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第26話:創造主の心臓
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轟音と粉塵が支配する神殿の奥深く。巨大な柱の下敷きになり、機能を停止しかけている機械の巨兵『ガーディアン・ポセイドン』。その剥き出しになった胸部で、青白いエネルギーコアが、まるで最後の生命の灯火のように、不気味な脈動を繰り返していた。
「……チャンスは、一度きり」
瓦礫の陰から、シオンが息を殺して呟いた。彼の鷹のような目が、寸分の狂いもなく、あの弱点を捉えている。
「でも、あいつ、まだ動くわよ!」
メイプルの叫び通り、ガーディアンは完全に沈黙してはいなかった。下半身は動かずとも、残った片腕や肩の武装が、最後の抵抗として火を噴き始めた。無数の小型ミサイルやレーザーが、無差別に周囲の瓦礫を薙ぎ払う。
「このままじゃ、コアに近づけない!」
ケンが、遮蔽物の後ろで歯噛みする。
全員が満身創痍。MPも、回復薬も、ほとんど底を突きかけている。この状況を打開し、あの一点に全てを叩き込む。それは、奇跡に近い芸当だった。
「……道を、創ります」
皆の絶望を打ち破るように、カナデが静かに、しかし力強く言った。
「俺が、コアへの道を創る。メイプルさんは、その道の盾になってください。ケンさん、シオンさん、あなたたちの最大火力を、その道を通して、コアに叩き込んでください!」
それは、このパーティだからこそ可能な、最後の総力戦だった。
「了解!」
「言われるまでもないわ!」
「……あなたになら、任せられる」
四人の心が、一つになった。
「行くわよ!」
メイプルが、砕け散った盾の代わりに、近くに転がっていた巨大な瓦礫を両手で抱え、即席の盾として構えた。そして、ガーディアンの弾幕の中へと、雄叫びを上げて飛び込んでいく。
「おらおらおら! こっちよ、鉄くずがああ!」
彼女の無謀とも思える突撃が、ガーディアンの注意を一身に引きつけた。そのわずかな時間稼ぎが、カナデに好機をもたらす。
「『シェイピング』!」
カナデは、周囲に散らばる無数の瓦礫にスキルを発動させた。瓦礫が、まるで磁石に引かれる砂鉄のように集まり、形を変え、一つの構造物を生み出していく。
それは、ケンとシオンがいる場所から、ガーディアンの胸元のコアまでを一直線に結ぶ、空中回廊だった。不安定な瓦礫でできた、今にも崩れそうな、しかし確かに存在する、勝利への道。
「ケン、シオン! 行きなさい!」
瓦礫の盾でミサイルを受け止めながら、メイプルが叫ぶ。彼女の身体は、もうボロボロだった。
「道は、俺が維持します! お願いします!」
カナデも、空中回廊を維持するために、最後のMPを振り絞っていた。
「「応!」」
ケンとシオンは、カナデが創り出した空中回廊を、疾風のように駆け抜けた。
ガーディアンが、その動きに気づき、二人に向かってレーザーを放つ。
だが、その射線上に、カナデが新たな瓦礫の壁を瞬時に創造し、レーザーを防いだ。
「――我が魔力の全てを、この一撃に!」
ケンが、空中回廊の先端で立ち止まり、詠唱を開始する。彼の杖に、これまでにないほどの膨大な魔力が収束していく。
「――我が魂の矢よ、星霜を貫け!」
シオンは、走りながら弓を引き絞る。彼の矢の先端には、彼の全スキルと精神力を込めた、一点の輝きが宿っていた。
ガーディアンは、最後の抵抗として、胸のコアの出力を最大まで引き上げた。自爆するつもりだ。コアの周囲の空間が、エネルギーの高まりによって歪み始める。
「まずい、爆発する!」
「まだだ!」
カナデは、残ったけして多くないMPを全て注ぎ込み、最後の創造を行う。
「『フィールド・クラフト:監獄結界(プリズン・フィールド)』!」
ガーディアンのコア、その周囲半径数メートルの空間だけを、超高密度のエネルギーフィールドで包み込んだ。爆発のエネルギーを、その一点に封じ込めるための、究極の棺桶。
カナデの視界が、MPと精神力の枯渇によって、真っ白に染まっていく。
そして、全てが、同時に放たれた。
ケンの最大火力魔法『ファイナル・バースト』。
シオンの必殺スキル『ステラ・アロー』。
二つの絶大な攻撃が、螺旋を描くように絡み合いながら、無防備なエネルギーコアに、寸分の狂いもなく突き刺さった。
次の瞬間、カナデの創り出した監獄結界の内側で、世界が生まれたかのような、無音の爆発が起こった。
全ての光が、全てのエネルギーが、その一点に圧縮され、そして、内側から崩壊していく。
ガーディアン・ポセイドンの赤い単眼から、光が消えた。
神々の鉄槌は、人の子らの、開拓者たちの、決して諦めない意志の前に、ついに完全に沈黙した。
***
どれくらいの時間が経っただろうか。
カナデが意識を取り戻すと、そこは静寂に包まれていた。仲間たちが、心配そうに彼を覗き込んでいる。
「……勝った、んですね」
「ああ。君のおかげだ」
ケンが、差し出した手でカナデを起こす。
ガーディアンがいた場所には、巨大な残骸と、ぽっかりと空いた大穴だけが残されていた。そして、その大穴の底で、一つのアイテムが、静かに青い光を放っていた。
それは、渦巻く海流が封じ込められた、水晶の海図のようなものだった。
【創生の設計図:深淵の海図】
・レアリティ:ゴッド
・種別:キーアイテム
・効果:世界の『海』の理を司る、創生の設計図の欠片。所持者に、世界の海を創造し、支配する権能の一部を与える。
「やった……! これが、二つ目の欠片……!」
メイプルが、歓声を上げる。
カナデが、その『深淵の海図』を手に取った、その瞬間。彼の脳内に、直接、世界の理が流れ込んできた。
《『創生の設計図』との同調を確認》
《あなたの権能が拡張されます》
《ユニークスキル【フィールド・クラフト】は、新たな概念を獲得し、進化の兆しを見せ始めました》
彼のスキルツリーが、目の前で光り輝く。
『フィールド・クラフト』の、さらにその先に、一つの新たなスキルが、鍵のかかった状態で表示されていた。
【ワールド・クリエイト(世界創造)】
――あなただけの世界(ダンジョン)を、無から創造する。
「……自分だけの、世界……?」
カナデは、その途方もない言葉に、息を呑んだ。
地形を創り、空間を創り、そしてついには、世界そのものを創る。彼の力が、また一つ、神の領域へと近づこうとしていた。
その時、神殿全体が、主を失ったことで、最後の崩壊を始めた。天井から、巨大な瓦礫が次々と降り注いでくる。
「まずい! 脱出するわよ!」
「出口は、あそこだ!」
ガーディアンがいた場所の、さらに奥。祭壇の後ろに、地上へと繋がる緊急脱出用の転移ゲートが起動していた。
四人は、最後の力を振り絞り、崩れゆく神殿の中を駆け抜ける。
転移ゲートの光に包まれる直前、カナデは振り返った。
神々の技術が眠る、壮麗な海底神殿。それは今や、彼らの手によって、海の藻屑と消えようとしていた。
一つの伝説が終わり、そして、新たな伝説が始まろうとしている。
カナデは、手の中にある『深淵の海図』を強く握りしめた。
この力で、リリアを救う。そして、ゼノの野望を止める。
彼の決意は、深海の底で、より強く、より硬いものとなっていた。
次なる舞台は、どこになるのか。そして、この『ワールド・クリエイト』の力は、一体何を可能にするのか。
答えはまだ、誰にも分からない。
「……チャンスは、一度きり」
瓦礫の陰から、シオンが息を殺して呟いた。彼の鷹のような目が、寸分の狂いもなく、あの弱点を捉えている。
「でも、あいつ、まだ動くわよ!」
メイプルの叫び通り、ガーディアンは完全に沈黙してはいなかった。下半身は動かずとも、残った片腕や肩の武装が、最後の抵抗として火を噴き始めた。無数の小型ミサイルやレーザーが、無差別に周囲の瓦礫を薙ぎ払う。
「このままじゃ、コアに近づけない!」
ケンが、遮蔽物の後ろで歯噛みする。
全員が満身創痍。MPも、回復薬も、ほとんど底を突きかけている。この状況を打開し、あの一点に全てを叩き込む。それは、奇跡に近い芸当だった。
「……道を、創ります」
皆の絶望を打ち破るように、カナデが静かに、しかし力強く言った。
「俺が、コアへの道を創る。メイプルさんは、その道の盾になってください。ケンさん、シオンさん、あなたたちの最大火力を、その道を通して、コアに叩き込んでください!」
それは、このパーティだからこそ可能な、最後の総力戦だった。
「了解!」
「言われるまでもないわ!」
「……あなたになら、任せられる」
四人の心が、一つになった。
「行くわよ!」
メイプルが、砕け散った盾の代わりに、近くに転がっていた巨大な瓦礫を両手で抱え、即席の盾として構えた。そして、ガーディアンの弾幕の中へと、雄叫びを上げて飛び込んでいく。
「おらおらおら! こっちよ、鉄くずがああ!」
彼女の無謀とも思える突撃が、ガーディアンの注意を一身に引きつけた。そのわずかな時間稼ぎが、カナデに好機をもたらす。
「『シェイピング』!」
カナデは、周囲に散らばる無数の瓦礫にスキルを発動させた。瓦礫が、まるで磁石に引かれる砂鉄のように集まり、形を変え、一つの構造物を生み出していく。
それは、ケンとシオンがいる場所から、ガーディアンの胸元のコアまでを一直線に結ぶ、空中回廊だった。不安定な瓦礫でできた、今にも崩れそうな、しかし確かに存在する、勝利への道。
「ケン、シオン! 行きなさい!」
瓦礫の盾でミサイルを受け止めながら、メイプルが叫ぶ。彼女の身体は、もうボロボロだった。
「道は、俺が維持します! お願いします!」
カナデも、空中回廊を維持するために、最後のMPを振り絞っていた。
「「応!」」
ケンとシオンは、カナデが創り出した空中回廊を、疾風のように駆け抜けた。
ガーディアンが、その動きに気づき、二人に向かってレーザーを放つ。
だが、その射線上に、カナデが新たな瓦礫の壁を瞬時に創造し、レーザーを防いだ。
「――我が魔力の全てを、この一撃に!」
ケンが、空中回廊の先端で立ち止まり、詠唱を開始する。彼の杖に、これまでにないほどの膨大な魔力が収束していく。
「――我が魂の矢よ、星霜を貫け!」
シオンは、走りながら弓を引き絞る。彼の矢の先端には、彼の全スキルと精神力を込めた、一点の輝きが宿っていた。
ガーディアンは、最後の抵抗として、胸のコアの出力を最大まで引き上げた。自爆するつもりだ。コアの周囲の空間が、エネルギーの高まりによって歪み始める。
「まずい、爆発する!」
「まだだ!」
カナデは、残ったけして多くないMPを全て注ぎ込み、最後の創造を行う。
「『フィールド・クラフト:監獄結界(プリズン・フィールド)』!」
ガーディアンのコア、その周囲半径数メートルの空間だけを、超高密度のエネルギーフィールドで包み込んだ。爆発のエネルギーを、その一点に封じ込めるための、究極の棺桶。
カナデの視界が、MPと精神力の枯渇によって、真っ白に染まっていく。
そして、全てが、同時に放たれた。
ケンの最大火力魔法『ファイナル・バースト』。
シオンの必殺スキル『ステラ・アロー』。
二つの絶大な攻撃が、螺旋を描くように絡み合いながら、無防備なエネルギーコアに、寸分の狂いもなく突き刺さった。
次の瞬間、カナデの創り出した監獄結界の内側で、世界が生まれたかのような、無音の爆発が起こった。
全ての光が、全てのエネルギーが、その一点に圧縮され、そして、内側から崩壊していく。
ガーディアン・ポセイドンの赤い単眼から、光が消えた。
神々の鉄槌は、人の子らの、開拓者たちの、決して諦めない意志の前に、ついに完全に沈黙した。
***
どれくらいの時間が経っただろうか。
カナデが意識を取り戻すと、そこは静寂に包まれていた。仲間たちが、心配そうに彼を覗き込んでいる。
「……勝った、んですね」
「ああ。君のおかげだ」
ケンが、差し出した手でカナデを起こす。
ガーディアンがいた場所には、巨大な残骸と、ぽっかりと空いた大穴だけが残されていた。そして、その大穴の底で、一つのアイテムが、静かに青い光を放っていた。
それは、渦巻く海流が封じ込められた、水晶の海図のようなものだった。
【創生の設計図:深淵の海図】
・レアリティ:ゴッド
・種別:キーアイテム
・効果:世界の『海』の理を司る、創生の設計図の欠片。所持者に、世界の海を創造し、支配する権能の一部を与える。
「やった……! これが、二つ目の欠片……!」
メイプルが、歓声を上げる。
カナデが、その『深淵の海図』を手に取った、その瞬間。彼の脳内に、直接、世界の理が流れ込んできた。
《『創生の設計図』との同調を確認》
《あなたの権能が拡張されます》
《ユニークスキル【フィールド・クラフト】は、新たな概念を獲得し、進化の兆しを見せ始めました》
彼のスキルツリーが、目の前で光り輝く。
『フィールド・クラフト』の、さらにその先に、一つの新たなスキルが、鍵のかかった状態で表示されていた。
【ワールド・クリエイト(世界創造)】
――あなただけの世界(ダンジョン)を、無から創造する。
「……自分だけの、世界……?」
カナデは、その途方もない言葉に、息を呑んだ。
地形を創り、空間を創り、そしてついには、世界そのものを創る。彼の力が、また一つ、神の領域へと近づこうとしていた。
その時、神殿全体が、主を失ったことで、最後の崩壊を始めた。天井から、巨大な瓦礫が次々と降り注いでくる。
「まずい! 脱出するわよ!」
「出口は、あそこだ!」
ガーディアンがいた場所の、さらに奥。祭壇の後ろに、地上へと繋がる緊急脱出用の転移ゲートが起動していた。
四人は、最後の力を振り絞り、崩れゆく神殿の中を駆け抜ける。
転移ゲートの光に包まれる直前、カナデは振り返った。
神々の技術が眠る、壮麗な海底神殿。それは今や、彼らの手によって、海の藻屑と消えようとしていた。
一つの伝説が終わり、そして、新たな伝説が始まろうとしている。
カナデは、手の中にある『深淵の海図』を強く握りしめた。
この力で、リリアを救う。そして、ゼノの野望を止める。
彼の決意は、深海の底で、より強く、より硬いものとなっていた。
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