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第28話 貴族たちの反発
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アンナとカインという二人の友人を得て、私の学園生活は彩り豊かなものになった。
一人で過ごす時間はもちろん好きだったが、誰かと笑い合い言葉を交わす時間がこれほどまでに温かく、満たされたものであることを私は初めて知った。
昼休みには三人で中庭の大きな木の下にあるお気に入りのベンチで昼食をとるのが日課になった。アンナが持参した手作りのサンドイッチは、王宮の料理人が作るどんなご馳走よりも美味しかった。カインが騎士科の訓練の様子を面白おかしく話してくれ、アンナと私が笑い転げる。そんな何気ない時間が私にとっては宝物だった。
授業中も以前のように孤立することはなくなった。
難しい問題に首を捻っていると、アンナが隣から「ここの解釈、こう考えたらどうかな?」と小さなメモを回してくれる。実践魔法の授業で重い道具を運んでいると、カインが「貸せ。俺が持つ」とぶっきらぼうに、しかし優しく手を貸してくれる。
彼らといると、私は「主席のリリアーナ」でも「訳ありの元公爵令嬢」でもなく、ただの「リリアーナ」でいられた。
自然と笑顔が増え、自分から話しかけることも多くなった。
『良い顔をするようになったな、リリアーナ』
寮の部屋でその日の復習をしていた私に、ルークがしみじみと言った。
「そうですか?」
『ああ。君の周りにはいつも温かい光が満ちている。君の心が充実している証拠だ』
彼の言葉に私は頬を緩ませた。
この幸せな日々がずっと続けばいい。心の底からそう願っていた。
だが、光が強くなれば影もまた濃くなる。
その単純な真理を、私はすぐに思い知らされることになった。
その日、私は少し難しい魔法薬学のレポートを仕上げるため、放課後一人で図書館に残っていた。アンナは魔道具工房の手伝いがあり、カインは騎士科の特別訓練。珍しく一人きりの放課後だった。
夢中で文献を読み解き、気づけば窓の外は夕暮れの色に染まっていた。
「いけない。もうこんな時間」
私は慌てて本を片付け、教室に置き忘れた鞄を取りに戻った。
夕陽が差し込む長い廊下には私の足音だけが響いている。どこか不気味なほどの静けさだった。
教室の扉を開けた瞬間、私は息を呑んだ。
私の机の上がめちゃくちゃに荒らされていたのだ。
ノートや羊皮紙は床に散乱し、ペンケースは逆さまにされ中身がぶちまけられている。
そして何よりも私の心を抉ったのは、机の上に無造作に開かれた一冊の教科書だった。
それは私が一番大切にしていた、魔法史の教科書。
ルークとの学びの記憶がページの一枚一枚に詰まっている、私にとっては宝物のような本。
その中央のページに、どす黒いインクが、まるで悪意そのものをぶちまけたかのようにべっとりと広がっていた。
美しい挿絵も私が書き込んだ丁寧な注釈も、全てがその黒い染みの下で見るも無残な姿に成り果てていた。
「……ひどい」
震える声が喉から漏れた。
怒りよりも先に、深い、深い悲しみが胸を襲う。
ルークとの大切な思い出が汚されてしまった。その事実が私の心をナイフのように切り裂いた。
私が汚された教科書の前で立ち尽くしていると、背後からくつくつと下卑た笑い声が聞こえた。
振り返ると、そこに立っていたのはやはりあの金髪の上級貴族の男子生徒――バルドル・フォン・アードラーとその取り巻きたちだった。
「よう、主席様。ずいぶんと熱心に勉強していたみたいじゃないか」
バルドルはわざとらしく肩をすくめ、嘲るような視線を私に向けた。
彼らの手には空になったインク瓶が握られている。犯人が誰であるかは言うまでもなかった。
「どうして、こんなことを……」
「どうして、だと?」
バルドルは心底からおかしいというように大声で笑った。
「決まってるだろう。お前が気に食わないからだ」
彼は私に一歩、また一歩と近づいてくる。
「平民や脳筋騎士と馴れ合い、さも自分が清廉潔白な聖女様だとでも言いたげなその顔が。主席だか何だか知らないが、俺たちのような正統な血筋の貴族を差し置いて得意げになっているその態度が。全て虫唾が走るんだよ!」
彼の瞳には純粋な嫉妬と、歪んだ特権意識からくる憎悪が燃え盛っていた。
彼らは私が自分たちより優れているという事実が許せないのだ。ただ、それだけの理由で。
「少し灸を据えてやろうと思っただけだ。身の程を知れ、落ちこぼれの元公爵令嬢。お前は俺たちに逆らって生きていける身分じゃないんだぞ」
取り巻きの一人が床に落ちていた私のノートを足で踏みつけた。
ぎり、と奥歯を噛みしめる。
体中の血が怒りで沸騰しそうだった。今すぐにでも彼らに向かって光の魔法を放ってやりたい。そうすればこんな卑劣な人間たち、一瞬で黙らせることができる。
『――リリアーナ、落ち着け』
その時、ルークの冷静な声が私の燃え上がる感情に冷水を浴びせた。
『ここで魔法を使えば彼らの思う壺だぞ。"あの女はやはり危険な魔女だった"と、彼らが君を陥れるための格好の口実を与えることになる』
(ですが……!)
『怒りは最大の力にもなるが、最大の弱点にもなる。感情に任せて振るう力はただの暴力だ。君の気高い魔法を、こんな連中のために汚してはいけない』
彼の言葉に私ははっと我に返った。
そうだ。ここで私が暴走すれば、喜ぶのは彼らなのだ。
私は震える拳をきつく握りしめ、必死で怒りを心の奥底に押し込めた。そしてゆっくりと息を吐き出す。
私は顔を上げた。
私の瞳にはもう怒りの炎はなかった。
代わりに宿っていたのは、絶対的な強者だけが持つことのできる深い、深い憐憫の色だった。
「……可哀想な方たち」
静かに私は呟いた。
私の予想外の反応に、バルドルたちは一瞬きょとんとした顔をした。
「哀れですわ。あなた方はご自分の努力や才能で人を評価することができず、ただ生まれ持った家名という鎧にしがみつくことしかできないのですね」
「な、なんだと……!」
「自分より優れた者が現れると正々堂々と競うのではなく、このような卑劣で幼稚な嫌がらせでしか自分のプライドを保てない。その心の弱さが、わたくしにはただただ哀れに見えますわ」
私の言葉は魔法よりも鋭く、彼らの心の最も脆い部分を貫いた。
彼らの顔が怒りで赤く染まる。図星を突かれた子供のように、ただわめき散らすしかできない。
「黙れ! この、落ちこぼれが!」
バルドルが私に掴みかかろうと手を伸ばした、その時だった。
「――そこまでだ!」
教室の入り口から鋭い声が飛んだ。
見ると、そこにカインが仁王立ちになっていた。その背後には心配そうな顔をしたアンナもいる。
「リリアーナ! 大丈夫か!?」
カインは私を一瞥すると、すぐに状況を察したようだった。彼の瞳が怒りの炎で燃え上がる。
「バルドル……! 貴様ら、またリリアーナに絡んでいたのか! 今度こそ、ただでは済まさんぞ!」
「ひっ……!」
騎士科で鍛え上げられたカインの気迫に、バルドルたちは完全に怯んでいた。
アンナは私の机の上の惨状を見ると、わっと泣き出しそうに顔を歪めた。
「ひどい……! なんてことを……! リリアーナさんの大切な教科書なのに……!」
友人の怒りと悲しみ。
それが何よりも私の心を強く支えてくれた。
私はもう一人じゃない。
「ちっ……! 覚えてやがれ!」
バルドルたちはカインの存在にすごすごと引き下がるしかなかった。
彼らは最後に私を憎々しげに睨みつけると、捨て台詞を残して逃げるように教室を出て行った。
後に残されたのは静寂と、無残に荒らされた私の机だけだった。
アンナはインクで汚れた教科書をそっと手に取り、ぽろぽろと涙をこぼした。
「ごめんね、リリアーナさん……。私が工房の手伝いなんて行かずに、一緒にいてあげれば……」
「アンナのせいじゃないわ」
私は彼女の肩を優しく抱いた。
「俺が絶対に許さない」
カインが握りしめた拳を震わせながら低い声で言った。
「あいつらには騎士の名誉にかけて、必ず落とし前をつけさせる」
二人の優しさが、私のささくれ立った心を温かく包み込んでいく。
自分のせいで大切な友人たちを巻き込んでしまった。その申し訳なさと、それでも自分のために怒り泣いてくれる友人がいることへの感謝で胸がいっぱいになった。
これはきっと始まりに過ぎない。
彼らの嫌がらせは、これからもっと陰湿に執拗になっていくのだろう。
だが、私はもう何も恐れない。
私は汚された教科書をアンナの手からそっと受け取った。
インクの染みは醜く、そして悲しい。
けれど、この染みは私にとって新しい誓いの証となった。
――私は、決して負けない。
この手にある友情と、そして見えない騎士様との絆にかけて。
私は涙ぐむアンナと怒りに燃えるカインに向かって、精一杯の力で微笑んでみせた。
その笑顔は、これから始まる戦いへの静かな宣戦布告だった。
一人で過ごす時間はもちろん好きだったが、誰かと笑い合い言葉を交わす時間がこれほどまでに温かく、満たされたものであることを私は初めて知った。
昼休みには三人で中庭の大きな木の下にあるお気に入りのベンチで昼食をとるのが日課になった。アンナが持参した手作りのサンドイッチは、王宮の料理人が作るどんなご馳走よりも美味しかった。カインが騎士科の訓練の様子を面白おかしく話してくれ、アンナと私が笑い転げる。そんな何気ない時間が私にとっては宝物だった。
授業中も以前のように孤立することはなくなった。
難しい問題に首を捻っていると、アンナが隣から「ここの解釈、こう考えたらどうかな?」と小さなメモを回してくれる。実践魔法の授業で重い道具を運んでいると、カインが「貸せ。俺が持つ」とぶっきらぼうに、しかし優しく手を貸してくれる。
彼らといると、私は「主席のリリアーナ」でも「訳ありの元公爵令嬢」でもなく、ただの「リリアーナ」でいられた。
自然と笑顔が増え、自分から話しかけることも多くなった。
『良い顔をするようになったな、リリアーナ』
寮の部屋でその日の復習をしていた私に、ルークがしみじみと言った。
「そうですか?」
『ああ。君の周りにはいつも温かい光が満ちている。君の心が充実している証拠だ』
彼の言葉に私は頬を緩ませた。
この幸せな日々がずっと続けばいい。心の底からそう願っていた。
だが、光が強くなれば影もまた濃くなる。
その単純な真理を、私はすぐに思い知らされることになった。
その日、私は少し難しい魔法薬学のレポートを仕上げるため、放課後一人で図書館に残っていた。アンナは魔道具工房の手伝いがあり、カインは騎士科の特別訓練。珍しく一人きりの放課後だった。
夢中で文献を読み解き、気づけば窓の外は夕暮れの色に染まっていた。
「いけない。もうこんな時間」
私は慌てて本を片付け、教室に置き忘れた鞄を取りに戻った。
夕陽が差し込む長い廊下には私の足音だけが響いている。どこか不気味なほどの静けさだった。
教室の扉を開けた瞬間、私は息を呑んだ。
私の机の上がめちゃくちゃに荒らされていたのだ。
ノートや羊皮紙は床に散乱し、ペンケースは逆さまにされ中身がぶちまけられている。
そして何よりも私の心を抉ったのは、机の上に無造作に開かれた一冊の教科書だった。
それは私が一番大切にしていた、魔法史の教科書。
ルークとの学びの記憶がページの一枚一枚に詰まっている、私にとっては宝物のような本。
その中央のページに、どす黒いインクが、まるで悪意そのものをぶちまけたかのようにべっとりと広がっていた。
美しい挿絵も私が書き込んだ丁寧な注釈も、全てがその黒い染みの下で見るも無残な姿に成り果てていた。
「……ひどい」
震える声が喉から漏れた。
怒りよりも先に、深い、深い悲しみが胸を襲う。
ルークとの大切な思い出が汚されてしまった。その事実が私の心をナイフのように切り裂いた。
私が汚された教科書の前で立ち尽くしていると、背後からくつくつと下卑た笑い声が聞こえた。
振り返ると、そこに立っていたのはやはりあの金髪の上級貴族の男子生徒――バルドル・フォン・アードラーとその取り巻きたちだった。
「よう、主席様。ずいぶんと熱心に勉強していたみたいじゃないか」
バルドルはわざとらしく肩をすくめ、嘲るような視線を私に向けた。
彼らの手には空になったインク瓶が握られている。犯人が誰であるかは言うまでもなかった。
「どうして、こんなことを……」
「どうして、だと?」
バルドルは心底からおかしいというように大声で笑った。
「決まってるだろう。お前が気に食わないからだ」
彼は私に一歩、また一歩と近づいてくる。
「平民や脳筋騎士と馴れ合い、さも自分が清廉潔白な聖女様だとでも言いたげなその顔が。主席だか何だか知らないが、俺たちのような正統な血筋の貴族を差し置いて得意げになっているその態度が。全て虫唾が走るんだよ!」
彼の瞳には純粋な嫉妬と、歪んだ特権意識からくる憎悪が燃え盛っていた。
彼らは私が自分たちより優れているという事実が許せないのだ。ただ、それだけの理由で。
「少し灸を据えてやろうと思っただけだ。身の程を知れ、落ちこぼれの元公爵令嬢。お前は俺たちに逆らって生きていける身分じゃないんだぞ」
取り巻きの一人が床に落ちていた私のノートを足で踏みつけた。
ぎり、と奥歯を噛みしめる。
体中の血が怒りで沸騰しそうだった。今すぐにでも彼らに向かって光の魔法を放ってやりたい。そうすればこんな卑劣な人間たち、一瞬で黙らせることができる。
『――リリアーナ、落ち着け』
その時、ルークの冷静な声が私の燃え上がる感情に冷水を浴びせた。
『ここで魔法を使えば彼らの思う壺だぞ。"あの女はやはり危険な魔女だった"と、彼らが君を陥れるための格好の口実を与えることになる』
(ですが……!)
『怒りは最大の力にもなるが、最大の弱点にもなる。感情に任せて振るう力はただの暴力だ。君の気高い魔法を、こんな連中のために汚してはいけない』
彼の言葉に私ははっと我に返った。
そうだ。ここで私が暴走すれば、喜ぶのは彼らなのだ。
私は震える拳をきつく握りしめ、必死で怒りを心の奥底に押し込めた。そしてゆっくりと息を吐き出す。
私は顔を上げた。
私の瞳にはもう怒りの炎はなかった。
代わりに宿っていたのは、絶対的な強者だけが持つことのできる深い、深い憐憫の色だった。
「……可哀想な方たち」
静かに私は呟いた。
私の予想外の反応に、バルドルたちは一瞬きょとんとした顔をした。
「哀れですわ。あなた方はご自分の努力や才能で人を評価することができず、ただ生まれ持った家名という鎧にしがみつくことしかできないのですね」
「な、なんだと……!」
「自分より優れた者が現れると正々堂々と競うのではなく、このような卑劣で幼稚な嫌がらせでしか自分のプライドを保てない。その心の弱さが、わたくしにはただただ哀れに見えますわ」
私の言葉は魔法よりも鋭く、彼らの心の最も脆い部分を貫いた。
彼らの顔が怒りで赤く染まる。図星を突かれた子供のように、ただわめき散らすしかできない。
「黙れ! この、落ちこぼれが!」
バルドルが私に掴みかかろうと手を伸ばした、その時だった。
「――そこまでだ!」
教室の入り口から鋭い声が飛んだ。
見ると、そこにカインが仁王立ちになっていた。その背後には心配そうな顔をしたアンナもいる。
「リリアーナ! 大丈夫か!?」
カインは私を一瞥すると、すぐに状況を察したようだった。彼の瞳が怒りの炎で燃え上がる。
「バルドル……! 貴様ら、またリリアーナに絡んでいたのか! 今度こそ、ただでは済まさんぞ!」
「ひっ……!」
騎士科で鍛え上げられたカインの気迫に、バルドルたちは完全に怯んでいた。
アンナは私の机の上の惨状を見ると、わっと泣き出しそうに顔を歪めた。
「ひどい……! なんてことを……! リリアーナさんの大切な教科書なのに……!」
友人の怒りと悲しみ。
それが何よりも私の心を強く支えてくれた。
私はもう一人じゃない。
「ちっ……! 覚えてやがれ!」
バルドルたちはカインの存在にすごすごと引き下がるしかなかった。
彼らは最後に私を憎々しげに睨みつけると、捨て台詞を残して逃げるように教室を出て行った。
後に残されたのは静寂と、無残に荒らされた私の机だけだった。
アンナはインクで汚れた教科書をそっと手に取り、ぽろぽろと涙をこぼした。
「ごめんね、リリアーナさん……。私が工房の手伝いなんて行かずに、一緒にいてあげれば……」
「アンナのせいじゃないわ」
私は彼女の肩を優しく抱いた。
「俺が絶対に許さない」
カインが握りしめた拳を震わせながら低い声で言った。
「あいつらには騎士の名誉にかけて、必ず落とし前をつけさせる」
二人の優しさが、私のささくれ立った心を温かく包み込んでいく。
自分のせいで大切な友人たちを巻き込んでしまった。その申し訳なさと、それでも自分のために怒り泣いてくれる友人がいることへの感謝で胸がいっぱいになった。
これはきっと始まりに過ぎない。
彼らの嫌がらせは、これからもっと陰湿に執拗になっていくのだろう。
だが、私はもう何も恐れない。
私は汚された教科書をアンナの手からそっと受け取った。
インクの染みは醜く、そして悲しい。
けれど、この染みは私にとって新しい誓いの証となった。
――私は、決して負けない。
この手にある友情と、そして見えない騎士様との絆にかけて。
私は涙ぐむアンナと怒りに燃えるカインに向かって、精一杯の力で微笑んでみせた。
その笑顔は、これから始まる戦いへの静かな宣戦布告だった。
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