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2 やっぱり認めてくれないんだね
しおりを挟む「ふぁ!?」
創の首がガクンと揺れた。片肘で身体を支えた貴史が、勢いよく創を剥がしたからだ。
「ぅぐっ!」
「あ…、ご、ごめんな」
「ん…大丈夫だよ、タカ兄」
指が簡単に回ってしまう、創の細い腕。貴史は、ハッとした顔で握った手に視線を移す。その顔を、創は痛みを堪え見つめていた。
そんな創に気づいたのか、貴史は申し訳無さそうな顔を交えつつ言い聞かせるように言った。
「でもな、こういうことは、ちゃんと…好きな人と、するもんだぞ?」
「…」
…タカ兄はなにもわかってない。
衝撃と腕の痛みを逃しながら、創はさっき触れた唇の感触を頭の中で反芻する。
ぼくの気持ちが、本当だって…
貴史から見えないように、創は一瞬だけ唇をぎゅっと結んだ。
腕を掴んだまま、諭すような大人の顔をする貴史。
スッと顔を上げ、ニコッと笑顔を返す創。
「創?」
「うん」
…聞き分けのいい、可愛い、ぼく。
その笑顔を了承と受け取り、安心した顔を浮かべる貴史。その目には、無邪気な創しか映っていない。
タカ兄の顔…タカ兄の唇…首筋…鎖骨…もっと下…
タカ兄の瞳に映る可愛らしいぼくとは反対に、ぼくは、頭の中でタカ兄をめちゃめちゃにすることしか考えてない。
だけどタカ兄は、そんなぼくのことなんてちっとも頭にないんだよね…
大人の顔をする貴史と、広角を顔いっぱいに上げこどもらしく笑う創。
そんなタカ兄。そんなタカ兄だから大好き。
そんなタカ兄だから。今日で諦める。
貴史が顔を近づけ、読み聞かせをするように、約束をするように言った。
「創。好きな人とキスするまで、これは初めてにカウントしないからな?」
貴史の、小さい子を諭すような余裕の笑顔と、頭をポンポンする大きな手に…
何かがプツンと切れた。
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