ワールド・リクリエイター 〜不遇職『地形師』は、サーバーごと世界を創り変える〜

夏見ナイ

文字の大きさ
25 / 80

第25話:神の鉄槌と開拓者の閃き

しおりを挟む
海底神殿ポセイドニアの心臓部。ゼノ率いるアヴァロンが撤退したのも束の間、ジオ・フロンティアの前に立ちはだかったのは、神殿の最終防衛システム『ガーディアン・ポセイドン』。全長五十メートルを超える、神々の技術の結晶たる機械の巨兵だった。

「……冗談でしょ」
メイプルが、乾いた笑いを浮かべながら呟いた。その巨大さ、放たれる威圧感、分厚い未知の金属でできた装甲。全てが、これまで戦ってきたどんな敵とも次元が違っていた。

ピ、とガーディアンの赤い単眼(モノアイ)が光り、四人を『排除対象』としてロックオンする。
次の瞬間、その巨腕が、凄まじい速度で薙ぎ払われた。

「伏せて!」
カナデの叫びとほぼ同時に、巨腕が通過した空間の全てが、衝撃波によって粉砕される。神殿の巨大な柱ですら、いともたやすくへし折られた。

「掠っただけで即死よ、あんなの!」
「速度も、我々の反応速度を上回っている。回避は困難だ」
シオンもケンも、冷や汗を流しながら敵の性能を分析する。

ガーディアンは、次なる攻撃に移る。単眼から、灼熱の光線――高出力の熱線砲(レーザーカノン)――が放たれた。それは、神殿の床を溶かしながら、一直線にカナデたちへと迫る。
「《リフレクト・ウォール》!」
メイプルが、パーティで唯一、魔法を反射する効果を持つ盾のスキルを発動させる。だが、レーザーの出力が規格外すぎた。
バヂィィィン!
盾はレーザーの直撃に耐えきれず、耐久度がゼロになって砕け散った。メイプルのHPも、一瞬で蒸発しかける。

「メイプル!」
ケンが、慌てて回復魔法をかけるが、焼け石に水だ。
「攻撃が、全く通らない……!」
シオンが、ガーディアンの関節部と思しき箇所を狙って矢を放つが、硬い装甲に弾かれ、火花を散らすだけだった。

火力、速度、防御力。全てにおいて、次元が違う。
カナデは『アナライズ・グラウンド』をガーディアンにかけるが、表示されるのは『解析不能』のエラーメッセージばかり。弱点が、全く分からない。

「ケンさん! さっきのログデータに、こいつの情報はありませんでしたか!?」
「探している! だが、膨大すぎる……! それに、ほとんどが破損している!」
ケンも、必死で水晶のログを読み返すが、有力な情報は得られない。

再び、ガーディアンのレーザーが放たれる。もはや、防御手段はなかった。
絶体絶命。
その時、カナデは叫んだ。
「『フィールド・クラフト:ミラーワールド』!」

彼は、自分たちの目の前に、巨大な鏡の壁を創造した。メイプルのスキルとは違い、それは物理的な盾ではない。空間そのものを、鏡の性質へと『変成』させたのだ。
レーザーは、鏡の壁に反射され、軌道を変えてガーディアン自身の肩に命中した。

ドゴォォォン!
さすがのガーディアンも、自身の超高出力の攻撃には無傷ではいられない。肩の装甲が赤熱し、一部が溶解した。
「やった!」
「自分の攻撃を、跳ね返した!?」

だが、ガーディアンはすぐに学習した。レーザー攻撃を止め、両肩のハッチを開くと、そこから無数の小型ミサイルを発射してきた。
鏡は、物理攻撃には無力だ。
「くそっ!」

カナデは、咄嗟に床を隆起させて壁を作り、ミサイルの直撃を防ぐ。だが、爆風で仲間たちは吹き飛ばされ、パーティは分断されてしまった。
「このままじゃ、ジリ貧だ……。何か、何か手は……」

カナデは、戦場全体を見渡した。圧倒的な巨体を誇るガーディアン。破壊された柱。そして、天井まで届く、まだ無事な何本もの巨大な柱。
その光景を見て、カナデの脳裏に、一つの途方もない閃きが走った。

「……そうだ。敵が『大きい』なら、もっと『大きい』もので、叩き潰せばいい」
「カナデ?」

カナデは、仲間たちに通信を送った。
「皆さん、聞こえますか! 作戦があります! あの無事な柱、あれを倒して、ガーディアンにぶつけます!」
「はぁ!? あんな巨大な柱、どうやって倒すのよ!」
メイプルの素っ頓狂な声が返ってくる。

「俺のスキルだけでは無理です。皆さんの力が必要です!」
カナデは、立て続けに指示を飛ばした。
「メイプルさん、シオンさん! ガーディアンの注意を引きつけて、あの柱の根本まで誘導してください! ケンさん! 魔法で、柱の根本の強度をギリギリまで下げてください! 俺が、最後の仕上げをします!」

無謀すぎる作戦。だが、この絶望的な状況を打開するには、それしか無かった。
「……分かったわ! やってやろうじゃない!」
「了解した。君の奇跡に、乗ってみよう」
「成功確率は低い。だが、やるしかないな」

仲間たちの覚悟が決まった。
メイプルとシオンが、捨て身の覚悟でガーディアンの前に躍り出る。
「おら、こっちよ、鉄くず野郎!」
「あなたの弱点は、その図体のでかさだ!」
二人の巧みな挑発とヒットアンドアウェイで、ガーディアンのヘイトは完全に彼らに向いた。ガーディアンは、苛立ち紛れに二人を追いかけ、巨大な足で地響きを立てながら、カナデが指定した柱の根本へと近づいていく。

「今だ、ケン!」
「我が魔力よ、岩石を砕け! 《アシッド・スプレー》!」
ケンが放った酸の魔法が、柱の根本に降り注ぎ、その表面をジュウジュウと音を立てて溶かしていく。柱の耐久度が、みるみるうちに低下する。

そして、ガーディアンが、柱の真横を通り過ぎようとした、その瞬間。
カナデは、最後の引き金を引いた。
「『シェイピング:重心操作(グラビティ・シフト)』!」

彼のスキルが、巨大な柱の物理法則に干渉する。柱の重心を、意図的にガーディアンの方向へと、極端にずらしたのだ。
ミシミシミシッ!
凄まじい軋み音と共に、数千トンはあろうかという巨大な柱が、そのバランスを失い、ゆっくりと傾き始めた。

「なっ!?」
ガーディアンが、自らの頭上に迫る巨大な脅威に気づき、見上げる。だが、もう遅い。
それは、まるでスローモーションのようだった。
天を支えていたはずの柱が、地響きと共に、ガーディアン・ポセイドンの巨体へと倒れ込んでいく。

ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!

神殿全体を揺るがす、想像を絶する轟音と衝撃。
砂埃が舞い上がり、視界の全てを覆い尽くす。

やがて、砂埃が晴れた時。
そこに広がっていたのは、信じられない光景だった。
ガーディアン・ポセイドンは、巨大な柱の下敷きになり、その体勢を大きく崩していた。全身から火花を散らし、機能不全に陥っているのが分かる。

そして、その衝撃で、ガーディアンの胸部中央の装甲が、大きく剥がれ落ちていた。
その奥で、青白い光を放つ、球形のエネルギーコアが、無防備にその姿を晒している。

「……見つけた」
瓦礫の陰から、シオンが呟いた。その目は、鷹のように、ただ一点の弱点だけを捉えていた。
「あれが、奴の心臓……!」

絶望的な戦況の中に、ようやく差し込んだ、一筋の光明。
だが、ガーディアンはまだ死んではいなかった。下敷きになりながらも、その赤い単眼は、変わらぬ殺意を込めて、カナデたちを睨みつけている。
本当の戦いは、ここからだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺の職業は【トラップ・マスター】。ダンジョンを経験値工場に作り変えたら、俺一人のせいでサーバー全体のレベルがインフレした件

夏見ナイ
SF
現実世界でシステムエンジニアとして働く神代蓮。彼が効率を求めVRMMORPG「エリュシオン・オンライン」で選んだのは、誰にも見向きもされない不遇職【トラップ・マスター】だった。 周囲の冷笑をよそに、蓮はプログラミング知識を応用してトラップを自動連携させる画期的な戦術を開発。さらに誰も見向きもしないダンジョンを丸ごと買い取り、24時間稼働の「全自動経験値工場」へと作り変えてしまう。 結果、彼のレベルと資産は異常な速度で膨れ上がり、サーバーの経済とランキングをたった一人で崩壊させた。この事態を危険視した最強ギルドは、彼のダンジョンに狙いを定める。これは、知恵と工夫で世界の常識を覆す、一人の男の伝説の始まり。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界宇宙SFの建艦記 ――最強の宇宙戦艦を建造せよ――

黒鯛の刺身♪
SF
主人公の飯富晴信(16)はしがない高校生。 ある朝目覚めると、そこは見たことのない工場の中だった。 この工場は宇宙船を作るための設備であり、材料さえあれば巨大な宇宙船を造ることもできた。 未知の世界を開拓しながら、主人公は現地の生物達とも交流。 そして時には、戦乱にも巻き込まれ……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

この世界、貞操が逆で男女比1対100!?〜文哉の転生学園性活〜

妄想屋さん
SF
気がつけば、そこは“男女の常識”がひっくり返った世界だった。 男は極端に希少で守られる存在、女は戦い、競い、恋を挑む時代。 現代日本で命を落とした青年・文哉は、最先端の学園都市《ノア・クロス》に転生する。 そこでは「バイオギア」と呼ばれる強化装甲を纏う少女たちが、日々鍛錬に明け暮れていた。 しかし、ただの転生では終わらなかった―― 彼は“男でありながらバイオギアに適合する”という奇跡的な特性を持っていたのだ。 無自覚に女子の心をかき乱し、甘さと葛藤の狭間で揺れる日々。 護衛科トップの快活系ヒロイン・桜葉梨羽、内向的で絵を描く少女・柊真帆、 毒気を纏った闇の装甲をまとう守護者・海里しずく…… 個性的な少女たちとのイチャイチャ・バトル・三角関係は、次第に“恋と戦い”の渦へと深まっていく。 ――これは、“守られるはずだった少年”が、“守る覚悟”を知るまでの物語。 そして、少女たちは彼の隣で、“本当の強さ”と“愛し方”を知ってゆく。 「誰かのために戦うって、こういうことなんだな……」 恋も戦場も、手加減なんてしてられない。 逆転世界ラブコメ×ハーレム×SFバトル群像劇、開幕。

処理中です...