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第47話:創造主たちのリアルオフ会
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奏太がメッセージを送ってから、数日後。
ジオ・フロンティアの、記念すべき第一回リアルオフ会は、都心にある、少しお洒落なカフェのテラス席で行われることになった。
待ち合わせの時間、少し前に到着した奏太は、緊張した面持ちで、周囲を見回していた。
(どんな人たちなんだろう……)
ゲーム内では、あれほど気心の知れた仲間たち。だが、現実世界で会うのは、もちろん初めてだ。メイプルは、本当に姉御肌の女性なのか。ケンは、無口なクール系イケメンか。シオンは、ミステリアスな美青年か。想像は、膨らむばかりだった。
「あのー……もしかして、カナデさん、ですか?」
不意に、背後から声をかけられた。
奏太が振り返ると、そこに立っていたのは、少し気弱そうな、しかし、人の良さそうな笑顔が印象的な、小柄な女性だった。ふわふわとしたパーマに、オーバーサイズのパーカー。ゲーム内の、あの屈強な聖騎士メイプルの姿とは、似ても似つかない。
「……メイプル、さん?」
「あ、はい! 佐藤楓です! うわー、本物のカナデさんだー! よろしくね!」
楓と名乗った彼女――メイプルは、ゲーム内の快活さはそのままに、ぺこりと頭を下げた。そのギャップに、奏太は思わず微笑んでしまう。
「風見奏太です。こちらこそ、よろしくお願いします」
「それにしても、意外! カナデさんって、もっとこう、理系でガリガリな感じかと思ってた! 普通に爽やかな好青年じゃない!」
「ははは……。メイプルさんこそ、ゲーム内とは全然違いますね」
「やめてよー、あれは理想の姿だから! リアルじゃ、こんなチビでどんくさいんだから……」
二人が、そんな他愛のない話で打ち解けていると、さらに二人の人物が、カフェにやってきた。
一人は、無口でクールというゲーム内のイメージ通り、スラリとした長身に、整った顔立ちの青年だった。黒縁の眼鏡が、その知的な雰囲気を際立たせている。間違いなく、ケンだ。
そして、もう一人。
その人物の姿を見て、奏太と楓は、言葉を失った。
腰まで届く、プラチナブロンドの美しい髪。透き通るような白い肌に、モデルのように長い手足。そして、まるで人形のように整った、中性的な顔立ち。道行く人が、誰もが振り返るほどの、圧倒的な美貌。
それは、ゲーム内のシオンの姿、そのものだった。
「……山田健一です。ケンです」
「……え、えっと……」
その美少女、いや、美青年に見つめられ、楓は完全に固まってしまっている。
「……紫苑(しおん)です。ゲーム内と同じです」
シオンは、少しだけ恥ずかしそうに、しかし、凛とした声で名乗った。彼の本名は、その美しい響きにふさわしいものだった。
こうして、ジオ・フロンティアの四人が、初めて、現実世界で顔を揃えた。
注文したコーヒーを前に、最初は、少しぎこちない空気が流れた。
だが、ゲームの話を始めた途端、その壁は、あっという間に取り払われた。
「いやー、あの時のカナデの無茶ぶりには、マジで肝が冷えたよな!」
「ああ。流砂の上に、ガラスの足場を創り出すとは、常軌を逸している」
「でも、ケンさんだって、氷の橋を魔法で維持し続けるなんて、神業でしたよ」
「あなたの精密な魔力コントロールがあったからこそです。それに、シオンの索敵がなければ、そもそも、ボスにたどり着くことすらできなかった」
「……皆さんの力があったからこそ、私の目も、真価を発揮できただけです」
互いの健闘を称え合い、笑い合う。
その光景は、ゲーム内のギルドハウスで見たものと、何も変わらなかった。
奏太は、この仲間たちと出会えたことを、心の底から、幸福に感じていた。
一通り、冒険の思い出話に花を咲かせた後。
奏太は、意を決して、運営から届いたメールのことを、三人に打ち明けた。
新生『Aethelgard: Re-Genesis』の、公式ワールドデザイナーにスカウトされたこと。
そして、自分は、その誘いを受けようと思っていること。
その話を聞いた三人の反応は、様々だった。
「……すごいじゃない、カナデ!」楓は、目を輝かせて、自分のことのように喜んだ。「あんたの力が、公式に認められたってことよ! 全力で応援するわ!」
「……ワールドデザイナー、か」健一は、眼鏡の位置を直しながら、冷静に、しかし、どこか羨ましそうに言った。「君の創造力なら、当然かもしれないな。情報工学を学ぶ者として、少し、嫉妬する」
そして、紫苑は、静かにコーヒーカップを置くと、真剣な眼差しで、奏太を見つめた。
「……カナデさん。一つ、聞いてもいいですか」
「はい」
「あなたは、その力で、どんな世界を創りたいのですか?」
その問いに、奏ては、少しも迷うことなく答えた。
「誰もが、安心して、心の底から笑える世界です」
彼は、続けた。
「強さだけが、全てじゃない。効率だけが、正義じゃない。不器用でも、遠回りでも、それぞれが、自分のやり方で輝ける場所。リリアが、何の心配もなく、穏やかに暮らせる世界。そして……」
奏太は、三人の顔を、一人ずつ、しっかりと見つめた。
「皆さんのような、かけがえのない仲間たちと、いつまでも、冒険を続けられる世界。俺は、そんな世界を、創りたい」
その、あまりにも真っ直ぐで、青臭いとさえ言えるほどの理想。
だが、その言葉には、嘘偽りのない、彼の魂そのものが込められていた。
紫苑は、満足げに、そして、優しく微笑んだ。
「……素晴らしい。あなたなら、きっと、それができる」
彼は、スッと、一枚の名刺を差し出した。
そこには、『大手ゲームメディア『GameFrontier』専属ライター 紫苑』と書かれていた。
「もし、あなたとその仲間たちの物語を、記事にさせていただけるなら、光栄です。あなたの創る新しい世界を、一番近くで、この目で見届け、そして、世界中の人々に、その素晴らしさを伝えていきたい」
それは、彼なりの、最大限の協力の申し出だった。
「……俺もだ」健一も、名刺を差し出す。「今はまだ、ただの学生だが。いずれ、君の創る世界の、システム面で、何か手伝えることがあるかもしれない。その時は、声をかけてくれ」
「もー! あんたたち、カッコつけちゃって!」楓は、名刺を持っていない自分に、少し拗ねたように言った。「私は、ただのフリーターだけど……でも、一番の応援団として、ずっと、あんたたちの側にいるから! それだけは、約束するわ!」
奏太の瞳が、熱くなった。
ワールドデザイナーとしての道は、きっと、孤独なものになるだろうと思っていた。
だが、違った。
現実世界でも、彼には、こんなにも頼もしく、温かい仲間たちがいた。
「……ありがとうございます、皆さん」
奏太は、込み上げてくる感情を抑え、深々と頭を下げた。
「俺一人じゃ、何もできません。これからも、どうか、俺の、俺たちの世界を、一緒に創ってください」
その言葉に、三人は、最高の笑顔で頷いた。
ジオ・フロンティアの、リアルでの絆が、確かに結ばれた瞬間だった。
この日を境に、彼らの日常は、少しずつ、しかし、確実に変わっていく。
奏太は、大学に通いながら、運営チームとの打ち合わせを重ね、ワールドデザイナーとしての第一歩を踏み出す。
楓は、アルバイトをしながら、新生『Aethelgard』のβテスターとして、誰よりも早く、その世界を体験する。
健一は、大学の研究に没頭しながら、タナトスのような暴走AIを生み出さないための、新たな理論の構築を目指す。
そして、紫苑は、彼らの物語を、美しい筆致で、世界へと発信し始める。
それぞれの道。それぞれの戦い。
だが、彼らの心は、常に一つだった。
いつか、また、あの世界で、全員で笑い合う、その日のために。
そして、約束の時は、少しずつ、近づいてきていた。
ジオ・フロンティアの、記念すべき第一回リアルオフ会は、都心にある、少しお洒落なカフェのテラス席で行われることになった。
待ち合わせの時間、少し前に到着した奏太は、緊張した面持ちで、周囲を見回していた。
(どんな人たちなんだろう……)
ゲーム内では、あれほど気心の知れた仲間たち。だが、現実世界で会うのは、もちろん初めてだ。メイプルは、本当に姉御肌の女性なのか。ケンは、無口なクール系イケメンか。シオンは、ミステリアスな美青年か。想像は、膨らむばかりだった。
「あのー……もしかして、カナデさん、ですか?」
不意に、背後から声をかけられた。
奏太が振り返ると、そこに立っていたのは、少し気弱そうな、しかし、人の良さそうな笑顔が印象的な、小柄な女性だった。ふわふわとしたパーマに、オーバーサイズのパーカー。ゲーム内の、あの屈強な聖騎士メイプルの姿とは、似ても似つかない。
「……メイプル、さん?」
「あ、はい! 佐藤楓です! うわー、本物のカナデさんだー! よろしくね!」
楓と名乗った彼女――メイプルは、ゲーム内の快活さはそのままに、ぺこりと頭を下げた。そのギャップに、奏太は思わず微笑んでしまう。
「風見奏太です。こちらこそ、よろしくお願いします」
「それにしても、意外! カナデさんって、もっとこう、理系でガリガリな感じかと思ってた! 普通に爽やかな好青年じゃない!」
「ははは……。メイプルさんこそ、ゲーム内とは全然違いますね」
「やめてよー、あれは理想の姿だから! リアルじゃ、こんなチビでどんくさいんだから……」
二人が、そんな他愛のない話で打ち解けていると、さらに二人の人物が、カフェにやってきた。
一人は、無口でクールというゲーム内のイメージ通り、スラリとした長身に、整った顔立ちの青年だった。黒縁の眼鏡が、その知的な雰囲気を際立たせている。間違いなく、ケンだ。
そして、もう一人。
その人物の姿を見て、奏太と楓は、言葉を失った。
腰まで届く、プラチナブロンドの美しい髪。透き通るような白い肌に、モデルのように長い手足。そして、まるで人形のように整った、中性的な顔立ち。道行く人が、誰もが振り返るほどの、圧倒的な美貌。
それは、ゲーム内のシオンの姿、そのものだった。
「……山田健一です。ケンです」
「……え、えっと……」
その美少女、いや、美青年に見つめられ、楓は完全に固まってしまっている。
「……紫苑(しおん)です。ゲーム内と同じです」
シオンは、少しだけ恥ずかしそうに、しかし、凛とした声で名乗った。彼の本名は、その美しい響きにふさわしいものだった。
こうして、ジオ・フロンティアの四人が、初めて、現実世界で顔を揃えた。
注文したコーヒーを前に、最初は、少しぎこちない空気が流れた。
だが、ゲームの話を始めた途端、その壁は、あっという間に取り払われた。
「いやー、あの時のカナデの無茶ぶりには、マジで肝が冷えたよな!」
「ああ。流砂の上に、ガラスの足場を創り出すとは、常軌を逸している」
「でも、ケンさんだって、氷の橋を魔法で維持し続けるなんて、神業でしたよ」
「あなたの精密な魔力コントロールがあったからこそです。それに、シオンの索敵がなければ、そもそも、ボスにたどり着くことすらできなかった」
「……皆さんの力があったからこそ、私の目も、真価を発揮できただけです」
互いの健闘を称え合い、笑い合う。
その光景は、ゲーム内のギルドハウスで見たものと、何も変わらなかった。
奏太は、この仲間たちと出会えたことを、心の底から、幸福に感じていた。
一通り、冒険の思い出話に花を咲かせた後。
奏太は、意を決して、運営から届いたメールのことを、三人に打ち明けた。
新生『Aethelgard: Re-Genesis』の、公式ワールドデザイナーにスカウトされたこと。
そして、自分は、その誘いを受けようと思っていること。
その話を聞いた三人の反応は、様々だった。
「……すごいじゃない、カナデ!」楓は、目を輝かせて、自分のことのように喜んだ。「あんたの力が、公式に認められたってことよ! 全力で応援するわ!」
「……ワールドデザイナー、か」健一は、眼鏡の位置を直しながら、冷静に、しかし、どこか羨ましそうに言った。「君の創造力なら、当然かもしれないな。情報工学を学ぶ者として、少し、嫉妬する」
そして、紫苑は、静かにコーヒーカップを置くと、真剣な眼差しで、奏太を見つめた。
「……カナデさん。一つ、聞いてもいいですか」
「はい」
「あなたは、その力で、どんな世界を創りたいのですか?」
その問いに、奏ては、少しも迷うことなく答えた。
「誰もが、安心して、心の底から笑える世界です」
彼は、続けた。
「強さだけが、全てじゃない。効率だけが、正義じゃない。不器用でも、遠回りでも、それぞれが、自分のやり方で輝ける場所。リリアが、何の心配もなく、穏やかに暮らせる世界。そして……」
奏太は、三人の顔を、一人ずつ、しっかりと見つめた。
「皆さんのような、かけがえのない仲間たちと、いつまでも、冒険を続けられる世界。俺は、そんな世界を、創りたい」
その、あまりにも真っ直ぐで、青臭いとさえ言えるほどの理想。
だが、その言葉には、嘘偽りのない、彼の魂そのものが込められていた。
紫苑は、満足げに、そして、優しく微笑んだ。
「……素晴らしい。あなたなら、きっと、それができる」
彼は、スッと、一枚の名刺を差し出した。
そこには、『大手ゲームメディア『GameFrontier』専属ライター 紫苑』と書かれていた。
「もし、あなたとその仲間たちの物語を、記事にさせていただけるなら、光栄です。あなたの創る新しい世界を、一番近くで、この目で見届け、そして、世界中の人々に、その素晴らしさを伝えていきたい」
それは、彼なりの、最大限の協力の申し出だった。
「……俺もだ」健一も、名刺を差し出す。「今はまだ、ただの学生だが。いずれ、君の創る世界の、システム面で、何か手伝えることがあるかもしれない。その時は、声をかけてくれ」
「もー! あんたたち、カッコつけちゃって!」楓は、名刺を持っていない自分に、少し拗ねたように言った。「私は、ただのフリーターだけど……でも、一番の応援団として、ずっと、あんたたちの側にいるから! それだけは、約束するわ!」
奏太の瞳が、熱くなった。
ワールドデザイナーとしての道は、きっと、孤独なものになるだろうと思っていた。
だが、違った。
現実世界でも、彼には、こんなにも頼もしく、温かい仲間たちがいた。
「……ありがとうございます、皆さん」
奏太は、込み上げてくる感情を抑え、深々と頭を下げた。
「俺一人じゃ、何もできません。これからも、どうか、俺の、俺たちの世界を、一緒に創ってください」
その言葉に、三人は、最高の笑顔で頷いた。
ジオ・フロンティアの、リアルでの絆が、確かに結ばれた瞬間だった。
この日を境に、彼らの日常は、少しずつ、しかし、確実に変わっていく。
奏太は、大学に通いながら、運営チームとの打ち合わせを重ね、ワールドデザイナーとしての第一歩を踏み出す。
楓は、アルバイトをしながら、新生『Aethelgard』のβテスターとして、誰よりも早く、その世界を体験する。
健一は、大学の研究に没頭しながら、タナトスのような暴走AIを生み出さないための、新たな理論の構築を目指す。
そして、紫苑は、彼らの物語を、美しい筆致で、世界へと発信し始める。
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