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第82話:弱点の露呈
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デモゴルゴンの巨体が完全に沈黙した。
その圧倒的な存在感が消え失せ、ただの巨大な亡骸と化した光景はあまりにも現実離れしていて、誰もが言葉を失っていた。
王都を覆っていた暗雲がゆっくりと晴れていく。
雲の切れ間から本来の青空と、温かい太陽の光が差し込んできた。
まるで世界の悪夢が終わったことを、天が祝福しているかのようだった。
「……勝った」
誰かがぽつりと呟いた。
その一言が引き金だった。
「うおおおおおおおおおおっ!」
王都解放軍の兵士たちから地鳴りのような歓声が上がった。
彼らは武器を空に掲げ、抱き合い、涙を流した。
不可能を可能にした。
伝説の厄災を打ち破った。
その事実は彼らにとって、何物にも代えがたい誇りと自信となっただろう。
広場に駆けつけていた市民たちからも、大きな拍手と歓声が湧き起こる。
王都は勝利の喜びに包まれた。
だが、俺はその歓声の中心で一人だけ、まだ気を緩めてはいなかった。
俺の視線はただ一点。
王城の最も高い塔の、一つの窓に向けられていた。
そこに小さな人影が見えた気がした。
宰相ヴァルザー。
彼は自らの最強の切り札が破られたこの光景を、どんな思いで見ているのだろうか。
「アッシュ」
バルガスが俺の隣に立った。彼の顔にも深い安堵と、隠しきれない興奮の色が浮かんでいる。
「……お主はまたしても奇跡を起こしたな。太陽の光が、あのタイミングで魔獣の目を射抜くなど……もはや神の御業としか思えん」
「俺は何もしていません。ただ願っただけです」
俺はそう答えるしかなかった。
だが、バルガスは分かっているというように深く頷いた。
「その『願い』こそがお主の力なのだろう。国を、民を想うその清らかな願いが、天を動かしたのだ」
その時、フレアが肩で息をしながら俺たちの元へやってきた。
その顔は煤と汗で汚れていたが、満面の笑みを浮かべていた。
「へへっ、どうだ! あたしの『城砕き』は伝説の魔獣にだって通用するんだぜ!」
彼女は誇らしげに胸を張る。
「ああ、見事だった、フレア」
俺は心からの称賛を贈った。
「お前がいなければ勝てなかった」
その言葉にフレアは照れくさそうに、そっぽを向いた。
リリアも駆け寄ってきた。
「アッシュ様、フレア様、ご無事で何よりです……!」
彼女はデモゴルゴンの亡骸を見て、まだ信じられないというように目を丸くしている。
俺たち三人は再び絶望的な状況を、仲間との連携で乗り越えたのだ。
その事実が俺たちの絆を、さらに強く固いものにしていた。
だが、俺たちの勝利ムードに水を差すように、斥候の一人が駆け込んできた。
その顔は青ざめている。
「報告! 王城のヴァルザーが新たな動きを見せています!」
その言葉に俺たちははっとした。
「なんだと!?」
「城内に残っていた最後の魔族兵と狂信者の騎士たちを、全て城門の防衛に集結させている模様! 城を完全に要塞化し、徹底抗戦するつもりのようです!」
その報告に俺たちは眉をひそめた。
ヴァルザーはまだ諦めていなかった。
最強の切り札を失ってもなお、彼は戦うことをやめない。
その執念はもはや狂気としか言いようがなかった。
「……最後の悪あがき、か」
バルガスが忌々しげに吐き捨てた。
「だが、好都合でもある。奴が城から逃げ出す前に、我々が乗り込みその首を獲るまでだ」
勝利の歓声は新たな戦いへの決意へと変わっていった。
デモゴルゴンを倒したことで王都の大部分は、完全に俺たちの手に落ちた。
民衆は俺たちを英雄として迎え、解放軍への協力者はさらに数を増している。
もはやヴァルザーに味方する者は、王城に立てこもる僅かな残党だけ。
大勢は決した。
俺はデモゴルゴンの巨体を見下ろした。
その巨体は偶然にも王城へと続く大通りを、完全に塞いでしまっていた。
それはヴァルザーの軍勢が城から打って出ることを妨げる、天然のバリケードのようにも見えた。
(弱点の露呈、か)
俺は心の中で呟いた。
デモゴルゴンが倒れ、腹部の弱点を晒したように。
ヴァルザーもまた全ての切り札を失い、その最後の弱点――王城という孤立した砦――を、俺たちの前に晒している。
「行こう」
俺は仲間たちに向かって言った。
「この戦いを終わらせに」
俺の言葉に全員が力強く頷いた。
俺たちはデモゴルゴンの亡骸を乗り越え、最後の目的地である王城へと、その歩みを進めた。
王都の夜明けは、もうすぐそこまで迫っていた。
その圧倒的な存在感が消え失せ、ただの巨大な亡骸と化した光景はあまりにも現実離れしていて、誰もが言葉を失っていた。
王都を覆っていた暗雲がゆっくりと晴れていく。
雲の切れ間から本来の青空と、温かい太陽の光が差し込んできた。
まるで世界の悪夢が終わったことを、天が祝福しているかのようだった。
「……勝った」
誰かがぽつりと呟いた。
その一言が引き金だった。
「うおおおおおおおおおおっ!」
王都解放軍の兵士たちから地鳴りのような歓声が上がった。
彼らは武器を空に掲げ、抱き合い、涙を流した。
不可能を可能にした。
伝説の厄災を打ち破った。
その事実は彼らにとって、何物にも代えがたい誇りと自信となっただろう。
広場に駆けつけていた市民たちからも、大きな拍手と歓声が湧き起こる。
王都は勝利の喜びに包まれた。
だが、俺はその歓声の中心で一人だけ、まだ気を緩めてはいなかった。
俺の視線はただ一点。
王城の最も高い塔の、一つの窓に向けられていた。
そこに小さな人影が見えた気がした。
宰相ヴァルザー。
彼は自らの最強の切り札が破られたこの光景を、どんな思いで見ているのだろうか。
「アッシュ」
バルガスが俺の隣に立った。彼の顔にも深い安堵と、隠しきれない興奮の色が浮かんでいる。
「……お主はまたしても奇跡を起こしたな。太陽の光が、あのタイミングで魔獣の目を射抜くなど……もはや神の御業としか思えん」
「俺は何もしていません。ただ願っただけです」
俺はそう答えるしかなかった。
だが、バルガスは分かっているというように深く頷いた。
「その『願い』こそがお主の力なのだろう。国を、民を想うその清らかな願いが、天を動かしたのだ」
その時、フレアが肩で息をしながら俺たちの元へやってきた。
その顔は煤と汗で汚れていたが、満面の笑みを浮かべていた。
「へへっ、どうだ! あたしの『城砕き』は伝説の魔獣にだって通用するんだぜ!」
彼女は誇らしげに胸を張る。
「ああ、見事だった、フレア」
俺は心からの称賛を贈った。
「お前がいなければ勝てなかった」
その言葉にフレアは照れくさそうに、そっぽを向いた。
リリアも駆け寄ってきた。
「アッシュ様、フレア様、ご無事で何よりです……!」
彼女はデモゴルゴンの亡骸を見て、まだ信じられないというように目を丸くしている。
俺たち三人は再び絶望的な状況を、仲間との連携で乗り越えたのだ。
その事実が俺たちの絆を、さらに強く固いものにしていた。
だが、俺たちの勝利ムードに水を差すように、斥候の一人が駆け込んできた。
その顔は青ざめている。
「報告! 王城のヴァルザーが新たな動きを見せています!」
その言葉に俺たちははっとした。
「なんだと!?」
「城内に残っていた最後の魔族兵と狂信者の騎士たちを、全て城門の防衛に集結させている模様! 城を完全に要塞化し、徹底抗戦するつもりのようです!」
その報告に俺たちは眉をひそめた。
ヴァルザーはまだ諦めていなかった。
最強の切り札を失ってもなお、彼は戦うことをやめない。
その執念はもはや狂気としか言いようがなかった。
「……最後の悪あがき、か」
バルガスが忌々しげに吐き捨てた。
「だが、好都合でもある。奴が城から逃げ出す前に、我々が乗り込みその首を獲るまでだ」
勝利の歓声は新たな戦いへの決意へと変わっていった。
デモゴルゴンを倒したことで王都の大部分は、完全に俺たちの手に落ちた。
民衆は俺たちを英雄として迎え、解放軍への協力者はさらに数を増している。
もはやヴァルザーに味方する者は、王城に立てこもる僅かな残党だけ。
大勢は決した。
俺はデモゴルゴンの巨体を見下ろした。
その巨体は偶然にも王城へと続く大通りを、完全に塞いでしまっていた。
それはヴァルザーの軍勢が城から打って出ることを妨げる、天然のバリケードのようにも見えた。
(弱点の露呈、か)
俺は心の中で呟いた。
デモゴルゴンが倒れ、腹部の弱点を晒したように。
ヴァルザーもまた全ての切り札を失い、その最後の弱点――王城という孤立した砦――を、俺たちの前に晒している。
「行こう」
俺は仲間たちに向かって言った。
「この戦いを終わらせに」
俺の言葉に全員が力強く頷いた。
俺たちはデモゴルゴンの亡骸を乗り越え、最後の目的地である王城へと、その歩みを進めた。
王都の夜明けは、もうすぐそこまで迫っていた。
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