転生覚醒が遅すぎたので全力ヒキニートします!

カカオ70

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お風呂が欲しい

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出て来たばかりのマイハウスのポータルをくぐったが、すぐにお庭に出るわけではなかった。
ポータルの上で選択肢が表示される。
室内と庭 の選択肢だった。
まずはキッチンアイテムを配置した室内から、確認しよう。そう思って、室内をタップする。
しかし、選択した後で再びの選択肢が出る。

「美容室」
「風呂」
「書斎」
「寝室」
「音楽室」
「運動室」
「衣装部屋」
「ご不浄」

どうやらマイハウスは豪邸らしい。
その中にキッチンが入っておらず、戸惑ったが…
恐らくは、室内の方はファッションゲームが基盤となっているのではないか、と予測できた。
キッチンセットは、お庭ゲームの方でもらったアイテムだ。
キッチンもお庭とセットなんだろう。
それならば、ファッションゲームで入手したいものは、決まっている。

「風呂場!君に決めた!」

石牢に入ってから、数ヶ月。
この間、一度も入浴出来ていない。一度も、だ。
サリナが出入りするようになって、時々お湯を汲んできてくれるけれど、それで軽く体を拭くだけだ。
石牢にやってくるのは、どうせサリナだけなのだ。
入浴シーンがどう見えるかはさておき、サリナならスルーしてくれると信じる。
風呂場を選択して、展開された初期ステータスはこちら。

健康:15/100
清潔:5/100
魅:3
美:2
知:30

「知力が高い!…のかな?
魅力と美しさが低すぎるだけ?」

そして、現実の我が身を彷彿とさせる、清潔度の低さが切ない。
ゲーム開始時くらい、健康度と清潔度は、満タンから開始していただきたいものである。
お庭ゲームを開始した時から、勝手にキャラデザが決定されてるなあとは思っていたが、ファッション系ゲームだけあって醜さを隠すことはないらしい。
バスタオルを巻いた姿の自キャラが、両手で身体を抱きしめて、震えながら縮こまって立っている。
不潔さを表現する茶色いモヤに包まれて、髪はボサボサ、あろうことか頭の中を虫が飛び回る表現付き。
顔つきは険しく、目の充血とクマが酷い。
巨樽とまではいかないが、あちこちラインの崩れただらしない体格で、肌荒れしている表現のクレーターと、伸び切った爪がみっともない。
髪色は銀、目の色は紫。
自分と妙に容姿が合致していて、気分が悪かった。
そういえば、爪が伸びているからと、サリナが爪やすりを用意してくれていたのだ。
ゲームに夢中になって、すっかり忘れていた。
ゲームがひと段落したら、爪を整えよう、と心に誓った。
キャラの背後にはシャワーが見える。
だが、スマホから顔を上げて石牢の中を見渡しても、シャワーが設置される様子はなかった。

あれ?なんで?

首を捻りつつ、画面に三つほど表示されているアイコンをタップしてみる。
それぞれ、

「入浴」「改築」「買い物」

の項目だった。
これだ。きっとここで改築や買い物をすると、石牢内に反映されるに違いない。
試しに改築をタップすると、

「給湯器」「バスタブ」「ドライヤー」「ブラシ」「スポンジ」

が、選択できるようになっている。

「えっ…このシャワー、水なの?」

初期設定が酷い!
ゲームのキャラとはいえ、水のシャワーを浴びせかけるのは、可哀想だ。
迷わず給湯器をタップした。
しかし。

「…100.000G?」

唖然として、じゃあバスタブ とタップしたら、200.000Gとのこと。
私の所持金は5.000Gである。
高い。高すぎる。
お庭ゲームでは、作物や料理の出荷などはなく、あくまでクエストクリア報酬としてゴールドがもらえるシステムだった。
クエストは、初期の頃はバンバンクリア出来るが、もらえる報酬は少ないのが定番だ。
逆にレベルの高いクエストになると、報酬は高額になるが、クリア難易度が上がっていくのだ。
種を購入するにもゴールドがかかる。
肥料も買いたい。
所持金を遠慮なく使えるのは、まだ先のことになりそうである。
石牢の中にお風呂が設置できる日も。

がっかりしながら「買い物」をクリックすると、お風呂周りの小物類が表示された。

「石鹸は100Gで、シャンプーは300Gか…どうしようかなあ」

化粧水や乳液もある。
そんなに高くはない。
けど、ここで多少の出費くらいは と言うには、特に意義を感じない項目である。
石牢に石鹸とシャンプーが現れたところで、お風呂が現れてくれないことには使えない。
うーんうーん…としばらく悩んだ末に、

「ごめん!」

と言って、入浴をタップした。
シャワーからざあっと水が出てくる表現と共に、自キャラがひいっと身体をすくめて一層震え始める。
そういう可哀想な表現にするのは、やめて欲しい。
さっさと終わらせて、お庭の方に移ろう。
そう心に決めて、入浴を進めることにした。
頭 身体 顔 にそれぞれアイコンが出るので、まずは頭を選択。
指でクリクリと頭の部分をフリックしていくと、手が出てきて頭をわしゃわしゃと洗っていく。
画面の下半分に見える、自キャラの目が恨めしそうだ。
画面の上に青いバー、下に白いバーが表示されて、洗ってやると白いバーが増えていく。
白いバーが一杯になると、清潔度が5から6に増加した。
一度いっぱいになった白いバーは、0に戻って、またジリジリと増加していく。
丁寧に洗ってやれば、その分綺麗になるという仕様らしい。

「じゃあ、しっかり丁寧に洗ってあげないとね…っと、ちょっと待ってよ?」

白いバーは清潔度。
じゃあ、青いバーは?
何もしなくても青いバーはジリジリと増えていく。
いっぱいになったら、また初めに戻って増えて…を繰り返していた。
そして、ハッと気づく。

「あっ!これ…青がいっぱいになったら、健康が減ってる!」

はじめは15/100だった筈の健康度が、今や11になっているじゃないか。

「やばいやばい!急いで洗って、早くやめよう!」

慌ててシャカシャカと画面を指で擦るが、白いバーの上がり方はゆっくりとしか進まない。
あともうちょっとで一杯になりそうなので、せめてもう1数値をあげてから切り上げたい。
頑張ってシャカシャカしていたら、

「健康が10を下回りました。病気になります」

と表示され、入浴のターンは終了してしまった。

「あ…ああーもう!後ちょっとだったのに!」

腹が立つが、仕方ない。
顔色が真っ青になっている自キャラは、まだ茶色いモヤがまとわりついているし、頭に虫もいるし、汚いままだが…ポタポタと水を垂らしている。
せめてその恨めしそうな顔だけでもやめて と思いながら、乾かす をタップした。
濡れたところを指で擦っていくと、出現するタオルで水を拭っていく。
汚いドレスを着せ直し、しばらくファッション部屋の方は入りたくないな…と思いながら、庭に出ることにした。
しかし。

「病気で働けません」

の表示。

「ああ~…もう!」

ポスンとベッドに顔を埋めて、ぼやく。

なんだか、やる気が萎えてきた。
一旦、休止しよう。

そう思ってスマホを切り、ご飯を食べてしまおうと体を起こしかけた時だった。

「う…なんか…具合、悪い…」

視界がグラグラして、なんだか体調がおかしいことに気がついた。



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