リモートワークは机の下にご用心!?

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僕は机の下で

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 友くんは、パソコンを開きイヤホンを耳にねじ込む。
 気を抜くとすぐに寄り添い始める上下のまぶたの仲を引き裂くため、傍らに置いてあるコーヒーを流し込む。
 そしてネクタイをぎゅぎゅっとする。
 その時の、骨ばった手がカッコいいんだ。







 ふふふ~♪


 テーブルの下。
 僕は、そんな友くんの朝の一連のお決まりのやーつをするのを見上げながら……息を潜め膝を抱えて待つ。









「はい、はい…こちらの申し込みの件数ですが…」


 友くんが、パソコンに向かって真剣な声で話し始めた。リモートワークってやつだ。
 友くんはこうして時々、リビングのテーブルでお仕事をする。いつもは自分の部屋に籠もっているけれど、どうしても行き詰まったときなんかは気分転換にと移動してくる。


 そろそろリビング来る頃かなって思ってたから♪ビッンッゴ~~♪


 ほとんど部屋に籠もりっきりだった友くん。僕も大学があったし、一緒に住んでるのに、こうして友くんをゆっくり見るのも数日ぶりだ。
 まぁ、首をグイっとしてギリ顎までしか見えないけど。


 ……もうちょっと、僕にかまってくれても、いいんだけど、な。

  
 僕は、親指と人差し指で椅子の脚を掴む変な格好の友くんの足をジト~っと睨んだ。


 靴下、穴開きそうじゃん……てか、右と左、全然色が違うんですけど~w


 上半身はビシッとスーツなのに、下半身はジャージで、左右全然違う靴下(しかも穴あき)を履いている友くんに、僕は少しだけ和んだ。







 資料パラパラ、キーボードカタカタ、ペンがコツコツ……友くんが仕事をしている音が頭上から響いてくる。


「わかりました。こちらは明日にでも……あ、はい」


 僕は、テーブルの下にしては広いスペースで友くんの声を聞く。資料をたくさん広げても大丈夫なように…って、友くんが選んだやつだ。


 でも僕は知ってるよ。ついうっかりコーヒーを倒しちゃわないように……が本音なの。


 カッコいい友くんも、カッコつけてる友くんも、カッコ悪い友くんも……全部全部全部、大好きだよ。







 友くんの、くにゃくにゃする足を見飽きた頃。


 そろそろお仕事終わるかな~。


 友くんの声が、仕事モードから少し砕けた声になった。どうやら、相手と雑談タイムに入ったみたいだ。でもその声に、僕は気づく。


 友くん疲れてるなぁ……


 顔を見なくたってわかる。友くんは、疲れが溜まってくるとコーヒーに口をつける回数が増える。空いた手はタバコを探すんだ。


 まぁ、ここ数日ずっと部屋に籠もってたもんね……


 コーヒーが入ったマグカップを置く音、手が机の上で何かを探す音が頭上から響いてくる。


 ってか!!大人なんだからさ、自分の健康管理くらいしっかりしようよ!!


 僕は先週のことを思い出す。深夜遅くまで部屋から話し声がしていたし、朝も早くからパソコンを叩いている音がしていた。そして僕が仕事が落ち着く頃を今か今かと待っていたのに……やっとその日になったのに、友くんはベッドから出てこなかった。そしてまたすれ違う日々になってしまった。


 どうせ今日も、この後ぶっ倒れるように寝るんでしょ?で、また何日か顔を合わせられない日が続くんだ。


 僕だって、友くんと、もっと……


 友くんがマグカップを置く音がするたび、僕の中にちっちゃなイライラが積もっていく。

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