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小話 外から見た2人
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――外側から見た二人
イベント翌日の昼休み。
ゆきはデスクでスマホを伏せたまま、ふうっと小さく息を吐いた。
(……やっぱり、ちょっと不思議だよなぁ)
昨日のことを思い返す。
親戚の大学生。
アパートが見つかるまで預かっている――
説明としては、十分に筋は通っている。
けれど。
(距離、近すぎじゃないですか……?)
会場で見た二人の並び方。
立ち位置。
歩く速度。
それから、視線の向き。
恋人の距離でもない。
家族とも、少し違う。
一番近い言葉を当てはめるなら――
「大事にしすぎて、触れない人」。
(……ああ、なるほど)
悠人は線を引いている。
かなり意識的に。
ホルは、その線に気づいていないか、
気づいていても「越えないつもり」で近づいている。
それが、余計に危うい。
(踏み込まない、って決めた人ほど)
(一番、考えてるんですよね……)
ゆきは、そこまで考えてから、
自分の思考をそこで止めた。
――他人の事情に、正解を求めない。
社会人になってから身についた、処世術だ。
スマホが、静かに震える。
【ホル:ゆき、お昼休み?】
思わず、口元が緩んだ。
【ゆき:うん、今ちょうど!】
【ゆき:昨日は楽しかったね】
少し間があって、返事。
【ホル:うん!】
【ホル:すごく楽しかった】
【ホル:今日も、グッズ並べてた】
(……素直だなぁ)
文面から、そのままの感情が伝わってくる。
飾らない、裏を作らない。
だからこそ――
余計に、守られている感じがした。
【ゆき:悠人さん、今日はお仕事?】
【ホル:うん】
【ホル:朝、ちゃんと送り出したよ】
“ちゃんと”。
その言葉に、ゆきは少しだけ指を止める。
(やっぱり、生活の距離だ)
でも、続く文がそれを裏切る。
【ホル:でもね】
【ホル:行ってらっしゃい、って言っただけ】
その一文に、
ゆきは妙に納得してしまった。
(……線、引いてますね先輩)
近づかせないようにしている。
でも、突き放してはいない。
一番、判断が難しいやつだ。
(ホルちゃんは、近づきたい)
(先輩は、壊さない距離を選んでる)
そのバランスが、
いつまで保つのか。
【ゆき:今日は家でゆっくり?】
【ホル:うん】
【ホル:ゲームして】
【ホル:あと、ゆきと話せたら嬉しいなって】
胸の奥が、少しだけ温かくなる。
(……この子、悪気ゼロだ)
誰かを奪おうとも、
関係を壊そうともしていない。
ただ、繋がりを欲しがっているだけ。
ゆきは、そこでふと思った。
(先輩は……)
(ホルのこと、どう思ってるんだろ)
守る対象?
預かっている責任?
それとも――もっと別の何か。
昨日の悠人の顔が浮かぶ。
疲れているようで、
でも、どこか穏やかで。
(……疲れの理由、仕事だけじゃないですね)
けれど。
(聞かない)
ゆきは、そう決めていた。
大人だから。
同僚だから。
そして――
ホルが、ちゃんと笑っているから。
【ゆき:また一緒に遊ぼ】
【ゆき:イベントなくても】
【ホル:うん!】
【ホル:絶対!】
画面越しのその言葉に、
ゆきは小さく笑った。
(……今は、これでいい)
線を引く人と、近づく人。
その間に、静かに立っているだけで。
外側から見える違和感を、
無理に言葉にする必要はない。
必要になる時が来たら――
きっと、その時は。
(その時は、ちゃんと考えよう)
ゆきはスマホを伏せ、
昼休みの終わりを告げるチャイムに、静かに背筋を伸ばした。
誰にも言わない違和感を、
胸の奥に、そっとしまいながら。
ゆきの春ちゃんコスプレ
イベント翌日の昼休み。
ゆきはデスクでスマホを伏せたまま、ふうっと小さく息を吐いた。
(……やっぱり、ちょっと不思議だよなぁ)
昨日のことを思い返す。
親戚の大学生。
アパートが見つかるまで預かっている――
説明としては、十分に筋は通っている。
けれど。
(距離、近すぎじゃないですか……?)
会場で見た二人の並び方。
立ち位置。
歩く速度。
それから、視線の向き。
恋人の距離でもない。
家族とも、少し違う。
一番近い言葉を当てはめるなら――
「大事にしすぎて、触れない人」。
(……ああ、なるほど)
悠人は線を引いている。
かなり意識的に。
ホルは、その線に気づいていないか、
気づいていても「越えないつもり」で近づいている。
それが、余計に危うい。
(踏み込まない、って決めた人ほど)
(一番、考えてるんですよね……)
ゆきは、そこまで考えてから、
自分の思考をそこで止めた。
――他人の事情に、正解を求めない。
社会人になってから身についた、処世術だ。
スマホが、静かに震える。
【ホル:ゆき、お昼休み?】
思わず、口元が緩んだ。
【ゆき:うん、今ちょうど!】
【ゆき:昨日は楽しかったね】
少し間があって、返事。
【ホル:うん!】
【ホル:すごく楽しかった】
【ホル:今日も、グッズ並べてた】
(……素直だなぁ)
文面から、そのままの感情が伝わってくる。
飾らない、裏を作らない。
だからこそ――
余計に、守られている感じがした。
【ゆき:悠人さん、今日はお仕事?】
【ホル:うん】
【ホル:朝、ちゃんと送り出したよ】
“ちゃんと”。
その言葉に、ゆきは少しだけ指を止める。
(やっぱり、生活の距離だ)
でも、続く文がそれを裏切る。
【ホル:でもね】
【ホル:行ってらっしゃい、って言っただけ】
その一文に、
ゆきは妙に納得してしまった。
(……線、引いてますね先輩)
近づかせないようにしている。
でも、突き放してはいない。
一番、判断が難しいやつだ。
(ホルちゃんは、近づきたい)
(先輩は、壊さない距離を選んでる)
そのバランスが、
いつまで保つのか。
【ゆき:今日は家でゆっくり?】
【ホル:うん】
【ホル:ゲームして】
【ホル:あと、ゆきと話せたら嬉しいなって】
胸の奥が、少しだけ温かくなる。
(……この子、悪気ゼロだ)
誰かを奪おうとも、
関係を壊そうともしていない。
ただ、繋がりを欲しがっているだけ。
ゆきは、そこでふと思った。
(先輩は……)
(ホルのこと、どう思ってるんだろ)
守る対象?
預かっている責任?
それとも――もっと別の何か。
昨日の悠人の顔が浮かぶ。
疲れているようで、
でも、どこか穏やかで。
(……疲れの理由、仕事だけじゃないですね)
けれど。
(聞かない)
ゆきは、そう決めていた。
大人だから。
同僚だから。
そして――
ホルが、ちゃんと笑っているから。
【ゆき:また一緒に遊ぼ】
【ゆき:イベントなくても】
【ホル:うん!】
【ホル:絶対!】
画面越しのその言葉に、
ゆきは小さく笑った。
(……今は、これでいい)
線を引く人と、近づく人。
その間に、静かに立っているだけで。
外側から見える違和感を、
無理に言葉にする必要はない。
必要になる時が来たら――
きっと、その時は。
(その時は、ちゃんと考えよう)
ゆきはスマホを伏せ、
昼休みの終わりを告げるチャイムに、静かに背筋を伸ばした。
誰にも言わない違和感を、
胸の奥に、そっとしまいながら。
ゆきの春ちゃんコスプレ
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