ログインしたら人外でした。 ~VRMMOで最恐の魔物になる~

夏見ナイ

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第八話 影の狩猟術

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シャドウ・スライムへの進化は、オブシディアンの感覚を根底から変えていた。まるで、自分が世界の一部である「影」そのものになったかのような錯覚。これまで以上に周囲の闇が心地よく、そして自分の領域であるかのように感じられる。

【闇視】スキルは、以前の【暗視】よりもさらに鮮明に、暗闇の中の光景を捉えていた。もはやモノクロームの濃淡ではなく、色味こそないものの、物体の輪郭や質感がよりはっきりと認識できる。わずかな光さえあれば、昼間と遜色ないレベルで見通せるだろう。

そして、【影擬態】と【影走】。これらは単なるスキルの進化というよりも、オブシディアンの存在そのものを変質させるほどのインパクトを持っていた。

試しに、【影擬態】で木の根元にある濃い影に溶け込んでみる。以前のスライム形態では、あくまで「影のような色と質感の物体」に変化するだけだったが、今は違う。オブシディアンの身体は、物理的な境界が曖昧になり、文字通り影そのものに溶け込んでいく。注意深く観察しても、そこに何かがいるとは到底思えないだろう。称号【影に潜む者】の効果も相まってか、気配は完全に消失している。

次に【影走】。影の中を移動すると、まるで摩擦抵抗がゼロになったかのように、滑るような加速が得られる。音もなく、黒い軌跡だけを残して高速移動が可能だ。日向に出ると速度は落ちるが、それでも以前の【疾走】よりは速い。これは、戦闘だけでなく、広大なフィールドの移動においても計り知れない恩恵をもたらすだろう。

(素晴らしい…これなら、もっと効率的に狩りができる)

オブシディアンは、新たな力を確かめながら、森のさらに奥へと進む。時刻はゲーム内時間で夕刻に差し掛かり、森は急速に闇を深め始めていた。しかし、シャドウ・スライムとなったオブシディアンにとって、闇は障害ではなく、むしろ味方だった。

【嗅覚強化】スキルが、新たな獣の匂いを捉えた。複数。そして、微かに血の匂いも混じっている。オブシディアンは【影走】で音もなく匂いの元へと接近し、茂みの影から【影擬態】で様子を窺った。

そこにいたのは、漆黒の毛並みを持つ豹(ひょう)のような魔物だった。体長は2メートル近くあり、しなやかで強靭な筋肉を窺わせる。緑色に爛々と光る瞳が、暗闇の中で鋭く動いている。その数は二匹。

『シャドウ・パンサー Lv.7』

レベル7。オールド・トレントよりもさらに上の格上だ。しかも二匹。彼らの足元には、無残に食い散らかされたフォレスト・ウルフの死骸が転がっていた。どうやら、彼らは狩りを終えた直後らしい。

(シャドウ・パンサー…まさしく、今の自分に相応しい獲物だ)

闇に生きる者同士。どちらが真の捕食者か、試してみるのも悪くない。しかも、レベル7のモンスターを二匹も狩れれば、レベルアップも近いだろう。

オブシディアンは、風下に回り込みながら、慎重に距離を詰める。【影擬態】で木の影に完全に同化し、パンサーたちの注意を引かないように細心の注意を払う。二匹のパンサーは、食事を終えて満足したのか、互いにグルグルと喉を鳴らし、リラックスしているように見えた。

(隙あり…!)

オブシディアンは、一匹のパンサーが油断して背中を向けた瞬間を狙った。【影擬態】を解除すると同時に、【影走】で影から影へと飛び移るように急接近。パンサーが反応するよりも速く、その背中に飛び乗った。

「シャアアアッ!?」

突然の奇襲に、パンサーは驚愕の叫び声を上げ、激しく身を捩ってオブシディアンを振り落とそうとする。しかし、オブシディアンは粘着質な身体でしがみつき、即座に【捕食吸収】を開始した。

「グルオオオオッ!」

もう一匹のパンサーが、仲間の危機に気づき、鋭い爪を立ててオブシディアン目掛けて飛びかかってきた。その速度は、フォレスト・ウルフの比ではない。

(【影殻】!)

オブシディアンは、攻撃を受ける寸前に新スキルを発動した。身体の表面が、まるで黒曜石のような硬質感を帯びた影の層で覆われる。

ガキンッ!

鋭い金属音のような音が響き、パンサーの爪が【影殻】によって弾かれた。ダメージはほぼない。物理防御力6に【影殻】の防御ボーナスが加わった結果だろうか、レベル7のパンサーの攻撃すら、容易には通さないようだ。

(硬い! これなら耐えられる!)

オブシディアンは確信する。捕食を続けながらも、【影殻】を維持し、もう一匹のパンサーの猛攻に耐える。爪撃、噛みつき。激しい攻撃がオブシディアンの身体を襲うが、【影殻】はそれを確実に防ぎ続ける。MPは消費するが、捕食による回復もあるため、しばらくは持ちそうだ。

やがて、最初に捕らえたパンサーの抵抗が弱まり、完全に吸収された。

『シャドウ・パンサー Lv.7を捕食しました』
『経験値を40獲得しました』
『レベルが6に上がりました』
『体力+1、魔力容量+2、魔法攻撃力+1、素早さ+1』
『スキル【隠密 Lv.1】を獲得しました』
『称号【影に潜む者】の効果が向上しました』

レベルアップ! そして、新たなスキル【隠密】を獲得。これは【影擬態】とは別に、自身の気配を消す効果があるのだろうか? 称号の効果向上も嬉しい。ステータスも上昇し、HP・MPも全快。状況は完全にオブシディアンに有利となった。

「シャアアア…」

残った一匹のシャドウ・パンサーは、仲間を吸収し、さらにレベルアップまで果たしたオブシディアンを前に、明らかに怯えを見せていた。緑色の瞳が不安げに揺れ、後ずさりしている。

しかし、オブシディアンは逃がすつもりはなかった。

(【影走】!)

黒い影が、再びパンサー目掛けて疾走する。パンサーは恐怖に駆られて逃げ出そうとするが、もはやオブシディアンの速度にはついていけない。あっという間に背後を取られ、オブシディアンの身体が巻き付く。

二度目の捕食。森の深部に、シャドウ・パンサーの最後の悲鳴が吸い込まれていった。

『シャドウ・パンサー Lv.7を捕食しました』
『経験値を40獲得しました』
『スキル【爪撃 Lv.1】を獲得しました』
『素材「シャドウ・パンサーの毛皮(上質)」「俊敏の魔石(小)」を獲得しました』

レベル6になり、新たなスキル【隠密】と【爪撃】を手に入れた。【爪撃】は物理攻撃スキルだろうか? 物理攻撃力が低いオブシディアンにとっては貴重なダメージソースになるかもしれない。そして、素材として「魔石」というアイテムを初めて入手した。これは何に使うのだろうか?

(狩りの効率が、格段に上がった)

オブシディアンは、シャドウ・スライムへの進化と、新たなスキルの獲得による自身の強化を強く実感していた。レベル7のモンスター二匹を、ほとんど危なげなく狩ることができた。これならば、この森の奥深くでも十分にやっていけるだろう。

オブシディアンは、改めて周囲を見渡した。シャドウ・パンサーが生息するようなこのエリアは、もはや「微睡みの森」という名前が似つかわしくないほど、薄暗く、そして危険な雰囲気に満ちている。木々はさらにねじくれ、地面には奇妙な模様を描く苔が光っている。空気も、どこか淀んで重い感じがした。

(そろそろ、この森の境界、あるいは別のエリアに近いのかもしれない)

地図も持たないオブシディアンには、現在地を正確に把握する術はない。しかし、漠然とではあるが、世界の広がりを感じていた。この森を抜けた先には、何があるのだろうか? 新たなフィールドか、あるいは高難易度のダンジョンか。

いずれにせよ、今の自分にはまだ情報が足りなすぎる。狩りを続けながらも、どこかで情報を得る手段を探さなければならないだろう。人間の街に近づくのは危険だが、例えば、他の魔物プレイヤーと接触できれば、何か分かるかもしれない。あるいは、特定のモンスターが、何か情報を持っている可能性は…?

思考を巡らせながら、オブシディアンは再び移動を開始した。レベル6となり、さらに深化した影の力を纏った黒曜石のスライムは、未知なる領域を目指して、音もなく闇の中を進んでいく。その孤独な旅路は、まだ先が見えない。

名前: オブシディアン
種族: シャドウ・スライム
称号: 影に潜む者 (効果向上)
所属: 未定義

【能力値】
体力: 9
魔力容量: 11
物理攻撃力: 2
物理防御力: 6
魔法攻撃力: 2
魔法防御力: 7
素早さ: 6

【スキル】
・捕食 Lv.2
・自己修復 Lv.2
・影擬態 Lv.1
・微光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・影走 Lv.1
・嗅覚強化 Lv.1
・木材生成 Lv.1
・糸生成 Lv.1
・毒耐性(微) Lv.1
・影殻 Lv.1
・隠密 Lv.1
・爪撃 Lv.1
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