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一次職
しおりを挟む「お嬢様、昼食の用意が出来ました。」
「わかった。ちょっと待ってね。」
お庭のスタミナが満タンになるところだったので、一旦庭でスタミナを使い果たして、スマホを閉じる。
昨日の夕飯・今朝と一緒にご飯を食べたので、サリナも一緒に食事が出来るように食卓を整えてくれていた。
その小さな変化が嬉しい。
「まあ、このスープ美味しいわね」
「凄いのは、この粉なんですよ。
とっても美味しいんです。」
サリナはコンソメの瓶を持って、ご満悦だ。
ざく切りのキャベツがたっぷり入ったコンソメスープ。
ブラックペッパーがピリリときいて、これだけでボリュームが満点だ。
オリーブオイルで、油のコクがプラスされて満足感があった。
スライスしたパンと、ツナなしのニンジンのシリシリ。グリルしたトマトに、オリーブオイルと粉チーズ。
知らなかったけれど、サリナは料理が上手かったようだ。
どれも味の整え方が、ぴたりと決まっている。
デザートには、おねだりしてイチゴを出してもらった。
「何も手を加えなくていいんですか?」
「だって、見てこのツヤツヤの真っ赤なイチゴ!
まるで宝石みたいで、凄く美味しそうだわ」
「確かに美しいですが、ベリーはそのままでは酸っぱいのでは…」
イチゴを洗って水を拭いてくれたサリナは、不安そうに一粒摘む。
そして、パッと私と目をあわせた。
「まあ!なんて甘いんでしょう!
こんなに甘いものをジャムにしてしまうのは、勿体無いのではありませんか?」
「ん~!この香り!甘さと酸味のバランスがたまらないわね」
2人揃って、夢中でイチゴを頬張る。
イチゴ1という数値だったが、一粒ではなく、小さなカゴに山盛りの量だった。
イチゴ3で小さな小瓶1つ分のジャムになるのは、少し効率が悪い気がする。
「これからジャムは、サリナに煮てもらうことにしようかしら」
「はい、お任せください。」
「…先走って、3つも作ってしまっているから、これが空いてからね。」
ジャムの瓶が空いたら、次からはサリナにジャムを作ってもらうことにした。
片付けをサリナに任せて、私は早速ゲームに戻る。
結局抗えずに、猟師の転職試験を受けた。
猟師ギルドの責任者に依頼され、サボっている先輩猟師を山の中から探すクエスト。
走って逃げる先輩猟師を、山の斜面を利用してショートカットで捕まえるクエスト。
それらを無事にクリアし、捕まえた先輩猟師をギルド職員に引き渡したら、無事に転職が完了した。
武器は弓を使えと言われ、武器屋に行くと、弓を作るための蔓がないと言われて採取クエスト。
採取クエストの最中に、罠にかかっている犬を助け出せというサブクエストが発生。
犬を助け出して連れ帰ったら、怪我が元で発表した犬の看病クエストが発生。
クエストが次々に連鎖して、止まらない。
猟師になったら、お肉が食べられると思ったのに~!
素人が看病せずに、病院に連れて行きなさいよ!
タイミングをはかって犬の汗を拭いたり、口に水を含ませたりのミニゲームがやたらと難易度が高く、クリア出来ない。
その度に、そばに座っている老師が、
「こいつはもう無理じゃのう。諦めるか?」
と聞いてくるのが、一層腹が立つ。
意地になって挑んでいたが、イライラが募ってきてミスが増えていく。
転職クエストなんかより、わけのわからないミニゲームの難易度が高いとは、どういうことなんだろう。
仕方がないので、ため息と共に中断した。
サリナは何をしているだろう、と様子を覗きに行ったら、またお風呂の支度をしてくれていた。
「毎日入浴なさればきっと、以前のように美しい肌に戻りますからね」
嫌な顔どころか、嬉しそうに準備をしてくれているサリナに、苦笑する。
「私に肌が綺麗な時なんて、あったかしら?」
「ございましたとも。お忘れですか?
そもそも王家とのご婚約は、マーガレット様に一目惚れした殿下からの熱望で、結ばれたものですよ。」
「…そうなの」
サリナったら、私に忠義を尽くすあまりに、ありもしない妄想に取りつかれているのかな。
少し不安になるが、否定も肯定もせず、スルーした。
確かに王太子との婚約は、私が幼いときに結ばれたので、経緯なんて覚えていない。
汚くなったドレスは処分して、今は令嬢としてはラフなワンピースを着ている。
これならサリナの手助けは必要ないので、自分で脱いでいたが、
「ご自分でなさらなくとも、お手伝いいたしますのに…」
と困った顔をされてしまった。
メイドじゃないのだから、サリナがやる事でもないはずなんだけど。
「私はもう公爵令嬢としては、死んだ身よ。
サリナだって、いつまでも私をお嬢様として扱う必要はないの。」
「な、何をおっしゃってるんですか」
「愛称で呼び合ってもいいんじゃない?サリーとマギー、みたいに…」
「いけません!」
私の言葉に被せ気味に強く返すサリナに、ビックリして口を閉じる。
サリナはハッとして口を押さえ、慌てて頭を下げた。
「失礼しました。
ですがどうか、そんな悲しいことは仰らないでください」
サリナが何を怒ったのか、よくわからない。
けれど、俯いているサリナの顔が、泣きそうに見えてしまって、それ以上言葉を返すことができなかった。
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