噓と迷宮

カイ異

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罪と答え

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 いやな過去を思い出すのもこれで数度目だ。
 さすがに怒りもコントロールできるようになっていた。裕翔が鏡に目を向けると、鏡はいつものように黒く染まっていた。
 俺が襲われたのは、誰かが俺が村を乗っ取る気だと村人に吹聴したからだった。そして、それが誰なのかは検討がついている。
 結局あいつは何も話してはくれなかったが。
 次の鏡台まではすんなりとたどり着いた。特に悩むことは何もなかった。数度の問答を通して、自分の気持ちがはっきりしてきた気がする。
 村から追い出された俺には行く場所もなかった。村の外の記憶なんてほとんどないし知識もなかった。だからこそ、森の中で捜索におびえながら生きていくしかなかった。幸い狩りは得意だったから、食料は何とかなっていた。
 しかし、そんな生活が長引くにつれ痕跡も隠せなくなっていき、最後の方は何度も村の人たちに見つかりそのたびに無我夢中で戦い、生き延びてきた。
 好きで人を切ったことは、一度を除けばないと胸を張って言える。いつだって、闘うしか生きる道はないと割り切って、人形のように人と闘った。
 俺の罪は結局、俺のそんな性格が招いたのだ。
 自分がどう生きたいのかも考えずだらだらと村で過ごし続けた。
 よそ者であることを忘れ、村人の憎悪を深く考えてなどいなかった。
 自分がどうしたいのかわからないまま成り行きで人を切ってしまった。
 海場の言う通り立場をわきまえて、俺はもっと早く村を出ていくべきだった。
 裕翔は鏡に向き直った。次の質問は大方予想がついていた。最後に俺が振り返るべき人など一人しかいない。
『あなたはなぜ少女を殺したのですか?』
 俺が唯一、明確な殺意を持って殺した少女、由香が俺が振り返るべき最後の罪だ。
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