転生覚醒が遅すぎたので全力ヒキニートします!

カカオ70

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見えざるもの

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「申し訳ありません…」

先に口を開いたのは、サリナだった。

「え?」
「私がおそばを離れる際、心細いご様子だったことに気づいてはおりました。
 忍耐強いマーガレット様がそのようにお泣きになるほど、お辛かっただなんて…」
「待って、サリナ。これについて何か言うことはないかしら?」

私が泣いていたことにばかり言及されているので、話を先に進めようとばかりにスマホを持ち上げてみせる。
だが、ハッと眉をひそめたサリナは、

「ずいぶんと爪が伸びてしまいましたね、なんてことでしょう。こんな事すら気がつかず、本当に申し訳ございません。
 後ほど、ヤスリをご用意いたします。」

と深々と頭を下げるだけだ。
その下げた頭が、ごく自然に青いウィンドウを突き抜けている。
見えていたら、とてもそんな事できないだろう。
つまり、スマホもウィンドウも、私以外には見えないらしい。
スマホに夢中になっていても、私が暇で頭がおかしくなったと思われるリスクはあれど、魔女と思われることはなさそうた。

やったー!じゃあ、暇な時間は思いっきりスマホでゴロゴロニートしよーっと。

私は喜びを隠して、サリナの罪悪感を払拭しようと声をかける。
気にするなって!私はこの生活を大いに楽しむからさ!

「そんなに謝らなくてもいいのよ。
 サリナにはサリナの仕事があるでしょう。忙しい中、何度も足を運んでくれて、感謝しているわ。」
「マーガレット様…!」
「今まで心苦しい思いをさせたわね。
 食事も、信頼のおける人に代行していただいて、いいのよ。」
「いいえ!いいえ!私が間違っていました」

あ、あれ~??

気にせずゆっくりとスマホで遊ぶから と思っていたけれど、サリナはむしろ強く頭を振って後悔を見せる。

「お嬢様以上に優先すべきことなど、ありません!こそこそと此処に通うなど、そもそも言語道断でした。
不詳このサリナ、旦那様に直訴して、お嬢様と同じ石牢に入れていただきます。」
「待って、やめて!そんなの困るわ!」

私がここで生きていけるかどうかは、サリナがご飯を持ってきてくれるかどうかにかかっているのだ。
そのサリナが、一緒になって牢に閉じ込められてどうする。
こうなると、必死のモードになって、サリナを説得にかかるしかない。

「サリナ…貴女が外で自由に動けるからこそ、私のお世話を出来る状況だからこそ、こうして私は生きているのよ。本当よ。
だから、そんな事を言わないでちょうだい…」
「ううっ…マーガレット様…」
「泣かないで、ね?
 毎日ご飯を持ってきてくれるだけで、本当に十分なの。
 私が本気で言っていると、伝わっているでしょう?」

サリナは目に涙を浮かべて、項垂れるように頷く。
早くまたスマホで遊びたくて、会話の内容をしくじっていたんだろうか。
ああ、焦った…。

なんとか、今まで通り行動してもらうことを固く約束してもらって、今夜のご飯をもらった。
ふかしたジャガイモを荒く潰したものに、刻んだ肉が入っている。
わあ!黒パンじゃないものは、久しぶり!と嬉しくなったのだが、サリナは申し訳なさそうに縮こまっていた。

「高貴なマーガレット様に、芋を召し上がっていただくのは、本当に心苦しいのですが…」
「そんなの、いいのよ。
 実はね、サリナ。
 私はお野菜も大好きなのよ。」

そうか、上級貴族の私に合わせて、食事を用意してくれていたのか。
どうりでパンばかりだと思った。黒パンばかりだったけれど。
パンばかりだと、栄養が偏るなあとは思っていたのだ。

「遠慮しないで、是非お野菜も持ってきてちょうだい。
 そうしてくれると嬉しいわ」

そう言って、ジャガイモを口に入れる。
美味しく食べているところをみせれば、安心すると思って。
が…味が殆どない。
うっすらと肉の風味?
味付けは、塩だけのようだ。
香辛料は高価だからなのか。
令嬢時代の食事は、様々に工夫が凝らされた味だったので、落差に驚いた。
心配そうに見守っているサリナの視線に気づいて、慌ててもぐもぐ食べ進める。

「無理はしていないわ。本当に!
 慣れない味だったから、少し驚いただけよ。」
「はい…わかっておりますとも」

嘘だあ、わかってなさそう!
辛い状況に健気に耐えてるお嬢様 を見る目じゃないの!

とはいえ、納得はしてくれたらしい。
次回からはパンにこだわらずに、その時に入手出来た食事を、野菜や穀物問わずに持ってくる と約束してもらった。

食後はいつも通り、しばらくお喋りしてサリナを見送る。
ここでもいつもより長く此処にとどまろうとするサリナと、一悶着があった。

「おやすみ、サリナ。」
「おやすみなさいませ、マーガレット様」

サリナが無事に出て行って、ようやくホッと一息だ。
あまり気を遣ってもらっても、ニートというのはやり辛いものなのだなあ としみじみ思う。

「さーてと、お楽しみの読書タイムといきますか!」

私はベッドに横たわって、嬉々としてスマホを操作し始めたのだった。



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