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第十七話 血錆の大地、影の舞踏
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古戦場跡は、オブシディアンがこれまで探索してきたどのエリアとも異質な空気を放っていた。赤黒い大地を踏みしめるたびに、足元に転がる錆びた金属片がカランと音を立てる。風に乗って運ばれてくるのは、血と鉄の匂い、そして、消えることのない怨念のような重苦しい魔力の気配。空は低く垂れ込め、太陽の光すら弱々しく感じられた。
(ここは…想像以上に濃いな)
オブシディアンは【隠密】スキルを維持し、【闇視】で周囲を警戒しながら進む。【魔力変換炉】は常に稼働させ、MPを回復し続けている。この不気味な土地では、いつ何が起きてもおかしくない。
最初に遭遇したモンスターは、大地から這い出てきたかのような、泥と血で汚れた鎧を纏った亡霊だった。手に持つのは、刃こぼれした巨大な斧。
『ウォーデッド・ナイトメア Lv.9』
遺跡にいたボーン・ソルジャーの上位種か、あるいはこの古戦場特有のアンデッドか。レベルはオブシディアンと同じ9。その眼窩からは、ボーン・ソルジャーの赤い光とは違う、怨念に満ちた青黒い炎が揺らめいていた。
「グ……ォ……」
ナイトメアは、オブシディアンの【隠密】を見破ったのか、低い唸り声を上げながら、巨大な斧を振りかぶって突進してきた。その動きは鈍重だが、一撃の威力は高そうだ。
(アンデッド耐性はあるが、油断は禁物)
オブシディアンは【影走】で攻撃を回避しつつ、相手の側面へと回り込む。そして、【爪撃】をナイトメアの鎧の隙間、関節部分と思しき箇所に叩き込んだ。
ガキン! ズブリ!
硬い感触と共に、手応えがあった。鎧で覆われていない部分には、物理攻撃も有効らしい。ナイトメアは苦痛の声を上げ、体勢を崩す。オブシディアンはその隙を逃さず、【捕食吸収 Lv.1】を発動。ナイトメアの脚部に絡みつき、エネルギーを吸収し始めた。
「グオオオオッ!」
ナイトメアは斧を振り回して抵抗するが、オブシディアンは素早く吸収部位を移動させながら攻撃をかわし、着実に相手の力を奪っていく。【捕食吸収】の回復効果のおかげで、多少の攻撃を受けても問題ない。やがて、ナイトメアは動きを止め、青黒い炎も消え失せ、ただの汚れた鎧と骨の塊となって崩れ落ちた。
『ウォーデッド・ナイトメア Lv.9を捕食しました』
『経験値を70獲得しました』
『スキル【怨念耐性(微) Lv.1】を獲得しました』
『素材「呪われた鉄鎧の破片」「怨念の結晶(小)」を獲得しました』
新たな耐性スキルを獲得。この古戦場跡では特に役立ちそうだ。レベルアップにはまだ経験値が必要だが、一体あたりの経験値は遺跡のモンスターよりも多い。ここは確かに、格好の狩り場となりそうだ。
オブシディアンは、その後も古戦場跡を探索し、いくつかのモンスターと戦闘を繰り返した。地面から無数の骨の手が伸びてくるトラップのようなモンスター『ボーン・グラップラー Lv.8』、戦死した兵士たちの怨念が集まってできた不定形の集合体『レムナント・マス Lv.9』など、一癖も二癖もある敵ばかりだったが、オブシディアンは【影擬態】による奇襲、【死霊魔術】による陽動、【石材操作】による妨害などを駆使し、着実に狩りを進めていった。
レベルも10に上がり、ステータスもさらに向上した。
『レベルが10に上がりました』
『体力+1、魔力容量+2、物理攻撃力+1、魔法防御力+1、素早さ+1』
『スキル【影走】がLv.2に上がりました』
『スキル【隠密】がLv.2に上がりました』
【影走 Lv.2】は、移動速度がさらに向上し、影の中での機動性が増した。【隠密 Lv.2】は、気配遮断の効果がさらに高まり、より高レベルの相手にも気づかれにくくなったようだ。
順調に力を蓄え、古戦場跡の環境にも慣れてきた頃、オブシディアンはついに、他のプレイヤーの気配を捉えた。それも、複数。5人のパーティのようだ。彼らはオブシディアンの存在にはまだ気づいていない様子で、何か目標を探して移動しているように見える。
(来たか…)
オブシディアンは、近くにあった巨大な盾の残骸の影に【影擬態 Lv.2】で完全に同化した。レベルが上がった【影擬態】は、もはや影そのものと見分けがつかない。
やがて、5人のプレイヤーがオブシディアンの潜む場所の近くを通りかかった。
「おい、この辺のはずだろ? 例の黒いスライムが出たって情報は」
重装備のタンクらしき男が、周囲を見回しながら言った。リーダー格のようだ。
「ええ、間違いないはずです。掲示板の情報だと、かなり素早くて、擬態も使うとか…」
回復役と思われるプリースト風の女が、少し不安げに答える。
「ふん、スライムごときに手こずるなんて、前の奴らがヘボいだけだろ。見つけ次第、俺の炎で焼き尽くしてやるぜ!」
派手なローブを着た魔法使い風の男が、自信満々に言い放つ。
「油断は禁物だ。魔物プレイヤーは、通常のモンスターとは動きが違う。連携をしっかり取って、囲んで叩くぞ」
斥候役らしき、弓を持った軽装の男が冷静に指示を出す。
もう一人は、二刀流の剣士らしき男で、無言で周囲を警戒している。
彼らは、明らかにオブシディアンを探している。「黒いスライム」の噂を聞きつけ、討伐に来たパーティのようだ。レベルは、見た目の装備から判断するに、おそらく10~12程度だろう。今のオブシディアンとほぼ互角か、少し上といったところか。
(逃げる必要はない。むしろ、試させてもらうか)
オブシディアンは戦闘を決意した。フィールドボスを単独で倒し、レベルも10になった今、自分の力がどこまで通用するのか。そして、プレイヤーを「捕食」した場合、何が得られるのか。試してみる絶好の機会だ。
オブシディアンは、擬態したまま彼らが少し通り過ぎるのを待った。そして、最後尾を歩くプリーストの女に狙いを定める。回復役を先に潰すのが定石だ。
(【隠密 Lv.2】、最大…)
オブシディアンは気配を完全に消し去り、【影擬態】を解除すると同時に、【影走 Lv.2】で音もなく地面の影を滑るように接近した。
「え…?」
プリーストの女が、背後に迫る異様な気配に気づいて振り返った瞬間、オブシディアンの【爪撃】がその胸元を深々と切り裂いた。
「キャアアアッ!?」
悲鳴と共に、プリーストのHPゲージが半分以上削れる。さらにオブシディアンは、続けざまに【毒液噴射】を至近距離から浴びせかけた。緑色の毒液がローブを溶かし、肌を焼く。
「なっ!? 後ろ!」
「ヒール! 急げ!」
タンクと弓使いが叫ぶが、遅い。プリーストは毒による持続ダメージと出血(のようなエフェクト)で行動不能に陥り、その場に崩れ落ちた。
(まず一人!)
オブシディアンは、倒れたプリーストに構わず、次のターゲット、魔法使いの男へと向かう。【影走】で距離を詰めながら、【石材操作】で足元の瓦礫を蹴り上げ、相手の詠唱を妨害する。
「くそっ、邪魔すんじゃねえ!」
魔法使いは杖を振り、爆炎系の魔法を放ってきた。オブシディアンは【影護】で防御しつつ、爆風を利用して【跳躍】。魔法使いの頭上を取り、着地と同時に【捕食吸収】を発動した。
「うわあああっ!? なんだこれ、離せ!」
魔法使いはパニックに陥り、杖を振り回すが、オブシディアンの粘着質な身体からは逃れられない。オブシディアンは構わずエネルギーを吸収し続ける。
その間にも、タンク、弓使い、二刀流剣士の三人がオブシディアン目掛けて攻撃を仕掛けてくる。タンクの重い一撃、弓使いの精密な射撃、二刀流剣士の素早い連撃。
(さすがに三人はキツいか…!)
オブシディアンは【影護】で攻撃を受け止めながらも、HPが徐々に削られていくのを感じる。魔法使いの吸収を一時中断し、距離を取ろうとするが、三人の連携によって囲まれつつあった。
(ならば…【死霊魔術(初級)】!)
オブシディアンはスキルを発動。足元の影から、ウォーデッド・ナイトメアの骨格に似た、大型のボーン・ナイト(召喚)Lv.3を一体召喚した。
「グルォ!」
召喚されたボーン・ナイトは、オブシディアンの指示に従い、タンクと二刀流剣士に襲いかかる。その巨体とリーチの長さで、二人の足止めには十分だ。
「アンデッド召喚!? こいつ、やっぱり普通の魔物じゃねえ!」
弓使いが驚きの声を上げながら、ボーン・ナイトに矢を放つが、骨にはあまり効果がない。オブシディアンはその隙を突き、再び魔法使いに【捕食吸収】を仕掛けた。今度こそ抵抗する間もなく、魔法使いはエネルギーを吸い尽くされ、光の粒子となって消滅した。
『プレイヤー「FlameMage」を捕食しました』
『経験値を80獲得しました』
『スキル【火炎魔法(初級) Lv.1】を…獲得に失敗しました。適性が不足しています』
『微量の「火炎魔法の知識」を獲得しました』
『素材「燃え滓の魔石(小)」を獲得しました』
(プレイヤーを捕食しても、経験値と素材は手に入るのか! スキル獲得は難しいようだが…知識は得られる!)
これは大きな発見だ。プレイヤーを狩るメリットは十分にある。
残るは三人。ボーン・ナイトがタンクと二刀流剣士を抑えている間に、オブシディアンは弓使いへと向かう。【影走】で矢を掻い潜り、一気に距離を詰める。
「くっ…!」
弓使いは接近戦に持ち込まれて不利と悟り、煙幕のようなものを撒いて後退しようとする。しかし、オブシディアンの【嗅覚強化】と【闇視】の前には、煙幕など意味をなさない。オブシディアンは煙幕の中を正確に追跡し、【糸生成】で相手の動きを封じると、【爪撃】でHPを削り、【捕食吸収】で止めを刺した。
『プレイヤー「ArrowEye」を捕食しました』
『経験値を75獲得しました』
『スキル【精密射撃 Lv.1】を…獲得に失敗しました』
『微量の「弓術の知識」を獲得しました』
『素材「折れた矢羽根」を獲得しました』
これで残るはタンクと二刀流剣士。ボーン・ナイトは二人の猛攻を受けて破壊されかけていたが、十分に時間を稼いでくれた。
オブシディアンは、二人に同時に向き合う。タンクは盾を構えて防御を固め、二刀流剣士は鋭い眼光で隙を窺っている。
(正攻法では時間がかかる…ならば!)
オブシディアンは【影擬態 Lv.2】を発動。目標は、ウォーデッド・ナイトメア。泥と血に汚れた巨大な亡霊騎士の姿へと変貌する。
「なっ…姿を変えた!?」
「ゴーレムじゃねえ…アンデッドか!?」
二人が驚愕する中、オブシディアン(ナイトメア擬態)は、擬態によって得た膂力(りょりょく)で巨大な盾(のように変化させた身体の一部)を構え、タンク目掛けて突進した。
ドゴォン!
タンクは盾で受け止めるが、その衝撃に体勢を崩す。そこへ、オブシディアンは擬態したまま【爪撃】(のような物理攻撃)を繰り出した。
「ぐっ…!」
タンクのHPが大きく削れる。二刀流剣士が横から斬りかかってくるが、オブシディアンは【影護】(擬態状態でも発動可能)で防御しつつ、擬態を解除。元のシャドウ・スライムの姿に戻り、素早い動きで二刀流剣士に【毒液噴射】を浴びせかけた。
「うわっ!」
毒ダメージと視界不良に陥った二刀流剣士に、オブシディアンは【捕食吸収】を仕掛ける。タンクが助けに入ろうとするが、オブシディアンは【石材操作】で足元の地面を隆起させ、妨害する。
二刀流剣士を吸収し終え、残るはタンク一人。もはや勝敗は決していた。オブシディアンは、消耗しているタンクを【爪撃】と【捕食吸収】で嬲るように攻撃し、最後は完全に吸収して戦闘を終結させた。
『プレイヤー「SteelWall」を捕食しました』
『経験値を90獲得しました』
『スキル【挑発 Lv.1】を…獲得に失敗しました』
『微量の「防御技術の知識」を獲得しました』
『素材「砕けた盾の欠片」を獲得しました』
『プレイヤー「DualBlade」を捕食しました』
『経験値を85獲得しました』
『スキル【二刀流 Lv.1】を…獲得に失敗しました』
『微量の「剣術の知識」を獲得しました』
『素材「折れた刀身」を獲得しました』
レベル10の5人パーティを、単独で壊滅させた。大きな達成感と共に、オブシディアンは自身の成長を改めて実感した。シャドウ・スライムへの進化、遺跡での強化、そしてレベルアップ。それらが複合的に作用し、今の自分がある。
(プレイヤーの装備品は、そのままでは吸収できないか。だが、知識の断片は得られる…これも積み重ねれば、大きな力になるかもしれない)
オブシディアンは、戦闘跡地に散らばる光の粒子(プレイヤーが消滅した痕跡)を見つめながら、静かに思考する。この古戦場跡は、危険であると同時に、大きな成長の機会を与えてくれる場所だ。
噂はさらに広まるだろう。「黒いスライムにパーティが壊滅させられた」と。それでいい。恐怖と共に、その名を刻みつけてやる。
オブシディアンは、戦闘で得た経験値と知識を糧に、再び古戦場跡の奥深くへと進み始めた。血錆の大地に舞う黒い影は、更なる獲物と進化を求めて、孤独な探索を続ける。
名前: オブシディアン
種族: シャドウ・スライム
称号: 影に潜む者 (効果向上), 墓守殺し, 源泉に触れし者
所属: 未定義
【能力値】
体力: 16
魔力容量: 19
物理攻撃力: 3
物理防御力: 8
魔法攻撃力: 6
魔法防御力: 16
素早さ: 10
【スキル】
・捕食吸収 Lv.1
・影擬態 Lv.2
・微光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・影走 Lv.2
・嗅覚強化 Lv.1
・木材生成 Lv.1
・糸生成 Lv.1
・毒耐性(小) Lv.1
・影護 Lv.1
・隠密 Lv.2
・爪撃 Lv.1
・毒液噴射 Lv.1
・斬撃耐性(微) Lv.1
・石材操作(微) Lv.1
・アンデッド耐性(微) Lv.1
・死霊魔術(初級) Lv.1
・精神耐性(小) Lv.1
・炎耐性(微) Lv.1
・怨念耐性(微) Lv.1
・魔力変換炉 Lv.1
(ここは…想像以上に濃いな)
オブシディアンは【隠密】スキルを維持し、【闇視】で周囲を警戒しながら進む。【魔力変換炉】は常に稼働させ、MPを回復し続けている。この不気味な土地では、いつ何が起きてもおかしくない。
最初に遭遇したモンスターは、大地から這い出てきたかのような、泥と血で汚れた鎧を纏った亡霊だった。手に持つのは、刃こぼれした巨大な斧。
『ウォーデッド・ナイトメア Lv.9』
遺跡にいたボーン・ソルジャーの上位種か、あるいはこの古戦場特有のアンデッドか。レベルはオブシディアンと同じ9。その眼窩からは、ボーン・ソルジャーの赤い光とは違う、怨念に満ちた青黒い炎が揺らめいていた。
「グ……ォ……」
ナイトメアは、オブシディアンの【隠密】を見破ったのか、低い唸り声を上げながら、巨大な斧を振りかぶって突進してきた。その動きは鈍重だが、一撃の威力は高そうだ。
(アンデッド耐性はあるが、油断は禁物)
オブシディアンは【影走】で攻撃を回避しつつ、相手の側面へと回り込む。そして、【爪撃】をナイトメアの鎧の隙間、関節部分と思しき箇所に叩き込んだ。
ガキン! ズブリ!
硬い感触と共に、手応えがあった。鎧で覆われていない部分には、物理攻撃も有効らしい。ナイトメアは苦痛の声を上げ、体勢を崩す。オブシディアンはその隙を逃さず、【捕食吸収 Lv.1】を発動。ナイトメアの脚部に絡みつき、エネルギーを吸収し始めた。
「グオオオオッ!」
ナイトメアは斧を振り回して抵抗するが、オブシディアンは素早く吸収部位を移動させながら攻撃をかわし、着実に相手の力を奪っていく。【捕食吸収】の回復効果のおかげで、多少の攻撃を受けても問題ない。やがて、ナイトメアは動きを止め、青黒い炎も消え失せ、ただの汚れた鎧と骨の塊となって崩れ落ちた。
『ウォーデッド・ナイトメア Lv.9を捕食しました』
『経験値を70獲得しました』
『スキル【怨念耐性(微) Lv.1】を獲得しました』
『素材「呪われた鉄鎧の破片」「怨念の結晶(小)」を獲得しました』
新たな耐性スキルを獲得。この古戦場跡では特に役立ちそうだ。レベルアップにはまだ経験値が必要だが、一体あたりの経験値は遺跡のモンスターよりも多い。ここは確かに、格好の狩り場となりそうだ。
オブシディアンは、その後も古戦場跡を探索し、いくつかのモンスターと戦闘を繰り返した。地面から無数の骨の手が伸びてくるトラップのようなモンスター『ボーン・グラップラー Lv.8』、戦死した兵士たちの怨念が集まってできた不定形の集合体『レムナント・マス Lv.9』など、一癖も二癖もある敵ばかりだったが、オブシディアンは【影擬態】による奇襲、【死霊魔術】による陽動、【石材操作】による妨害などを駆使し、着実に狩りを進めていった。
レベルも10に上がり、ステータスもさらに向上した。
『レベルが10に上がりました』
『体力+1、魔力容量+2、物理攻撃力+1、魔法防御力+1、素早さ+1』
『スキル【影走】がLv.2に上がりました』
『スキル【隠密】がLv.2に上がりました』
【影走 Lv.2】は、移動速度がさらに向上し、影の中での機動性が増した。【隠密 Lv.2】は、気配遮断の効果がさらに高まり、より高レベルの相手にも気づかれにくくなったようだ。
順調に力を蓄え、古戦場跡の環境にも慣れてきた頃、オブシディアンはついに、他のプレイヤーの気配を捉えた。それも、複数。5人のパーティのようだ。彼らはオブシディアンの存在にはまだ気づいていない様子で、何か目標を探して移動しているように見える。
(来たか…)
オブシディアンは、近くにあった巨大な盾の残骸の影に【影擬態 Lv.2】で完全に同化した。レベルが上がった【影擬態】は、もはや影そのものと見分けがつかない。
やがて、5人のプレイヤーがオブシディアンの潜む場所の近くを通りかかった。
「おい、この辺のはずだろ? 例の黒いスライムが出たって情報は」
重装備のタンクらしき男が、周囲を見回しながら言った。リーダー格のようだ。
「ええ、間違いないはずです。掲示板の情報だと、かなり素早くて、擬態も使うとか…」
回復役と思われるプリースト風の女が、少し不安げに答える。
「ふん、スライムごときに手こずるなんて、前の奴らがヘボいだけだろ。見つけ次第、俺の炎で焼き尽くしてやるぜ!」
派手なローブを着た魔法使い風の男が、自信満々に言い放つ。
「油断は禁物だ。魔物プレイヤーは、通常のモンスターとは動きが違う。連携をしっかり取って、囲んで叩くぞ」
斥候役らしき、弓を持った軽装の男が冷静に指示を出す。
もう一人は、二刀流の剣士らしき男で、無言で周囲を警戒している。
彼らは、明らかにオブシディアンを探している。「黒いスライム」の噂を聞きつけ、討伐に来たパーティのようだ。レベルは、見た目の装備から判断するに、おそらく10~12程度だろう。今のオブシディアンとほぼ互角か、少し上といったところか。
(逃げる必要はない。むしろ、試させてもらうか)
オブシディアンは戦闘を決意した。フィールドボスを単独で倒し、レベルも10になった今、自分の力がどこまで通用するのか。そして、プレイヤーを「捕食」した場合、何が得られるのか。試してみる絶好の機会だ。
オブシディアンは、擬態したまま彼らが少し通り過ぎるのを待った。そして、最後尾を歩くプリーストの女に狙いを定める。回復役を先に潰すのが定石だ。
(【隠密 Lv.2】、最大…)
オブシディアンは気配を完全に消し去り、【影擬態】を解除すると同時に、【影走 Lv.2】で音もなく地面の影を滑るように接近した。
「え…?」
プリーストの女が、背後に迫る異様な気配に気づいて振り返った瞬間、オブシディアンの【爪撃】がその胸元を深々と切り裂いた。
「キャアアアッ!?」
悲鳴と共に、プリーストのHPゲージが半分以上削れる。さらにオブシディアンは、続けざまに【毒液噴射】を至近距離から浴びせかけた。緑色の毒液がローブを溶かし、肌を焼く。
「なっ!? 後ろ!」
「ヒール! 急げ!」
タンクと弓使いが叫ぶが、遅い。プリーストは毒による持続ダメージと出血(のようなエフェクト)で行動不能に陥り、その場に崩れ落ちた。
(まず一人!)
オブシディアンは、倒れたプリーストに構わず、次のターゲット、魔法使いの男へと向かう。【影走】で距離を詰めながら、【石材操作】で足元の瓦礫を蹴り上げ、相手の詠唱を妨害する。
「くそっ、邪魔すんじゃねえ!」
魔法使いは杖を振り、爆炎系の魔法を放ってきた。オブシディアンは【影護】で防御しつつ、爆風を利用して【跳躍】。魔法使いの頭上を取り、着地と同時に【捕食吸収】を発動した。
「うわあああっ!? なんだこれ、離せ!」
魔法使いはパニックに陥り、杖を振り回すが、オブシディアンの粘着質な身体からは逃れられない。オブシディアンは構わずエネルギーを吸収し続ける。
その間にも、タンク、弓使い、二刀流剣士の三人がオブシディアン目掛けて攻撃を仕掛けてくる。タンクの重い一撃、弓使いの精密な射撃、二刀流剣士の素早い連撃。
(さすがに三人はキツいか…!)
オブシディアンは【影護】で攻撃を受け止めながらも、HPが徐々に削られていくのを感じる。魔法使いの吸収を一時中断し、距離を取ろうとするが、三人の連携によって囲まれつつあった。
(ならば…【死霊魔術(初級)】!)
オブシディアンはスキルを発動。足元の影から、ウォーデッド・ナイトメアの骨格に似た、大型のボーン・ナイト(召喚)Lv.3を一体召喚した。
「グルォ!」
召喚されたボーン・ナイトは、オブシディアンの指示に従い、タンクと二刀流剣士に襲いかかる。その巨体とリーチの長さで、二人の足止めには十分だ。
「アンデッド召喚!? こいつ、やっぱり普通の魔物じゃねえ!」
弓使いが驚きの声を上げながら、ボーン・ナイトに矢を放つが、骨にはあまり効果がない。オブシディアンはその隙を突き、再び魔法使いに【捕食吸収】を仕掛けた。今度こそ抵抗する間もなく、魔法使いはエネルギーを吸い尽くされ、光の粒子となって消滅した。
『プレイヤー「FlameMage」を捕食しました』
『経験値を80獲得しました』
『スキル【火炎魔法(初級) Lv.1】を…獲得に失敗しました。適性が不足しています』
『微量の「火炎魔法の知識」を獲得しました』
『素材「燃え滓の魔石(小)」を獲得しました』
(プレイヤーを捕食しても、経験値と素材は手に入るのか! スキル獲得は難しいようだが…知識は得られる!)
これは大きな発見だ。プレイヤーを狩るメリットは十分にある。
残るは三人。ボーン・ナイトがタンクと二刀流剣士を抑えている間に、オブシディアンは弓使いへと向かう。【影走】で矢を掻い潜り、一気に距離を詰める。
「くっ…!」
弓使いは接近戦に持ち込まれて不利と悟り、煙幕のようなものを撒いて後退しようとする。しかし、オブシディアンの【嗅覚強化】と【闇視】の前には、煙幕など意味をなさない。オブシディアンは煙幕の中を正確に追跡し、【糸生成】で相手の動きを封じると、【爪撃】でHPを削り、【捕食吸収】で止めを刺した。
『プレイヤー「ArrowEye」を捕食しました』
『経験値を75獲得しました』
『スキル【精密射撃 Lv.1】を…獲得に失敗しました』
『微量の「弓術の知識」を獲得しました』
『素材「折れた矢羽根」を獲得しました』
これで残るはタンクと二刀流剣士。ボーン・ナイトは二人の猛攻を受けて破壊されかけていたが、十分に時間を稼いでくれた。
オブシディアンは、二人に同時に向き合う。タンクは盾を構えて防御を固め、二刀流剣士は鋭い眼光で隙を窺っている。
(正攻法では時間がかかる…ならば!)
オブシディアンは【影擬態 Lv.2】を発動。目標は、ウォーデッド・ナイトメア。泥と血に汚れた巨大な亡霊騎士の姿へと変貌する。
「なっ…姿を変えた!?」
「ゴーレムじゃねえ…アンデッドか!?」
二人が驚愕する中、オブシディアン(ナイトメア擬態)は、擬態によって得た膂力(りょりょく)で巨大な盾(のように変化させた身体の一部)を構え、タンク目掛けて突進した。
ドゴォン!
タンクは盾で受け止めるが、その衝撃に体勢を崩す。そこへ、オブシディアンは擬態したまま【爪撃】(のような物理攻撃)を繰り出した。
「ぐっ…!」
タンクのHPが大きく削れる。二刀流剣士が横から斬りかかってくるが、オブシディアンは【影護】(擬態状態でも発動可能)で防御しつつ、擬態を解除。元のシャドウ・スライムの姿に戻り、素早い動きで二刀流剣士に【毒液噴射】を浴びせかけた。
「うわっ!」
毒ダメージと視界不良に陥った二刀流剣士に、オブシディアンは【捕食吸収】を仕掛ける。タンクが助けに入ろうとするが、オブシディアンは【石材操作】で足元の地面を隆起させ、妨害する。
二刀流剣士を吸収し終え、残るはタンク一人。もはや勝敗は決していた。オブシディアンは、消耗しているタンクを【爪撃】と【捕食吸収】で嬲るように攻撃し、最後は完全に吸収して戦闘を終結させた。
『プレイヤー「SteelWall」を捕食しました』
『経験値を90獲得しました』
『スキル【挑発 Lv.1】を…獲得に失敗しました』
『微量の「防御技術の知識」を獲得しました』
『素材「砕けた盾の欠片」を獲得しました』
『プレイヤー「DualBlade」を捕食しました』
『経験値を85獲得しました』
『スキル【二刀流 Lv.1】を…獲得に失敗しました』
『微量の「剣術の知識」を獲得しました』
『素材「折れた刀身」を獲得しました』
レベル10の5人パーティを、単独で壊滅させた。大きな達成感と共に、オブシディアンは自身の成長を改めて実感した。シャドウ・スライムへの進化、遺跡での強化、そしてレベルアップ。それらが複合的に作用し、今の自分がある。
(プレイヤーの装備品は、そのままでは吸収できないか。だが、知識の断片は得られる…これも積み重ねれば、大きな力になるかもしれない)
オブシディアンは、戦闘跡地に散らばる光の粒子(プレイヤーが消滅した痕跡)を見つめながら、静かに思考する。この古戦場跡は、危険であると同時に、大きな成長の機会を与えてくれる場所だ。
噂はさらに広まるだろう。「黒いスライムにパーティが壊滅させられた」と。それでいい。恐怖と共に、その名を刻みつけてやる。
オブシディアンは、戦闘で得た経験値と知識を糧に、再び古戦場跡の奥深くへと進み始めた。血錆の大地に舞う黒い影は、更なる獲物と進化を求めて、孤独な探索を続ける。
名前: オブシディアン
種族: シャドウ・スライム
称号: 影に潜む者 (効果向上), 墓守殺し, 源泉に触れし者
所属: 未定義
【能力値】
体力: 16
魔力容量: 19
物理攻撃力: 3
物理防御力: 8
魔法攻撃力: 6
魔法防御力: 16
素早さ: 10
【スキル】
・捕食吸収 Lv.1
・影擬態 Lv.2
・微光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・影走 Lv.2
・嗅覚強化 Lv.1
・木材生成 Lv.1
・糸生成 Lv.1
・毒耐性(小) Lv.1
・影護 Lv.1
・隠密 Lv.2
・爪撃 Lv.1
・毒液噴射 Lv.1
・斬撃耐性(微) Lv.1
・石材操作(微) Lv.1
・アンデッド耐性(微) Lv.1
・死霊魔術(初級) Lv.1
・精神耐性(小) Lv.1
・炎耐性(微) Lv.1
・怨念耐性(微) Lv.1
・魔力変換炉 Lv.1
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毎日22時投稿します。
癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。
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