「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ

文字の大きさ
62 / 100

第62話:王城地下への潜入

しおりを挟む
『当たり』の報せを受けた俺たちは、一瞬の躊躇もなくアジトを飛び出した。
バルガスが予め用意してくれていた王城地下へと続く最短ルート。それはアジトのさらに奥深く、忘れ去られた古代の下水道へと繋がっていた。
「うへえ……臭えな、おい」
フレアが鼻をつまんで顔をしかめる。
下水道の中は淀んだ水と得体の知れない汚泥が溜まり、強烈な悪臭を放っていた。
「我慢しろ。ここが一番安全な道だ」
俺は松明を片手に先に立って進む。リリアは清浄な風の魔法で、俺たちの周りの空気を少しだけ清めてくれていた。そのおかげでなんとか呼吸をすることはできた。

道案内はバルガスの残してくれた羊皮紙の地図だけが頼りだ。
複雑に入り組んだ地下水路を、俺たちは慎重に進んでいく。時折、水面から不気味な水棲生物が顔を出すが、俺たちの姿を見るとなぜか怯えるようにしてすぐに水の中へと姿を消した。
俺の力がここでも微弱ながら作用しているのだろう。

「本当にこっちで合ってるのかい? まるで迷路じゃねえか」
フレアが不安そうな声を上げる。
地図によれば、もうすぐのはずだった。俺たちが目指すのはバルガスたちが発見した隠し通路へと繋がる古い貯水槽の跡地。
俺がそう答えようとした、その時だった。
俺の足がぬるりとした苔に滑った。
「うわっ!」
俺はバランスを崩し、盛大に前のめりに倒れ込む。そして、そのまま横の壁に頭から激突した。
ゴツン、と鈍い音が響く。
「アッシュ様!?」
「おい、大丈夫か、アッシュ!」
リリアとフレアが慌てて駆け寄ってくる。

「……いったた。大丈夫だ、これくらい……ん?」
俺は頭をぶつけた壁に手を触れ、そこに奇妙な感触があることに気づいた。
他の壁は湿った石でできている。だが、俺がぶつかった場所だけ、レンガのようなもので巧妙に塞がれていた。
「……隠し扉か?」
フレアが目を輝かせる。彼女はこういう仕掛けには目がない。
俺たちは壁を注意深く調べ始めた。するとレンガの一つが、僅かに押し込めるようになっているのを発見した。
それを押し込むとゴゴゴ……という音と共に壁の一部が回転し、新たな通路が現れた。
地図には載っていないショートカット。
俺が偶然頭をぶつけたことで、その存在が明らかになったのだ。

「……もう、驚かねえぜ」
フレアは呆れたように笑った。
「あんたのその転び芸は、もはや神の領域だな」
俺は頭のコブをさすりながら、苦笑するしかなかった。

隠し通路を抜けた先は目的の貯水槽だった。
そこにはバルガスが目印として残してくれたのであろう、騎士団の紋章が刻まれた短剣が突き立てられていた。
そして、その奥の壁には彼らが開いたのであろう古代遺跡へと続く隠し通路が、不気味な口を開けて待っていた。

俺たちは下水道の悪臭から解放されたことに安堵しながらも、これから足を踏み入れる未知の領域に改めて気を引き締めた。
通路の奥から流れてくる空気は下水道とは比べ物にならないほど冷たく、そして邪悪な気配に満ちている。
「……行こう」
俺の言葉に二人は力強く頷いた。
俺たちは松明の明かりを頼りに、王城地下の古代遺跡へとその第一歩を踏み出した。

遺跡の中は静寂に包まれていた。
だが、それは安らかな静寂ではない。死そのもののような重苦しい静寂だった。
壁には風化した古代の壁画が描かれ、天井は自然の洞窟のように不規則な形をしている。
俺たちは息を殺し、慎重に進んでいく。バルガスたちが残してくれた微かな足跡を頼りに。

やがて俺たちの前に巨大な石の扉が立ちはだかった。
扉には複雑な幾何学模様が刻まれており、強力な封印の魔力がかけられているのが分かった。
「これは……古代ドワーフの封印術式だ」
フレアが専門家としての目で扉を観察する。
「並の力じゃびくともしねえぜ。正しい手順で鍵となるルーンを起動させねえと……」
その時、扉の脇にバルガスからのメッセージが残されているのに気づいた。

『この扉、我々の力では開けられず。別のルートを探す』

どうやらバルガスたちはこの扉を突破できずに、迂回していったらしい。
俺たちも別の道を探すべきか。
そう思った、その時だった。
リリアが扉に刻まれた模様をじっと見つめ、何かを呟いた。
「……いいえ。これはドワーフの術式だけではありませんわ。上から古代エルフの守護魔法が重ねてかけられています」
彼女は扉にそっと手を触れた。
「そして、この魔法は……わたくしのシルヴァームーンの一族に伝わる特別な解錠の呪文に応えるはずです」

なんと、この古代の封印はドワーフとエルフ、二つの種族の技術が合わさって作られた特殊なものだったのだ。
バルガスたち人間の騎士だけでは決して開けることができなかった扉。
だが、ドワーフのフレアとエルフのリリアがいる、俺たちのパーティならば。

「フレア様、このルーンの位置、合っていますか?」
「ああ、そこだ。そこに魔力を流し込めば……!」
リリアが古エルフ語の呪文を唱え、フレアがドワーフ語でルーンの起動を指示する。
二つの異なる種族の古の言葉が、この地下遺跡で交錯した。
すると扉全体が淡い光を放ち始め、刻まれた幾何学模様がまるで生きているかのように動き始めた。
そして、ゴゴゴゴゴ……という地響きと共に、数百年、あるいは数千年間閉ざされていたであろう石の扉がゆっくりと、しかし確実に開かれていった。

扉の向こう側は、バルガスたちでさえ足を踏み入れていない未知の領域。
俺たちは顔を見合わせた。
俺の『幸運』がドワーフとエルフという、最高の『鍵』をこの場所に導いた。
それはもはや疑いようのない事実だった。

「行くぞ」
俺たちは決意を新たにし、開かれた扉の向こう、本当の闇の中へと進んでいった。
宰相ヴァルザーの、そして魔族の待つ密会の場所は、もうすぐそこにあるはずだった。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

追放されたので辺境でスローライフしてたら、いつの間にか世界最強の無自覚賢者になっていて元婚約者たちが土下座してきた件

にゃ-さん
ファンタジー
王都で「無能」と蔑まれ、婚約破棄と追放を言い渡された青年リオン。 唯一の取り柄は、古代語でびっしり書かれたボロ本を黙々と読み続けることだけ。 辺境で静かに暮らすはずが、その本が実は「失われた大魔導書」だったことから、世界の常識がひっくり返る。 本人は「ちょっと魔法が得意なだけ」と思っているのに、 ・竜を一撃で黙らせ ・災厄級ダンジョンを散歩感覚で踏破し ・国家レベルの結界を片手間で張り直し 気づけば、訳あり美少女たちに囲まれたハーレム状態に。 やがて、かつて彼を笑い、切り捨てた王都の貴族や元仲間たちが、 国家存亡の危機を前に「助けてくれ」と縋りついてくる。 だがリオンは、領民と仲間の笑顔を守るためだけに、淡々と「本気」を解放していくのだった——。 無自覚最強×追放×ざまぁ×ハーレム。 辺境から始まる、ゆるくて激しいファンタジー無双譚!

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。 2025/9/29 追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。

処理中です...