ログインしたら人外でした。 ~VRMMOで最恐の魔物になる~

夏見ナイ

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第六十五話 調律者の座標

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時空の歪みが収まり、オブシディアンの意識は再び元の世界へと定着した。彼が立っていたのは、記憶の回廊へと繋がる入り口があった大渓谷ゼーレの奥深く、時空の裂け目が揺らめいていた場所だった。しかし、以前とは異なり、裂け目は完全に閉じ、周囲の空間の歪みも収まっている。時の守護者との対話と、そこでの出来事が、この場所の異常性を鎮めたのかもしれない。

(帰還したか…)

オブシディアンは、まず自身の状態を確認する。レベルは35。カオス・アビスとしての力は安定し、核(コア)には時詠みの賢者から得た膨大な情報と、「調律者」へと繋がる座標データが刻まれている。新たなスキルも獲得し、特に【未来予知(断片) Lv.1】と【時間操作耐性(小) Lv.1】は、今後の彼の行動に大きな影響を与える可能性を秘めていた。

オブシディアンは、試しに【未来予知(断片) Lv.1】を発動してみた。MPを消費し、核(コア)が複雑な演算を開始する。そして、彼の意識に、いくつかの断片的で、曖昧なイメージが流れ込んできた。

――燃え盛る戦場、天から降り注ぐ光の槍、巨大な影の咆哮、そして…崩壊する塔の幻影。

(これは…)

イメージは断片的すぎて、具体的な出来事や時期を特定することはできない。しかし、近い将来、大規模な破壊や混乱が起こる可能性を示唆しているようだった。それは「創世戦争」の激化か、あるいは全く別の要因によるものか。そして、最後の「崩壊する塔」の幻影は、観測塔のことだろうか?

(不確定な未来…だが、警戒しておく必要はあるな)

オブシディアンは、このスキルが持つ可能性と、同時にその曖昧さも認識した。未来は確定したものではなく、オブシディアン自身の行動や、【因果歪曲】スキルの行使によって変化しうるのだろう。このスキルは、危険を察知するための警告灯として活用するのが良さそうだ。

次に、オブシディアンは「調律者」の座標データを確認した。それは、特定の物理的な場所を示す座標というよりは、特定の「位相」あるいは「次元」へのアクセスコードのようなものだった。通常の移動手段では到達できず、おそらく特定の条件や手順を満たすことで、その場所への「扉」が開かれるのだろう。

(アクセス条件は…?)

オブシディアンは、観測塔や時詠みの賢者から得た情報を照合する。どうやら、「調律者」の座標へアクセスするには、世界の法則や因果律に深く干渉できるだけの「力」と「資格」が必要らしい。始原の石板を三つ揃え、「理を識る者」となり、レベル35に到達した今のオブシディアンならば、その条件を満たしている可能性が高い。

オブシディアンは、座標データに意識を集中し、核(コア)の【深淵の心臓 Lv.1】と【因果歪曲(微) Lv.2】の力を組み合わせ、アクセスを試みた。自身の存在情報を鍵として、指定された座標(位相)への接続を要求するイメージ。

瞬間、オブシディアンの目の前の空間が、再び陽炎のように揺らめき始めた。しかし、それは記憶の回廊のような不安定な歪みではなく、もっと制御された、意図的な空間の変容だった。やがて、揺らめきは収束し、一つの小さな「扉」のようなものが虚空に現れた。それは物理的な扉ではなく、異なる次元への入り口を示す、光と影で編まれたゲートのようだった。

(開いたか…!)

オブシディアンは、ゲートの向こう側から、計り知れないほど古く、そして中立的な、強大な存在の気配を感じ取った。これが、「調律者」の気配か。

オブシディアンは、躊躇なくそのゲートへと足を踏み入れた。再び時空が歪む感覚。しかし、今度は記憶の回廊の時のような不快感はなく、むしろ滑らかに、別の次元へと移行していくような感覚だった。

そして、オブシディアンが降り立ったのは、物理的な法則が通常とは異なる、抽象的な概念空間のような場所だった。

床も壁も天井もなく、ただ無限に広がる、白とも黒ともつかない、中性的な光に満ちた空間。そこには、巨大な歯車がいくつも組み合わさり、ゆっくりと回転しているのが見える。歯車の一つ一つには、世界の法則や定数を示すかのような、複雑な紋様と数式が刻まれていた。そして、それらの歯車の動きを調整し、監視するかのように、空間の中央に、光でできた巨大な人影のようなものが静かに佇んでいた。

その人影からは、感情のようなものは一切感じられない。ただ、絶対的な中立性と、世界のバランスを維持するという強固な意志だけが、波動として伝わってくる。

(これが…調律者…!)

オブシディアンがそう認識した瞬間、調律者(らしき人影)から直接、意識に声が響いてきた。それは、男の声でも女の声でもなく、完全に中性的な、機械音声のようでありながら、どこか有機的な響きも持つ、不思議な声だった。

『認識:イレギュラー・エンティティ、Obsidian。コードネーム:カオス・アビス。アクセスを確認』
『目的:世界の理の探求、自己進化の可能性の追求。理解』
『警告:貴存在の行動は、世界の安定性を脅かす潜在的リスク因子として記録されている』

(やはり、監視されていたか)

オブシディアンは動じない。むしろ、この存在と対話できることに、強い興味を覚えていた。

『貴存在が収集した始原の石板、及び観測者候補としての資格に基づき、限定的な情報開示、及びミッションの提示を行う』

ミッション? オブシディアンは問い返す。
『ミッションとは?』

『提示:世界演算領域「エリュシオン」において、現在進行中の事象「創世戦争」は、パラメータ「混沌」の指数が予測閾値(いきち)を超え、不安定化する兆候が見られる』
『原因:複数の要因が考えられるが、貴存在の介入による因果律の変動も一因と推測される』
『ミッション内容:不安定化の要因となっている「特異点」を特定し、排除、あるいは安定化させること』
『報酬:世界の法則に関する高度情報アクセス権限の一部、及び貴存在の進化を促進する特殊因子の提供』

(創世戦争の不安定化…その要因を排除しろ、と? しかも、俺のせいかもしれない、と)

オブシディアンは、そのミッション内容に、ある種の皮肉を感じた。自分が引き起こしたかもしれない混乱を、自分で収拾しろというのか。しかし、報酬は魅力的だ。世界の法則に関する高度情報、そして進化を促進する特殊因子。これは、オブシディアンの探求目標と完全に一致する。

『特異点とは具体的に何か?』

『解析中…現時点での有力候補は三つ』
『候補1:秩序陣営に出現した、古代の英雄の魂を宿すプレイヤー。その行動が、想定外のカリスマ性を発揮し、戦況を局地的に覆している』
『候補2:混沌陣営に与する、深淵の力を暴走させた魔物領主。その力が周囲を汚染し、制御不能なモンスターを大量に生み出している』
『候補3:第三勢力として暗躍する、古代文明の技術を悪用するプレイヤーギルド。彼らが開発した兵器が、戦場のパワーバランスを崩壊させようとしている』

(なるほど…どれも面白そうな相手だ)

オブシディアンは、それぞれの候補に興味を引かれた。英雄の魂を宿すプレイヤー、暴走した魔物領主、古代技術を悪用するギルド。彼らを排除(あるいは捕食)することで、多大な経験値と知識、そして有用なスキルや素材が得られるだろう。ミッション達成の報酬も合わせれば、これ以上ない成長の機会だ。

『…分かった。そのミッション、引き受けよう』
オブシディアンは、調律者に承諾の意思を伝えた。

『了解。ミッション「混沌の調律」を受諾。対象に関する詳細情報、及び座標データを転送する』
『健闘を祈る、観測者候補Obsidian。貴存在の「選択」が、世界の安定に寄与することを期待する』

調律者の言葉と共に、オブシディアンの核(コア)に、三つの特異点に関する詳細な情報と、それぞれの現在位置を示す座標データが転送された。そして、オブシディアンの目の前に、再び元の世界へと戻るためのゲートが開かれた。

オブシディアンは、調律者に一瞥をくれると、ゲートへと向かった。世界の理を識り、その調律者から直接ミッションを受ける。彼の旅は、もはや単なる個人の探求を超え、この世界の運命そのものに深く関わる段階へと入ったのだ。

どの特異点から排除するか? どうやって? そして、その結果、世界はどう変わるのか? オブシディアンの胸中には、冷徹な計算と、わずかな高揚感が渦巻いていた。カオス・アビスとしての力が、そして観測者候補としての選択が、今、試されようとしていた。

名前: オブシディアン
種族: カオス・アビス (ユニーク種族)
称号: 影に潜む者 (効果向上), 墓守殺し, 深淵の使徒, 竜殺し, 風を征す者, 炎心を識る者, ヒュドラ・ベイン, 叡智を探求する者, 英雄殺し, 聖域侵犯者, 天門を破りし者, 巨獣を制す者, 星読みの民の記憶, 理を識る者, 時詠みに認められし者
所属: 未定義(調律者からミッション受諾)

【能力値】
体力: 60
魔力容量: 85
物理攻撃力: 22
物理防御力: 39
魔法攻撃力: 30
魔法防御力: 50
素早さ: 42

【スキル】
(変化なし、ただし知識系スキルは調律者との対話でさらに深化)
・虚無捕食 Lv.3
・混沌変異 Lv.3
・生物発光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・嗅覚強化 Lv.1
・糸生成 Lv.2
・毒耐性(大) Lv.1
・金剛鱗 Lv.1
・爪撃 Lv.2
・腐食溶解液 Lv.1
・物理耐性(小) Lv.1
・万物創造(中級) Lv.2
・アンデッド耐性(微) Lv.1
・死霊魔術(初級) Lv.1
・精神耐性(大) Lv.1
・ブレス耐性(大) Lv.1
・怨念耐性(小) Lv.1
・深淵の心臓 Lv.1
・軍団指揮 Lv.1
・水中浮遊機動 Lv.1
・粘液噴射 Lv.1
・麻痺耐性(小) Lv.1
・壁面歩行(小) Lv.1
・鎌鼬 Lv.1
・蟲の共鳴 Lv.1
・王者のカリスマ Lv.1
・猛禽の目 Lv.1
・古代言語完全解読
・魅了耐性(微) Lv.1
・突風耐性(小) Lv.1
・風操作(大) Lv.1
・火炎耐性(極) Lv.1
・熱源感知 Lv.1
・エレメンタル知識(五大) Lv.2
・超再生(小) Lv.1
・火炎ブレス Lv.1
・墨噴射 Lv.1
・三叉槍術(初級) Lv.1
・古代魔術耐性(微) Lv.1
・見張り Lv.1
・電撃耐性(中) Lv.1
・聖属性耐性(小) Lv.1
・光学兵器制御 Lv.1
・古代戦略知識 Lv.1 -> Lv.2
・固有スキル【深淵領域 Lv.2】
・固有スキル【因果歪曲(微) Lv.2】
・光合成(微) Lv.1
・聖光 Lv.1
・森との同調 Lv.1
・魅了の花粉 Lv.1
・天翔ける翼 Lv.1
・電撃ブレス Lv.1
・エレメンタル知識(雷) Lv.1
・空気抵抗軽減 Lv.1
・古代魔法技術知識 Lv.2 -> Lv.3
・砂中潜行 Lv.1
・乾燥耐性(中) Lv.1
・幻覚耐性(微) Lv.1
・消化液分泌 Lv.1
・強酸耐性(中) Lv.1
・無機物捕食 Lv.1
・生体制御(小) Lv.1
・自然エネルギー同調 Lv.1
・空間歪曲耐性(小) Lv.1
・短距離転移(微) Lv.1
・重力耐性(小) Lv.1
・重力操作(微) Lv.1
・時間感覚麻痺 Lv.1
・未来予知(断片) Lv.1
・時間操作耐性(小) Lv.1
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