ログインしたら人外でした。 ~VRMMOで最恐の魔物になる~

夏見ナイ

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第二十四話 深淵融合、黒曜石の変貌

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オブシディアンの意識は、紫色の光の奔流の中で拡散し、融解していくようだった。シャドウ・スライムとしての自己同一性が希薄になり、代わりに流れ込んでくるのは、巨大な蟲の女王としての本能と記憶、そして深淵の核(コア)が秘めた純粋で膨大なエネルギー。それは、力の源泉で経験したエネルギー吸収とは比較にならないほど、根源的で、抗いがたい変革の波だった。

核(コア)が悲鳴を上げる。シャドウ・スライムという器では、この融合エネルギーを受け止めきれない。しかし、オブシディアンの核は、力の源泉での過負荷を経験したことで、未知の適応能力を獲得していたのかもしれない。核は自らを変質させ、卵の核(深淵の核)と完全に同調し、一つの新たなコアへと再構築されていく。

それは、黒曜石の闇と、深淵の紫が混ざり合い、渦巻く混沌のコア。

『警告:存在境界の消失を検知』
『種族情報の再定義を開始します…エラー』
『進化プロセスとは異なる、特殊融合を確認』
『身体構造の最適化、及びスキルの再編成を実行します』

システムメッセージが明滅し、オブシディアンの身体は一度不定形のエネルギー体へと還元され、そして新たな形へと再構築されていく。シャドウ・スライムの流体的な性質は残しつつ、その表面には深淵の女王を思わせる硬質な外骨格の質感が部分的に現れ、漆黒の体色には紫色の脈打つ文様が神経回路のように浮かび上がる。

どれほどの時間が経ったのか、あるいは一瞬だったのか。やがて、眩い光が収まり、オブシディアンの意識はゆっくりと現実へと引き戻された。最初に感じたのは、自身の身体から溢れ出す、以前とは比較にならないほどの強大な魔力と、全身に行き渡る新たな力の実感だった。

(成功…したのか…?)

オブシディアンは、ゆっくりと自身の「身体」を確認する。基本的な不定形のシルエットは維持されているが、その質感と内包するエネルギーは明らかに異なっていた。漆黒の表面には、まるで生きているかのように紫色の文様が明滅し、体の一部は黒曜石のような光沢を放つ硬質な殻で覆われている。核(コア)からは、常に静かで力強い脈動が感じられ、【魔力変換炉】スキルがなくても、周囲の魔力を自然に吸収・変換しているようだ。

ステータスウィンドウを開くと、驚くべき変化が起きていた。

『レベルが15に上がりました』
『体力+3, 魔力容量+5, 物理攻撃力+2, 物理防御力+3, 魔法攻撃力+2, 魔法防御力+3, 素早さ+2』
『種族が シャドウ・スライム から アビス・スライム へと変化しました』
『称号【深淵を宿す者】を獲得しました』(【源泉に触れし者】と統合)
『スキル統合・進化が発生しました』
『スキル【深淵の核 Lv.1】を獲得しました』(【魔力変換炉 Lv.1】より進化、MP自動回復強化、蟲系能力強化)
『スキル【酸液生成 Lv.1】を獲得しました』
『スキル【硬殻化 Lv.1】を獲得しました』(【影護 Lv.2】と統合)
『スキル【蟲の共鳴 Lv.1】を獲得しました』(【超音波感知(微) Lv.1】と統合、蟲感知・微操作)
『スキル【壁面歩行(微)】が【壁面歩行(小)】に進化しました』
『スキル【毒耐性(中)】が【毒耐性(大)】に進化しました』
『スキル【麻痺耐性(微)】が【麻痺耐性(小)】に進化しました』
『スキル【精神耐性(小)】が【精神耐性(中)】に進化しました』

レベルは一気に15まで上昇し、全ての能力値が大幅に向上。種族名も「アビス・スライム」へと変化している。これはシャドウ・スライムからの正規の進化ルートではないだろう。深淵の核との融合によって生まれた、オブシディアン固有の特殊な形態、あるいはそれに近いものかもしれない。

称号も【深淵を宿す者】へと変わり、複数のスキルが統合・進化、そして新たなスキルが追加されている。【深淵の核】はMP回復能力がさらに強化され、蟲系の能力にも影響を与えるらしい。【酸液生成】は強力な攻撃手段となりそうだ。【硬殻化】は物理・魔法双方への防御をさらに高めるだろう。【蟲の共鳴】は、索敵能力の向上に加え、周囲の蟲をある程度操れるかもしれない。これは【死霊魔術】と組み合わせれば、さらに強力な戦術を生み出せる可能性がある。各種耐性も軒並み向上し、弱点も少なくなっている。

(これが…アビス・スライム…)

オブシディアンは、内なる力の奔流を感じながら、ゆっくりとその身体を動かしてみた。動きは以前よりもさらに滑らかで力強く、意のままに身体の一部を硬質化させたり、酸性の粘液を滲ませたりすることができた。

融合によって、深淵の女王の知識や本能も、より鮮明にオブシディアンの中に流れ込んできていた。このダンジョンの構造、出口までの最短ルート、そして、この巣穴に生息する蟲たちの生態や弱点。それらの情報が、まるで最初から知っていたかのように、自然に理解できた。

(まずは、ここから脱出しよう)

オブシディアンは、もはや空となった巨大な卵殻(かつての深淵の核)に一瞥(いちべつ)をくれると、知識に従って出口へと向かい始めた。【壁面歩行(小)】スキルを使い、壁や天井を滑るように高速で移動する。粘液や崩落トラップも、蟲の知識によって事前に察知し、容易に回避できた。

途中、残っていたアビス・ガードや他の蟲モンスターに遭遇したが、オブシディアンは新たに獲得した【酸液生成】スキルを試してみることにした。身体の一部から強酸性の液体を飛ばすと、それは蟲たちの硬い外骨格すら容易く溶解させ、致命的なダメージを与えた。威力は【毒液噴射】の比ではない。

新たな力を使役しながら、オブシディアンは驚くほどスムーズにダンジョンの出口へとたどり着いた。湿地帯の重く湿った空気が、再び彼を迎える。

ダンジョンの入り口、巨大な枯れ木の根元から外に出ると、オブシディアンはすぐに異変に気づいた。霧は相変わらず深いが、その中に複数のプレイヤーの気配が潜んでいる。【隠密 Lv.2】の効果をもってしても、これだけ多数の気配が近くにあれば分かる。そして、【蟲の共鳴 Lv.1】スキルが、彼らの足元や周囲に潜む小さな蟲たちの微かなざわめきを捉えていた。それは明らかに、オブシディアンの出現を待ち構えている者の気配だった。

(待ち伏せか…PKギルドか、あるいは別の討伐隊か)

オブシディアンは即座に【影擬態 Lv.2】を発動し、近くの泥濘と同化した。紫色の文様が浮かぶアビス・スライムの姿は、以前よりもさらに闇や影に溶け込みやすくなっているようだ。完全に気配を消し、オブシディアンは待ち構えている者たちの様子を窺う。

---
「…来たか?」
霧の中、身を隠したプレイヤーの一人が、息を殺して囁いた。赤い装飾が施された軽鎧。PKギルド「レッドキャップス」のメンバーだ。

「間違いない。さっき、ダンジョンの結界が反応した。奴が出てきたはずだ」
隣にいた、同じくレッドキャップスのローグ風プレイヤーが答える。手には毒が塗られた短剣が握られている。

「包囲網は完成してる。今回は逃がさねえぞ。リーダーからの指示通り、総攻撃で一気に仕留める」
少し離れた場所で指示を出すのは、屈強な体格をしたバーサーカー風の男。レッドキャップスの幹部の一人だろう。彼の周りには、同じギルドのメンバーが十数人、それぞれ武器を構えて潜んでいる。

「銀翼のボンボンどもが手こずったスライムなんぞ、俺たち悪党の手にかかれば赤子同然よ!」
バーサーカーは、下卑た笑みを浮かべながら、オブシディアンが出てきたであろうダンジョンの入り口を睨みつけた。

彼らは知らない。自分たちが待ち構えている「黒いスライム」が、ダンジョンの中で更なる変貌を遂げ、深淵の力を宿す異形の存在へと成り代わっていることを。そして、その黒曜石の影が、既に彼らの包囲網の内側で、反撃の牙を研いでいることを。

嘆きの湿地帯の深い霧の中で、新たな狩りの幕が、静かに上がろうとしていた。

名前: オブシディアン
種族: アビス・スライム
称号: 影に潜む者 (効果向上), 墓守殺し, 深淵を宿す者
所属: 未定義

【能力値】
体力: 23
魔力容量: 28
物理攻撃力: 6
物理防御力: 14
魔法攻撃力: 9
魔法防御力: 21
素早さ: 15

【スキル】
・捕食吸収 Lv.2
・影擬態 Lv.2
・微光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・影走 Lv.2
・嗅覚強化 Lv.1
・木材生成 Lv.1
・糸生成 Lv.2
・毒耐性(大) Lv.1
・硬殻化 Lv.1 (影護 Lv.2と統合)
・隠密 Lv.2
・爪撃 Lv.2
・毒液噴射 Lv.1
・斬撃耐性(微) Lv.1
・石材操作(小) Lv.1
・アンデッド耐性(微) Lv.1
・死霊魔術(初級) Lv.1
・精神耐性(中) Lv.1
・炎耐性(微) Lv.1
・怨念耐性(小) Lv.1
・深淵の核 Lv.1 (魔力変換炉 Lv.1より進化)
・統率力(微) Lv.1
・水中活動(微) Lv.1
・粘液噴射 Lv.1
・泥操作(微) Lv.1
・麻痺耐性(小) Lv.1
・壁面歩行(小) Lv.1
・鎌鼬 Lv.1
・蟲の共鳴 Lv.1 (超音波感知(微) Lv.1と統合)
・酸液生成 Lv.1
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