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第七話 影への転生
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オールド・トレントを捕食し、レベル5となったオブシディアンは、森のさらに奥深くへと進んでいた。身体が感じる微かな変化――深みを増した黒、影に溶け込むような感覚――は、気のせいではなかった。それは【擬態】や【疾走】スキルを使用する際にも、明確な影響として現れ始めていた。
例えば【擬態】。これまでは岩や木の根など、具体的な「物」に姿を変えるイメージだったが、今は違う。木々の葉が生み出す濃い「影」そのものに、自分の身体を溶け込ませるような感覚があるのだ。実際に試してみると、影の中に擬態したオブシディアンの姿は、以前よりもさらに見つけにくくなっていた。影が揺らめけば、それに合わせてオブシディアンの輪郭も曖昧に揺らぎ、完全に一体化しているかのようだ。これは、隠密行動において大きなアドバンテージとなるだろう。
【疾走】スキルにも変化があった。特に、日陰や夜間など、暗い場所で使用すると、通常時よりも明らかに速度が増す。まるで影の上を滑るように、音もなく、より速く移動できる。これもまた、奇襲や離脱において強力な武器となりそうだ。
(やはり、進化が近いのかもしれない)
オブシディアンは、この変化を肯定的に捉えていた。闇や影といった属性は、自分のプレイスタイル――隠密、奇襲、単独行動――に合っている。問題は、どうすれば進化が完了するのか、ということだ。
レベルアップがトリガーなのか? それならば、さらにモンスターを狩り続ける必要がある。あるいは、特定の種類のモンスターを捕食することが条件なのだろうか? 闇属性を持つモンスター、例えば…まだ見ぬコウモリや、影のような姿をした魔物など。それとも、特定の場所へ行く必要があるのか? この森のどこかに、進化を促すような特別なエリアが存在するのかもしれない。
(情報を集めたいところだが…)
プレイヤーであるオブシディアンにとって、最も手軽な情報源は、ゲーム内の掲示板や情報サイトだろう。しかし、そのためには一度ログアウトするか、あるいはゲーム内で安全にアクセスできる場所を見つける必要がある。魔物である自分にとって、人間の街にあるであろう情報端末を利用するのはリスクが高すぎる。それに、スライムからの進化に関する情報が、サービス開始直後の現時点でどれだけ出回っているかも疑問だ。
(結局、自分で探すしかないか)
オブシディアンは、当面の方針を決めた。まずはレベルアップを目指し、森の奥に生息するモンスターを狩り続ける。その過程で、闇属性を持つモンスターがいれば優先的に捕食し、怪しい場所があれば探索してみる。地道だが、それが今の自分にできる最善策だろう。
オブシディアンは【疾走】を使い、影から影へと渡るように森の中を駆け抜けた。レベル5になり、【疾走】の速度も上がっているため、移動は快適だ。途中、レベル4~5程度のモンスター、例えば巨大な蜘蛛(ウェブ・スパイダー)や、毒を持つ大きなカエル(ポイズン・トード)などに遭遇したが、これらはもはやオブシディアンの敵ではなかった。【硬化】スキルで身体の一部を硬化させて打撃を与え、動きを止めたところを【捕食吸収】する。あるいは、【擬態】で奇襲し、反応される前に吸収を開始する。戦闘パターンも増え、狩りの効率は格段に上がっていた。
『ウェブ・スパイダー Lv.5を捕食しました』
『経験値を20獲得しました』
『スキル【糸生成 Lv.1】を獲得しました』
『ポイズン・トード Lv.4を捕食しました』
『経験値を16獲得しました』
『スキル【毒耐性(微) Lv.1】を獲得しました』
新たなスキルも順調に増えていく。【糸生成】は【木材生成】と同じく生産系スキルか? 粘着性の糸を出せれば、戦闘での足止めにも使えるかもしれない。【毒耐性】は、今後の探索において非常に重要になるだろう。
順調にレベルアップの経験値を稼ぎながら、オブシディアンは森のさらに奥へと進んでいった。すると、不意に森の様相が変わり始めた。これまで鬱蒼と茂っていた木々がまばらになり、視界が開けてくる。そして、前方から人工的な物音が微かに聞こえてきた。馬の蹄の音、車輪の軋む音、そして人の話し声。
(…街道か?)
オブシディアンは即座に近くの茂みに身を隠し、【擬態】で地面の影と同化した。そして、慎重に音のする方向へと近づいていく。
やがて、崖のような地形の端にたどり着いた。そこから下を見下ろすと、土が固められた道が森を切り開くように続いているのが見えた。街道だ。そして、その街道を、数人のプレイヤーらしき人影を乗せた馬車がゆっくりと通り過ぎていくところだった。
あれが、人間たちの活動ルートか。馬車に乗っているプレイヤーたちは、一様に立派な装備を身に着けており、レベルも高そうだ。少なくとも、今の自分が単独で敵う相手ではないだろう。彼らは楽しげに言葉を交わしながら、街道の先、おそらくは街があるであろう方向へと去っていった。
オブシディアンは、彼らの姿が見えなくなるまで、崖の上から静かに見下ろしていた。あの街道の先には、人間の街がある。そこには情報があり、アイテムがあり、様々な施設があるのだろう。しかし、それは自分には縁のない世界だ。魔物である自分が不用意に近づけば、待っているのは敵意と攻撃だけだ。
(今はまだ、関わるべきではない)
オブシディアンは改めてそう思った。情報収集の必要性は感じるが、それはもっと力をつけ、自分の身を守る術を確立してからでも遅くない。今は、この森の中で、自分だけの道を切り開くことに集中しよう。
街道から離れ、再び森の奥深くへと戻ろうとした、その時だった。
『特定の条件を満たしました』
『種族進化の準備が開始されます』
突然、目の前にシステムメッセージが表示された。
(来たか!)
オブシディアンの身体(核?)が、高揚感で脈打つのを感じた。条件は何だったのだろうか? レベルか? 特定のモンスターの捕食数か? それとも、影の中での活動時間か? あるいは、人間たちの活動圏を目の当たりにし、「彼らとは違う道を行く」と決意したことがトリガーになったのか? 今となっては分からない。だが、進化が始まったことは確かだ。
『進化プロセスを開始します。進化中は無防備な状態となります。安全な場所を確保してください』
メッセージに従い、オブシディアンは周囲を見回した。近くに、巨大な岩が折り重なってできた、小さな洞窟のような空間があった。入り口は狭いが、中はある程度の広さがありそうだ。ここにしよう。
オブシディアンは素早くその岩の洞窟に滑り込み、入り口付近で【擬態】を発動。入り口を塞ぐように岩と一体化した。これで、外から見てもただの岩壁にしか見えないだろう。安全は確保されたはずだ。
(進化、開始!)
オブシディアンが心の中で念じると、彼の身体が内側から淡い黒紫色の光を発し始めた。それは【微光】スキルとは違う、もっと深く、揺らめくような光だ。身体が急速に熱を持ち始め、同時に、これまでに捕食してきた様々なモンスターの情報、獲得したスキル、蓄積された経験値が、渾然一体となって混ざり合い、再構築されていくような感覚に襲われる。
痛くはない。むしろ、心地よい浮遊感と万能感に近いものが身体を満たしていく。スライムとしての自分という存在が、一度分解され、より強力な、新たな存在へと生まれ変わっていく。
黒紫色の光は徐々に強まり、オブシディアンの身体はその輪郭を失っていく。もはや、ただの黒いスライムではない。それは流動的な「影」そのもの。実体を持ちながらも、どこか希薄で、掴みどころのない存在へと変貌していく。
『進化プロセス75%完了…』
『スキル【擬態 Lv.1】が【影擬態 Lv.1】に進化します』
『スキル【疾走 Lv.1】が【影走 Lv.1】に進化します』
『スキル【暗視 Lv.1】が強化され、【闇視 Lv.1】となります』
『スキル【硬化 Lv.1】と【物理耐性(微)】が統合され、【影殻 Lv.1】に進化します』
スキルの進化・統合が行われていく。より闇属性に特化し、隠密性と防御力が向上しているようだ。【影殻】は、影のエネルギーで身体を硬化させるスキルだろうか? 期待が高まる。
『進化プロセス100%完了』
『種族進化が完了しました』
『種族が スライム(名無し) から シャドウ・スライム に進化しました』
『称号【影に潜む者】を獲得しました』
光が収まり、オブシディアンは新しい自分の身体を確認する。基本的な形状はスライムのままだが、その質感は大きく異なっていた。色はさらに深い、光を吸い込むような漆黒。身体の輪郭は常にわずかに揺らめいており、まるで実体のある影のようだ。内部の核も、以前の赤みがかった暗い色から、紫色の光を帯びた黒曜石のような輝きに変わっている。
ステータスウィンドウを開くと、能力値が全体的に底上げされていた。特に素早さと魔法防御力の上昇が大きい。そして、種族名が「シャドウ・スライム」に変わり、新たな称号【影に潜む者】が追加されている。称号の効果はまだ不明だが、おそらく隠密性に関わるものだろう。
(これが、シャドウ・スライム…)
オブシディアンは、新たな力を確かめるように、その場で少し動いてみた。動きは滑らかで、以前よりも明らかに軽い。影の中での動きは、さらに俊敏になっているのを感じる。
進化は成功だ。最弱種族スライムから、一歩先の存在へと進むことができた。しかし、これはまだ始まりに過ぎない。シャドウ・スライムも、広大なEROの世界においては、まだ弱小な存在だろう。
オブシディアンは、擬態を解除し、岩の洞窟から外に出た。森の空気は相変わらずだが、それを感じる自分の感覚は、以前とは少し違っている気がした。より鋭敏に、より深く、世界の闇を感じ取れるような。
(もっと強くならなければ)
人間たちへの対抗心ではない。ただ、この世界で自由であるために。誰にも干渉されず、自分の望むままに探索し、捕食し、進化するために。そのためには、圧倒的な力が必要だ。
オブシディアンは、森のさらに奥、未知の領域へと視線を向けた。シャドウ・スライムとしての新たな狩りが、今、始まる。その漆黒の身体は、森の闇へと静かに溶け込んでいった。
名前: オブシディアン
種族: シャドウ・スライム
称号: 影に潜む者
所属: 未定義
【能力値】
体力: 8
魔力容量: 9
物理攻撃力: 2
物理防御力: 6
魔法攻撃力: 1
魔法防御力: 7
素早さ: 5
【スキル】
・捕食 Lv.2
・自己修復 Lv.2
・影擬態 Lv.1
・微光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・影走 Lv.1
・嗅覚強化 Lv.1
・木材生成 Lv.1
・糸生成 Lv.1
・毒耐性(微) Lv.1
・影殻 Lv.1
例えば【擬態】。これまでは岩や木の根など、具体的な「物」に姿を変えるイメージだったが、今は違う。木々の葉が生み出す濃い「影」そのものに、自分の身体を溶け込ませるような感覚があるのだ。実際に試してみると、影の中に擬態したオブシディアンの姿は、以前よりもさらに見つけにくくなっていた。影が揺らめけば、それに合わせてオブシディアンの輪郭も曖昧に揺らぎ、完全に一体化しているかのようだ。これは、隠密行動において大きなアドバンテージとなるだろう。
【疾走】スキルにも変化があった。特に、日陰や夜間など、暗い場所で使用すると、通常時よりも明らかに速度が増す。まるで影の上を滑るように、音もなく、より速く移動できる。これもまた、奇襲や離脱において強力な武器となりそうだ。
(やはり、進化が近いのかもしれない)
オブシディアンは、この変化を肯定的に捉えていた。闇や影といった属性は、自分のプレイスタイル――隠密、奇襲、単独行動――に合っている。問題は、どうすれば進化が完了するのか、ということだ。
レベルアップがトリガーなのか? それならば、さらにモンスターを狩り続ける必要がある。あるいは、特定の種類のモンスターを捕食することが条件なのだろうか? 闇属性を持つモンスター、例えば…まだ見ぬコウモリや、影のような姿をした魔物など。それとも、特定の場所へ行く必要があるのか? この森のどこかに、進化を促すような特別なエリアが存在するのかもしれない。
(情報を集めたいところだが…)
プレイヤーであるオブシディアンにとって、最も手軽な情報源は、ゲーム内の掲示板や情報サイトだろう。しかし、そのためには一度ログアウトするか、あるいはゲーム内で安全にアクセスできる場所を見つける必要がある。魔物である自分にとって、人間の街にあるであろう情報端末を利用するのはリスクが高すぎる。それに、スライムからの進化に関する情報が、サービス開始直後の現時点でどれだけ出回っているかも疑問だ。
(結局、自分で探すしかないか)
オブシディアンは、当面の方針を決めた。まずはレベルアップを目指し、森の奥に生息するモンスターを狩り続ける。その過程で、闇属性を持つモンスターがいれば優先的に捕食し、怪しい場所があれば探索してみる。地道だが、それが今の自分にできる最善策だろう。
オブシディアンは【疾走】を使い、影から影へと渡るように森の中を駆け抜けた。レベル5になり、【疾走】の速度も上がっているため、移動は快適だ。途中、レベル4~5程度のモンスター、例えば巨大な蜘蛛(ウェブ・スパイダー)や、毒を持つ大きなカエル(ポイズン・トード)などに遭遇したが、これらはもはやオブシディアンの敵ではなかった。【硬化】スキルで身体の一部を硬化させて打撃を与え、動きを止めたところを【捕食吸収】する。あるいは、【擬態】で奇襲し、反応される前に吸収を開始する。戦闘パターンも増え、狩りの効率は格段に上がっていた。
『ウェブ・スパイダー Lv.5を捕食しました』
『経験値を20獲得しました』
『スキル【糸生成 Lv.1】を獲得しました』
『ポイズン・トード Lv.4を捕食しました』
『経験値を16獲得しました』
『スキル【毒耐性(微) Lv.1】を獲得しました』
新たなスキルも順調に増えていく。【糸生成】は【木材生成】と同じく生産系スキルか? 粘着性の糸を出せれば、戦闘での足止めにも使えるかもしれない。【毒耐性】は、今後の探索において非常に重要になるだろう。
順調にレベルアップの経験値を稼ぎながら、オブシディアンは森のさらに奥へと進んでいった。すると、不意に森の様相が変わり始めた。これまで鬱蒼と茂っていた木々がまばらになり、視界が開けてくる。そして、前方から人工的な物音が微かに聞こえてきた。馬の蹄の音、車輪の軋む音、そして人の話し声。
(…街道か?)
オブシディアンは即座に近くの茂みに身を隠し、【擬態】で地面の影と同化した。そして、慎重に音のする方向へと近づいていく。
やがて、崖のような地形の端にたどり着いた。そこから下を見下ろすと、土が固められた道が森を切り開くように続いているのが見えた。街道だ。そして、その街道を、数人のプレイヤーらしき人影を乗せた馬車がゆっくりと通り過ぎていくところだった。
あれが、人間たちの活動ルートか。馬車に乗っているプレイヤーたちは、一様に立派な装備を身に着けており、レベルも高そうだ。少なくとも、今の自分が単独で敵う相手ではないだろう。彼らは楽しげに言葉を交わしながら、街道の先、おそらくは街があるであろう方向へと去っていった。
オブシディアンは、彼らの姿が見えなくなるまで、崖の上から静かに見下ろしていた。あの街道の先には、人間の街がある。そこには情報があり、アイテムがあり、様々な施設があるのだろう。しかし、それは自分には縁のない世界だ。魔物である自分が不用意に近づけば、待っているのは敵意と攻撃だけだ。
(今はまだ、関わるべきではない)
オブシディアンは改めてそう思った。情報収集の必要性は感じるが、それはもっと力をつけ、自分の身を守る術を確立してからでも遅くない。今は、この森の中で、自分だけの道を切り開くことに集中しよう。
街道から離れ、再び森の奥深くへと戻ろうとした、その時だった。
『特定の条件を満たしました』
『種族進化の準備が開始されます』
突然、目の前にシステムメッセージが表示された。
(来たか!)
オブシディアンの身体(核?)が、高揚感で脈打つのを感じた。条件は何だったのだろうか? レベルか? 特定のモンスターの捕食数か? それとも、影の中での活動時間か? あるいは、人間たちの活動圏を目の当たりにし、「彼らとは違う道を行く」と決意したことがトリガーになったのか? 今となっては分からない。だが、進化が始まったことは確かだ。
『進化プロセスを開始します。進化中は無防備な状態となります。安全な場所を確保してください』
メッセージに従い、オブシディアンは周囲を見回した。近くに、巨大な岩が折り重なってできた、小さな洞窟のような空間があった。入り口は狭いが、中はある程度の広さがありそうだ。ここにしよう。
オブシディアンは素早くその岩の洞窟に滑り込み、入り口付近で【擬態】を発動。入り口を塞ぐように岩と一体化した。これで、外から見てもただの岩壁にしか見えないだろう。安全は確保されたはずだ。
(進化、開始!)
オブシディアンが心の中で念じると、彼の身体が内側から淡い黒紫色の光を発し始めた。それは【微光】スキルとは違う、もっと深く、揺らめくような光だ。身体が急速に熱を持ち始め、同時に、これまでに捕食してきた様々なモンスターの情報、獲得したスキル、蓄積された経験値が、渾然一体となって混ざり合い、再構築されていくような感覚に襲われる。
痛くはない。むしろ、心地よい浮遊感と万能感に近いものが身体を満たしていく。スライムとしての自分という存在が、一度分解され、より強力な、新たな存在へと生まれ変わっていく。
黒紫色の光は徐々に強まり、オブシディアンの身体はその輪郭を失っていく。もはや、ただの黒いスライムではない。それは流動的な「影」そのもの。実体を持ちながらも、どこか希薄で、掴みどころのない存在へと変貌していく。
『進化プロセス75%完了…』
『スキル【擬態 Lv.1】が【影擬態 Lv.1】に進化します』
『スキル【疾走 Lv.1】が【影走 Lv.1】に進化します』
『スキル【暗視 Lv.1】が強化され、【闇視 Lv.1】となります』
『スキル【硬化 Lv.1】と【物理耐性(微)】が統合され、【影殻 Lv.1】に進化します』
スキルの進化・統合が行われていく。より闇属性に特化し、隠密性と防御力が向上しているようだ。【影殻】は、影のエネルギーで身体を硬化させるスキルだろうか? 期待が高まる。
『進化プロセス100%完了』
『種族進化が完了しました』
『種族が スライム(名無し) から シャドウ・スライム に進化しました』
『称号【影に潜む者】を獲得しました』
光が収まり、オブシディアンは新しい自分の身体を確認する。基本的な形状はスライムのままだが、その質感は大きく異なっていた。色はさらに深い、光を吸い込むような漆黒。身体の輪郭は常にわずかに揺らめいており、まるで実体のある影のようだ。内部の核も、以前の赤みがかった暗い色から、紫色の光を帯びた黒曜石のような輝きに変わっている。
ステータスウィンドウを開くと、能力値が全体的に底上げされていた。特に素早さと魔法防御力の上昇が大きい。そして、種族名が「シャドウ・スライム」に変わり、新たな称号【影に潜む者】が追加されている。称号の効果はまだ不明だが、おそらく隠密性に関わるものだろう。
(これが、シャドウ・スライム…)
オブシディアンは、新たな力を確かめるように、その場で少し動いてみた。動きは滑らかで、以前よりも明らかに軽い。影の中での動きは、さらに俊敏になっているのを感じる。
進化は成功だ。最弱種族スライムから、一歩先の存在へと進むことができた。しかし、これはまだ始まりに過ぎない。シャドウ・スライムも、広大なEROの世界においては、まだ弱小な存在だろう。
オブシディアンは、擬態を解除し、岩の洞窟から外に出た。森の空気は相変わらずだが、それを感じる自分の感覚は、以前とは少し違っている気がした。より鋭敏に、より深く、世界の闇を感じ取れるような。
(もっと強くならなければ)
人間たちへの対抗心ではない。ただ、この世界で自由であるために。誰にも干渉されず、自分の望むままに探索し、捕食し、進化するために。そのためには、圧倒的な力が必要だ。
オブシディアンは、森のさらに奥、未知の領域へと視線を向けた。シャドウ・スライムとしての新たな狩りが、今、始まる。その漆黒の身体は、森の闇へと静かに溶け込んでいった。
名前: オブシディアン
種族: シャドウ・スライム
称号: 影に潜む者
所属: 未定義
【能力値】
体力: 8
魔力容量: 9
物理攻撃力: 2
物理防御力: 6
魔法攻撃力: 1
魔法防御力: 7
素早さ: 5
【スキル】
・捕食 Lv.2
・自己修復 Lv.2
・影擬態 Lv.1
・微光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・影走 Lv.1
・嗅覚強化 Lv.1
・木材生成 Lv.1
・糸生成 Lv.1
・毒耐性(微) Lv.1
・影殻 Lv.1
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