【鑑定不能】と捨てられた俺、実は《概念創造》スキルで万物創成!辺境で最強領主に成り上がる。

夏見ナイ

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【第73話】 兄の焦燥、私兵の蠢動

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王都アルカディア、アークライト伯爵邸。壮麗な屋敷とは裏腹に、その内部には重く、淀んだ空気が満ちていた。特に、次男アルフォンス・アークライトの執務室は、主の荒れ狂う感情を反映するかのように、物が散乱し、破壊の痕跡すら残っていた。

「……使節団も、失敗だと……? あのグランヴィルでさえ、リアムの小僧と、あの生意気な女(セレスティアのことだ)にしてやられたというのか!?」
アルフォンスは、腹心グスタフからの報告を聞き、顔を怒りと屈辱で真っ赤に染め上げていた。刺客は返り討ち、けしかけた貴族は敗走、そして王国からの公式な圧力さえも、巧みにかわされた。辺境の地にいるはずの弟が、まるで自分を嘲笑うかのように、次々と自分の計略を打ち砕いていく。その事実が、彼のプライドを、もはや回復不能なまでに傷つけていた。

「リアム……リアムッ! なぜだ! なぜ貴様ばかりが!!」
彼は、獣のような叫び声を上げ、手近にあった高価な装飾品を壁に叩きつけた。ガシャン! という派手な音と共に、それは粉々に砕け散った。
王都での彼の立場は、最悪だった。度重なる失策と、今回の辺境での騒動の責任を問われ、父である伯爵からは厳しい叱責と共に、事実上の謹慎を言い渡された。他の貴族たちは、彼を嘲笑し、あるいは憐れみの目を向けるだけで、かつての取り巻きたちも潮が引くように去っていった。有力な騎士団長の候補という輝かしい未来も、もはや完全に潰えたと言っていい。

彼は、完全に孤立していた。そして、その孤立が、彼の心をさらに歪ませ、弟リアムへの憎悪を、狂気的なレベルへと増幅させていた。
(全て、リアムのせいだ……! あいつが現れなければ、俺は……! あいつさえいなければ!)
もはや、彼の思考には、冷静な判断力など欠片も残っていなかった。残っているのは、破壊衝動にも似た、弟への復讐心だけだった。

(こうなれば……もはや、家の体面も、王国の法も関係ない……!)
アルフォンスは、血走った目で、最後の、そして最も無謀な計画を決意した。
(俺自身の手で、あいつを殺す! あの忌々しいアークライト領とやらも、俺がこの手で焼き払ってくれる!)

彼は、父の監視の目を盗み、密かに動き始めた。長年貯め込んできた私財を惜しみなく注ぎ込み、そして、未だ彼に(あるいは金に)忠誠を誓う、わずかな手駒の騎士たちを集めた。それだけでは足りない。彼は、闇のルートを通じて、腕は立つが素性は知れない、命知らずの傭兵たちを、高額な報酬で雇い入れた。

「目的は、辺境のアークライト領の制圧、及びその領主リアム・アークライトの暗殺だ! 成功すれば、望むだけの報酬をやろう!」
アルフォンスは、集めた者たち――騎士と傭兵合わせて、総勢八十名ほど――の前で、狂気に満ちた目で檄を飛ばした。その数は、王国軍や連合軍と比べれば僅かだが、一人ひとりが戦闘のプロフェッショナルであり、隠密行動や奇襲攻撃に長けた、危険な集団だった。

そして、その中には、見覚えのある顔もあった。かつてアークライト領に送り込まれ、リアムたちに敗れ、辛うじて逃げ延びた刺客のリーダー、ゼノンだ。彼は、アルフォンスからの新たな誘いに、二つ返事で応じた。報酬への期待もあったが、それ以上に、彼を打ち負かしたリアムとミリアへの、個人的な復讐心が、彼を突き動かしていたのだ。
「アルフォンス様、今度こそ、必ずや奴らの息の根を止めてご覧にいれます」ゼノンは、顔の傷跡を歪め、獰猛な笑みを浮かべた。

アルフォンスは、ゼノンの言葉に満足げに頷いた。彼は、ゼノンから得たアークライト領の内部情報(ただし、それは既に古く、アークライト側の防衛力がさらに向上していることは知らない)を基に、奇襲計画を練り上げた。
「目標は、領地の西側、森林地帯から侵入する。壁の建設が遅れており、警備も手薄なはずだ。夜陰に乗じて一気に拠点へと迫り、リアムの首を掻き、主要施設に火を放つ! 奴らの反撃が始まる前に、全てを終わらせるのだ!」
それは、短期決戦を狙った、大胆かつ無謀な作戦だった。彼らは、アークライト領が既に自分たちの動きを察知し、周到な罠を準備していることなど、知る由もなかった。

数日後、準備を整えたアルフォンス率いる私兵団は、夜陰に乗じて、密かに王都を出立した。アルフォンス自身も、特注の黒い鎧に身を包み、馬上から、復讐心に燃える狂気の光を目に宿していた。その姿は、もはや誇り高き貴公子ではなく、破滅へと突き進む亡者のようだった。
「待っていろ、リアム……! 今度こそ、貴様を地獄へ送ってやる……!」

アルフォンスの最後の暴挙。その不穏な動きは、しかし、セレスティアが張り巡らせた情報網によって、いち早くアークライト領にもたらされていた。
「……リアム様、やはり動きがありました。アルフォンス様が、自ら私兵を率い、こちらへ向かっているとの確報です。規模は約八十。おそらく、数日中に領地境界に到達するでしょう」
執務室で報告を受けたリアムは、静かに頷いた。
「……そうか。ついに、直接来たか、兄上」
彼の表情は硬かったが、そこには恐怖ではなく、むしろ、来るべき時が来たという、決意の色が浮かんでいた。

「全領に最終警戒態勢を通達。迎撃準備を開始する。セレスティア、敵の正確な侵攻ルートと到着時刻を予測してくれ。ルナ、ミリア、ドルガン、最終確認を頼む」
リアムの指示は、迅速かつ的確だった。彼は、兄の最後の暴挙を、アークライト領の総力を挙げて迎え撃つ覚悟を決めたのだ。

王都を出立したアルフォンスの私兵団。その前途に待つのは、輝かしい勝利ではなく、周到に準備された鉄壁の罠と、弟による容赦のない「ざまぁ」の鉄槌であることを、彼はまだ知らない。アークライト領の静かな夜空の下、最後の戦いに向けた準備が、静かに、しかし着実に進められていた。リアムは、窓の外の闇を見つめながら、兄との、そして過去との、最後の決着をつける時が来たことを感じていた。
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