ログインしたら人外でした。 ~VRMMOで最恐の魔物になる~

夏見ナイ

文字の大きさ
63 / 76

第六十三話 古代遺跡への道標

しおりを挟む
観測塔が聳える微睡みの森の深奥を後にし、オブシディアンは次なる目的地へと向かっていた。核(コア)に刻まれた情報が示すのは、アストライア大陸の中央部に広がる「大渓谷ゼーレ」と呼ばれる地域。そこにある古代遺跡に、「調律者」に関するさらなる手がかりが眠っているという。

【天翔ける翼 Lv.1】を展開し、オブシディアンはカオス・アビスとしての圧倒的な飛行能力で空を駆ける。レベル35に到達し、各種スキルも向上した今、その速度と機動力は以前とは比較にならない。眼下に広がるアストライアの大地は瞬く間に後方へと流れ去っていく。

道中、オブシディアンは【猛禽の目 Lv.1】と【蟲の共鳴 Lv.1】を使い、地上の様子を広範囲に観測していた。「創世戦争」の戦火は、境界門周辺だけでなく、大陸の各地へと飛び火し、拡大しているようだった。資源地帯での小競り合い、補給路を狙った奇襲、そして古代遺跡の支配権を巡るギルド間の抗争。プレイヤーたちは、秩序と混沌という大義名分の下で、あるいは自身の利益のために、終わりなき戦いを繰り広げている。

(愚かな…この世界の真実も知らずに)

オブシディアンは、彼らの争いを冷ややかに見下ろしていた。かつては自分も、プレイヤーという存在に脅威を感じ、敵意を向けられたこともあった。しかし、カオス・アビスへと至り、世界の理の一端に触れた今、彼らの存在はひどく矮小(わいしょう)で、そして哀れにすら見えた。彼らが血道を上げて争っているもの――レベル、スキル、アイテム、領土――それら全てが、より大きな存在(調律者や星の船)によって仕組まれた「実験」の一部に過ぎないのかもしれないのだから。

オブシディアンは、無用な争いを避けるように、戦火が及んでいない高空や、険しい山脈の上空などを飛行ルートとして選択した。彼の存在を感知できるプレイヤーやモンスターは、もはやほとんど存在しないだろう。【混沌変異 Lv.3】による擬態能力は完璧に近く、【深淵の心臓 Lv.1】から放たれるオーラも自在に制御できるため、意図的に力を示さない限り、彼はただの「影」あるいは「空の一部」として認識されるだけだ。

飛行中、オブシディアンは核(コア)のリソースを使い、「アーク・メイジの日誌」や「古代魔術の断章」の解読をさらに進めていた。【古代言語完全解読】スキルによって明らかになる情報は、オブシディアンの知識欲をますます刺激した。特に、古代魔術の断章に記された「時空間制御」や「エーテル操作」といった技術は、彼の【万物創造】や【因果歪曲】スキルを発展させる上で、重要なヒントとなりそうだった。

(これらの知識を完全に理解し、我が力とできれば…あるいは、「調律者」にすら対抗できる存在になれるかもしれない)

そんな野心すら、オブシディアンの胸中には芽生え始めていた。

数時間の高速飛行の後、オブシディアンは目的地である「大渓谷ゼーレ」の上空へと到達した。眼下に広がるのは、大地が巨大な爪で引き裂かれたかのような、壮大で荒々しい渓谷地帯。谷底は深く、場所によっては光すら届かないほどの闇に包まれている。崖の壁面には、風雨によって削られた奇妙な形の岩塔が林立し、まるで異世界の風景のようだ。

そして、その渓谷の奥深く、特に魔力の流れが複雑に渦巻いている場所に、オブシディアンは目的の古代遺跡の気配を捉えた。

(あそこか…)

オブシディアンは高度を下げ、渓谷の中へと降下していく。谷間を吹き抜ける風は不規則で強く、【風操作(大) Lv.1】による精密な制御がなければ、飛行は困難だっただろう。

渓谷の底に近づくにつれて、オブシディアンは奇妙な感覚に気づいた。空間が、微妙に歪んでいるような感覚。そして、時折、重力が異常に強まったり、逆に無重力に近い状態になったりする場所がある。

(時空の歪み…重力異常…この渓谷自体が、特殊な環境なのか?)

【エレメンタル知識(五大) Lv.1】と【古代魔法技術知識 Lv.3】で周囲の魔力構造を解析すると、この渓谷一帯が、古代に何らかの大規模な魔術実験、あるいは時空間に関わる事故が起きた場所である可能性が示唆された。その影響が、今もなお色濃く残っているのだろう。

そんな特殊な環境に適応したモンスターも生息していた。空間の歪みに潜み、瞬間移動のような動きで襲いかかってくる、半透明な獣『フェイズ・ビースト Lv.30』。周囲の重力を局所的に操作し、相手を押し潰したり、逆に吹き飛ばしたりする、結晶体のような姿の『グラビティ・コア Lv.31』など。

これらのモンスターは、通常の戦闘方法では対処が難しい。しかし、オブシディアンは【混沌変異 Lv.3】で自身の身体構造を変化させ、空間歪曲や重力変動の影響を受けにくい形態になったり、【因果歪曲(微) Lv.2】で相手の瞬間移動の座標をわずかにずらしたり、重力操作の精度を狂わせたりすることで、有利に戦闘を進めた。

そして、【虚無捕食 Lv.3】でそれらを捕食し、新たな知識とスキルを獲得していく。

『フェイズ・ビースト Lv.30を捕食しました』
『経験値を3500獲得しました』
『スキル【空間歪曲耐性(小) Lv.1】を獲得しました』
『スキル【短距離転移(微) Lv.1】を獲得しました』
『素材「歪んだ空間の欠片」「位相獣の爪」を獲得しました』

『グラビティ・コア Lv.31を捕食しました』
『経験値を4000獲得しました』
『スキル【重力耐性(小) Lv.1】を獲得しました』
『スキル【重力操作(微) Lv.1】を獲得しました』
『素材「重力子の結晶」「制御不能なコア」を獲得しました』

空間や重力への耐性と操作スキル。これらは、オブシディアンの能力をさらに異次元へと引き上げる可能性を秘めている。特に【短距離転移(微)】は、【影潜行】とはまた異なる、瞬間的な移動手段として活用できるかもしれない。

オブシディアンは、これらの新たな力を試しながら、渓谷の最深部、古代遺跡へと続くと思われる巨大な洞窟の入り口へとたどり着いた。洞窟の入り口は、まるで時空の裂け目そのものが固まったかのように、不安定に揺らめき、内部からは観測塔とはまた異なる、古く強力な、そしてどこか物悲しい気配が漂ってくる。

入り口には、文字が刻まれた石碑が立っていた。【古代言語完全解読】スキルで読み解く。

『…調律者の塔に至りし者よ。汝、真の理を求めるならば、時の狭間を渡り、忘れられた記憶の回廊を進め。ただし、過去に囚われし者は、永遠に還ることは叶わぬだろう…』

(時の狭間…忘れられた記憶の回廊…か)

この遺跡は、単なる物理的な建造物ではなく、時間や記憶といった概念にまで干渉する、特殊な空間なのかもしれない。オブシディアンは、自身の【精神耐性(中)】と、カオス・アビスとしての強靭な核(コア)を信じ、揺らめく時空の裂け目――遺跡の入り口――へと、静かに足を踏み入れた。

その先には、一体どんな過去が、どんな記憶が、そしてどんな真実が待ち受けているのか。オブシディアンの探求は、時空を超えた、新たな次元へと突入しようとしていた。

名前: オブシディアン
種族: カオス・アビス (ユニーク種族)
称号: 影に潜む者 (効果向上), 墓守殺し, 深淵の使徒, 竜殺し, 風を征す者, 炎心を識る者, ヒュドラ・ベイン, 叡智を探求する者, 英雄殺し, 聖域侵犯者, 天門を破りし者, 巨獣を制す者, 星読みの民の記憶, 理を識る者
所属: 未定義

【能力値】
体力: 60
魔力容量: 85
物理攻撃力: 22
物理防御力: 39
魔法攻撃力: 30
魔法防御力: 50
素早さ: 42

【スキル】
・虚無捕食 Lv.3
・混沌変異 Lv.3
・生物発光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・嗅覚強化 Lv.1
・糸生成 Lv.2
・毒耐性(大) Lv.1
・金剛鱗 Lv.1
・爪撃 Lv.2
・腐食溶解液 Lv.1
・物理耐性(小) Lv.1
・万物創造(中級) Lv.2
・アンデッド耐性(微) Lv.1
・死霊魔術(初級) Lv.1
・精神耐性(中) Lv.1
・ブレス耐性(大) Lv.1
・怨念耐性(小) Lv.1
・深淵の心臓 Lv.1
・軍団指揮 Lv.1
・水中浮遊機動 Lv.1
・粘液噴射 Lv.1
・麻痺耐性(小) Lv.1
・壁面歩行(小) Lv.1
・鎌鼬 Lv.1
・蟲の共鳴 Lv.1
・王者のカリスマ Lv.1
・猛禽の目 Lv.1
・古代言語完全解読
・魅了耐性(微) Lv.1
・突風耐性(小) Lv.1
・風操作(大) Lv.1
・火炎耐性(極) Lv.1
・熱源感知 Lv.1
・エレメンタル知識(五大) Lv.2
・超再生(小) Lv.1
・火炎ブレス Lv.1
・墨噴射 Lv.1
・三叉槍術(初級) Lv.1
・古代魔術耐性(微) Lv.1
・見張り Lv.1
・電撃耐性(中) Lv.1
・聖属性耐性(小) Lv.1
・光学兵器制御 Lv.1
・古代戦略知識 Lv.1 -> Lv.2
・固有スキル【深淵領域 Lv.2】
・固有スキル【因果歪曲(微) Lv.2】
・光合成(微) Lv.1
・聖光 Lv.1
・森との同調 Lv.1
・魅了の花粉 Lv.1
・天翔ける翼 Lv.1
・電撃ブレス Lv.1
・エレメンタル知識(雷) Lv.1
・空気抵抗軽減 Lv.1
・古代魔法技術知識 Lv.2 -> Lv.3
・砂中潜行 Lv.1
・乾燥耐性(中) Lv.1
・幻覚耐性(微) Lv.1
・消化液分泌 Lv.1
・強酸耐性(中) Lv.1
・無機物捕食 Lv.1
・生体制御(小) Lv.1
・自然エネルギー同調 Lv.1
・空間歪曲耐性(小) Lv.1
・短距離転移(微) Lv.1
・重力耐性(小) Lv.1
・重力操作(微) Lv.1
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

ミックスブラッドオンライン・リメイク

マルルン
ファンタジー
 ある日、幼馴染の琴音に『大学進学資金』の獲得にと勧められたのは、何と懸賞金付きのVRMMOの限定サーバへの参加だった。名前は『ミックスブラッドオンライン』と言って、混血がテーマの一風変わったシステムのゲームらしい。賞金の額は3億円と破格だが、ゲーム内には癖の強い振るい落としイベント&エリアが満載らしい。  たかがゲームにそんな賞金を懸ける新社長も変わっているが、俺の目的はどちらかと言えば沸点の低い幼馴染のご機嫌取り。そんな俺たちを待ち構えるのは、架空世界で巻き起こる破天荒な冒険の数々だった――。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...