ログインしたら人外でした。 ~VRMMOで最恐の魔物になる~

夏見ナイ

文字の大きさ
73 / 76

第七十三話 英雄と深淵

しおりを挟む
「光よ、我が剣に集え!」

アルトが叫ぶと、彼が握る聖剣アルティウスは眩いばかりの黄金色の光を放ち、その切っ先から凝縮された聖なるエネルギーの刃がオブシディアン目掛けて放たれた。ロード・コマンダーのスキルによる強化か、あるいは英雄の魂が持つ力か、その一撃は先ほど彼が放ったものとは比較にならないほどの威力と速度を秘めていた。

(速い、そして純粋な光の力…!)

オブシディアンは【混沌変異 Lv.3】で自身の防御形態を最適化――【金剛鱗 Lv.1】の表面に光エネルギーを吸収・拡散する特殊な黒曜石の層を【万物創造(上級) Lv.1】で瞬時に生成する――しつつ、【影潜行】(混沌変異の機能)で回避を試みる。しかし、光の刃は高速で追尾し、オブシディアンの身体を浅く切り裂いた。

ジュウウウッ!

聖なる光が、カオス・アビスの深淵の身体を焼く。激痛と共にHPゲージが目に見えて減少する。【聖属性耐性(小) Lv.1】があるとはいえ、このレベルの純粋な聖属性攻撃は依然として脅威だ。

「そこだ! 総員、援護せよ!」

アルトの号令一下、周囲の秩序陣営のプレイヤーとNPCが一斉にオブシディアンへと攻撃を集中させる。魔法の矢、支援砲撃、騎士たちの突撃。

(雑魚が…!)

オブシディアンは【深淵領域 Lv.3】を展開。漆黒の領域が周囲の空間を侵食し、敵の動きを鈍らせ、その能力を低下させる。同時に、【超再生(小) Lv.1】が聖属性によって受けた傷を急速に修復していく。

「怯むな! 英雄アルト様と共に!」
「我らが光で、あの闇を払うのだ!」

しかし、アルトのカリスマに鼓舞された兵士たちは、深淵領域の圧力に屈することなく、オブシディアンへと向かってくる。

(なるほど…【王者のカリスマ】とは違う、対象の精神に直接作用し、恐怖を打ち消し、士気を高める力か。厄介だな)

オブシディアンは、アルトの持つ「英雄の魂」の力の一端を理解した。これは、単なる戦闘能力だけでなく、集団を率いる力そのものが脅威となるタイプだ。

オブシディアンは【混沌変異】で自身の腕を無数の黒曜石の触手へと変化させ、迫りくる兵士たちを薙ぎ払い、絡め取っていく。そして、【虚無捕食 Lv.3】で抵抗する暇も与えず、次々と吸収していく。

「く…やめろ!」

アルトは、仲間たちがオブシディアンに吸収されていくのを目の当たりにし、悲痛な叫びを上げる。彼は聖剣を振るい、オブシディアンの触手を切り裂き、仲間を救おうとするが、オブシディアンの再生能力と触手の数はそれを上回る。

(感傷に浸っている暇はないぞ、英雄)

オブシディアンは、アルトが一瞬見せた隙を突いた。【物質生成】で鋭利な黒曜石の杭を無数に生成し、アルト目掛けて全方位から射出する。同時に、【風操作(大) Lv.1】で不規則な軌道を与え、回避を困難にする。

「聖域(サンクチュアリ)!」

アルトは聖剣を地に突き立て、自身の周囲に聖なる光のドーム状の結界を展開した。黒曜石の杭は結界に阻まれ、弾き返される。

(絶対防御結界か…だが、永遠には続かない)

オブシディアンは攻撃の手を緩めない。【火炎ブレス Lv.1】、【電撃ブレス Lv.1】、【腐食溶解液 Lv.1】、そして【鎌鼬 Lv.1】による風の刃。属性の異なる多彩な攻撃を、結界目掛けて叩き込み続ける。MPは【深淵の心臓 Lv.2】によって急速に回復していくため、消耗を気にする必要はない。

結界は強固だったが、絶え間ない猛攻によって徐々にその輝きを失い、表面にヒビが入り始めた。

「くっ…!」

アルトは結界を維持しながらも、苦悶の表情を浮かべている。MPの消耗も激しいのだろう。

(そろそろ、潮時か)

オブシディアンは【混沌変異】で自身の右腕を、テラ・ガーディアンから得た知識を元に設計した、対結界用の巨大なパイルバンカーのような形状へと変化させた。【万物創造】で生成した高密度の黒曜石の杭を装填し、【エーテル操作理論 Lv.1】を応用して瞬間的に莫大なエネルギーをチャージする。

そして、アルトの結界が限界に達し、砕け散った瞬間を狙い、渾身の一撃を放った。

ゴォォォンッ!!

凄まじい衝撃音と共に、黒曜石の杭がアルトの鎧を貫き、その身体を大きく吹き飛ばした。

「アルト様!」

周囲の兵士たちが悲鳴を上げる。アルトは地面に叩きつけられ、白銀の鎧は砕け、口からは血が流れている。HPも残りわずかだろう。

オブシディアンは、止めを刺すべく、ゆっくりとアルトへと近づいていく。

(これで終わりだ、英雄。貴様の魂と知識、そしてその可能性、全て俺が喰らってやろう)

しかし、アルトは倒れなかった。彼は、砕けた鎧の中から、なおも強い意志の光を目に宿し、聖剣アルティウスを支えにして、ゆっくりと立ち上がろうとしていた。

「…まだだ…まだ、終われない…!」

アルトの身体から、再び黄金色の光が溢れ出す。それは、傷を癒やし、力を回復させる光。英雄の魂が持つ、不屈の力の発露か。あるいは、聖剣自身が持つ力か。

「俺は…この世界を…人々を…守ると誓ったんだ!」

アルトは再び聖剣を構える。その姿は満身創痍でありながら、先ほどまでとは比較にならないほどの、神々しいオーラを放っていた。まるで、最後の輝きを放つ星のように。

(ほう…まだ奥の手があったか。面白い)

オブシディアンは、アルトのその姿に、破壊衝動とは異なる、純粋な知的好奇心を刺激されていた。この英雄の魂の輝き、その根源にあるものは何か。それを理解したい。喰らい尽くしたい。

オブシディアンもまた、カオス・アビスとしての全力を解放する。【深淵領域 Lv.3】がさらに拡大し、戦場全体を深淵の闇が覆い尽くそうとする。その漆黒の身体からは、制御された混沌のエネルギーが奔流のように溢れ出し、空間そのものを歪ませる。

英雄の最後の輝きと、深淵の混沌の化身。光と闇、秩序と混沌。相反する二つの究極的な存在が、今、雌雄を決するべく、互いに最大の一撃を放とうとしていた。

戦場の全ての者が息を呑み、その瞬間を見守る。この一撃が、この戦争の、そしてあるいは世界の未来を決定づけるのかもしれない。眩い光と深淵の闇が、激突するその刹那――。

名前: オブシディアン
種族: カオス・アビス (ユニーク種族)
称号: 影に潜む者 (効果向上), 墓守殺し, 混沌を統べる者, 竜殺し, 風を征す者, 炎心を識る者, ヒュドラ・ベイン, 叡智を探求する者, 英雄殺し, 聖域侵犯者, 天門を破りし者, 巨獣を制す者, 星読みの民の記憶, 理を識る者, 時詠みに認められし者, 狂科学の略奪者
所属: 未定義(調律者からミッション受諾)

【能力値】
体力: 65
魔力容量: 93
物理攻撃力: 24
物理防御力: 42
魔法攻撃力: 32
魔法防御力: 53
素早さ: 45

【スキル】
(戦闘により一部スキルの熟練度が上昇)
・虚無捕食 Lv.3
・混沌変異 Lv.3
・生物発光 Lv.1
・闇視 Lv.1
・噛みつき耐性(微) Lv.1
・跳躍 Lv.1
・嗅覚強化 Lv.1
・糸生成 Lv.2
・毒耐性(大) Lv.1
・金剛鱗 Lv.1
・爪撃 Lv.2
・腐食溶解液 Lv.1
・物理耐性(小) Lv.1
・万物創造(上級) Lv.1
・アンデッド耐性(微) Lv.1
・死霊魔術(初級) Lv.1
・狂気耐性(中) Lv.1
・ブレス耐性(大) Lv.1
・怨念耐性(小) Lv.1
・深淵の心臓 Lv.2
・軍団指揮 Lv.1
・水中浮遊機動 Lv.1
・粘液噴射 Lv.1
・麻痺耐性(小) Lv.1
・壁面歩行(小) Lv.1
・鎌鼬 Lv.1
・蟲の共鳴 Lv.1
・王者のカリスマ Lv.1
・猛禽の目 Lv.1
・古代言語完全解読
・魅了耐性(微) Lv.1
・突風耐性(小) Lv.1
・風操作(大) Lv.1
・火炎耐性(極) Lv.1
・熱源感知 Lv.1
・エレメンタル知識(五大) Lv.2
・超再生(小) Lv.1
・火炎ブレス Lv.1
・墨噴射 Lv.1
・三叉槍術(初級) Lv.1
・古代魔術耐性(微) Lv.1
・見張り Lv.1
・電撃耐性(中) Lv.1
・聖属性耐性(小) Lv.1
・光学兵器制御 Lv.1
・古代戦略知識 Lv.1 -> Lv.2
・固有スキル【深淵領域 Lv.3】
・固有スキル【因果歪曲(小) Lv.1】
・光合成(微) Lv.1
・聖光 Lv.1
・森との同調 Lv.1
・魅了の花粉 Lv.1
・天翔ける翼 Lv.1
・電撃ブレス Lv.1
・エレメンタル知識(雷) Lv.1
・空気抵抗軽減 Lv.1
・超古代科学知識 Lv.1
・砂中潜行 Lv.1
・乾燥耐性(中) Lv.1
・幻覚耐性(微) Lv.1
・消化液分泌 Lv.1
・強酸耐性(中) Lv.1
・無機物捕食 Lv.1
・生体制御(小) Lv.1
・自然エネルギー同調 Lv.1
・空間歪曲耐性(小) Lv.1
・短距離転移(微) Lv.1
・重力耐性(小) Lv.1
・重力操作(微) Lv.1
・時間感覚麻痺 Lv.1
・未来予知(断片) Lv.1
・時間操作耐性(小) Lv.1
・機械工学(高度) Lv.1
・サイバネティクス技術(高度) Lv.1
・時空間工学(初級) Lv.1
・エーテル操作理論 Lv.1
・深淵魔法(初級) Lv.1
・エネルギー暴走制御 Lv.1
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

ミックスブラッドオンライン・リメイク

マルルン
ファンタジー
 ある日、幼馴染の琴音に『大学進学資金』の獲得にと勧められたのは、何と懸賞金付きのVRMMOの限定サーバへの参加だった。名前は『ミックスブラッドオンライン』と言って、混血がテーマの一風変わったシステムのゲームらしい。賞金の額は3億円と破格だが、ゲーム内には癖の強い振るい落としイベント&エリアが満載らしい。  たかがゲームにそんな賞金を懸ける新社長も変わっているが、俺の目的はどちらかと言えば沸点の低い幼馴染のご機嫌取り。そんな俺たちを待ち構えるのは、架空世界で巻き起こる破天荒な冒険の数々だった――。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

処理中です...