7 / 44
囚人クエスト
しおりを挟む今回のことで、合成アプリはめちゃくちゃ時間がかかる事がわかった。
以降は封印とする可能性が高いな、と考える。
まして…
合成は失敗だったかもしれない。
それぞれのゲームのボリュームが大きすぎて、先に進めない。
まだ私はスタート地点の自宅の庭で、畑作業を行なっている。
「うーん…一個一個のゲームの完成度が高かったもんねえ。
あー、でも懐かしい~!この流れは変わんないんだなあ。」
ゲームを始めたばかりは、スタミナが殆どないのも一緒。
表示された初期ステータスは、こちら。
SP:3/3
ハウス拡張:未
所持金:0
畑を耕すなど、アクションを起こす度にスタミナを1消費だ。
スタート時の数値の低さに目を剥いて、こんなにキツかったっけ?スタート時点でも、10はなかったっけ?と思ったが、特に問題はなかった。
・畑を3マス耕す
・畑に種を3つ蒔く
・種に3回お水をあげる
チュートリアルクエストをクリアする度に、もらえる経験値でお庭レベルが上がり、スタミナが全回復&最大値が上がっていくからだ。
初期のさくさくとレベルが上がる時期は本当に楽しい。
けど、その分だけ手が離せない時間が長いんだよね…と、やめ時を失う感覚に苦笑いを浮かべる。
庭から出るだけで、数時間を吸われてしまった。
まさに、ニートのニートによるニートの為の、時間泥棒ゲームに仕上がっていたのだった。
この異世界で、このゲームに対する適性があるのは、私くらいではないだろうか。
更にクリアした報酬として、キッチンに置ける流し台、まな板、オーブン、コンロなどをゲットしていく。
めちゃくちゃ狭かったハウスが、クエスト報酬により一回拡張出来て、それらも配置完了。
早速、流し台を使って収穫した作物を絞って、フレッシュジュースを作成して。
ようやく次あたりの収穫物の待ち時間などで、手空きができそうだ。
「小麦を収穫して、パンを作って…次の作物を植えたら、お庭から出てみるかあ」
ぎゅっぎゅっとパン生地をこねて。
焼きたてのパンが、ポンポンと焼き上がるグラフィックが、めちゃくちゃかわいくて、つい見入ってしまいそうになるが!
次の作物として苺を植え付けスタミナを使い果たして、庭を後にする。
スタミナの最大値は10、所持金は5000まで増加した。
スタミナは、元のゲームと同じなら、5分で1回復するだろう。
50分程で全回復するはずだ。
さて。庭から出たら、どこかで見た覚えがある懐かしいグラフィックの街並みが広がる。
そして、
「冒険者ギルドに向かおう!」
のクエストと共に、マップにギルドの位置が表示された。
そして、ステータスの表示が変わる。
HP:7/8
MP:0/0
力:1
防:1
魔:0
早:1
器用:4
職業:囚人
所持金:5000
基本ステータスが恐ろしく低い。
ステータスの種類も少ない。
通常だとこういうゲームは、冒険者ギルドからのスタートだ。
私はまだ、冒険者ではないということで、こんなに数値が低いのだろう。
しかし、囚人囚人と、このゲームときたら腹の立つ!
ゲームの中でくらい、現実を忘れさせて欲しい。
おそらく、冒険者ギルドに向かえば冒険の旅の始まり。
転職さえすれば、もう少しマシになるに違いない。
魔法やスキルを確認したが、まだ何も覚えてない状態だ。
けど。
「あれっ?さっきのお庭ゲームで作ったご飯とか作物、アイテム欄に入ってる。」
アイテム欄を開くと、パンやニンジンジュースなどが入っていた。
そういえば、所持金の金額はお庭ゲームのクリア報酬で得たのと同じ、5000Gだ。
「そっか、要素が絡んでないと、合成した意味がないもんね。」
恐らくは回復剤などに使えるだろう。
回復剤を店買いしないで、自作するなんて、なんという時間泥棒仕様だ。
そんな中、非情にもスマホタイムの終わりを告げる、鍵を回す音とノック音。
しまった、完徹してしまった。
「マーガレット様、おはようございます。ご機嫌いかがですか?」
「ああ…そうね、そんな時間よね」
「?」
食事を持って来てくれたサリナに、まだ冒険者ギルドにも辿り着いてないのになー と渋々ながらスマホを置く。
「…え?」
そして、我が目を疑って、ゴシゴシと手の甲で擦った。
ベッドと小さなテーブルしか家具がなかったはずの、石牢。
その中の一角に、不自然にもピカピカのキッチンスペースができていたのだった。
なんとなく見覚えがある、オーブン・コンロ・流し台。
この石牢って、こんなに広くなかったと思う。
私は慌ててキッチンセットに駆け寄って、それらを撫でてみた。
金属製のつやつやした質感。
しっかりした重厚な造り。
間違いなく、存在している。
「さ、サリナ…ここに何か見えるかしら?」
「え…いいえ」
戸惑うサリナに、やはりスマホと同じく見えていないのだと、確信した。
切った人参を煮たものと潰したジャガイモを受け取って、今日は少し調子が悪いからもう少し寝る と言って、サリナには早々に退室してもらう。
「さてと…」
どう見ても、石牢クエストの畑でクエストをこなして貰った、キッチンセットである。
ちゃんと使えるとか、まさかね、まさかね。と思いながら、コンロのツマミを捻った。
ボッ
前世のガスコンロを彷彿とさせる音がして、炎があがる。
「あああ~文明の炎だあ~…」
手をかざしてみると、暖かい。
カチンと火を切って、コンロの周りをよくよく確認するが、ガスのホースや電気のコードは見当たらなかった。
やはりどこにも接続されていない流し台も、カランをひねるとお水が出る。清潔なお水が。
コップで汲んで飲んでみたが、小さい頃おばあちゃんの家で飲んだ美味しい水くらい美味しい。
オーブンにはちゃんと、温度調節やタイマー機能もついている。
流しの下をあけると、いつもどこから取り出しているのか不思議に思っていた、鍋・まな板・包丁や麺棒にうち台など、様々な調理器具が収納されていた。
そして、収穫物以外の要素はどうなっているんだろう?と思っていた、調味料関係もズラリと揃っている。
私は料理なんて、出来ないわけだけれど。
「じゃあ…じゃあ、あのゲームの中でおうちをランクアップさせて、クエストで家具を揃えていけば、石牢の中がめちゃくちゃ快適になるってことじゃない!」
すごい!異世界チートすごい!
表の世界で死亡しても、全然問題なかった!
嬉しさのあまり、思わずその場でクルクルと踊り、すちゃっとターンエンドを決める。
「こうしちゃいられないわ。二次元の冒険の旅より、現実の状況改善を頑張らなきゃね。」
行儀が悪いとはわかりつつ、ご飯のお皿を片手に持ったまま、ベッドの上にゴソゴソとあがっていく。
そして、ご飯を食べながら、再びスマホを開いた。
5
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される
さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。
慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。
だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。
「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」
そう言って真剣な瞳で求婚してきて!?
王妃も兄王子たちも立ちはだかる。
「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる