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第74話:宣戦布告
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ラトナの街に戻った俺たちを待っていたのは、英雄の凱旋にふさわしい熱烈な歓迎だった。
ルナからの報告を受け、街全体が固唾を飲んで俺たちの帰りを待っていたのだ。俺たちが邪教団のアジトを突き止め、幹部の一人を討ち取ったというニュースは瞬く間にラトナ中に広まった。
街の門をくぐると、そこには領主であるバルトラン伯爵をはじめ、ギルドマスター、そして多くの街の人々が集まっていた。
「おお、アレン殿! よくぞ、ご無事で!」
伯爵は俺の手を両手で握りしめ、その労をねぎらってくれた。
俺たちはそのまま領主の館へと招かれ、そこで今回の事件の詳細な報告を行った。俺が遺跡の書斎から持ち帰った邪教団『虚無の蛇』の日誌と、ラトナの地下に印がつけられた地図。それらが決定的な証拠となった。
「……なんと、おぞましいことを」
報告を聞き終えた伯爵は顔を青ざめさせ、わなわなと震えていた。
「魔王さえも操っていた古代の邪教団……。そして、奴らの次の狙いがこのラトナだと……?」
「間違いありません」
俺はきっぱりと断言した。
「俺たちがアジトを潰したことで奴らの計画に多少の遅れは生じたでしょう。ですが、奴らがこの街を諦めるとは思えません。むしろ報復のために、より大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があります」
俺の言葉に、その場にいた衛兵隊長やギルドマスターの顔にも緊張の色が走った。
「では、我々はどうすれば……」
伯爵が不安そうな声で尋ねる。
俺は懐から取り出した地図をテーブルの上に広げた。
「まずは守りを固めることです。この地図に記された街の地下にあるレイラインの交差点。おそらく奴らはここに、儀式のための何らかの装置を仕掛けようとするはずです。これらのポイントを徹底的に警備する必要があります」
俺は具体的な防衛プランを提示していった。衛兵隊の配置、冒険者ギルドとの連携、そして住民への避難勧告のタイミング。俺の【万物解析】は軍師としても、その能力を遺憾なく発揮していた。
俺のよどみない説明に、伯爵たちは感心したように聞き入っている。
「……分かった。アレン殿の言う通りにしよう。この街の防衛に関する全権を君に委ねる。どうか、このラトナを、我々の民を守ってほしい」
伯爵は俺に向かって深く頭を下げた。一介の冒険者ギルドのマスターに一都市の防衛権を委ねる。それは異例中の異例の措置だった。だが、もはや誰もそれに異を唱える者はいなかった。俺たち『アルカディア』がこの街最後の希望であることを、誰もが理解していたからだ。
会議が終わり、俺たちが屋敷に戻る頃には街の空気は一変していた。
これまでの楽観的な祝賀ムードは消え去り、静かだが確固たる決意に満ちた緊張感が漂い始めている。衛兵たちが慌ただしく街を駆け回り、冒険者たちがギルドで武器の手入れを入念に行っている。
俺たちのギルドハウスにも、多くの冒険者たちが集まってきた。新人講習会で俺が育てた若者たちだ。
「マスター! 俺たちにも何か手伝えることはありませんか!」
「この街は俺たちの故郷です! 俺たちも一緒に戦わせてください!」
彼らの瞳には恐怖ではなく、故郷を守ろうとする強い意志の炎が燃えていた。
俺はそんな彼らの姿を頼もしく思った。俺が蒔いた種は、確かにこのラトナの地に力強く根を張り始めていたのだ。
だが、俺は彼らを最前線に立たせるつもりはなかった。
「君たちの気持ちは嬉しい。だが、今回の敵は君たちが思っている以上に危険で狡猾だ。君たちには街の住民の避難誘導と、防衛線の後方支援を任せたい。それもまた、この街を守るための重要な戦いだ」
俺の言葉に、彼らは一瞬不満そうな顔をしたが、やがてその任務の重要性を理解し力強く頷いた。
その夜、俺は仲間たちと共に屋敷の作戦司令室に集まっていた。壁にはラトナの巨大な地図が貼られ、そこには敵の予想侵攻ルートや俺たちの配置計画がびっしりと書き込まれている。
「……敵は、いつ、どこから来るか分からない。だが、必ず来る」
俺は仲間たちの顔を一人一人見渡した。
「これはこれまでのようなダンジョン攻略や魔物討伐とは訳が違う。街全体を巻き込む総力戦になる。危険な戦いだ。だが、俺たちは勝たなければならない」
俺の言葉に、三人は静かに、しかし力強く頷いた。
ルナは銀のダガーを握りしめ、その瞳には狩人の光が宿っている。
シルフィは愛剣ソウルセイバーを傍らに置き、静かに闘志を燃やしている。
フィオナは杖を胸に抱き、その表情には聖女のような民を守るという強い決意が浮かんでいた。
俺はそんな頼もしい仲間たちの姿を見て、フッと笑みを漏らした。
「大丈夫だ。俺たちなら、勝てる」
俺のその一言が、まるで宣戦布告のように静かな部屋に響き渡った。
邪教団『虚無の蛇』。
お前たちがこのラトナの平穏を、俺の大切な仲間たちとの日常を脅かすというのなら、俺たちは全力でそれを迎え撃つ。
辺境の街ラトナと邪教団『虚無の蛇』との全面戦争。
その火蓋は、今、まさに切って落とされようとしていた。
ルナからの報告を受け、街全体が固唾を飲んで俺たちの帰りを待っていたのだ。俺たちが邪教団のアジトを突き止め、幹部の一人を討ち取ったというニュースは瞬く間にラトナ中に広まった。
街の門をくぐると、そこには領主であるバルトラン伯爵をはじめ、ギルドマスター、そして多くの街の人々が集まっていた。
「おお、アレン殿! よくぞ、ご無事で!」
伯爵は俺の手を両手で握りしめ、その労をねぎらってくれた。
俺たちはそのまま領主の館へと招かれ、そこで今回の事件の詳細な報告を行った。俺が遺跡の書斎から持ち帰った邪教団『虚無の蛇』の日誌と、ラトナの地下に印がつけられた地図。それらが決定的な証拠となった。
「……なんと、おぞましいことを」
報告を聞き終えた伯爵は顔を青ざめさせ、わなわなと震えていた。
「魔王さえも操っていた古代の邪教団……。そして、奴らの次の狙いがこのラトナだと……?」
「間違いありません」
俺はきっぱりと断言した。
「俺たちがアジトを潰したことで奴らの計画に多少の遅れは生じたでしょう。ですが、奴らがこの街を諦めるとは思えません。むしろ報復のために、より大規模な攻撃を仕掛けてくる可能性があります」
俺の言葉に、その場にいた衛兵隊長やギルドマスターの顔にも緊張の色が走った。
「では、我々はどうすれば……」
伯爵が不安そうな声で尋ねる。
俺は懐から取り出した地図をテーブルの上に広げた。
「まずは守りを固めることです。この地図に記された街の地下にあるレイラインの交差点。おそらく奴らはここに、儀式のための何らかの装置を仕掛けようとするはずです。これらのポイントを徹底的に警備する必要があります」
俺は具体的な防衛プランを提示していった。衛兵隊の配置、冒険者ギルドとの連携、そして住民への避難勧告のタイミング。俺の【万物解析】は軍師としても、その能力を遺憾なく発揮していた。
俺のよどみない説明に、伯爵たちは感心したように聞き入っている。
「……分かった。アレン殿の言う通りにしよう。この街の防衛に関する全権を君に委ねる。どうか、このラトナを、我々の民を守ってほしい」
伯爵は俺に向かって深く頭を下げた。一介の冒険者ギルドのマスターに一都市の防衛権を委ねる。それは異例中の異例の措置だった。だが、もはや誰もそれに異を唱える者はいなかった。俺たち『アルカディア』がこの街最後の希望であることを、誰もが理解していたからだ。
会議が終わり、俺たちが屋敷に戻る頃には街の空気は一変していた。
これまでの楽観的な祝賀ムードは消え去り、静かだが確固たる決意に満ちた緊張感が漂い始めている。衛兵たちが慌ただしく街を駆け回り、冒険者たちがギルドで武器の手入れを入念に行っている。
俺たちのギルドハウスにも、多くの冒険者たちが集まってきた。新人講習会で俺が育てた若者たちだ。
「マスター! 俺たちにも何か手伝えることはありませんか!」
「この街は俺たちの故郷です! 俺たちも一緒に戦わせてください!」
彼らの瞳には恐怖ではなく、故郷を守ろうとする強い意志の炎が燃えていた。
俺はそんな彼らの姿を頼もしく思った。俺が蒔いた種は、確かにこのラトナの地に力強く根を張り始めていたのだ。
だが、俺は彼らを最前線に立たせるつもりはなかった。
「君たちの気持ちは嬉しい。だが、今回の敵は君たちが思っている以上に危険で狡猾だ。君たちには街の住民の避難誘導と、防衛線の後方支援を任せたい。それもまた、この街を守るための重要な戦いだ」
俺の言葉に、彼らは一瞬不満そうな顔をしたが、やがてその任務の重要性を理解し力強く頷いた。
その夜、俺は仲間たちと共に屋敷の作戦司令室に集まっていた。壁にはラトナの巨大な地図が貼られ、そこには敵の予想侵攻ルートや俺たちの配置計画がびっしりと書き込まれている。
「……敵は、いつ、どこから来るか分からない。だが、必ず来る」
俺は仲間たちの顔を一人一人見渡した。
「これはこれまでのようなダンジョン攻略や魔物討伐とは訳が違う。街全体を巻き込む総力戦になる。危険な戦いだ。だが、俺たちは勝たなければならない」
俺の言葉に、三人は静かに、しかし力強く頷いた。
ルナは銀のダガーを握りしめ、その瞳には狩人の光が宿っている。
シルフィは愛剣ソウルセイバーを傍らに置き、静かに闘志を燃やしている。
フィオナは杖を胸に抱き、その表情には聖女のような民を守るという強い決意が浮かんでいた。
俺はそんな頼もしい仲間たちの姿を見て、フッと笑みを漏らした。
「大丈夫だ。俺たちなら、勝てる」
俺のその一言が、まるで宣戦布告のように静かな部屋に響き渡った。
邪教団『虚無の蛇』。
お前たちがこのラトナの平穏を、俺の大切な仲間たちとの日常を脅かすというのなら、俺たちは全力でそれを迎え撃つ。
辺境の街ラトナと邪教団『虚無の蛇』との全面戦争。
その火蓋は、今、まさに切って落とされようとしていた。
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