ドラゴンスレイヤーズ Zero Fighter

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第2章

少子高齢化対策と女性社会の復活

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 南海新都市は基本的に「企業の私物」なので国がいくら難民を適当な審査で受け入れていたとしても、ここへも同じくらい適当な審査で受け入れるというわけにはいかなかった。

 理由は簡単で、日本の周辺は日本に恨みを持った国家が多数ひしめいていたからだ。

 南海新都市は本土と違い、好景気に沸いていたということもあり、本土からの移住と新都市での就職を望む人が多くあったのだが、無制限に受け入れるようなことはなかった。

 基本的に南海新都市側も深刻な人手不足な状態に違いなかったのだが、それでも最低限な審査は受けてもらっていた。

 渡航の手続きはインターネット等で渡航申請をして、審査の後、本人の元に渡航許可がメールで送られてくる。

 国籍は基本的に関係ないが、基本的に敵性国家の住民は厳正な審査を受ける必要があり時間がかかった。

 また移住後も監視下に置かれる。(これは事前に説明がある)

 渡航を希望する人が非常に多かったということもあり、通常は審査に数ヶ月から一年掛かる場合があったのだが、すでに渡航して3年以上経過している人からの招待状があれば審査を優先して受けることが出来た。

 南海新都市に移住した後も禁止事項に違反した場合、新都市から強制退去させられることもあった。

 具体的には、違法なデモ活動、他国からの影響力工作を新都市で行なっていると判断された場合、新都市外へ情報漏洩を行った場合、テロ活動、他国から不自然な金銭の流れがある事などだ。

 特にこの南海新都市というのは、龍国からの影響力工作やスパイ工作に対する危機感によって作られた側面が強いので、これらに該当する動きを行った者に対しては容赦ない対応がされた。

 中には企業連合の上層部の身内などもいたりしたのだが、それらに対しても情けをかけることはなかったのだった。


  「人手不足」というとすぐ「それなら女性の社会進出を!」と言いたがる自称男女平等派とか人権派の方々が出てきそうだが、川北など企業連合体は女性の社会進出を積極的には推し進めなかった。

  逆に、戦前までは日本に存在していて、戦後の核家族化で崩壊してしまった「女性社会の復活」に力を入れていた。

  「女性社会の復活」が少子高齢化対策と子供達への正しい教育の最大の対策と考えていたからだ。


 だからといって企業に就職して昇格したい、という女性を妨げるようなことはしなかったのだが、基本的には結婚したら家庭に収まることを推奨した。

 具体的には結婚したら報奨金、妻が家にいたら旦那の給料は自動的に1.3~1.5にアップ。


 南海新都市での仕事は本土のものより基本的にどれも給料が良いので業種によっては年収が1000万を超える人まで出てきた。

 つまり大半の世帯は旦那の給料で十分、妻と子供を養えたので妻が無理して働くことは無かったのだ。

 住居は企業連合が用意したものを基本的に使うが、これもグループ分けされていて、食事の用意などは複数の世帯で持ち回りで行う。

 女性たちは食事の用意や子供たちの面倒をみる。

 子供を産んだ女性は基本的に数年間は何もしなくてよい。

 同じグループの女性、引退した老人や任意の希望者が子供の面倒や食事の用意、その他の家事などを分担して行う。

 食料品の買い出しも車などを持っている人がまとめてしてきて各世帯に配布する。

 農産物やチルド品などは業者に巡回してもらい、買取させてもらう。

 ここでの生活も出来なくなった老人は専用の保養所でまとめて企業グループが面倒をみる。

 費用は無料。

 子供や移民への教育や学校の送り迎えもこのグループが分担して行う。

 移民は子守やグループでの共同作業などを通じて言葉や文化を学び、周囲に溶け込んでいく。

 母国民同士で固まらせないことは渡航条件で認めさせていた。

 男は仕事を通じて社会に溶け込ませる。

 言ってみれば、江戸時代の長屋での風景のような状況を再現したような地域社会の復元であった。


 金を貯めた人は出て行き、個別の屋敷などを借りて住むことも可能ではあったのだが、その場合は土地の賃貸料、電気料金などかなりの割高の料金がかかるようになっていた。

 独身で、しかも個別の住居を借りて生活する者にとってはかなり住みにくい場所にあえてしていた。


 これらのシステムが軌道に乗る前は、複数の世帯と共同の作業を行うことを嫌がる人などが多くいたが、テスト的に始め数々の問題点を解決した結果、南海新都市の住民の半数以上はこれらの生活グループに参加し、地域社会と共存して生活していく道を選んでいくようになった。

 川北の会長なども大きな屋敷で使用人を大量にやとって生活するのではなく、長屋の様なコンテナハウスでの生活を送り、近隣住民の作った料理を時間が合えば一緒に食べていたり、近所の子供達と遊んでいたりしたのだった。

 会社には接待用の巨大なホールもあり、急な接待には近所の喫茶店に接待ルームがあったのでそういう生活で不自由はなかったのだ。


 ここでカンタンに川北重工の会長の川北耕三の日頃の生活について紹介しておく。

 彼は住んでいるのは20フィートコンテナを3つ連結した、大企業のトップの住居としては極めて控えめなものだった。

 彼は料理その他の家事が全く出来ないので、食事の用意は近所の住人(主にオバちゃんたち)に任せていた。

 部屋の掃除や洗濯物は近所から派遣されるメイドが行なっていて、暇な時は近所の女性陣に混じり食事の準備や子供の世話などを行なっていた。

 秘書も近所に住んでいて、朝、彼を迎えに行く所から帰宅するまで同行していた。

 ちなみに風呂も個人の風呂も当然あるのだが、近所の銭湯にも月に何度かは通っていた。

 仕事柄、付き合いで飲みに行くことはもちろん多いのだが、若い頃みたいに夜の街で遊び散らかすことはめっきり少なくなっていた。

 彼の唯一の趣味は車で、トヨタの古いランクルにもうかれこれ40年以上も乗り続けていた。

 若い頃は軽量化に励むあまり、勢い余って屋根やドアまで取り外していたのだが、最近では部下達から「会長!危険ですからそんな車を乗り回すのは辞めて下さい!」と耳にタコが出来るほど言われている。

 今時、マニュアルミッションだしディーゼルエンジンだし、屋根なしドアなし、巨大なタイヤを履いてブリブリ言われながら走っていたら嫌でも目立ってしまう。

 2030年の時点では64歳を超え、頭は真っ白になり、キリッと上がった眉毛と鋭い眼光、若◯弦◯や小林◯志のような低音ボイス、中背ながらガッチリとした体躯ということもあり、会社などではある意味、威圧感を周囲に撒き散らしているのだが、近所のガキどもには遠慮というものはなかった。

 近所のガキ共は自分の仕事や社会的身分など知らないので「ランクルのオッチャン」程度の扱いなのだが、特に仲の良いガキどもはたまにだが早く帰宅して彼らの飯を食う機会などがあれば、乗せてやり夕日の海岸線を突っ走ってやったりもする。

 耕三も度々、自分のところのグループにはお土産も買って帰るので、グループに上手く溶け込んでいる感じだった。


 彼の会社の幹部とかも耕三を見習って同様に一般人たちと共同の生活共同体に入り生活するものも多くいた。

 また、企業連合に属する会社のトップなども、川北を見習って同様のライフスタイルを送る様になった者も多く現れるようになった。

 トップが率先してこの様な生活を送る様になったので、この耕三が企画した「女性社会の復活」の取り組みは少しずつだが、その規模を広げようとしていた。

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