ログインしたら人外でした。 ~VRMMOで最恐の魔物になる~

夏見ナイ

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第二十五話 悪党狩り

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泥濘に擬態したオブシディアンは、PKギルド「レッドキャップス」のメンバーたちの会話と気配を冷静に分析していた。その数、およそ十五名。リーダー格のバーサーカーを中心に、ローグ、魔術師、戦士などがバランス良く配置され、オブシディアンが出てくるであろうダンジョン入り口に向けて包囲網を敷いている。彼らの装備は、銀翼騎士団ほどではないにしろ、それなりに整っており、レベルも10~13程度と見受けられた。おそらく、オブシディアンを「レベルの高いスライム」程度と侮っているのだろう。

(数はこちらが不利だが…連携はこちらが上だ)

オブシディアンは一人。しかし、アビス・スライムへと変貌し、数々のスキルと経験、そして知識を蓄積したオブシディアンにとって、烏合の衆に近いPKギルドの連携など、恐るるに足りない。むしろ、格好の実験台であり、糧となる存在だ。

オブシディアンは、まず彼らの連携を崩すことにした。擬態したまま、泥の中を静かに移動し、包囲網のやや後方に位置する魔術師風のプレイヤー二人に狙いを定める。彼らが持つであろう範囲攻撃魔法は、集団戦においては脅威となりうる。

(【蟲の共鳴 Lv.1】…周囲の蟲よ、奴らの足元を騒がせ)

オブシディアンがスキルを発動し、意識を集中すると、湿地帯の泥の中に潜んでいた名もなき小さな蟲たちが、オブシディアンの意思に呼応するように一斉に動き出した。カサカサという音と共に、無数の蟲が魔術師たちの足元やローブに群がり始める。

「うわっ!? なんだこれ、虫!?」
「キモッ! どこから湧いてきやがった!」

突然の蟲の襲来に、魔術師たちは悲鳴を上げてパニックに陥った。詠唱に集中できず、陣形も乱れる。他のメンバーも、突然の事態に戸惑い、注意がそちらに向いた。

(好機!)

オブシディアンはこの瞬間を逃さなかった。【影擬態】を解除し、アビス・スライムの姿を現すと同時に、【影走 Lv.2】で一気に距離を詰める。狙いは、リーダー格のバーサーカーだ。頭を潰せば、残りは容易い。

「来たぞ! スライムだ!」
「リーダー、後ろ!」

ローグが警告を発するが、遅い。オブシディアンはバーサーカーの背後に回り込むと、新たに獲得した【酸液生成 Lv.1】を発動した。強力な酸性の液体が、粘液状になってバーサーカーの背中を覆う。

「グワァァァッ!?」

バーサーカーは、鎧ごと肉体が溶解していく激痛に絶叫を上げた。彼の頑丈な金属鎧も、アビス・スライムの強酸の前には脆く、瞬く間にボロボロになっていく。HPゲージが急速に減少していくのが見えた。

「リーダー!」
「くそっ、回復! いや、まずあのスライムを止めろ!」

レッドキャップスのメンバーが混乱しながらも反撃しようとする。複数の矢や魔法がオブシディアン目掛けて飛んでくるが、オブシディアンは【硬殻化 Lv.1】を発動。紫色の文様が浮かぶ黒曜石色の硬質化した殻が、それらの攻撃を容易く弾き返した。

「硬え!? 攻撃が通じねえぞ!」
「なんだこいつ、本当にスライムか!?」

驚愕する彼らを尻目に、オブシディアンは弱ったバーサーカーに【捕食吸収 Lv.2】を仕掛けた。

「お、のれ…スライム風情が…」

バーサーカーは最後の抵抗を試みるが、強酸ダメージと捕食によるエネルギー吸収には抗えず、すぐに光の粒子となって消滅した。

『プレイヤー「BerserkAxe」を捕食しました』
『経験値を130獲得しました』
『スキル【狂戦士化 Lv.1】を…獲得に失敗しました』
『微量の「斧術の知識」を獲得しました』
『素材「壊れた戦斧の柄」を獲得しました』

リーダーを失い、オブシディアンの異常な強さを目の当たりにしたレッドキャップスのメンバーたちは、完全に戦意を喪失し始めていた。

「リーダーが…一瞬で…」
「ば、化け物だ…!」
「逃げろ! こいつには勝てねえ!」

蜘蛛の子を散らすように、彼らは散り散りになって逃げ出そうとする。しかし、オブシディアンはそれを許さない。

(逃がすものか。お前たちも、俺の糧となれ)

オブシディアンは【影走 Lv.2】で逃げるプレイヤーたちを追跡する。その速度は、並のプレイヤーが逃げ切れるものではない。

まず、蟲に驚いてパニックになっていた魔術師二人に追いつき、【爪撃 Lv.2】と【鎌鼬 Lv.1】で瞬殺。そのまま【捕食吸収】する。

次に、毒短剣を構えていたローグ。【隠密 Lv.2】で背後に回り込み、【粘液噴射】で動きを封じた上で、【酸液生成】で溶解させ、吸収。

戦士タイプのプレイヤーたちには、【死霊魔術(初級)】でボーン・ナイトを複数召喚し、【統率力(微)】スキルで指揮して足止めする。その間にオブシディアン本体が一体ずつ確実に仕留めていく。【硬殻化】したオブシディアンには、彼らの物理攻撃はほとんど通用しない。

阿鼻叫喚。湿地帯の霧の中に、PKギルドメンバーたちの断末魔が響き渡る。オブシディアンは、一切の容赦なく、逃げ惑う彼らを狩り続け、その全てを捕食していった。彼らが持っていたであろう、悪意や歪んだ欲望も、経験値や知識の断片と共に、オブシディアンの中へと吸収されていく。

やがて、最後のプレイヤーを吸収し終え、戦場には静寂が戻った。残っているのは、オブシディアンが召喚したボーン・ナイトたちだけだった。彼らは役目を終え、オブシディアンの意思に従って影の中へと消えていく。

(…終わったか)

オブシディアンは、周囲に散らばる光の粒子を見つめながら、戦闘の結果を確認する。レッドキャップスのメンバー、およそ十五名を単独で殲滅。レベルは上がらなかったが、大量の経験値と素材、そして様々な分野の「知識の断片」を獲得できた。特に、ローグ系のプレイヤーからは「罠設置・解除」、魔術師からは「属性魔法の基礎」、戦士からは「武器の扱い」といった知識が断片的に得られたようだ。これらはすぐには役立たないかもしれないが、いずれ何かの形で応用できるかもしれない。

そして、この戦闘は、オブシディアン自身の精神にも、微かな変化をもたらしていた。以前は、プレイヤーとの戦闘はあくまで自衛や排除のため、という意識が強かった。しかし、今は違う。彼らを「狩りの対象」として、積極的に「捕食」することに、ある種の愉悦すら感じ始めている自分に気づく。それは、アビス・スライムへの変貌による影響なのか、あるいは、この弱肉強食の世界に染まりつつあるということなのか。

(まあ、どちらでもいい。俺は俺の道を行くだけだ)

オブシディアンは感傷を振り払うように、再び移動を開始した。レッドキャップスを壊滅させたことで、しばらくは追手の心配も減るだろう。今は、この湿地帯を抜け、新たなエリアへと向かうべきだ。

目的地はまだ決めていない。しかし、アビス・スライムとなった今、探索できる範囲は格段に広がったはずだ。より高レベルの狩り場、未知のダンジョン、あるいは、古代言語の解読に繋がる場所。世界は広く、オブシディアンの探求は終わらない。

黒曜石の影は、PKギルドの残骸を踏み越え、湿地帯の霧の中へと消えていった。その名は、もはや単なる「危険な魔物プレイヤー」ではなく、「プレイヤーを狩る捕食者」「悪党殺しの災害」として、EROの世界に新たな恐怖の伝説を刻み込むことになるだろう。

名前: オブシディアン
種族: アビス・スライム
称号: 影に潜む者 (効果向上), 墓守殺し, 深淵を宿す者
所属: 未定義

【能力値】
体力: 23
魔力容量: 28
物理攻撃力: 6
物理防御力: 14
魔法攻撃力: 9
魔法防御力: 21
素早さ: 15

【スキル】
・捕食吸収 Lv.2
・影擬態 Lv.2
・微光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・影走 Lv.2
・嗅覚強化 Lv.1
・木材生成 Lv.1
・糸生成 Lv.2
・毒耐性(大) Lv.1
・硬殻化 Lv.1
・隠密 Lv.2
・爪撃 Lv.2
・毒液噴射 Lv.1
・斬撃耐性(微) Lv.1
・石材操作(小) Lv.1
・アンデッド耐性(微) Lv.1
・死霊魔術(初級) Lv.1
・精神耐性(中) Lv.1
・炎耐性(微) Lv.1
・怨念耐性(小) Lv.1
・深淵の核 Lv.1
・統率力(微) Lv.1
・水中活動(微) Lv.1
・粘液噴射 Lv.1
・泥操作(微) Lv.1
・麻痺耐性(小) Lv.1
・壁面歩行(小) Lv.1
・鎌鼬 Lv.1
・蟲の共鳴 Lv.1
・酸液生成 Lv.1
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