【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ

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第13話:未開拓地の日常とルナの笑顔

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執事ゴーレムのアルフレッドと警備ゴーレムのガルムが加わったことで、リアムとルナの生活は新たな段階に入った。日々の雑務や警戒はゴーレムたちに任せられるようになり、二人はそれぞれの能力を活かした活動により多くの時間を費やすことができるようになった。

リアムは、《概念創造》の可能性を探求することに没頭した。より効率的な魔力運用方法、より複雑な構造物の創造、さらには既存の物品に新たな「概念」を付与すること――例えば、彼が普段使っているナイフに「切れ味が鈍りにくい」という概念を付与したり、小屋の壁に「断熱性を高める」概念を付与したりといった実験を繰り返した。失敗も多かったが、少しずつ、この規格外の力の輪郭が見えてくるような気がしていた。

一方のルナは、リアムが創造した古代魔法の書物を読み解きながら、失われた知識の習得と魔法の鍛錬に励んでいた。彼女の魔法回路は、リアムが創ったブレスレットによって安定しており、以前のように暴走の危険に怯えることなく、様々な魔法を試すことができた。時には、リアムの《概念創造》の実験に協力し、魔法的な観点からのアドバイスをくれることもあった。

「リアム、その『断熱性』の概念だけど、もしかしたら風の精霊の力を応用できるかもしれないわ。空気の層を壁の中に固定するようなイメージで……」
「なるほど、精霊の力か……。参考になるよ、ありがとう、ルナ」

そんなふうに、二人は互いの知識や能力を共有し、刺激し合いながら、それぞれの分野で成長を続けていた。

ゴーレムたちの存在は、日常に安定と秩序をもたらした。アルフレッドは毎日、寸分の狂いもなく家事をこなし、食事の準備(といっても、まだ簡単なものだが)をし、畑の手入れを行った。彼の無駄のない動きと完璧な仕事ぶりは、もはや二人の生活に不可欠なものとなっていた。

ガルムは、言葉通り忠実な番犬として、拠点の周囲を常に警戒していた。その黒鉄の体躯と鋭い赤いセンサーアイは、近寄る小動物たちを威嚇し、実際に何度か、縄張りに迷い込んできた比較的大型の獣(魔物と呼べるほどではなかったが)を、威嚇の魔力弾で追い払うこともあった。ガルムがいるおかげで、リアムとルナは夜も安心して眠ることができ、日中の活動にもより集中できるようになった。

辺境の森での生活は、依然として外部から隔絶されたものではあったが、もはやそれは「サバイバル」ではなく、「日常」と呼べるものに変わりつつあった。小屋の周りには、リアムが少しずつ拡張・改良した畑が広がり、様々な種類の果実や、ルナが見つけてきた食用の野草が育てられていた。泉の水は常に清らかで、アルフレッドが汲んできてくれる。小屋の中も、アルフレッドの清掃とルナの浄化魔法のおかげで、常に清潔で快適だった。

そんな穏やかな日々の中で、リアムはルナの変化に気づいていた。彼女の表情が、以前よりもずっと明るくなったのだ。出会った頃の、人間への不信と絶望に満ちた影は薄れ、穏やかな微笑みを浮かべている時間が増えた。特に、魔法の練習がうまくいった時や、リアムの《概念創造》の成果に驚いた時などに見せる、屈託のない笑顔は、リアムの心を温かくした。

ある晴れた日の午後、ルナは小屋の前の草地に座り、目を閉じて静かに何かを口ずさんでいた。それは呪文のようでもあり、歌のようでもあった。すると、どこからともなく、色とりどりの小さな光の粒――まるで精霊のようなもの――が集まり始め、彼女の周りを楽しげに飛び交い始めた。

「綺麗だな……それは、どんな魔法なんだ?」リアムがそばに寄って尋ねると、ルナは目を開け、少し照れたように微笑んだ。
「これは魔法というより……精霊たちとの対話、みたいなものよ。私の故郷では、子供の頃によくこうして遊んだの」
彼女の声には、どこか懐かしむような響きがあった。
「故郷……」リアムは、彼女がまだ話していない過去に、少しだけ触れた気がした。

ルナは、飛び交う光の粒を優しい目で見つめながら続けた。
「ここに来るまで……もう、こんなふうに精霊たちと心を通わせることも、忘れていたわ。ずっと、怖くて、苦しくて……」
彼女の表情が一瞬曇る。過去のトラウマが、まだ完全に癒えたわけではないのだろう。

リアムは、何と言葉をかけていいか分からず、ただ黙って隣に座った。
すると、ルナはふっと息をつき、再びリアムに笑顔を向けた。
「でも、今は違う。リアム、あなたのおかげよ。あなたが私を助けてくれて、このブレスレットをくれて……そして、こうして穏やかな時間を与えてくれたから。また、精霊たちの声が聞こえるようになったの」

彼女は、手首のブレスレットにそっと触れた。
「ありがとう、リアム。本当に……」

その言葉と、彼女の心からの笑顔は、リアムにとって何よりの報酬のように感じられた。追放され、全てを失ったと思っていた自分が、誰かを救い、誰かに感謝され、そして誰かの笑顔を取り戻すことができた。その事実は、彼の傷ついた自己肯定感を、少しずつ癒していくようだった。

(俺は、無能なんかじゃない。この力で、誰かを幸せにできるかもしれないんだ)

リアムは、ルナの隣で、彼女と共に飛び交う美しい光の精霊たちを眺めた。アルフレッドが畑で黙々と作業をし、ガルムが少し離れた場所で周囲を警戒している。穏やかで、平和な時間が流れていく。

ここは、王国から遠く離れた辺境の地。だが、リアムにとっては、生まれて初めて心から安らげる、かけがえのない「家」になりつつあった。そして、その家には、信頼できる仲間――ルナと、忠実な従者たちがいる。

リアムは、このささやかな幸せを守りたい、と強く思った。そして、いつかはこの場所を、もっと多くの人が安心して暮らせるような、豊かな場所にしたい、と。そんな未来への希望が、彼の胸の中に静かに灯り始めていた。
空は高く澄み渡り、森の木々が風に揺れている。二人の時間は、これからも続いていく。様々な困難が待ち受けているかもしれないが、今の彼らには、共に乗り越えていけるという確信があった。
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