ログインしたら人外でした。 ~VRMMOで最恐の魔物になる~

夏見ナイ

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第二十六話 知識の断片と次なる狩場

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レッドキャップスの残骸が霧に溶けていくのを尻目に、オブシディアンは嘆きの湿地帯を後にした。PKギルドとはいえ、十数名のプレイヤーを一方的に蹂躙し、捕食したという事実は、彼の力と危険性をEROの世界に改めて刻み付けたことだろう。だが、オブシディアン自身にとって、それは単なる通過点に過ぎなかった。勝利の余韻に浸るよりも、次なる成長への渇望の方が遥かに強い。

(アビス・スライム…この力は、まだ底が見えない)

湿地帯を抜け、比較的安全な森の一角で休息を取りながら、オブシディアンは自身の変化を内観していた。【深淵の核】スキルは、周囲の魔力を吸収し続け、MPは常に満タンに近い状態を維持している。これは絶大なアドバンテージだ。スキル使用の制限が大幅に緩和され、戦闘や探索の自由度が格段に増した。

【硬殻化】による防御力、【酸液生成】や【鎌鼬】による攻撃力、【影走】【壁面歩行】による機動力、【蟲の共鳴】による索敵・補助能力。そして、根幹となる【捕食吸収 Lv.2】。アビス・スライムとしての能力は、シャドウ・スライム時代とは比較にならないほど向上している。

(だが、進化の道筋は見えない…)

アビス・スライムへの変化は、深淵の核との融合という、イレギュラーな事態によって引き起こされたものだ。これが正規の進化ルートなのか、それともオブシディアン固有の特殊形態なのかは不明だ。もし後者ならば、今後の進化は、特定のモンスターを捕食するといった定型的な方法ではなく、さらに特殊な条件や、あるいはスキル統合による自己改造のような道を探る必要があるのかもしれない。

(スキル統合…これも、まだ手探り状態だ)

様々なスキルを獲得してきたが、それらを組み合わせ、新たなオリジナルスキルを生み出す方法は見つかっていない。熟練度が必要なのか、特定のアイテムや知識が必要なのか。あるいは、これもまた、核(コア)の機能と関係しているのだろうか?

オブシディアンは、インベントリに保管している「アーク・メイジの日誌」、「古代魔術の断章」、「破損した石版」を思い浮かべた。これらの古代の遺物に、進化やスキル統合、そして世界の秘密に関する鍵が隠されている可能性は高い。

(やはり、古代言語の解読が最優先事項か)

読めなければ、ただの石版と紙切れだ。解読する方法はいくつか考えられる。
一つは、古代言語を理解するモンスターやNPCを探し出し、【捕食吸収】でその知識を奪うこと。しかし、そんな都合の良い存在がすぐに見つかるとは限らない。
もう一つは、関連するアイテムやクエストを探すこと。遺跡のゴブリンのように、特殊な知識を持つプレイヤーやNPCと接触できれば、何か情報が得られるかもしれない。
そして、もう一つは、【捕食吸収】による「知識の断片」の蓄積。リッチ・ロードやエンシェント・ガーディアン、そしてレッドキャップスのメンバーたちを捕食した際に得た、膨大な量の断片的な知識。これらをオブシディアンの核(コア)の中で整理・統合し、意味のある情報へと再構築することはできないだろうか?

(試してみる価値はある)

オブシディアンは、【深淵の核 Lv.1】のスキルに意識を集中した。このスキルは、単なるMP回復だけでなく、エネルギーや情報の変換・処理能力も司っているはずだ。核(コア)に対して、「蓄積された知識の断片を、"古代言語" をキーにして整理・統合せよ」と強く念じてみる。

核(コア)が紫色の光を放ち、内部で何かが高速で処理されていくような感覚があった。MPがわずかに消費される。そして、しばらくすると、オブシディアンの意識の中に、いくつかのイメージが浮かび上がってきた。

それは、石版や日誌に刻まれていた古代文字のいくつかと、それに対応するであろう基本的な意味――「力」「扉」「封印」「星」「生命」といった単語レベルの概念――だった。完全な解読には程遠いが、確かに知識の断片が繋がり、意味を成し始めている!

(いける…! この方法なら、時間はかかるかもしれないが、自力で解読を進められる!)

膨大な数のモンスターやプレイヤーを捕食し、知識を蓄積し続ければ、いずれは日誌や石版の全てを理解できるようになるかもしれない。これは大きな進歩だ。オブシディアンのモチベーションはさらに高まった。

さて、次の目的地だ。古代言語解読という長期的な目標ができた今、狩りの対象も変わってくる。単にレベルの高いモンスターを狩るだけでなく、「知識」を持っていそうなモンスター、例えば、古代種、魔法生物、あるいは知性の高い魔物などを優先的に狙うべきだろう。

オブシディアンは、捕食した様々なモンスターやプレイヤーの知識の断片の中から、次の狩り場となりそうなエリアの情報を探った。そして、いくつかの候補が浮かび上がった。

一つは、「竜の顎(あぎと)」と呼ばれる険しい山岳地帯。そこにはワイバーンやグリフォンといった飛行系の大型モンスターが生息しており、中には古代竜の末裔とされる知的な存在もいるという噂がある。飛行能力を持たないオブシディアンにとっては難易度が高いが、得られるものは大きいかもしれない。

もう一つは、「忘れられた砂漠」。広大な砂漠地帯で、巨大なサンドワームや、古代文明の遺跡を守る魔法仕掛けのゴーレムなどが存在するという。砂漠という過酷な環境は、オブシディアンの適応能力を試す良い機会になるだろう。

そして、もう一つ。「妖精の森」。美しいが危険な森で、トリッキーなスキルを使う妖精族や、強力な魔法を使う精霊などが棲んでいるらしい。魔法系のスキルや知識を得るには最適かもしれないが、妖精族は人間プレイヤーと友好的な場合もあり、接触には注意が必要だ。

(どれも魅力的だが…まずは、山岳地帯か)

オブシディアンは、「竜の顎」を目指すことに決めた。ワイバーンなどの大型モンスターは、強力なスキルやレア素材を持っている可能性が高い。そして、もし知的な古代竜の末裔がいるならば、古代言語や世界の秘密に関する重要な情報を得られるかもしれない。【壁面歩行(小)】スキルがあれば、険しい山道もある程度は踏破できるだろう。

目的地を定め、オブシディアンは移動を開始した。湿地帯や森を抜け、徐々に標高が高くなっていく。道中、遭遇するモンスターはレベル10~12程度のものが主だったが、オブシディアンは単なる経験値稼ぎとしてではなく、「知識の吸収」も意識して【捕食吸収 Lv.2】を行った。

例えば、森で遭遇した老いたトレント(Lv.10)からは、「植物に関する知識」や「森の古い記憶」の断片を。道中で襲ってきたゴブリンの盗賊団(Lv.9~10)からは、「罠の知識」や「隠し通路の情報」などを吸収した。これらの知識がすぐに役立つかは分からないが、蓄積していくことに意味があるはずだ。

また、移動中には【蟲の共鳴 Lv.1】スキルも試してみた。周囲にいる蝶や蟻、蜘蛛といった小さな蟲たちに意識を同調させると、彼らが感知している情報を、断片的ながら受け取ることができた。近くにいるモンスターの種類や位置、プレイヤーの気配、あるいは珍しい植物や鉱石の場所など。これは、索敵や情報収集において非常に強力なツールとなりそうだ。

(力が…知識が、集まってくる…)

オブシディアンは、自身の成長と、世界の広がりを実感していた。アビス・スライムとしての力、蓄積される知識、そして未知なる領域への探求心。それらが、彼を更なる高みへと押し上げようとしている。

やがて、オブシディアンの前方に、天を突くような険しい山々が見えてきた。岩肌が剥き出しになり、吹き付ける風も強くなっている。頂上付近には、巨大な影が旋回しているのが微かに見えた。あれがワイバーンだろうか。

ここが「竜の顎」。新たな狩り場、新たな挑戦の舞台だ。オブシディアンは、山麓の岩陰に身を潜め、これから始まるであろう激しい戦いに備え、静かに牙を研ぎ始めた。

名前: オブシディアン
種族: アビス・スライム
称号: 影に潜む者 (効果向上), 墓守殺し, 深淵を宿す者
所属: 未定義

【能力値】
体力: 23
魔力容量: 28
物理攻撃力: 6
物理防御力: 14
魔法攻撃力: 9
魔法防御力: 21
素早さ: 15

【スキル】
・捕食吸収 Lv.2
・影擬態 Lv.2
・微光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・影走 Lv.2
・嗅覚強化 Lv.1
・木材生成 Lv.1
・糸生成 Lv.2
・毒耐性(大) Lv.1
・硬殻化 Lv.1
・隠密 Lv.2
・爪撃 Lv.2
・毒液噴射 Lv.1
・斬撃耐性(微) Lv.1
・石材操作(小) Lv.1
・アンデッド耐性(微) Lv.1
・死霊魔術(初級) Lv.1
・精神耐性(中) Lv.1
・炎耐性(微) Lv.1
・怨念耐性(小) Lv.1
・深淵の核 Lv.1
・統率力(微) Lv.1
・水中活動(微) Lv.1
・粘液噴射 Lv.1
・泥操作(微) Lv.1
・麻痺耐性(小) Lv.1
・壁面歩行(小) Lv.1
・鎌鼬 Lv.1
・蟲の共鳴 Lv.1
・酸液生成 Lv.1
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