ログインしたら人外でした。 ~VRMMOで最恐の魔物になる~

夏見ナイ

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第九話 始まりの街への遠望

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レベル6となり、シャドウ・パンサーをも単独で狩れるようになったオブシディアンは、自身の成長に確かな手応えを感じていた。しかし、それは同時に、この『Elysian Realms Online』という世界の広大さと、その深淵を垣間見たに過ぎないという自覚も促していた。より強くならなければ、この先へは進めない。

オブシディアンは、まず新たに獲得したスキルを試してみることにした。【隠密 Lv.1】。スキルを発動すると、自身の気配が希薄になっていくのを感じる。これは【影擬態】のように姿を消すのではなく、存在感そのものを薄める効果のようだ。試しに【隠密】を発動したまま【影走】で移動してみる。これならば、擬態できないような開けた場所でも、敵に発見されるリスクを減らせるかもしれない。移動速度にペナルティはないようだ。

次に【爪撃 Lv.1】。オブシディアンは近くの木の幹に向かってスキルを発動した。身体の一部が鋭い爪のような形状に変化し、高速で振り下ろされる。

ガシュッ!

硬い木の幹に、数本の深い傷跡が刻まれた。威力は、物理攻撃力2の通常打撃よりも明らかに高い。MP消費はわずかにあるが、これは貴重な攻撃手段となりそうだ。特に、【影殻】で防御を固めながら、【爪撃】で反撃するという戦術も可能になるかもしれない。

新たな力を確認したオブシディアンは、再び森の奥へと進み始めた。【隠密】スキルを常に発動させ、気配を消しながら【影走】で影から影へと渡る。狩りの効率はさらに向上した。

遭遇したのは、体長3メートルはあろうかという巨大な毒蛇『フォレスト・サーペント Lv.7』。鎌のような前足を持ち、高速で飛行する昆虫型モンスター『サイズ・マンティス Lv.6』など、これまでの相手とは一線を画す強敵たちだ。

しかし、オブシディアンは冷静に対処した。フォレスト・サーペントに対しては、【毒耐性(微)】があるため多少の毒霧は恐れない。【影走】で素早く懐に潜り込み、【影殻】で防御を固めつつ、【爪撃】と【捕食吸収】を併用してダメージを与え続ける。巨体に苦戦はしたが、最終的には吸収に成功した。

サイズ・マンティスは厄介だった。飛行能力を持つため、【跳躍】や地形を利用しても捕まえにくい。オブシディアンは【糸生成】スキルを応用し、粘着性の糸を飛ばして動きを鈍らせることを試みた。数度の失敗の後、ようやく糸がマンティスの翅(はね)に絡みつき、地面に墜落させることに成功。落下したところを【影擬態】からの奇襲で仕留めた。

『フォレスト・サーペント Lv.7を捕食しました』
『経験値を45獲得しました』
『スキル【毒液噴射 Lv.1】を獲得しました』
『スキル【毒耐性(微)】が【毒耐性(小)】に進化しました』

『サイズ・マンティス Lv.6を捕食しました』
『経験値を35獲得しました』
『スキル【飛行 Lv.1】を…獲得に失敗しました。種族的な制約により、スキル効果を完全に再現できません』
『スキル【斬撃耐性(微) Lv.1】を獲得しました』

毒系のスキルが増え、耐性も向上した。飛行スキルは獲得できなかったが、これは仕方ないだろう。スライムには翼がない。しかし、斬撃耐性は嬉しい。これで物理防御面はさらに強化された。レベルアップにはまだ経験値が必要だが、順調に蓄積されている。

狩りを続けながら森を進むうちに、オブシディアンは周囲の風景に違和感を覚え始めた。木々の種類や密度が変わっただけでなく、地面に不自然な凹凸や、苔むした石材のようなものが見られるようになったのだ。それはまるで、かつてここに何らかの人工的な構造物があった痕跡のように見えた。

さらに進むと、その確信は強まった。崩れた石壁、半分土に埋もれたアーチ状の門の残骸、そして、等間隔に並んでいたであろう石畳の道。明らかに、ここは古代の遺跡か、あるいは放棄された集落の跡地のようだ。

(こんな森の奥深くに、遺跡…?)

何故、このような場所に? かつてはここまで森が広がっていなかったのか、それとも、この遺跡自体が森と共生するような特別なものだったのか。オブシディアンの探求心が刺激される。

石畳の道を辿って進むと、道は緩やかな上り坂になり、やがて視界が開けた。そこは小高い丘の上になっており、森の木々が途切れ、遠くまで見渡せる場所だった。そして、オブシディアンはその光景に息を呑んだ(ような感覚を覚えた)。

丘の下、森が途切れた先には、広大な平野が広がっていた。そして、その平野の中央には、巨大な城壁に囲まれた街が見えたのだ。石造りの建物が密集し、高い塔がいくつも空に向かって伸びている。街の周囲には農地が広がり、街道が街へと向かって伸びているのが見える。間違いなく、人間たちの拠点だ。

(あれが…おそらく「始まりの街」か)

事前情報で得ていた、人間プレイヤーたちのスタート地点となる最大の街。活気があり、多くのプレイヤーやNPCで賑わっているという。あそこに行けば、多くの情報やアイテム、クエストが得られるのだろう。

しかし、オブシディアンは強い警戒心を抱いた。あの街は、自分のような魔物プレイヤーにとっては、敵地の真っ只中だ。城壁には見張りの兵士がいるだろうし、街中にはレベルの高いプレイヤーや衛兵が溢れているはずだ。【影擬態】や【隠密】を使っても、突破するのは容易ではないだろう。見つかれば、即座に集中攻撃を受けて消滅させられるのが関の山だ。

(今は、まだ近づくべきではない…)

オブシディアンは、街への興味を抑え込み、静かにその場を離れた。今は力を蓄える時だ。いつか、あの街にさえ堂々と(あるいは誰にも気づかれずに)侵入できるほどの力を手に入れた時、改めて訪れればいい。

再び遺跡のエリアに戻り、オブシディアンは今後の行動を考える。街には近づかない。となれば、選択肢は二つ。この遺跡エリアをさらに探索するか、あるいは、もっとレベルの高いモンスターが生息するであろう、新たなエリアを探すか。

遺跡には、何か秘密が隠されているかもしれない。古代のアイテムや、特殊なモンスター、あるいは隠しクエスト。探索する価値はありそうだ。一方で、新たなエリアに進めば、より強力なスキルや高い経験値を得られる可能性がある。

(まずは、この遺跡をもう少し調べてみよう)

オブシディアンは決めた。この遺跡には、何か惹かれるものを感じる。それに、ここならば人間プレイヤーに遭遇するリスクも低いだろう。

オブシディアンは、崩れた石壁や建物の残骸が点在するエリアへと足を踏み入れた。石材には奇妙な文様が刻まれており、どこか神聖な、あるいは古代文明的な雰囲気を漂わせている。地面には、時折、割れた陶器の破片や、錆びついた金属片のようなものも落ちている。

【闇視】で周囲を注意深く観察しながら進むと、ひときわ大きな建物の残骸があった。かつては神殿か何かだったのかもしれない。壁の大部分は崩れ落ちているが、奥には祭壇のような石の台座が残っている。

オブシディアンがその祭壇に近づいた、その時だった。

ゴゴゴゴ…

祭壇の周囲の地面が震え、石畳が持ち上がり始めた。そして、石畳や瓦礫が集まり、人型のような形を形成していく。それは、石でできたゴーレムだった。しかし、ただのゴーレムではない。その身体の所々には、遺跡の石材と同じ奇妙な文様が青白い光を放っており、目にあたる部分には空虚な穴が開いているだけだ。

『エンシェント・ガーディアン Lv.8』

レベル8。遺跡を守護する存在か。その巨体と、魔法的なオーラを放つ姿は、これまでのどのモンスターよりも強大なプレッシャーを放っていた。オブシディアンの行く手を阻むように、ガーディアンはゆっくりと、しかし確実に動き出した。

(遺跡の守護者…面白い。相手にとって不足はない)

シャドウ・スライムとなったオブシディアンの新たな力が、この古代の番人にどこまで通用するのか。黒曜石の影は、静かに戦闘態勢に入った。遺跡の奥深くで、古代の守護者と影の捕食者の戦いが始まろうとしていた。

名前: オブシディアン
種族: シャドウ・スライム
称号: 影に潜む者 (効果向上)
所属: 未定義

【能力値】
体力: 9
魔力容量: 11
物理攻撃力: 2
物理防御力: 6
魔法攻撃力: 2
魔法防御力: 7
素早さ: 6

【スキル】
・捕食 Lv.2
・自己修復 Lv.2
・影擬態 Lv.1
・微光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・影走 Lv.1
・嗅覚強化 Lv.1
・木材生成 Lv.1
・糸生成 Lv.1
・毒耐性(小) Lv.1
・影殻 Lv.1
・隠密 Lv.1
・爪撃 Lv.1
・毒液噴射 Lv.1
・斬撃耐性(微) Lv.1
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