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第二章 シルフェリアとの別れとイリスの覚悟

外伝!「龍騎士隊イリスVS魔王軍!」その4

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「魔王軍!めっちゃ強かったですね!」
捕虜になって牢にブチ込まれた者とは思えない元気さで魔王軍の強さに大興奮のイリスは大騒ぎだ。

「うふふふ、そうでしょう?」

・・・・・・いや・・・それで何で君まで一緒に牢に入ってんの?四天王三番手よ。
そしてそれを認めた牢番も最高にイカれていやがるぜ。

「しかし・・・魔族とは、見た目は完全に私と同じ人間なのに中身が全然違いますね・・・
何か龍種と戦っている様な印象を受けました」
ガストンが初の遭遇で受けた真魔族の強さの印象を語る。

四天王・・・その中で筆頭と四番手が特別強いだけで真魔族の全員が全員、あんなに化け物の如くに強い訳でもないのだが・・・

そして誰も魔王軍の者達の容姿について触れていなかったのは「特に触れる事が無かった」からだ。

見た目は完全に人間で真魔族の外見的な特色としては顔の彫りが深く金髪碧眼の者が多いくらいか・・・
吸血鬼と言う事以外はこの世界の人間とも見た目は変わらんな。

「そうねぇ、私達の先祖は元々は純粋な地球の「人間」だったからねぇ。
移住先で環境に合わせて「進化」して行ったのよ。
遠い、遠い先祖を辿るとレムリアやアトランティスと同じ人間なのよ」

「ええ?!地球?!アトランティスー?!」
ここで普通に地球の名前が出て来て黙々と本を読んでいたはずのエリカが滅茶苦茶驚いて声を張り上げた。

つーかお前、どんだけ人の本を牢屋に持って来てんだよ?・・・まあ、良いけど。

するとエリカは少し考えてから、
「レムリアにアトランティス・・・ですかぁ。
すると真魔族って同じ時代にあったと言われているメソポタミア文明の末裔だったりして?」

とりあえず知っている有名な古代文明の名前を適当に言って見たエリカだが・・・

「あら?良く知ってるわね?正解よ」

「うええ~?・・・冗談だったのにぃ・・・うわぁマジですかぁ?」
はいエリカさん、メソポタミアで正解です。

軽快に真魔族の秘密をそれはもうペラッペラと話しまくる四天王三番手・・・
地球の歴史や文明の事など知らないイリス達はポカーンとしておる。

紀元前7000年頃の地球は大規模な地殻変動の時期でレムリア大陸にアトランティス大陸など多くの大陸が海へと沈み多くの文明が滅んだ世界規模の大災害の時期だったのだ。

そして当時の地球にはまだまだ魔力が溢れて魔法全盛期の時代でもあったので、この大災害を受けて各文明が生き残りを賭け安定した世界を探して移住して行った。

その時代の地殻変動と大移住の際の大規模転移魔法の連発で地球の魔力は枯渇してしまい現在に至る。

そんな移住計画の中で我々真魔族の祖先のメソポタミアの民は「世界ガチャ大爆死」を引き当ててしまう。

移住した世界は地球で大災害に耐えていた方がまだマシ・・・と思える様な環境が厳しい世界だったのだ。

そして更に悪い事にその時の転移魔法は、まだまだ技術不足で行く事は出来るが帰って来る事が出来ない一方通行だったのだ。

移住した者は強制的にその過酷な環境に耐えて生活する他に選択肢が無かったのだ。

「それから御先祖様達は少ない資源を最大限に活用する為に自分達で「吸血鬼」になったのね」
そう言いながら三番手は「イー」と自分の牙をイリス達に見せる。

うむ、相も変わらずに白く美しい牙じゃな、三番手よ。

捕らえた獲物の血を捨てるのが勿体無くて祖先達は「吸血」のスキルを開発した。
なので広く知られているアンデットのヴァンパイアとは、ちょっと違う存在なのだ。

「えっ?・・・もしかして私達って、このまま「ご飯」にされちゃう?!」
エリカと三番手の話しを聞いていたイリスが青ざめる。

やっと、その危険に気付きおったか。

「そうねぇ・・・もしも食糧不足ならその可能性はあったけど今の魔族領は食べる物が沢山あるから大丈夫よ。
・・・大体血って美味しくないもの・・・出来れば誰も飲みたくは無いのよ」

我々にとって「血」とは緊急用の食材の一つに過ぎないのだ。
味覚は人間の時からあんまり変わってないので血の味は正直キツい・・・
一部の変わり者は好んで動物の血を飲んでおるが。

儂は血だけは、気色悪いのでマジ勘弁して下さい派だ。
血を飲むくらいなら牛肉のステーキ方を食った方が良いのだよ。

「そうなんですか・・・
それで良く言われている血を吸うと魔力が上がったりするのは?」
どうやらイリスは吸血鬼の生態について興味が湧いた様子じゃな。

「ああ魔力上昇ね?それは普通に有るわね・・・
うーん?ハイエルフの血って飲んだ事は無いけど・・・どうなるのかしら?
うん、興味が湧いて来たわ。
イリス、ちょっと血を吸って見ても良い?」

「良いですよ、私も興味あります」

いや良いんかーーーい?!血を吸われるのじゃぞ?!ちょっと痛いぞ?!
研究熱心なイリスは吸血鬼に血を吸われると、どうなるのか気になってアッサリと血を吸われる事を承諾してしまうのだった。

こうして三番手に血を吸われる事になったイリス。
美少女が美女に血を吸われる光景・・・
あれ?何か凄く恥ずかしくなって儂もドキドキして来たぞ?

「あわわわわ・・・」エリカも顔を赤くしてアワアワしている。

イリスの髪をかき上げて首筋にカプリと噛み付く三番手・・・
イリスは・・・目を閉じてジッとしている。
チュウチュウと血を啜り、スウ・・・と、魔法で傷口を治す三番手。

ど・・・どうなんだ?思わず儂も唾を飲み込む。

「・・・やっぱり血生臭いわ」

「ですよね?」

分かっていたよ!そうだよね!
イリスの血が爽やかな柑橘系の味がしたら逆に気色が悪いよね!
結論、ハイエルフだろうが血は血だった・・・

「ヴァンパイアに血を吸われた者が吸った者の眷属のヴァンパイアになってしまうのは本当の話しなのでしょうか?」

ガストンの疑問だが、これは本当の話しだ。
もっとも「色々な条件が揃った時にのみ可能」との注釈が付く。

先ずは血を吸ったヴァンパイアが意図的に自分の因子を相手に注入する必要がある。
これには、莫大な魔力が必要とされる。
精霊契約に近いモノと思ってくれて良い。

そして次に生命的な遺伝子の相性が重要になる。

これはやって見ない事には分からないので博打と言っても良い。
相性が悪いと使役が出来ないどころか大量の魔力を消失してしまうので戦闘には全然向いていない特殊能力だ。

それから相手に精神的に抵抗「レジスト」されない事も重要だ。
最近の吸血行為は他種族との結婚の儀式の一環として行われるケースがほとんどだ。
ぶっちゃけると誓いのキスの代わりに血を吸うのじゃな。

但しこれらの話しは真魔族のヴァンパイアの話しでアンデット系のヴァンパイアには全く当てはまらないので注意が必要だ。

アンデット系ヴァンパイアは基本「毒持ち」なので噛まれると毒に感染してヴァンパイア化してしまうとの表現が正しいだろう。
我々真魔族もアンデット系ヴァンパイアに噛まれるのは非常に危険な事なのだ。
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