転生覚醒が遅すぎたので全力ヒキニートします!

カカオ70

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レオン

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扉の向こうからは、しばらくうめき声のようなボソボソした喋り声のようなものが聞こえている。
確認するように一度、ドアノブがガチャガチャと回された後は、諦めて去っていったようだった。
開かないとは思っていても、扉を開けようとする音は、不安を掻き立てるものだ。
心臓が破裂しそうにドキドキしていて、私もサリナも抱き合ったまま、黙って扉を見つめていた。
物音が聞こえなくなって、ようやくほーっとため息が漏れる。

「どうして外に出たりしたの!
立ち入り禁止区域は、牢の中だけなのよ!?
彼らが油断していたから、よかったようなものの…」

あのままサリナが連れ去られていたら と考えると、ゾッとする。
他人に手をあげたショックで、私も気が昂っていたのだろう。
つい声を荒げて、サリナを叱りつけた。

「申し訳ありません…」
「…なぜ嬉しそうなの」
「も、申し訳ありません」

頬をポッと上気させたまま、サリナは慌てて口元を覆い隠す。
隠しても無駄だよ、やっぱり喜んでるの?ドMなの?

「サリナは一生マーガレット様の侍女だ と、認めていただけたのが嬉しくて…」
「そう…」
「危ないところを、ありがとうございました。
以降、不用意に扉を開けたりしません。」
「そうね…そうしてちょうだい」

私は深追いをやめて、ふらりと扉から離れた。

「なんだか、どっと疲れたわ。
今日はもう、休みましょう」
「はい」

もそもそとベッドに潜り込んで、寝る前にお庭のスタミナだけ使い果たしておくか、とスマホを開く。
立ち上がった画面に、私は目を見開いた。

「犬に名前をつけてください」

病気が治ったらしく、利発な顔つきになった犬の顔のアップ。
そこに、名前を入力する画面が出ていた。

「サリナ、あのミニゲームをクリアできたの!?」
「はい。元気になりました」
「嘘ぉ、すごい!ありがとう!」

お礼を言われて、テレテレしているサリナの頭を撫でて、私は再び、うーん と考え込んだ。

「犬の名前ねえ…思いつかないわね」
「犬を飼われるのですか」
「そうね、飼えるみたい。
そうだわ。サリナが助けてあげたんだから、サリナが名付け親になってちょうだい。」
「よろしいのですか!」

サリナは嬉しそうに、しばらくああでもないこうでもないと悩む。

「それでは…レオンと。
一度、命を落としかけたものは、長生きすると聞いたことがあるのです。
元気に強く長生きできるよう、ライオン…レオンという名前はいかがでしょう。」
「いい名前ね、そうしましょう」

私は、カタカナで「レオン」と打ち込むと、決定ボタンを押した。
画面の中の犬が、嬉しそうにニコッと笑う。

「レオン は猟犬であり、パートナーです。
かわいがってあけましょう」

メッセージが出て、笑顔の犬の周りにパーッとハートが散る。
尻尾を振って喜び、キャラに飛びつくモーションの後、再び猟師ギルドの職員に声をかけられた。
猟犬を素晴らしい。羨ましいと褒めちぎられ、ようやく早く弓を完成させろ。弓矢の狩りを練習しよう と言われる。
新しいクエストの発生だ。
でも、とにかく今日は、もう疲れた。
狩りの練習は明日にすることにして、サリナと共に眠りについたのだった。



わん!わん!

夢の中で、元気な子犬の声がする。

「んん…うるさい」

寝返りをうち、その音から逃れようとして、ハッと目が覚めた。
夢にしては、やけにリアルで大きな声だった。まさか、と思ったら…

「うわー、どうするの!?世話なんて出来ないわよ?」

ベッドから少し離れたところで、サリナと戯れあっている子犬がいた。
鼻の周りと4本の足だけ茶色ががった白の毛が混じって、靴下を履いているような模様の黒い柴犬だ。

「申し訳ありません。起こしてしまいましたか。
こら、悪い子。マーガレット様がおやすみの最中に、吠えては駄目よ。」

子犬が吠えないように嗜めたサリナが、立ち上がる。
子犬はすっかりサリナに懐いているようで、小さな尻尾を千切れそうに振っていた。

「朝食の準備をしようとしていたら、壁に新しく小さな扉が出来ているのを見つけたんです。
そこを開けたら、中から元気なレオンが」
「まるで桃ね…」
「桃?」
「いえ、なんでもないわ」

まさか生き物まで現実世界に出てきてしまうとは、思っていなかった。
こんなことなら、あんなミニゲームはクリアせずに、さっさとパスしたのに…。と悔やむが、もう遅い。

牢の中で、犬は飼えるものだろうか。
いや、無理じゃない?
犬を飼うのに必要なものって、なに?

頭を抱えて、考え込む。
前世でも飼ったことがないから、わからない。

取り敢えずは、餌皿は必要でしょう。
あとは…トイレ?トイレってどうすればいいの?
犬の散歩をしている人が、スコップと袋を持って歩くのは知ってる。
外で用を足させて、持ち帰ってゴミに出すのだろう。
牢の中では、どうすればいいの?
しつけって言葉はよく聞くけど、具体的に何をすればいいの?おすわり?
ああそれより、まずはトイレを用意しなくては。牢の中のあちこちで用を足されたら、たまったものではない。
確か、ペットのトイレには新聞紙を割いたものを入れるとか、砂を入れるとか聞いたことがあるような、ないような。

「なにか、使えるものはあったかしら…」

アイテムボックスを開いて、中を確認する。
そこに広がる、冒険者クエストで入手したらしいアイテムの数々。
その数の多さに、絶句してしまったのだった。







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