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フレンドのみ可
しおりを挟むキャベツを収穫し、再度種まき。
そして、キャベツのサラダを作成したところで、今度は調理レベルがアップして、スタミナが全快してくれた。
同時に、チュートリアル段階のレベル帯を超えた という扱いになったのだろう。
新しく、デイリークエストが幾つも表示された。
「やった!デイリークエ来た!」
3日後のチャノキの栽培まで、クエスト報酬がお預けなのは苦しいと思っていたのだ。
「えーと、なになに?
フレンドに挨拶をする。
水やりを3回する。
イチゴを3回収穫する。
OK!それじゃ、イチゴを植えてそれに水やりをすればいいか。」
デイリークエストを1つ片付けたところで、「はじめてデイリークエストを達成する」と表示が出て、何かをクリアした扱いになりキャラがクルクル回る。
そして報酬で、「庭仕事セットアップ」をゲットした。
シンプルなシャツに、ジーパン。
それに庭仕事用のエプロンがついている。
現在は、数ヶ月着た切り雀のドレスである。
ものすごく着替えたい。
着替えたいけど、臭くて汚い不衛生な身体で、折角の新品のセットアップを汚したくはなかった。
「お風呂…入りたいなあ」
ポツリと呟いた時だった。
「お待たせしました!」
やたらと大荷物を抱えたサリナが戻ってきた。
大きな布に何かを包んで背中に括り付け、両手に抱えて。
背後に大きな桶を抱えたメイド。
なぜか、私の父とサリナの父まで居る。
石牢の中まで踏み込むつもりはないらしく、2人とも鼻を摘んで遠巻きにしていた。
「桶はそこに置いてちょうだい。
私以外が中に入るのを、マーガレット様が許しませんので」
ポイポイと包みを牢内に投げ込んで、メイドが抱えてきた桶を受け取る。
小さな子供用のビニールプールくらいはある桶だ。
それをコロコロと転がしながら、上手に奥の隅っこに配置する。
「さて、これでよし と。」
サリナは一仕事終えて手をはたくと、扉の向こうにひょいと顔を出した。
「では、ご機嫌よう」
「なっ!?」
バタン!と扉を閉める。
すぐさま外から扉を開けようとしたのだろうが、フレンド以外は立ち入れない設定が仕事をしてくれている。
開かない扉に焦ったように、どんどんと叩く音が響いてきた。
「おい、どういうことだ!?」
「サリナ!お暇する前に、マーガレット様に最後に差し入れをしたかったのでは、なかったのか!?」
なるほど。その嘘で、大荷物を抱えたまま、私の元まで戻って来れたのか。
「ええ、私はこれからマーガレット様と、この牢の中で暮らします。」
「馬鹿を言うな!すぐに出てこい!」
「おいお前!鍵がかかっているぞ、どういうことだ」
「わ、わかりません。恐らく鍵は、サリナ様がお持ちではないでしょうか。」
突然、サリナが牢内に立て篭もったものだから、外は大騒ぎだ。
牢の鍵が内側からかけられるわけがないだろう、と言いたくなったが頭が回らないらしい。
小窓すら開けないらしく、ガタガタと扉を揺らしている面々に、サリナはフンと鼻で笑った。
「はい。鍵は私が持っています。
何の罪もないお嬢様を、我が身可愛さで徹底的に追い詰めた皆様には、ほとほと愛想が尽きていました。
よくもこの場所を私に隠して、あのような仕打ちをなさいましたね。
私がお側に居ない1月の間で、本当に亡くなるところだったんですよ。
私はもう、マーガレット様のお側を離れるつもりは、ありません!」
「何を言って…お前はそんな、愚かな女ではないだろう」
サリナの父は、絶望に満ちた呻き声をあげる。
だが公爵は逆に、落ち着きを取り戻してきたらしい。
「仕方ない。放っておけ」
「こ、公爵様」
「なに、心配はない。サリナ嬢は賢い女だ。すぐに目が覚めるだろう。
我らへの謝罪が遅くなるほどに、立場が悪くなることにも、気づくはずだ。」
「は、はい…左様でございますね。」
気分がよくなったらしい男達の笑い声と反比例して、サリナは苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。
「権力に捩じ伏せられるのが、賢いですって。
ねじ伏せる側は、気楽でようございますね。」
憎々しげに呟くので、よしよしと頭を撫でてやる。
断罪のあの日まで、サリナはこんなに感情を露わにするタイプではなかった。
そもそも、私とサリナは別に仲良しではなかったように思う。
なんとなく心の距離を感じていたし、サリナが殆ど表情を変えないことに、腹の中が読めないような感覚さえあった。
どうして彼女が、こんなにも私によくしてくれるのかは、正直わからない。
けれど、訳のわからない私の力を、わからないままに信じてくれたサリナのように、私もサリナを信じよう と心に決めた。
「私を信じて、覚悟を決めてくれて、ありがとう。必ず幸せにするわ」
「ふふ、それではまるでプロポーズの台詞ですよ」
「よろしくね、サリナ」
「はい。不束者ですが、よろしくお願いいたします。」
スカートを摘んで美しいカーテシーを見せるサリナ。
石牢の中で優雅な貴族の挨拶をするのがチグハグで、ふふっと笑ってしまった。
サリナも同じ気持ちだったのだろう。
顔をあげた彼女も、少し肩を竦めた後、照れたように笑っていた。
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