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第39話 勝利のあとで
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シャルロッテの卑劣な罠を打ち破り、私たちは劇的な形で二回戦を突破した。
だが、その勝利の余韻は後味の悪いものだった。試合後の演習場は、シャルロッテが連行されていく騒ぎと教官たちの怒声、そして生徒たちの動揺で、しばらくの間混乱に包まれていた。
「リリアーナ! アンナ! 怪我はなかったか!?」
カインが鋭い目で私たちの全身を確かめるように見回す。彼の騎士としての責任感がそうさせているのだろう。
「うん、大丈夫だよ……。でも、怖かった……」
アンナはまだ少し震えていた。あの殺意に満ちた炎が、よほど恐ろしかったのだろう。私は彼女の背中を優しくさすってやった。
「わたくしも大丈夫ですわ。それよりも、お二人こそ」
「俺は平気だ。だが、あのままだったらと思うと……」
カインが悔しそうに唇を噛む。
もし私の力が覚醒していなかったら。そう思うと、私自身もぞっとした。
私たちは改めてシャルロッテの狂気と、その背後にいる何者かの不気味さを思い知らされた。
試合は私たちの不戦勝という形で決着したが、祝う気には到底なれなかった。
私たちは重い足取りで控えテントへと戻る。
その途中、私はふと足を止めた。視線の先に忘れられない光景が広がっていたからだ。
教官たちに連行されていくシャルロッテが、連行先の教官室ではなく演習場の隅にある小さな倉庫の方へと連れて行かれている。そして、その倉庫の影で一人の人物が彼女を待っていた。
それは試合中にシャルロッテに小瓶を渡していた、あのローブの人物だった。
彼は教官たちに何事か短い言葉を告げると、教官たちは意外なほどあっさりと引き下がり、シャルロッテとその人物を二人きりにした。まるで、その人物には逆らえないとでも言うように。
『リリアーナ、隠れろ』
ルークの鋭い声が私の思考に割り込んできた。
私ははっと我に返ると、アンナとカインの手を引いて近くの大きな木の影に身を潜めた。
「どうしたの、リリアーナさん?」
「しっ……!」
私は人差し指を口に当て、静かにするよう促す。
三人で息を殺し、倉庫の方の様子を窺った。
距離が離れていて二人の会話までは聞こえない。
だが、その様子は手に取るように分かった。
シャルロッテは何かに怯えるように俯き、小刻みに震えている。対するローブの人物は彼女を見下ろし、何かを厳しく詰問しているようだった。
やがて、ローブの人物がすっと手を上げた。
その手がシャルロッテの頬を激しく打ち据えるのが見えた。
「……っ!」
アンナが小さく悲鳴を上げた。
シャルロッテは打たれた衝撃で地面に倒れ込んだ。しかし彼女は泣きもせず喚きもせず、ただ恐怖に支配された顔でローブの人物を見上げているだけだった。
それは私が知っている傲慢でプライドの高いシャルロッテの姿ではなかった。まるで絶対的な主人に逆らえない、哀れな奴隷のようだった。
ローブの人物は倒れたシャルロッテにさらに何かを囁くと、冷たく背を向けた。そして学園の敷地の外へと続く裏門の方へと音もなく消えていった。
一人残されたシャルロッテは、しばらくの間地面に蹲ったまま動かなかった。やがてよろよろと立ち上がると、誰にも見られていないことを確認するように周囲を見回し、そしてまるで亡霊のような足取りで自分の寮へと去っていった。
「……今の、見たか?」
カインが信じられないというように呟いた。
「うん……。あの人、一体誰なんだろう。シャルロッテさん、すごく怖がってた……」
アンナも青ざめた顔で言った。
私の胸中は二人以上に複雑な感情で渦巻いていた。
シャルロッテはただ利用されていただけなのかもしれない。彼女の背後にはもっと大きな、そして冷酷な悪意が存在する。あのローブの人物は、その組織の一員に過ぎないのだろう。
『やはりな』
ルークが私の心の中で静かに言った。
『あの女はただの駒だ。操りやすいという理由だけで、捨て駒にされたに過ぎん。だが、あのローブの男……ただ者ではない。教官たちさえも黙らせる権力を持っているようだ』
(黒い影と関係があるのでしょうか……?)
『断定はできん。だが、無関係と考える方が不自然だろうな。人の魔力を乱す薬、禁忌とされる魔法……全てが、一つの線で繋がっている気がする』
私たちは木の影からそっと姿を現した。
今の光景は誰にも話すべきではない。直感的にそう思った。下手に騒げば、私たち自身にも危険が及ぶかもしれない。
私たちは無言のまま、それぞれの寮へと戻ることにした。
寮の自室に戻り一人になった部屋で、私は今日の出来事を反芻していた。
勝利の喜びよりも、聖なる力が覚醒したことへの戸惑い。そしてシャルロッテの背後に潜む、巨大な闇の存在。
考えれば考えるほど頭が混乱してくる。
私は窓辺に立ち、月が昇り始めた空を見上げた。
これから私はどうすればいいのだろう。
この学園に潜む悪意と、どう向き合っていけばいいのか。
「……怖くないのですか。ルーク」
私は背後に立つ彼にそっと問いかけた。
「君が怖いのか?」
彼は問いには答えず、問いで返してきた。
私は正直に頷いた。
「少しだけ。相手が何者なのかも分からないのですから」
するとルークは私の隣に立ち、同じように窓の外を見上げた。
「ならば、怖がる必要はない」
「え……?」
「敵の正体が分からず、目的も分からず、ただ闇雲に怯えるのは愚か者のすることだ。だが、君は違う。君は敵の存在を確かに認識した。そしてそれに対抗しうる、計り知れない力をその内に秘めていることも自覚した。それは恐怖ではなく、むしろ『希望』と呼ぶべきものだ」
彼の言葉はいつだって私の迷いを晴らし、進むべき道を照らしてくれる。
「僕たちは闇の中にいるのではない。闇の正体を見据え、光の差す方へと歩き始めたんだ。そうだろう、リリアーナ?」
彼はそう言って優しく微笑んだ。
その笑顔に、私の心の中の恐怖の霧がすうっと晴れていくのが分かった。
そうだ。私はもう何も恐れる必要はない。
私にはルークがいる。アンナとカインがいる。
そして私自身の中にも、どんな闇をも打ち払う聖なる光が眠っているのだから。
私は彼に向かって力強く頷いた。
「はい。おっしゃる通りですわ、ルーク」
勝利の後に残された新たな謎と脅威。
それは私たちを絶望させるものではなく、むしろ真実に近づくための次なる試練。
私はその試練に立ち向かう覚悟を、静かに、しかし固く心に誓うのだった。
だが、その勝利の余韻は後味の悪いものだった。試合後の演習場は、シャルロッテが連行されていく騒ぎと教官たちの怒声、そして生徒たちの動揺で、しばらくの間混乱に包まれていた。
「リリアーナ! アンナ! 怪我はなかったか!?」
カインが鋭い目で私たちの全身を確かめるように見回す。彼の騎士としての責任感がそうさせているのだろう。
「うん、大丈夫だよ……。でも、怖かった……」
アンナはまだ少し震えていた。あの殺意に満ちた炎が、よほど恐ろしかったのだろう。私は彼女の背中を優しくさすってやった。
「わたくしも大丈夫ですわ。それよりも、お二人こそ」
「俺は平気だ。だが、あのままだったらと思うと……」
カインが悔しそうに唇を噛む。
もし私の力が覚醒していなかったら。そう思うと、私自身もぞっとした。
私たちは改めてシャルロッテの狂気と、その背後にいる何者かの不気味さを思い知らされた。
試合は私たちの不戦勝という形で決着したが、祝う気には到底なれなかった。
私たちは重い足取りで控えテントへと戻る。
その途中、私はふと足を止めた。視線の先に忘れられない光景が広がっていたからだ。
教官たちに連行されていくシャルロッテが、連行先の教官室ではなく演習場の隅にある小さな倉庫の方へと連れて行かれている。そして、その倉庫の影で一人の人物が彼女を待っていた。
それは試合中にシャルロッテに小瓶を渡していた、あのローブの人物だった。
彼は教官たちに何事か短い言葉を告げると、教官たちは意外なほどあっさりと引き下がり、シャルロッテとその人物を二人きりにした。まるで、その人物には逆らえないとでも言うように。
『リリアーナ、隠れろ』
ルークの鋭い声が私の思考に割り込んできた。
私ははっと我に返ると、アンナとカインの手を引いて近くの大きな木の影に身を潜めた。
「どうしたの、リリアーナさん?」
「しっ……!」
私は人差し指を口に当て、静かにするよう促す。
三人で息を殺し、倉庫の方の様子を窺った。
距離が離れていて二人の会話までは聞こえない。
だが、その様子は手に取るように分かった。
シャルロッテは何かに怯えるように俯き、小刻みに震えている。対するローブの人物は彼女を見下ろし、何かを厳しく詰問しているようだった。
やがて、ローブの人物がすっと手を上げた。
その手がシャルロッテの頬を激しく打ち据えるのが見えた。
「……っ!」
アンナが小さく悲鳴を上げた。
シャルロッテは打たれた衝撃で地面に倒れ込んだ。しかし彼女は泣きもせず喚きもせず、ただ恐怖に支配された顔でローブの人物を見上げているだけだった。
それは私が知っている傲慢でプライドの高いシャルロッテの姿ではなかった。まるで絶対的な主人に逆らえない、哀れな奴隷のようだった。
ローブの人物は倒れたシャルロッテにさらに何かを囁くと、冷たく背を向けた。そして学園の敷地の外へと続く裏門の方へと音もなく消えていった。
一人残されたシャルロッテは、しばらくの間地面に蹲ったまま動かなかった。やがてよろよろと立ち上がると、誰にも見られていないことを確認するように周囲を見回し、そしてまるで亡霊のような足取りで自分の寮へと去っていった。
「……今の、見たか?」
カインが信じられないというように呟いた。
「うん……。あの人、一体誰なんだろう。シャルロッテさん、すごく怖がってた……」
アンナも青ざめた顔で言った。
私の胸中は二人以上に複雑な感情で渦巻いていた。
シャルロッテはただ利用されていただけなのかもしれない。彼女の背後にはもっと大きな、そして冷酷な悪意が存在する。あのローブの人物は、その組織の一員に過ぎないのだろう。
『やはりな』
ルークが私の心の中で静かに言った。
『あの女はただの駒だ。操りやすいという理由だけで、捨て駒にされたに過ぎん。だが、あのローブの男……ただ者ではない。教官たちさえも黙らせる権力を持っているようだ』
(黒い影と関係があるのでしょうか……?)
『断定はできん。だが、無関係と考える方が不自然だろうな。人の魔力を乱す薬、禁忌とされる魔法……全てが、一つの線で繋がっている気がする』
私たちは木の影からそっと姿を現した。
今の光景は誰にも話すべきではない。直感的にそう思った。下手に騒げば、私たち自身にも危険が及ぶかもしれない。
私たちは無言のまま、それぞれの寮へと戻ることにした。
寮の自室に戻り一人になった部屋で、私は今日の出来事を反芻していた。
勝利の喜びよりも、聖なる力が覚醒したことへの戸惑い。そしてシャルロッテの背後に潜む、巨大な闇の存在。
考えれば考えるほど頭が混乱してくる。
私は窓辺に立ち、月が昇り始めた空を見上げた。
これから私はどうすればいいのだろう。
この学園に潜む悪意と、どう向き合っていけばいいのか。
「……怖くないのですか。ルーク」
私は背後に立つ彼にそっと問いかけた。
「君が怖いのか?」
彼は問いには答えず、問いで返してきた。
私は正直に頷いた。
「少しだけ。相手が何者なのかも分からないのですから」
するとルークは私の隣に立ち、同じように窓の外を見上げた。
「ならば、怖がる必要はない」
「え……?」
「敵の正体が分からず、目的も分からず、ただ闇雲に怯えるのは愚か者のすることだ。だが、君は違う。君は敵の存在を確かに認識した。そしてそれに対抗しうる、計り知れない力をその内に秘めていることも自覚した。それは恐怖ではなく、むしろ『希望』と呼ぶべきものだ」
彼の言葉はいつだって私の迷いを晴らし、進むべき道を照らしてくれる。
「僕たちは闇の中にいるのではない。闇の正体を見据え、光の差す方へと歩き始めたんだ。そうだろう、リリアーナ?」
彼はそう言って優しく微笑んだ。
その笑顔に、私の心の中の恐怖の霧がすうっと晴れていくのが分かった。
そうだ。私はもう何も恐れる必要はない。
私にはルークがいる。アンナとカインがいる。
そして私自身の中にも、どんな闇をも打ち払う聖なる光が眠っているのだから。
私は彼に向かって力強く頷いた。
「はい。おっしゃる通りですわ、ルーク」
勝利の後に残された新たな謎と脅威。
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