たち『アルカディア』の仕事は、ここで終わった。

俺たちは朝日が昇り始める頃、応援に来てくれた衛兵たちの護衛のもとラトナへの帰路についた。

心身ともに疲労はピークに達していた。だが、俺たちの心は不思議なほど晴れやかだった。

この過酷な戦いを通して、俺たちの絆はまた一つ新たな段階へと進んだのだ。

ただの寄せ集めのパーティーではない。互いの弱さを補い、互いの強さを信じ合える、本当の意味での『一つのチーム』へ。

俺は自分の両脇をルナとフィオナに支えられ、その後ろをシルフィが静かに守るように歩きながら、そう確信していた。

この仲間たちがいれば、これからどんな強大な敵が現れようとも、俺たちは決して負けはしないだろう。
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