【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ

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第12話:信頼の証と警備ゴーレム

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執事ゴーレム「アルフレッド」の加入は、リアムとルナの生活を劇的に改善した。アルフレッドはリアムの命令に忠実に、そして驚くほど効率的に雑務をこなした。小屋の清掃、洗濯、畑の水やり、薪割り、そしてリアムが教えた簡単な調理補助まで、文句一つ言わずに黙々と作業を続けた。

そのおかげで、リアムは《概念創造》の実験や新たな創造物の構想により多くの時間を割けるようになり、ルナも魔法の研究や練習、そして森の探索に集中できるようになった。二人の負担は大幅に軽減され、精神的な余裕も生まれた。

アルフレッドは、命令されたこと以外は基本的に何もしない。ただ静かに待機しているか、あるいは自律的に周囲の清掃などを行っているだけだ。感情のない石の従者。しかし、その存在は確かに二人の生活を豊かにし、そしてどこか安心感を与えてくれていた。

「アルフレッド、本当に便利ね」ルナが感心したように呟く。「彼がいるだけで、こんなに違うなんて」
「ああ。魔力消費は大きかったけど、創って正解だった」リアムも頷く。「だが、アルフレッドはあくまで家事用だ。戦闘能力はほとんどない。次に必要なのは、俺たちが安心して眠ったり、探索に出かけたりできるための、しっかりとした『警備』だな」

辺境の森の脅威は、依然として存在している。ルナが張った結界は弱い魔物を寄せ付けないが、より強力な魔物や、あるいは悪意を持った人間(追放者や盗賊など)が現れないとも限らない。現状、戦闘力はルナの魔法頼みだが、彼女が常に警戒していられるわけではない。

「警備用のゴーレムか……」ルナは少し考え込む。「アルフレッドを創った時のように、またリアムに大きな負担がかかるのでは?」
彼女は、アルフレッドを創造した後のリアムの消耗ぶりを目の当たりにしていたため、心配しているのだ。
「確かに負担は大きいだろうな。でも、安全には代えられない。それに、今度はもう少し効率的に創れるかもしれない。アルフレッドの創造で、ゴーレムの基本構造はある程度理解できたから」

リアムは、警備ゴーレムのコンセプトを練り始めた。
(執事型とは違う。必要なのは、高い耐久力、一定の戦闘能力、そして優れた索敵・警戒能力だ。外見は……人型である必要はないかもしれない。むしろ、四足歩行の獣型の方が、安定性や威圧感があるだろうか? 素材は、アルフレッドよりもさらに頑丈な鉱石を組み合わせた合金がいい。武器は……爪や牙のような物理的なものと、牽制用の簡単な魔法攻撃も付与できれば理想的だ。そして、アルフレッドと同様、俺の命令への絶対服従は必須)

「頑丈で、警戒能力が高く、命令に忠実な、獣型の警備ゴーレム」――その概念を固めていく。

今回は、前回の反省を活かし、魔力消費を少しでも抑える工夫も考えた。一度に全ての機能を付与するのではなく、まず基本的な素体を作り、後から追加機能として武装や索敵能力を付与していく、段階的な創造プロセスを試してみることにした。

準備を整え、リアムは再び小屋の外の開けた場所に出た。ルナとアルフレッドが、少し離れた場所から心配そうに見守っている。
「よし……創るぞ!」

《概念創造》を発動。やはり莫大な魔力が吸い上げられるが、今回は意識を「頑丈な獣型の素体」に集中させる。前回ほどの極端な消耗感はない。制御も比較的容易だ。
目の前の空間に魔力が集まり、金属質の粒子が結合していく。形作られていくのは、狼か、あるいは大型犬のような、四足歩行のシルエット。しかし、筋肉の代わりに分厚い装甲板が組み合わされ、鋭い爪と牙を備えている。大きさは大型の狼よりも一回り大きい。全身が鈍い黒鉄色に輝いていた。

素体が完成した。リアムは一度魔力の供給を止め、息を整える。まだ疲労はあるが、前回のように意識が飛びそうになるほどではない。
「第一段階、成功だ」

次に、第二段階。「索敵・警戒能力の付与」。魔物の気配や敵意を感知し、異常があれば警告を発する機能。これを、素体の頭部に埋め込まれた赤い宝石のようなセンサーアイに付与するイメージで、《概念創造》を再開する。消費魔力は第一段階よりは少ない。
ゴーレムの頭部のセンサーアイが、カッと赤い光を放ち、周囲をスキャンするように動いた。

そして、第三段階。「限定的な戦闘能力の付与」。爪や牙による物理攻撃に加え、口から威嚇や牽制のための小さな「魔力弾」を発射できる機能。これを付与する。これも、それほど大きな魔力消費ではなかった。
ゴーレムの爪がより鋭く、牙がより強靭なものへと変化し、口元に微かな魔力の残滓が見えるようになった。

「――起動」
リアムが命令すると、黒鉄の獣型ゴーレムは、赤いセンサーアイを明滅させながら、ゆっくりと起き上がった。グルルル……という、機械的な低い唸り声が喉から漏れる。アルフレッドとは明らかに違う、獰猛な雰囲気を漂わせていた。

ゴーレムはリアムの前に進み出て、その場に伏せの姿勢をとった。
『……命令ヲ……』
アルフレッドよりもさらに無機質で、低い声だった。

「お前は今日から、この拠点の警備を担当する。名前は……そうだな、番犬という意味で『ケルベロス』と呼ぼう。いや、頭は一つだから……『ガルム』にしよう」
『……ガルム……認識……』

警備ゴーレム、ガルムの誕生だった。段階的な創造プロセスは成功し、魔力消費も前回よりは抑えることができた。それでも、リアムはかなりの疲労を感じていたが。

「これで、夜の見張りや、私たちが探索に出ている間の留守番も任せられるわね」ルナが安堵の表情で近づいてくる。彼女も、ガルムの威圧的な姿には少し驚いているようだったが、頼もしさを感じているようだった。

アルフレッドが静かに家事をこなし、ガルムが拠点の周囲を鋭い目で見張る。リアムとルナは、これでようやく、本格的な周辺地域の探索や、より高度な《概念創造》、魔法研究に集中できる環境を手に入れた。

その夜、リアムはガルムに拠点の周囲を警戒させ、アルフレッドに簡単な夜食(創造した果物と、ルナが見つけてきた木の実を混ぜたもの)を用意させた。小屋の中では、ルナが古代魔法の書物(これもリアムが彼女の記憶を頼りに《概念創造》で再現したものだ)を熱心に読みふけっている。

リアムは、自分が創り出した従者たちと、信頼できる仲間であるルナに囲まれ、満たされた気持ちでいた。追放された時は、こんな未来が待っているとは想像もできなかった。

(失ったものは大きい。でも、ここで得たものも、決して小さくはないはずだ)

彼は、ルナに声をかけた。
「ルナ、いつもありがとう。君がいてくれて、本当に助かっている」
それは、日頃の感謝の気持ちを込めた、素直な言葉だった。

ルナは書物から顔を上げ、少し驚いたようにリアムを見た。そして、ふわりと微笑んだ。
「私もよ、リアム。あなたがいてくれなかったら、私はとっくに……。それに、こうしてまた魔法を使えるようになったのも、あなたのおかげだわ。ありがとう」
彼女の手が、無意識に手首のブレスレットを撫でる。それは、二人の信頼の証だった。

言葉は少なくとも、互いの存在が支えになっていることを、二人は確かに感じていた。
石の従者たちが静かに働く中、リアムとルナの間には、穏やかで、温かい空気が流れていた。辺境での生活は、厳しさの中にも、確かな絆と希望を育んでいた。それは、まるで厳しい冬の土壌から芽吹く、小さな若葉のようだった。
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