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第52話 英雄の影
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国王陛下から王家の禁書庫への立ち入りを許可された。
その事実は私とルークにとって、暗闇の中に差し込んだ一筋の光明だった。学園の禁書庫で見つけた『魂縛の呪い』という断片的な情報。そのさらに奥深くにある真実へと、ようやく手を伸ばすことができるのだ。
翌日から私は授業が終わると、アラン王子が手配してくれた馬車に乗り、王城へと通う日々が始まった。
王家の禁書庫は城の最も古く、そして厳重に守られた区画に存在した。分厚い魔法鋼鉄の扉には何重もの封印術が施され、二人の屈強な近衛騎士が常にその前を守っている。国王の勅許状を持つ私でさえ、中に入るには厳格な身元確認と幾つもの手続きが必要だった。
「すごい……」
初めて禁書庫の中に足を踏み入れた時、私は思わず感嘆の声を漏らした。
そこは学園の図書館とは比べ物にならない、圧倒的な知の空間だった。天井の見えないほど高く積み上げられた書架。空気中に漂う、何百年という時を経た羊皮紙とインクの匂い。ここには、この国の始まりから今に至るまでの全ての歴史と秘密が眠っている。
『……感じる。強い魔力の残滓を』
私の隣に立つルークが静かに呟いた。
『数々の王や大魔術師たちが残した想いの欠片だ。ここは、まさに歴史の霊廟だな』
私たちは早速調査を開始した。
手掛かりは『魂縛の呪い』、宰相ヴァルデマール、そしてグランヴェル公爵家。
私は膨大な蔵書の中からそれらのキーワードに関わる文献を片っ端から探し出し、読み解いていった。ルークは、その博識と霊体であるゆえに物理的な制約を受けない利点を活かし、私が読む何倍もの速さで書物の内容を記憶していく。
調査は困難を極めた。
『魂縛の呪い』に関する直接的な記述はほとんど見つからなかった。それはあまりにも禁忌中の禁忌であるため、記録そのものが意図的に抹消されているようだった。
ヴァルデマールに関しても彼が宰相に就任してからの公的な記録ばかりで、その出自や魔術師としての一面をうかがわせるものは巧妙に隠蔽されていた。
だが、私たちは諦めなかった。
何日も何週間も、私たちは禁書庫に通い詰めた。
そして、ある日のことだった。
調査に行き詰まりを感じていた私にアラン王子が声をかけてきた。彼は私たちの調査の進捗を気にかけて、時折こうして禁書-庫に顔を出してくれるのだ。
「苦戦しているようだな、リリアーナ嬢」
「はい、殿下。敵はあまりにも用意周到に、自らの痕跡を消し去っているようです」
私の言葉に彼は少し考え込むように顎に手を当てた。
「……発想を変えてみてはどうだろうか」
「と、申しますと?」
「ヴァルデマールや呪いそのものを追うのではなく、その呪いによって『被害に遭った者』の側から調べてみるんだ。例えば……君が禁書庫で見つけたというグランヴェル公爵家の紋章。その家が生んだ、伝説の英雄の記録を」
英雄。
その言葉に私ははっとした。
なぜ今まで気づかなかったのだろう。
私たちはあまりにも加害者側の情報ばかりを追っていた。
「ありがとうございます、殿下!その視点は、ありませんでしたわ!」
「力になれたなら何よりだ。頑張ってくれ」
アラン王子はそう言って静かに去っていった。
私はすぐに彼の助言に従い、禁書庫の最も古い区画、『建国の英雄譚』が収められている書架へと向かった。
『英雄アルフォンス・ルキウス・フォン・グランヴェル』。
その名が記された分厚い革張りの年代記。
私は埃を払い、緊張しながらその最初のページを開いた。
そこに書かれていたのは、私が知る歴史物語よりも遥かに詳細で生々しい、一人の英雄の生涯だった。
百年以上前、隣国との大戦で滅亡の危機に瀕したこの国をたった一人で救ったとされる伝説の騎士。
彼は類稀なる剣技と当時最強と謳われた光の魔法を操り、敵国の百万の軍勢を退けた。民は彼を「救国の英雄」「光の騎士」と呼び、国王以上に敬愛し、崇めたという。
年代記には彼の活躍を描いた挿絵も添えられていた。
銀の鎧に身を包み、光り輝く剣を掲げる一人の騎士。
その顔立ちは兜に隠れてはっきりとは見えない。
だが、その溢れ出る気高さと力強い佇まいに、私はなぜか胸が締め付けられるような懐かしい感覚を覚えた。
『……リリアーナ』
私の隣でルークが苦しげな声を上げた。
『この絵を……この物語を見ていると、頭が……割れるように痛む……』
「ルーク!」
彼の霊体が不安定に揺めいている。
失われた記憶が、この英雄譚に激しく共鳴しているのだ。
私は彼を落ち着かせるように心の中で優しく語りかけながら、年代記のページをさらに先へとめくっていった。
英雄譚は彼の輝かしい功績を讃え、物語はクライマックスへと向かう。
そして、最後のページ。
そこに記されていたのは彼の、あまりにも悲劇的な最期だった。
『――大戦を終結させ、王国に平和をもたらした英雄アルフォンスは、しかし、そのあまりにも強大な力と民からの絶大な人気を、時の国王と一部の貴族たちに疎まれた。そして最も信頼していた友であり、宰相であったヴァルデマールの裏切りによって反逆の濡れ衣を着せられ、王宮の地下牢で非業の死を遂げた』
ヴァルデマール。
やはり、あの男だ。
百年前から彼はこの国の歴史の裏で暗躍していたのだ。
私は震える指で最後の文章を追った。
『彼の魂は、その無念の故か、今もなお王都のどこかを彷徨っていると人々は噂した。国を救いながら国に裏切られた英雄。彼の流した涙は、グランヴェル公爵家の紋章である〝金の獅子〟に永遠に刻み込まれることとなった』
全てのピースがはまった。
グランヴェル公爵家の英雄、アルフォンス。
親友ヴァルデマールの裏切り。
そして非業の死。
その壮絶な生涯と、私のそばにいる彼の存在が、一つの像を結ぶ。
私はゆっくりと顔を上げた。
そして苦しげに記憶の奔流と戦っている、愛しい縛霊を見つめた。
彼の美しい黒髪。
そして、夜空に輝く月光のような金の瞳。
「……ルーク」
私は震える声で、彼の本当の名を呼んだ。
「あなたの本当の名前は……アルフォンス・ルキウス・フォン・グランヴェル、なのではありませんか?」
私の言葉は静かな禁書庫に、重く、そして優しく響き渡った。
その瞬間、ルーク――アルフォンスの身体から、今まで感じたことのないほど強く、そして悲しい魔力の光が溢れ出した。
百年の時を超えて、英雄の影が今、私の前でその輪郭を現し始めた。
全ての謎はまだ解けてはいない。
だが、私たちはその核心へと確かに一歩、足を踏み入れたのだ。
その事実は私とルークにとって、暗闇の中に差し込んだ一筋の光明だった。学園の禁書庫で見つけた『魂縛の呪い』という断片的な情報。そのさらに奥深くにある真実へと、ようやく手を伸ばすことができるのだ。
翌日から私は授業が終わると、アラン王子が手配してくれた馬車に乗り、王城へと通う日々が始まった。
王家の禁書庫は城の最も古く、そして厳重に守られた区画に存在した。分厚い魔法鋼鉄の扉には何重もの封印術が施され、二人の屈強な近衛騎士が常にその前を守っている。国王の勅許状を持つ私でさえ、中に入るには厳格な身元確認と幾つもの手続きが必要だった。
「すごい……」
初めて禁書庫の中に足を踏み入れた時、私は思わず感嘆の声を漏らした。
そこは学園の図書館とは比べ物にならない、圧倒的な知の空間だった。天井の見えないほど高く積み上げられた書架。空気中に漂う、何百年という時を経た羊皮紙とインクの匂い。ここには、この国の始まりから今に至るまでの全ての歴史と秘密が眠っている。
『……感じる。強い魔力の残滓を』
私の隣に立つルークが静かに呟いた。
『数々の王や大魔術師たちが残した想いの欠片だ。ここは、まさに歴史の霊廟だな』
私たちは早速調査を開始した。
手掛かりは『魂縛の呪い』、宰相ヴァルデマール、そしてグランヴェル公爵家。
私は膨大な蔵書の中からそれらのキーワードに関わる文献を片っ端から探し出し、読み解いていった。ルークは、その博識と霊体であるゆえに物理的な制約を受けない利点を活かし、私が読む何倍もの速さで書物の内容を記憶していく。
調査は困難を極めた。
『魂縛の呪い』に関する直接的な記述はほとんど見つからなかった。それはあまりにも禁忌中の禁忌であるため、記録そのものが意図的に抹消されているようだった。
ヴァルデマールに関しても彼が宰相に就任してからの公的な記録ばかりで、その出自や魔術師としての一面をうかがわせるものは巧妙に隠蔽されていた。
だが、私たちは諦めなかった。
何日も何週間も、私たちは禁書庫に通い詰めた。
そして、ある日のことだった。
調査に行き詰まりを感じていた私にアラン王子が声をかけてきた。彼は私たちの調査の進捗を気にかけて、時折こうして禁書-庫に顔を出してくれるのだ。
「苦戦しているようだな、リリアーナ嬢」
「はい、殿下。敵はあまりにも用意周到に、自らの痕跡を消し去っているようです」
私の言葉に彼は少し考え込むように顎に手を当てた。
「……発想を変えてみてはどうだろうか」
「と、申しますと?」
「ヴァルデマールや呪いそのものを追うのではなく、その呪いによって『被害に遭った者』の側から調べてみるんだ。例えば……君が禁書庫で見つけたというグランヴェル公爵家の紋章。その家が生んだ、伝説の英雄の記録を」
英雄。
その言葉に私ははっとした。
なぜ今まで気づかなかったのだろう。
私たちはあまりにも加害者側の情報ばかりを追っていた。
「ありがとうございます、殿下!その視点は、ありませんでしたわ!」
「力になれたなら何よりだ。頑張ってくれ」
アラン王子はそう言って静かに去っていった。
私はすぐに彼の助言に従い、禁書庫の最も古い区画、『建国の英雄譚』が収められている書架へと向かった。
『英雄アルフォンス・ルキウス・フォン・グランヴェル』。
その名が記された分厚い革張りの年代記。
私は埃を払い、緊張しながらその最初のページを開いた。
そこに書かれていたのは、私が知る歴史物語よりも遥かに詳細で生々しい、一人の英雄の生涯だった。
百年以上前、隣国との大戦で滅亡の危機に瀕したこの国をたった一人で救ったとされる伝説の騎士。
彼は類稀なる剣技と当時最強と謳われた光の魔法を操り、敵国の百万の軍勢を退けた。民は彼を「救国の英雄」「光の騎士」と呼び、国王以上に敬愛し、崇めたという。
年代記には彼の活躍を描いた挿絵も添えられていた。
銀の鎧に身を包み、光り輝く剣を掲げる一人の騎士。
その顔立ちは兜に隠れてはっきりとは見えない。
だが、その溢れ出る気高さと力強い佇まいに、私はなぜか胸が締め付けられるような懐かしい感覚を覚えた。
『……リリアーナ』
私の隣でルークが苦しげな声を上げた。
『この絵を……この物語を見ていると、頭が……割れるように痛む……』
「ルーク!」
彼の霊体が不安定に揺めいている。
失われた記憶が、この英雄譚に激しく共鳴しているのだ。
私は彼を落ち着かせるように心の中で優しく語りかけながら、年代記のページをさらに先へとめくっていった。
英雄譚は彼の輝かしい功績を讃え、物語はクライマックスへと向かう。
そして、最後のページ。
そこに記されていたのは彼の、あまりにも悲劇的な最期だった。
『――大戦を終結させ、王国に平和をもたらした英雄アルフォンスは、しかし、そのあまりにも強大な力と民からの絶大な人気を、時の国王と一部の貴族たちに疎まれた。そして最も信頼していた友であり、宰相であったヴァルデマールの裏切りによって反逆の濡れ衣を着せられ、王宮の地下牢で非業の死を遂げた』
ヴァルデマール。
やはり、あの男だ。
百年前から彼はこの国の歴史の裏で暗躍していたのだ。
私は震える指で最後の文章を追った。
『彼の魂は、その無念の故か、今もなお王都のどこかを彷徨っていると人々は噂した。国を救いながら国に裏切られた英雄。彼の流した涙は、グランヴェル公爵家の紋章である〝金の獅子〟に永遠に刻み込まれることとなった』
全てのピースがはまった。
グランヴェル公爵家の英雄、アルフォンス。
親友ヴァルデマールの裏切り。
そして非業の死。
その壮絶な生涯と、私のそばにいる彼の存在が、一つの像を結ぶ。
私はゆっくりと顔を上げた。
そして苦しげに記憶の奔流と戦っている、愛しい縛霊を見つめた。
彼の美しい黒髪。
そして、夜空に輝く月光のような金の瞳。
「……ルーク」
私は震える声で、彼の本当の名を呼んだ。
「あなたの本当の名前は……アルフォンス・ルキウス・フォン・グランヴェル、なのではありませんか?」
私の言葉は静かな禁書庫に、重く、そして優しく響き渡った。
その瞬間、ルーク――アルフォンスの身体から、今まで感じたことのないほど強く、そして悲しい魔力の光が溢れ出した。
百年の時を超えて、英雄の影が今、私の前でその輪郭を現し始めた。
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