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囚人の晩餐
しおりを挟むパン イチゴジャム キャベツのサラダをテーブルに並べていく。
既に時間は、いつもサリナがご飯を持ってきてくれる20時過ぎ。
2人とも、お腹がぺこぺこだ。
「ニンジンとトマトのジュース、どちらが飲みたい?」
「ニンジンとトマトのジュースですか…お嬢様はどちらを召し上がるのですか?」
「私は今日はニンジンにしようかしら」
「では、私も同じものをいただきます。」
この世界ではトマトは毒物扱いだし、ニンジンはまずい。
究極の選択を迫られた気持ちだっただろうが、サリナの表情筋は動かなかった。
内心はドキドキしているのだろう。
表情の変わらないサリナの内心の動きが、少しずつわかるようになっている気がする。
ちょっと面白く思いつつ、イタズラ心でトマトも取り出した。
「じゃあ、トマトは包丁で食べやすい大きさに切って、いただきましょうね。」
「承知しました。切ってまいります。」
クールなる表情のまま、サリナはトマトをカットしてくる。
でも、こうやって感情を見せないから、ちょっと怖かったんだよなあ。
サリナの忠誠心に気づかなかった時代を思い返して、しみじみする。
カットしたトマトには、シンプルにオリーブオイルと塩をかけた。
「!!!」
食事を口にして、サリナの表情がぱっと明るく変わるのを感じ、笑みをこぼす。
「マーガレット様、これも…これも、凄く美味しいです!」
「口にあったようで、よかったわ。
たくさん食べてね。」
「雲みたいなパンですね。ふわふわです。」
喜んで食べているサリナ。
先ほど、ドレスを脱いだ身体を思い出し、ぎゅっと胸が痛くなる。
サリナがこの石牢に通うようになってからも、もう2ヶ月近くは経っただろう。
その間ずっと、貧相な食事を…それを更に私にわけていたのだ。
ドレスの下は、骨が浮いてガリガリに痩せていた。
どうして気づいてやれなかったんだろう、と悔やまれる。
なんとなしに、牢に入れられている私以上に、苦しんでいる人なんて居ない と思い込んでいた気がする。
2人でお腹いっぱいに食べて。
サリナの後片付けを見守って。
その夜は床で寝ようとするサリナを説得し、狭くて壊れそうなベッドで、ぎゅっとひっついて眠ったのだった。
久しぶりに、よく眠った。
清潔なリネンと人の温もりのお陰で、ぐっすりだった。
パンとトマトジュースで朝食を終えて、私は早速ゲームの攻略に取り掛かる。
サリナは、私が取り出した食材を、ゲームの中ではできない調理法で食べられないかと、試行錯誤してくれることになった。
大量にキャベツを刻んで塩を振ったり、見慣れない調味料を味見して、どう使おうか研究している。
私はお庭のデイリークエストを終えると、生のままの苺が食べたくて、つい作付面積を増やしてしまった。
サリナのご飯も確保しなくてはいけないのだから、呑気に嗜好品ばかり増やしている場合ではない。
次はちゃんと小麦を植えることにした。
さて。種代諸々の小さな出費はあるが、昨日・今日とデイリークエストをクリアして、現在5,000G程の残金がある。
もう一回、冒険にチャレンジしてみるか…。
サリナにも、もっと美味しいものを食べさせてあげたい。
リスクはあるが、冒険者になって一稼ぎできれば、お風呂だって設置できるのではないだろうか。
「現実とリンクしている」
この条件で冒険の旅に出るのは、凄く怖いが。
私だっていちかばちか、自分をベットして頑張るべき時だろう。
「冒険者ギルドに向かおう!」
のクエストに従って、いざ走り出した。
HP:8/8
MP:0/0
力:1
防:1
魔:0
早:2
器用:4
職業:囚人
所持金:4,880G
前回と違ってHPが満タンなのは、よく食べてよく寝たからだろうか。
お庭のレベルとは、リンクしていない。
冒険者ギルドで「冒険者見習い」になった段階で、冒険者レベルは1だった。
はじめは、アイテムの使い方。スキルスロットの使い方。人に話しかける方法。 などなど。
冒険者ギルドの中で、クエストが次々に発生して、クリア→レベルアップが繰り返されていく。
あちらに走ってアイテムを預かり、こちらに走ってアイテムを渡し、とおつかいクエストも片付けている内に、気がつけばステータスが跳ね上がっていた。
冒険者レベル:13
職業レベル:9
HP:128/128
MP:0/0
力:12
防:8
魔:0
早:15
器用:11
職業:冒険者見習い
所持金:84,880G
ただ、右に左に話しかけていただけで、所持金が一気に増えたことに、ガックリくる。
そうだ。MMORPGは、初期レベルの上がり方と報酬が凄いのだった。
なんで人に話しかけてるだけで強くなるんだよ というツッコミは野暮である。
こんなことなら、最初から冒険に来ればよかった…と悔やむが、今更仕方ない。
いよいよ正式な冒険者としての登録をすることとなった。
一次職と言われる職は、
聖職者
魔法使い
商人
剣士
猟師
詩人
ごろつき
で、構成されている。
更にその上位職として、二次職と言われる職もあるという。
「う、うーーーーん…」
職業選択画面に行くまでは、聖職者一択だと思っていた。
MMORPGの世界では、敵に負けてHPが0になっている状態は「気絶した」という概念であることが多い。
かと言って、現実とリンクしている状態で、HPが0になったらどうなってしまうのか。
わからないのだがら、なるべく自己回復が出来る聖職者が安全だと思っていたのだ。
けれど、この選択肢が輝いてしまう。
「猟師」
お肉、食べたいんだよなあああ。
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