9 / 16
第三章:攻略と快進撃
第9話 没落策士 vs 成金豪商、舌戦の行方
しおりを挟む
明治16年の京都。その空は、二つの色に分断されていた。
東の山々を背にした鴨川の河川敷は、黒い煤煙(ばいえん)に覆われている。
西園寺家が主導する「琵琶湖疏水(びわこそすい)」の建設現場だ。
英国から輸入されたばかりの巨大な蒸気ボイラーが、怪物の咆哮のような音を立てて鎮座している。
「……40秒遅れている」
西園寺響一郎は、現場の泥に革靴を汚すことを厭(いと)わず、懐中時計の秒針を睨みつけていた。
「は、はい! すぐに火薬の装填を!」
「急げ。僕の計画に『停滞』という文字はない」
現場監督がひれ伏すように走り去る。
シュウウウ……!と蒸気式巻揚機(ウィンチ)が白煙を吐き出し、唸りを上げた。
地下深くから、土砂を満載したトロッコが凄まじい速度で引き上げられてくる。
地面が小刻みに震え、その振動は遠く離れた町家の障子すらカタカタと鳴らしていた。
「金と鉄と蒸気。……これこそが『力』だ」
西園寺は、巻き上がる黒煙を見上げながら冷徹に呟いた。
「京極のような血筋だけの貧乏人が入り込む隙間など、一ミリもない」
その言葉は、確信というよりは物理法則のように、重く響いた。
†
対照的に、静まり返った路地裏。
湿った苔の匂いがする石畳の上で、京極朔夜と久我山六花は一枚の地図を広げていた。
京都市街図。その四箇所
―「嵐山」「賀茂川堤防」「琵琶湖疏水」「円山公園」に、赤い丸印がつけられている。
「いいか、六花。闇雲に植えても勝てない」
朔夜は地図上の赤丸を指でなぞった。
「この四箇所の『急所』を桜で埋め尽くし、京都を『桜の回廊』で繋ぐんだ!」
「すごい……! 壮大な計画だね」
六花が目を輝かせる。
「これなら、きっと京都にも全国から人が集まるよ」
「そうだ。京都の街を、全国有数の桜の名所にする」
二人の脳裏には、灰色の街が薄紅色に染まる未来図が描かれていた。
だが、現実は足元にある。
朔夜は懐から、使い古した「がま口財布」を取り出し、逆さまに振った。
チャリン……。
落ちてきたのは、銅貨が数枚だけ。虚しい音が路地に吸い込まれる。
「……で、問題はこれだ」
朔夜の声が沈む。
「苗木を買う金が、一銭もねえ」
「あ……」
「桜の苗木は1本5銭。1万本植えるとして……500円(現在の価値で約1000万円)は必要だ」
500円。
今の二人にとっては、天文学的な数字だった。
日々の米を買うのさえ苦労しているのに、家一軒が建つほどの金など、逆立ちしても出てこない。
「俺たちの全財産じゃ、三本買って終わりだ」
「うぅ……。世知辛いね……」
六花が肩を落とす。
アイデアはある。場所も決めた。
六花の『星霜の手のひら』を使えば、時間も短縮できる。
揃わないのは「金」だけだ。
だが、その「金」こそが、西園寺たちが持っていて自分たちが持っていない、決定的な力だった。
「……一度、家に帰るぞ」
しばらく考え込んだ後、朔夜が顔を上げた。
その目に、決死の光が宿る。
「え? お金を取りに?」
「いや。……『京極家の誇り』を取りにな」
†
京極家が住む、ボロボロの長屋。
カビ臭い押し入れの奥から、朔夜は一つの桐箱を取り出した。
蓋を開けると、防虫香の香りとともに、漆黒の羽織が現れた。
黒紋付の羽織。背中には、京極家の家紋が金糸で刺繍されている。
古びてはいるが、そこだけ異様な品格を放っていた。
「親父が残した、唯一の遺産だ」
「うわ~、綺麗な着物ね……」
六花が感嘆の声を漏らす。
「質に入れようか何度も迷ったが…とっておいて良かったぜ」
朔夜は羽織に袖を通した。
袴(はかま)の紐をギュッと結び直す。
その瞬間、彼の顔から、いつもの「道化」の表情が消えた。
背筋が伸び、顎が上がり、かつて名門士族の嫡男として育てられた頃の――若き当主の顔になる。
(……震えるな。俺は京極朔夜だ)
内心の恐怖を押し殺し、朔夜は振り返った。
「行くぞ、六花。…俺たちの『血筋』を、金に換える」
「…うん!朔夜くん、かっこいいよ」
六花が頼もしげに頷く。
その言葉を鎧(よろい)にして、朔夜は戦場へと向かった。
†
戦場の名は、豪商・大黒屋(だいこくや)
成金の象徴とも言える、大黒屋剛山(ごうざん)の屋敷だ。
門の前で、番頭が立ちはだかった。
「帰れ帰れ!旦那様は忙しいんだ!学生風情が会える方じゃない!」
「……おや」
朔夜は冷ややかに目を細めた。学生の目ではない、名門華族の目だ。
「京極家の当主を門前払いとは。大黒屋さんともあろうお方が、随分と礼儀を知らぬ使用人を飼っておられる」
パチン、と扇子を閉じる音が響く。
その堂々たる威圧感と、羽織の家紋を見て、番頭がたじろいだ。
「き、京極…? まさか数年前までは隆盛を誇っていた…あの一族?」
「腐っても鯛、枯れても京極だ。…通してくれ」
ハッタリは通じた。 だが、本丸は甘くなかった。
通された応接間は、悪趣味なほど豪華だった。
虎の敷物、金箔の屏風、巨大な壺。和と洋が喧嘩をしているような空間だ。
その中央、革張りのソファにふんぞり返っているのが、大黒屋剛山だった。
太い指で葉巻を弄んでいる。
「お目通りいただき、ありがとうございます」
「フン。京極の若造か」
剛山は朔夜を一瞥しただけで、興味なさそうに煙を吐いた。
「何の用だ?金の無心なら、他を当たれ」
「単刀直入に言います。……1万本の桜を京の街に植えるための出資をお願いしたい」
「はっ! 桜だと?」
剛山が鼻で笑った。
「馬鹿馬鹿しい。そんなもん、一銭の得にもならんわ!」
「剛山様、話だけでも最後まで聞いていただけませんか?」
六花も懸命に頼み込むが、剛山の手は止まらない。
「わしは忙しいんじゃ。西園寺様との商談も控えておる。帰れ!」
剛山が手を振ると、控えていた屈強な用心棒たちが朔夜の腕を掴んだ。
「旦那様が帰れと言ってるんだ。出ろ!」
「離せ! まだ話は……!」
問答無用で引きずり出されそうになる朔夜。
(くそっ……!やはり「血筋」だけじゃ、もう通用しないのか!)
絶望がよぎったその時。
六花が、部屋の隅にある「異質なもの」に気づいた。
「……?」
(……変だわ)
六花の観察眼が、豪華な調度品の中に混じった違和感を捉える。
一つは、壁に飾られた「巨大な剛山の肖像画」
もう一つは、部屋の片隅にある「立派すぎる仏壇」と、その横に広げられた「家系図」だ。
(こんな洋風の応接間に、仏壇? それにあの家系図…紙が真っ白。新しく作り直したみたいにピカピカ)
(旦那さん、さっきから話してる間も……チラチラと自分の肖像画を気にしてる)
六花の脳内で、点と点が繋がった。
それは、剛山という男の心の鎧の隙間だった。
六花は用心棒に掴まれながら、朔夜に囁いた。
「(小声)…朔夜くん。一度、出直しましょう」
「えっ」
「お時間いただき、ありがとうございました。また改めて伺います」
六花は朔夜の腕を強く引き、自ら出口へと向かった。
「二度と来るな! 血筋だけの貧乏人が!」
剛山の罵声を背に、二人は屋敷を追い出された。
†
夕暮れの鴨川沿い。
茜色の空の下、二人はとぼとぼと歩いていた。
「……はぁ。参ったな」
朔夜が大きく息を吐き、苛立ち紛れに小石を蹴った。
「まさか、あそこまで聞く耳持たないとは。金持ちってのは、もっと地元に貢献しそうなもんだけどな……」
「……朔夜くん」
少し後ろを歩いていた六花が、声をかけた。
「ん?」
「あのおじさん…死んで忘れられるのが怖いんだと思う」
朔夜は足を止めて振り返った。
「は?死ぬのが怖い?それって誰でもそうじゃないか」
「うん。…だけど…部屋、見たでしょ?」
六花は静かに、けれど確信を持って語り始めた。
「壁には自分の大きな肖像画。隅には立派すぎる仏壇。それに、新しく作り直したピカピカの家系図」
「…言われてみれば。成金にしちゃあ、妙に先祖とか気にしてたな」
「私には……あれが全部『悲鳴』に見えたの」
六花の瞳が、夕日を反射して鋭く光る。
「お金持ちになって、何でも手に入れたけど…『死んだら忘れ去られる』ってことが、一番の恐怖なんじゃないかな。だから、必死に『自分が生きた証』を残そうとしてる」
その分析を聞いた瞬間、朔夜はハッとして数秒間、虚空を見つめた。
策士の脳細胞が、高速で回転を始める。
「……なるほど」
金で買えるものは全部買った男。次は何が欲しい?
あいつが喉から手が出るほど欲しいのは……『金』じゃなくて……。
「名誉か!生きた証」
カチッ。 朔夜の脳内で、歯車が噛み合う音がした。
彼の顔に、ニヤリと、悪巧みをする子供のような笑みが浮かぶ。
いや、それは獲物を見つけた狩人の笑みだった。
「……いけるぞ、六花」
「え?」 「あいつの『願望』を、俺たちの『商品』に変えるんだ」
朔夜は懐から手帳を取り出し、サラサラと何かを書き始めた。
「次は『寄付』の話はやめる。こう提案するんだ。『あなたの名前を、永遠に残しませんか』ってな」
「名前を……?」
「ああ。桜の木の根元に、出資者の名前を彫った『石碑』を建てる」
朔夜はバチンと手帳を閉じた。
「桜が咲くたびに、人々はその名前を見る。孫の代、そのまた孫の代まで……『京都を救った英雄』として語り継がれる」
「金じゃ買えない『名誉』と『永遠』。……それを俺たちが売ってやるんだ」
六花は目を丸くし、そしてクスッと笑った。
「…ふふ。すごい。そんなこと思いつくなんて…やっぱり朔夜くんのハッタリは超一流だね」
「人聞きが悪いな。『仕掛人』と言え」
朔夜は照れ隠しに、六花の頭をガシガシと撫でた。
「ナイスだ、六花。お前の『観察眼』がなきゃ、気付けなかった。…ありがとな」
「……うん」
二人は顔を見合わせ、共犯者の笑みを浮かべた。
今、二人は最強のパートナーだ。言葉にしなくとも、互いの役割を完璧に理解している。
「よし、作戦変更だ。あの大狸(剛山)から…『永遠』を担保に、金をごっそり引き出してやる!」
†
夜。ガス灯が灯された大黒屋の応接間。
再び訪れた二人を前に、剛山はさらに不機嫌そうに貧乏ゆすりをしていた。
「しつこいな! 来るなと言うたじゃろうが!金の話なら聞かんぞ。わしは忙しいんじゃ」
「……いや。金より、大事なものです」
朔夜は礼儀正しく、深く一礼した。
その態度は、先ほどまでの「頼み込む学生」ではない。
「対等な取引相手」、いや、彼に救済をもたらす「上位者」の風格すら漂わせていた。
「剛山様。…あなたは100年後、誰に思い出してもらえますか?」
剛山がピクリと眉を動かした。葉巻を持つ手が止まる。
「金は、使えばなくなる。屋敷も、いつかは朽ちる。あなたが死んだ後……誰があなたの偉業を語り継いでくれますか?」
「……貴様、何を……」
朔夜は、剛山の背後にある「肖像画」をチラリと見た。視線だけで殺すように。
「その肖像画も、あなたの孫の代には……蔵の奥で埃を被っているかもしれませんね」
剛山の顔色が変わった。
図星だ。それはまさに、彼が毎晩、悪夢に見ている光景だったからだ。
朔夜は畳み掛ける。相手の逃げ道を塞ぎ、最後に唯一の出口を示す。
「俺たちがあなたに提供できるのは『永遠の名誉』です」
朔夜は懐から一枚の図面を広げた。
桜並木の完成予想図と、その根元に描かれた石碑のデザインだ。
「寄付していただいた桜の根元に、あなたの名前を深く刻んだ石碑を建てます。『この桜は、大黒屋剛山氏が植えた』……と」
「石碑……?」
「桜は毎年咲きます。100年先も、200年先も。春が来るたび、人々は満開の花を見上げ、そしてあなたの名前を見る。何世代にもわたって……あなたの名前は『京都を美しくした英雄』として、語り継がれるんです」
朔夜は、剛山の目を真っ直ぐに見据えた。
その熱気にあてられた剛山の心が揺らいだ瞬間、六花が静かに、けれど確信に満ちた声を重ねた。彼女の澄んだ瞳には、薄紅色に染まった未来の京の都と、そこを埋め尽くす人々の喜びが、すでにありありと視えているようだった。
「剛山さんの寄付で、街中が桜で埋め尽くされれば、京都の街には、全国から観光客が押し寄せます」
六花の言葉が、剛山の脳裏に「自分を称える群衆」の映像を焼き付ける。
朔夜が、決定的な一言を放った。
「金で買えない『永遠と名誉』へご寄付いただけませんか?」
剛山は言葉を失った。視線が泳ぎ、自分の肖像画と、仏壇を見る。
巨万の富を築いても埋まらなかった心の穴。死への恐怖と、忘れ去られることへの不安。
それを、この若造は「桜」で埋めると言っている。
「……英雄、か。わしの名前が……200年先も……?」
剛山の心が揺らいだ、その一瞬の隙を見逃さず、六花が一歩進み出た。
「はい。私が保証します」
凛とした声。それは朔夜の言葉に絶対的な信頼の印を押すものだった。
「あなたの名前が刻まれた桜は、私が責任を持って、誰よりも美しく咲かせてみせます。あなたの桜を植えた場所は、京都で一番の、名所になります」
剛山の震える手が、葉巻を灰皿に押し付けた。
火が消え、紫煙が途絶える。ゴクリ、と唾を飲み込む音が室内に響く。
「日本中、いや世界中から観光客が押し寄せますよ」
「……分かった」
剛山が身を乗り出した。
「いくらだ?100本か?1000本か?」
「では1000本分、苗木1000本×5銭=50円です」
「よかろう。出してやろう!」
剛山が叫んだ。
もはや金など紙切れ同然だと言わんばかりに。
「一番目立つ場所に植えろ! 石碑の字は、特大サイズじゃ!」
「桜が咲いたら報告しますね。ぜひ観に行ってください」
「金ならいくらでも出す!わしの名を…京都の歴史に刻め!!」
「……毎度あり」
朔夜はニヤリと、悪党のような笑みを浮かべた。
†
それからの朔夜の動きは早かった。
3日後、別の豪商の屋敷。
朔夜は、大黒屋の署名が入った契約書をヒラヒラと見せびらかしていた。
「あの大黒屋様が、『京都の英雄』になると出資されました。おや?あなたは参加されなくてよろしいのですか?」
「な、なに?」
「このままだと、後世に残る名前は…大黒屋さんだけになりますが?」
「な、なんじゃと!?あのタヌキ爺だけ目立たせてたまるか!わしも出す!倍出すぞ!わしの石碑をもっと大きくしろ!」
翌日、また別の屋敷。
「今なら『英雄枠』、残りわずかですが、出資できますよ」
「出そう!言い値でいい!大黒屋に負けるわけにはいかん!」
次々と契約書に判が押されていく。
成金たちのプライドと競争心を利用した、見事なドミノ倒しだった。
朔夜は彼らの欲望を薪にして、復興という炎を燃え上がらせたのだ。
†
夕暮れの帰り道。
朔夜の手には、分厚い札束が入った封筒があった。
ずっしりと重い。それはただの紙切れではなく、1万本の命(桜)の重さだ。
「へっ。チョロいもんだぜ。これで一万本の苗木も肥料も、買い放題だ」
朔夜は封筒をポンと投げてキャッチした。
六花は、少し呆れたように、でも誇らしげに朔夜を見た。
「すごいね、朔夜くん。…本当に『口八丁』だけでお城が建ちそう」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
朔夜は照れ隠しに六花の頭を撫でた。
「ナイスだ、六花。お前の『観察眼』がなきゃ、門前払いだった」
「えへへ……。役に立ててよかった」
二人は顔を見合わせ、笑い合った。
「資金」という最初の壁を、二人は知恵と共犯関係で突破したのだ。
その笑顔は、かつての「諦め」を含んだものではなく、未来を掴み取った者の輝きに満ちていた。
「よし。金は確保した」
朔夜が遠くを見つめる。その瞳は、すでに次なる戦場を見据えていた。
「行くぞ、六花。…次の課題は技術・職人だ」
『第1の壁・資金。――突破』
東の山々を背にした鴨川の河川敷は、黒い煤煙(ばいえん)に覆われている。
西園寺家が主導する「琵琶湖疏水(びわこそすい)」の建設現場だ。
英国から輸入されたばかりの巨大な蒸気ボイラーが、怪物の咆哮のような音を立てて鎮座している。
「……40秒遅れている」
西園寺響一郎は、現場の泥に革靴を汚すことを厭(いと)わず、懐中時計の秒針を睨みつけていた。
「は、はい! すぐに火薬の装填を!」
「急げ。僕の計画に『停滞』という文字はない」
現場監督がひれ伏すように走り去る。
シュウウウ……!と蒸気式巻揚機(ウィンチ)が白煙を吐き出し、唸りを上げた。
地下深くから、土砂を満載したトロッコが凄まじい速度で引き上げられてくる。
地面が小刻みに震え、その振動は遠く離れた町家の障子すらカタカタと鳴らしていた。
「金と鉄と蒸気。……これこそが『力』だ」
西園寺は、巻き上がる黒煙を見上げながら冷徹に呟いた。
「京極のような血筋だけの貧乏人が入り込む隙間など、一ミリもない」
その言葉は、確信というよりは物理法則のように、重く響いた。
†
対照的に、静まり返った路地裏。
湿った苔の匂いがする石畳の上で、京極朔夜と久我山六花は一枚の地図を広げていた。
京都市街図。その四箇所
―「嵐山」「賀茂川堤防」「琵琶湖疏水」「円山公園」に、赤い丸印がつけられている。
「いいか、六花。闇雲に植えても勝てない」
朔夜は地図上の赤丸を指でなぞった。
「この四箇所の『急所』を桜で埋め尽くし、京都を『桜の回廊』で繋ぐんだ!」
「すごい……! 壮大な計画だね」
六花が目を輝かせる。
「これなら、きっと京都にも全国から人が集まるよ」
「そうだ。京都の街を、全国有数の桜の名所にする」
二人の脳裏には、灰色の街が薄紅色に染まる未来図が描かれていた。
だが、現実は足元にある。
朔夜は懐から、使い古した「がま口財布」を取り出し、逆さまに振った。
チャリン……。
落ちてきたのは、銅貨が数枚だけ。虚しい音が路地に吸い込まれる。
「……で、問題はこれだ」
朔夜の声が沈む。
「苗木を買う金が、一銭もねえ」
「あ……」
「桜の苗木は1本5銭。1万本植えるとして……500円(現在の価値で約1000万円)は必要だ」
500円。
今の二人にとっては、天文学的な数字だった。
日々の米を買うのさえ苦労しているのに、家一軒が建つほどの金など、逆立ちしても出てこない。
「俺たちの全財産じゃ、三本買って終わりだ」
「うぅ……。世知辛いね……」
六花が肩を落とす。
アイデアはある。場所も決めた。
六花の『星霜の手のひら』を使えば、時間も短縮できる。
揃わないのは「金」だけだ。
だが、その「金」こそが、西園寺たちが持っていて自分たちが持っていない、決定的な力だった。
「……一度、家に帰るぞ」
しばらく考え込んだ後、朔夜が顔を上げた。
その目に、決死の光が宿る。
「え? お金を取りに?」
「いや。……『京極家の誇り』を取りにな」
†
京極家が住む、ボロボロの長屋。
カビ臭い押し入れの奥から、朔夜は一つの桐箱を取り出した。
蓋を開けると、防虫香の香りとともに、漆黒の羽織が現れた。
黒紋付の羽織。背中には、京極家の家紋が金糸で刺繍されている。
古びてはいるが、そこだけ異様な品格を放っていた。
「親父が残した、唯一の遺産だ」
「うわ~、綺麗な着物ね……」
六花が感嘆の声を漏らす。
「質に入れようか何度も迷ったが…とっておいて良かったぜ」
朔夜は羽織に袖を通した。
袴(はかま)の紐をギュッと結び直す。
その瞬間、彼の顔から、いつもの「道化」の表情が消えた。
背筋が伸び、顎が上がり、かつて名門士族の嫡男として育てられた頃の――若き当主の顔になる。
(……震えるな。俺は京極朔夜だ)
内心の恐怖を押し殺し、朔夜は振り返った。
「行くぞ、六花。…俺たちの『血筋』を、金に換える」
「…うん!朔夜くん、かっこいいよ」
六花が頼もしげに頷く。
その言葉を鎧(よろい)にして、朔夜は戦場へと向かった。
†
戦場の名は、豪商・大黒屋(だいこくや)
成金の象徴とも言える、大黒屋剛山(ごうざん)の屋敷だ。
門の前で、番頭が立ちはだかった。
「帰れ帰れ!旦那様は忙しいんだ!学生風情が会える方じゃない!」
「……おや」
朔夜は冷ややかに目を細めた。学生の目ではない、名門華族の目だ。
「京極家の当主を門前払いとは。大黒屋さんともあろうお方が、随分と礼儀を知らぬ使用人を飼っておられる」
パチン、と扇子を閉じる音が響く。
その堂々たる威圧感と、羽織の家紋を見て、番頭がたじろいだ。
「き、京極…? まさか数年前までは隆盛を誇っていた…あの一族?」
「腐っても鯛、枯れても京極だ。…通してくれ」
ハッタリは通じた。 だが、本丸は甘くなかった。
通された応接間は、悪趣味なほど豪華だった。
虎の敷物、金箔の屏風、巨大な壺。和と洋が喧嘩をしているような空間だ。
その中央、革張りのソファにふんぞり返っているのが、大黒屋剛山だった。
太い指で葉巻を弄んでいる。
「お目通りいただき、ありがとうございます」
「フン。京極の若造か」
剛山は朔夜を一瞥しただけで、興味なさそうに煙を吐いた。
「何の用だ?金の無心なら、他を当たれ」
「単刀直入に言います。……1万本の桜を京の街に植えるための出資をお願いしたい」
「はっ! 桜だと?」
剛山が鼻で笑った。
「馬鹿馬鹿しい。そんなもん、一銭の得にもならんわ!」
「剛山様、話だけでも最後まで聞いていただけませんか?」
六花も懸命に頼み込むが、剛山の手は止まらない。
「わしは忙しいんじゃ。西園寺様との商談も控えておる。帰れ!」
剛山が手を振ると、控えていた屈強な用心棒たちが朔夜の腕を掴んだ。
「旦那様が帰れと言ってるんだ。出ろ!」
「離せ! まだ話は……!」
問答無用で引きずり出されそうになる朔夜。
(くそっ……!やはり「血筋」だけじゃ、もう通用しないのか!)
絶望がよぎったその時。
六花が、部屋の隅にある「異質なもの」に気づいた。
「……?」
(……変だわ)
六花の観察眼が、豪華な調度品の中に混じった違和感を捉える。
一つは、壁に飾られた「巨大な剛山の肖像画」
もう一つは、部屋の片隅にある「立派すぎる仏壇」と、その横に広げられた「家系図」だ。
(こんな洋風の応接間に、仏壇? それにあの家系図…紙が真っ白。新しく作り直したみたいにピカピカ)
(旦那さん、さっきから話してる間も……チラチラと自分の肖像画を気にしてる)
六花の脳内で、点と点が繋がった。
それは、剛山という男の心の鎧の隙間だった。
六花は用心棒に掴まれながら、朔夜に囁いた。
「(小声)…朔夜くん。一度、出直しましょう」
「えっ」
「お時間いただき、ありがとうございました。また改めて伺います」
六花は朔夜の腕を強く引き、自ら出口へと向かった。
「二度と来るな! 血筋だけの貧乏人が!」
剛山の罵声を背に、二人は屋敷を追い出された。
†
夕暮れの鴨川沿い。
茜色の空の下、二人はとぼとぼと歩いていた。
「……はぁ。参ったな」
朔夜が大きく息を吐き、苛立ち紛れに小石を蹴った。
「まさか、あそこまで聞く耳持たないとは。金持ちってのは、もっと地元に貢献しそうなもんだけどな……」
「……朔夜くん」
少し後ろを歩いていた六花が、声をかけた。
「ん?」
「あのおじさん…死んで忘れられるのが怖いんだと思う」
朔夜は足を止めて振り返った。
「は?死ぬのが怖い?それって誰でもそうじゃないか」
「うん。…だけど…部屋、見たでしょ?」
六花は静かに、けれど確信を持って語り始めた。
「壁には自分の大きな肖像画。隅には立派すぎる仏壇。それに、新しく作り直したピカピカの家系図」
「…言われてみれば。成金にしちゃあ、妙に先祖とか気にしてたな」
「私には……あれが全部『悲鳴』に見えたの」
六花の瞳が、夕日を反射して鋭く光る。
「お金持ちになって、何でも手に入れたけど…『死んだら忘れ去られる』ってことが、一番の恐怖なんじゃないかな。だから、必死に『自分が生きた証』を残そうとしてる」
その分析を聞いた瞬間、朔夜はハッとして数秒間、虚空を見つめた。
策士の脳細胞が、高速で回転を始める。
「……なるほど」
金で買えるものは全部買った男。次は何が欲しい?
あいつが喉から手が出るほど欲しいのは……『金』じゃなくて……。
「名誉か!生きた証」
カチッ。 朔夜の脳内で、歯車が噛み合う音がした。
彼の顔に、ニヤリと、悪巧みをする子供のような笑みが浮かぶ。
いや、それは獲物を見つけた狩人の笑みだった。
「……いけるぞ、六花」
「え?」 「あいつの『願望』を、俺たちの『商品』に変えるんだ」
朔夜は懐から手帳を取り出し、サラサラと何かを書き始めた。
「次は『寄付』の話はやめる。こう提案するんだ。『あなたの名前を、永遠に残しませんか』ってな」
「名前を……?」
「ああ。桜の木の根元に、出資者の名前を彫った『石碑』を建てる」
朔夜はバチンと手帳を閉じた。
「桜が咲くたびに、人々はその名前を見る。孫の代、そのまた孫の代まで……『京都を救った英雄』として語り継がれる」
「金じゃ買えない『名誉』と『永遠』。……それを俺たちが売ってやるんだ」
六花は目を丸くし、そしてクスッと笑った。
「…ふふ。すごい。そんなこと思いつくなんて…やっぱり朔夜くんのハッタリは超一流だね」
「人聞きが悪いな。『仕掛人』と言え」
朔夜は照れ隠しに、六花の頭をガシガシと撫でた。
「ナイスだ、六花。お前の『観察眼』がなきゃ、気付けなかった。…ありがとな」
「……うん」
二人は顔を見合わせ、共犯者の笑みを浮かべた。
今、二人は最強のパートナーだ。言葉にしなくとも、互いの役割を完璧に理解している。
「よし、作戦変更だ。あの大狸(剛山)から…『永遠』を担保に、金をごっそり引き出してやる!」
†
夜。ガス灯が灯された大黒屋の応接間。
再び訪れた二人を前に、剛山はさらに不機嫌そうに貧乏ゆすりをしていた。
「しつこいな! 来るなと言うたじゃろうが!金の話なら聞かんぞ。わしは忙しいんじゃ」
「……いや。金より、大事なものです」
朔夜は礼儀正しく、深く一礼した。
その態度は、先ほどまでの「頼み込む学生」ではない。
「対等な取引相手」、いや、彼に救済をもたらす「上位者」の風格すら漂わせていた。
「剛山様。…あなたは100年後、誰に思い出してもらえますか?」
剛山がピクリと眉を動かした。葉巻を持つ手が止まる。
「金は、使えばなくなる。屋敷も、いつかは朽ちる。あなたが死んだ後……誰があなたの偉業を語り継いでくれますか?」
「……貴様、何を……」
朔夜は、剛山の背後にある「肖像画」をチラリと見た。視線だけで殺すように。
「その肖像画も、あなたの孫の代には……蔵の奥で埃を被っているかもしれませんね」
剛山の顔色が変わった。
図星だ。それはまさに、彼が毎晩、悪夢に見ている光景だったからだ。
朔夜は畳み掛ける。相手の逃げ道を塞ぎ、最後に唯一の出口を示す。
「俺たちがあなたに提供できるのは『永遠の名誉』です」
朔夜は懐から一枚の図面を広げた。
桜並木の完成予想図と、その根元に描かれた石碑のデザインだ。
「寄付していただいた桜の根元に、あなたの名前を深く刻んだ石碑を建てます。『この桜は、大黒屋剛山氏が植えた』……と」
「石碑……?」
「桜は毎年咲きます。100年先も、200年先も。春が来るたび、人々は満開の花を見上げ、そしてあなたの名前を見る。何世代にもわたって……あなたの名前は『京都を美しくした英雄』として、語り継がれるんです」
朔夜は、剛山の目を真っ直ぐに見据えた。
その熱気にあてられた剛山の心が揺らいだ瞬間、六花が静かに、けれど確信に満ちた声を重ねた。彼女の澄んだ瞳には、薄紅色に染まった未来の京の都と、そこを埋め尽くす人々の喜びが、すでにありありと視えているようだった。
「剛山さんの寄付で、街中が桜で埋め尽くされれば、京都の街には、全国から観光客が押し寄せます」
六花の言葉が、剛山の脳裏に「自分を称える群衆」の映像を焼き付ける。
朔夜が、決定的な一言を放った。
「金で買えない『永遠と名誉』へご寄付いただけませんか?」
剛山は言葉を失った。視線が泳ぎ、自分の肖像画と、仏壇を見る。
巨万の富を築いても埋まらなかった心の穴。死への恐怖と、忘れ去られることへの不安。
それを、この若造は「桜」で埋めると言っている。
「……英雄、か。わしの名前が……200年先も……?」
剛山の心が揺らいだ、その一瞬の隙を見逃さず、六花が一歩進み出た。
「はい。私が保証します」
凛とした声。それは朔夜の言葉に絶対的な信頼の印を押すものだった。
「あなたの名前が刻まれた桜は、私が責任を持って、誰よりも美しく咲かせてみせます。あなたの桜を植えた場所は、京都で一番の、名所になります」
剛山の震える手が、葉巻を灰皿に押し付けた。
火が消え、紫煙が途絶える。ゴクリ、と唾を飲み込む音が室内に響く。
「日本中、いや世界中から観光客が押し寄せますよ」
「……分かった」
剛山が身を乗り出した。
「いくらだ?100本か?1000本か?」
「では1000本分、苗木1000本×5銭=50円です」
「よかろう。出してやろう!」
剛山が叫んだ。
もはや金など紙切れ同然だと言わんばかりに。
「一番目立つ場所に植えろ! 石碑の字は、特大サイズじゃ!」
「桜が咲いたら報告しますね。ぜひ観に行ってください」
「金ならいくらでも出す!わしの名を…京都の歴史に刻め!!」
「……毎度あり」
朔夜はニヤリと、悪党のような笑みを浮かべた。
†
それからの朔夜の動きは早かった。
3日後、別の豪商の屋敷。
朔夜は、大黒屋の署名が入った契約書をヒラヒラと見せびらかしていた。
「あの大黒屋様が、『京都の英雄』になると出資されました。おや?あなたは参加されなくてよろしいのですか?」
「な、なに?」
「このままだと、後世に残る名前は…大黒屋さんだけになりますが?」
「な、なんじゃと!?あのタヌキ爺だけ目立たせてたまるか!わしも出す!倍出すぞ!わしの石碑をもっと大きくしろ!」
翌日、また別の屋敷。
「今なら『英雄枠』、残りわずかですが、出資できますよ」
「出そう!言い値でいい!大黒屋に負けるわけにはいかん!」
次々と契約書に判が押されていく。
成金たちのプライドと競争心を利用した、見事なドミノ倒しだった。
朔夜は彼らの欲望を薪にして、復興という炎を燃え上がらせたのだ。
†
夕暮れの帰り道。
朔夜の手には、分厚い札束が入った封筒があった。
ずっしりと重い。それはただの紙切れではなく、1万本の命(桜)の重さだ。
「へっ。チョロいもんだぜ。これで一万本の苗木も肥料も、買い放題だ」
朔夜は封筒をポンと投げてキャッチした。
六花は、少し呆れたように、でも誇らしげに朔夜を見た。
「すごいね、朔夜くん。…本当に『口八丁』だけでお城が建ちそう」
「褒め言葉として受け取っておくよ」
朔夜は照れ隠しに六花の頭を撫でた。
「ナイスだ、六花。お前の『観察眼』がなきゃ、門前払いだった」
「えへへ……。役に立ててよかった」
二人は顔を見合わせ、笑い合った。
「資金」という最初の壁を、二人は知恵と共犯関係で突破したのだ。
その笑顔は、かつての「諦め」を含んだものではなく、未来を掴み取った者の輝きに満ちていた。
「よし。金は確保した」
朔夜が遠くを見つめる。その瞳は、すでに次なる戦場を見据えていた。
「行くぞ、六花。…次の課題は技術・職人だ」
『第1の壁・資金。――突破』
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎
ギルドで働くおっとり回復役リィナは、
自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。
……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!?
「転ばないで」
「可愛いって言うのは僕の役目」
「固定回復役だから。僕の」
優しいのに過保護。
仲間のはずなのに距離が近い。
しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。
鈍感で頑張り屋なリィナと、
策を捨てるほど恋に負けていくカイの、
コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕!
「遅いままでいい――置いていかないから。」
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
望まぬ結婚をさせられた私のもとに、死んだはずの護衛騎士が帰ってきました~不遇令嬢が世界一幸せな花嫁になるまで
越智屋ノマ
恋愛
「君を愛することはない」で始まった不遇な結婚――。
国王の命令でクラーヴァル公爵家へと嫁いだ伯爵令嬢ヴィオラ。しかし夫のルシウスに愛されることはなく、毎日つらい仕打ちを受けていた。
孤独に耐えるヴィオラにとって唯一の救いは、護衛騎士エデン・アーヴィスと過ごした日々の思い出だった。エデンは強くて誠実で、いつもヴィオラを守ってくれた……でも、彼はもういない。この国を襲った『災禍の竜』と相打ちになって、3年前に戦死してしまったのだから。
ある日、参加した夜会の席でヴィオラは窮地に立たされる。その夜会は夫の愛人が主催するもので、夫と結託してヴィオラを陥れようとしていたのだ。誰に救いを求めることもできず、絶体絶命の彼女を救ったのは――?
(……私の体が、勝手に動いている!?)
「地獄で悔いろ、下郎が。このエデン・アーヴィスの目の黒いうちは、ヴィオラ様に指一本触れさせはしない!」
死んだはずのエデンの魂が、ヴィオラの体に乗り移っていた!?
――これは、望まぬ結婚をさせられた伯爵令嬢ヴィオラと、死んだはずの護衛騎士エデンのふしぎな恋の物語。理不尽な夫になんて、もう絶対に負けません!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる