ログインしたら人外でした。 ~VRMMOで最恐の魔物になる~

夏見ナイ

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第六十四話 時の狭間、記憶の回廊

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時空の裂け目のような洞窟の入り口を抜けた先は、オブシディアンの予想をさらに超える異様な空間だった。そこは物理的な建造物ではなく、まるで過去の記憶やイメージが混ざり合い、形を成したかのような、不安定で歪んだ回廊が無限に続いているように見えた。

壁や床は存在せず、代わりに様々な時代の風景――古代都市の繁栄、激しい戦争の光景、未知の生物が闊歩する原生林、そして星々が輝く宇宙空間――が、万華鏡のように移り変わり、重なり合っている。空気(のようなもの)は存在せず、時間の流れも一定ではない。時には過去の音声や人々の囁き声が聞こえ、時には未来の光景らしき幻影が一瞬だけ現れては消える。

(これが…「忘れられた記憶の回廊」…)

石碑にあった警告が思い出される。「過去に囚われし者は、永遠に還ることは叶わぬだろう」。この空間は、侵入者の精神に直接干渉し、過去の記憶やトラウマを呼び覚まし、永遠にこの回廊を彷徨わせようとする罠でもあるのかもしれない。

オブシディアンは【精神耐性(中) Lv.1】を最大限に発揮し、自身の核(コア)――深淵の心臓――を強く保ちながら、慎重に回廊を進み始めた。彼のカオス・アビスとしての精神構造は、通常の生物やプレイヤーとは異なり、過去への執着や後悔といった感情は希薄だ。しかし、それでもこの空間が放つ精神的な圧力は強く、核(コア)に絶えず負荷がかかっているのを感じた。

(ここにも、番人がいるのか…?)

オブシディアンは【蟲の共鳴 Lv.1】(空間の歪みを感知)と【エレメンタル知識(五大) Lv.2】(エネルギーの流れを感知)を使い、周囲を探る。すると、移り変わる風景の中に、時折、歪んだ影のような存在が潜んでいるのが分かった。それらは、この回廊に取り込まれた者たちの残留思念か、あるいは時間そのものが生み出した歪(ひずみ)か。

オブシディアンが近づくと、その影の一つが襲いかかってきた。それは特定の形を持たず、ただ黒い霧のように揺らめき、オブシディアンの精神を直接蝕もうとする冷たい波動を放ってくる。

『クロノス・レイス Lv.32』

時間に取り憑かれた亡霊、といったところか。物理的な攻撃はほぼ通用しないだろう。オブシディアンは【聖光 Lv.1】スキルを試してみた。浄化の光がレイスを包むが、効果はあるものの、決定打とはならないようだ。深淵の力を持つオブシディアンの聖光は、純粋なそれとは性質が異なるのかもしれない。

(ならば、こちらも精神攻撃で対抗するか…あるいは)

オブシディアンは、【王者のカリスマ Lv.1】と【威圧 Lv.1】を組み合わせ、自身の強大な存在感と意志の力を、精神的な波動としてレイスに叩きつけた。

「……!?」

レイスは明確な苦痛の反応を示し、その霧のような身体が大きく揺らいだ。やはり、精神的な干渉は有効らしい。

(そして…喰らう!)

オブシディアンは【虚無捕食 Lv.3】を発動。精神体であろうと、存在そのものを喰らうこのスキルの前には無力だ。レイスは抵抗する間もなく、オブシディアンの中へと吸収されていった。流れ込んでくるのは、誰かの断片的な過去の記憶と、時間に蝕まれた深い絶望の感情。

『クロノス・レイス Lv.32を捕食しました』
『経験値を4500獲得しました』
『スキル【精神侵食 Lv.1】を獲得しました』
『スキル【時間感覚麻痺 Lv.1】を獲得しました』
『素材「時の残滓」「虚無の魂片」を獲得しました』

精神攻撃系のスキルを獲得。これは使い方次第では強力な武器になりそうだ。

オブシディアンは、その後も次々と現れるクロノス・レイスや、過去の英雄や魔物の幻影(エコー)のような存在と戦いながら、記憶の回廊を進んでいく。時には【混沌変異 Lv.3】で自身の精神構造を一時的に変化させ、精神攻撃への耐性をさらに高めたり、【因果歪曲(微) Lv.2】で幻影の出現パターンをわずかに操ったりしながら、着実に歩を進めた。

この回廊を進む過程で、オブシディアンは自身の核(コア)に蓄積された膨大な知識と記憶が、さらに整理・統合されていくのを感じていた。様々な時代の情報、異なる種族の知識、相反する属性のエネルギー。それらが、この時空の歪んだ空間の中で、新たな意味と繋がりを見出し始めているようだった。

(この場所は…危険であると同時に、俺自身の理解を深めるための試練でもあるのかもしれない)

回廊の景色は、徐々に特定の時代のものへと収束していくようだった。それは、アーク・メイジの日誌や石板にも記されていた、古代種族が栄え、そして滅び去った時代の光景。巨大な都市、高度な魔法技術、そして…深淵の力を利用した禁断の実験。

やがて、オブシディアンは回廊の最深部と思われる場所にたどり着いた。そこは、これまでの歪んだ空間とは異なり、静かで安定した空間だった。中央には、巨大な水晶のようなものが設置されており、その中には、この世界の過去から未来までの全ての情報が記録されているかのような、膨大な光のパターンが明滅している。

そして、その水晶を守るように、一体の存在が静かに佇んでいた。

それは、ローブを深く被り、顔は見えないが、どこか人間離れした、古く賢明な気配を漂わせる人型の存在だった。その手には、星々が描かれた杖が握られている。

『時詠みの賢者 Lv.35 (Guardian of Time)』

レベルは35。オブシディアンと同じ。しかし、その称号「Guardian of Time(時の守護者)」が示すように、単なるレベル以上の、特別な存在であることは明らかだった。彼(あるいは彼女?)こそが、この記憶の回廊の番人であり、「調律者」に繋がる鍵を握る存在なのかもしれない。

時詠みの賢者は、オブシディアンの到来を予期していたかのように、ゆっくりと顔を上げた。ローブの奥から覗く瞳は、過去と未来の全てを見通すかのように、深く澄み切っていた。

「…待っていたぞ、混沌の特異点よ」

その声は、穏やかでありながら、有無を言わせぬ重みを持っていた。

「汝が求めるものは、ここにある。だが、それを手にするには、最後の問いに答えねばならぬ」

最後の問い。それは、戦闘による試練ではない、知恵と覚悟を問うものだろうか。

「汝、Obsidian。世界の理を知り、深淵の力を宿し、因果に干渉する者。汝は、この世界に何をもたらそうとする?」

賢者の問いが、静かな空間に響き渡る。それは、オブシディアンが自身に問い続けてきた根源的な問いでもあった。

最強への渇望か? 知識への探求か? それとも、ただ存在するだけの混沌か?

オブシディアンは、しばし沈黙した後、核(コア)を通じて、明確な意志を賢者へと伝えた。

『俺は…「可能性」を見たい。この世界が、俺自身が、どこまで進化し、何へと至るのか。その果てを見届けたい。そのためならば、既存の秩序も、混沌も、必要ならば喰らい尽くす』

賢者は、オブシディアンの答えを聞くと、わずかに頷いたように見えた。

「…良かろう。その覚悟、しかと受け止めた。だが、忘れるな。可能性の追求は、常に破壊と隣り合わせであるということを」

賢者が杖を掲げると、中央の巨大な水晶がひときわ強く輝き、その内部の情報の一部がオブシディアンの核(コア)へと流れ込んできた。それは、「調律者」の正体とその目的、そして、このEROの世界に隠された、さらなる秘密に関する核心的な情報だった。

『重要情報「調律者の座標データ(断片)」を獲得しました』
『重要情報「星の船の航行ログ(一部)」を獲得しました』
『スキル【未来予知(断片) Lv.1】を獲得しました』
『スキル【時間操作耐性(小) Lv.1】を獲得しました』
『称号【時詠みに認められし者】を獲得しました』

ついに、調律者へと繋がる手がかりを得た。そして、【未来予知】という、因果歪曲とはまた異なる、強力なスキルも。

「道は示された。行くがよい、Obsidian。汝の選択が、この世界の未来を紡ぐだろう」

賢者の言葉を最後に、オブシディアンの周囲の空間が再び歪み始める。記憶の回廊が、彼を元の世界へと送り返そうとしているのだ。

オブシディアンは、時詠みの賢者に一瞥をくれると、歪む時空の中へと身を任せた。過去と記憶の回廊での試練を乗り越え、世界の核心にさらに一歩近づいたオブシディアン。彼の存在は、もはや単なるプレイヤーや魔物ではなく、世界の運命を左右する「観測者」として、その役割を本格的に果たし始めるのかもしれない。

次なる目的地は、「調律者」の座標。そこで待ち受けるものとは何か。黒曜石の影の探求は、最終局面へと向けて、さらに加速していく。

名前: オブシディアン
種族: カオス・アビス (ユニーク種族)
称号: 影に潜む者 (効果向上), 墓守殺し, 深淵の使徒, 竜殺し, 風を征す者, 炎心を識る者, ヒュドラ・ベイン, 叡智を探求する者, 英雄殺し, 聖域侵犯者, 天門を破りし者, 巨獣を制す者, 星読みの民の記憶, 理を識る者, 時詠みに認められし者
所属: 未定義

【能力値】
体力: 60
魔力容量: 85
物理攻撃力: 22
物理防御力: 39
魔法攻撃力: 30
魔法防御力: 50
素早さ: 42

【スキル】
・虚無捕食 Lv.3
・混沌変異 Lv.3
・生物発光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・嗅覚強化 Lv.1
・糸生成 Lv.2
・毒耐性(大) Lv.1
・金剛鱗 Lv.1
・爪撃 Lv.2
・腐食溶解液 Lv.1
・物理耐性(小) Lv.1
・万物創造(中級) Lv.2
・アンデッド耐性(微) Lv.1
・死霊魔術(初級) Lv.1
・精神耐性(中) Lv.1 -> (大) Lv.1 (精神侵食 Lv.1と統合・強化)
・ブレス耐性(大) Lv.1
・怨念耐性(小) Lv.1
・深淵の心臓 Lv.1
・軍団指揮 Lv.1
・水中浮遊機動 Lv.1
・粘液噴射 Lv.1
・麻痺耐性(小) Lv.1
・壁面歩行(小) Lv.1
・鎌鼬 Lv.1
・蟲の共鳴 Lv.1
・王者のカリスマ Lv.1
・猛禽の目 Lv.1
・古代言語完全解読
・魅了耐性(微) Lv.1
・突風耐性(小) Lv.1
・風操作(大) Lv.1
・火炎耐性(極) Lv.1
・熱源感知 Lv.1
・エレメンタル知識(五大) Lv.2
・超再生(小) Lv.1
・火炎ブレス Lv.1
・墨噴射 Lv.1
・三叉槍術(初級) Lv.1
・古代魔術耐性(微) Lv.1
・見張り Lv.1
・電撃耐性(中) Lv.1
・聖属性耐性(小) Lv.1
・光学兵器制御 Lv.1
・古代戦略知識 Lv.1 -> Lv.2
・固有スキル【深淵領域 Lv.2】
・固有スキル【因果歪曲(微) Lv.2】
・光合成(微) Lv.1
・聖光 Lv.1
・森との同調 Lv.1
・魅了の花粉 Lv.1
・天翔ける翼 Lv.1
・電撃ブレス Lv.1
・エレメンタル知識(雷) Lv.1
・空気抵抗軽減 Lv.1
・古代魔法技術知識 Lv.2 -> Lv.3
・砂中潜行 Lv.1
・乾燥耐性(中) Lv.1
・幻覚耐性(微) Lv.1
・消化液分泌 Lv.1
・強酸耐性(中) Lv.1
・無機物捕食 Lv.1
・生体制御(小) Lv.1
・自然エネルギー同調 Lv.1
・空間歪曲耐性(小) Lv.1
・短距離転移(微) Lv.1
・重力耐性(小) Lv.1
・重力操作(微) Lv.1
・時間感覚麻痺 Lv.1
・未来予知(断片) Lv.1
・時間操作耐性(小) Lv.1
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