転生覚醒が遅すぎたので全力ヒキニートします!

カカオ70

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ギルドハウス

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しかし、うら若い身であるサリナが、一軒家をポンと買える程の資金を貯められていたのが凄い。
作りつけの棚や家具がある、小ぢんまりとした家だが、これがサリナの持ち財産と思うと尊敬したくなる。
何故か私の仮名で登録してたけど。
思い返せば、私の財産も一応色々とあったはずだが、死んだ扱いなので全て父に帰属している。
いざという時の財産を持っているサリナが、少しだけ羨ましい気持ちだ。
しんみりしながら、ゆっくりと部屋の中央辺りまで進んだ時だった。
ポン!とスマホから通知音がなる。
えっ?と思って画面を見たら、石牢クエストからの通知だった。

「ギルドハウスとして登録しますか?」

タップしたら冒険ゲームに飛ばされて、冒険ギルド内に書類の前で羽ペンを持っている私のキャラが表示されていた。
そういえば、冒険ゲームの中でギルド設立クエストなどがあった。
何か得なことがあるのかと思って、クエストをクリアしてギルドを設立したものの、特に何も起こらなかったやつだ。
なんか進展きた!登録してみたい!

「ねえ、サリナ。このお家を私たちのギルドハウスとして、登録してもいい?」
「はい、勿論です」

ギルドハウスってなんですか の質問もなく受諾するサリナに、私のこと信用しすぎでは?と不安になりつつ、登録進めた。
ギルドハウスは幾つも登録できるようで、空欄がズラリと並んでいる。
もしかして、拠点登録も沢山できるのだろうか。
適当に最初の空欄をタップすると「イカレス王国セントラルタウン第7ストリート裏12ブロック」と、買った家の住所が表示された。
続けて、「最終リンクが必要です」の表示で、はい いいえの選択肢。
なんのことかよくわからないので、イエスイエス!
よし、無事に登録が出来たらしい。

「…何か、変化あった?」

スマホから顔を上げても、特段変化は見当たらない。
キョロキョロと見渡していたら、サリナが扉を指した。

「ふいに増えた扉でしたら、あちらにございます」
「扉が増えただけ?どこに繋がってるんだろ…」

ガチャ

「わんわんっ!」

試しに扉を開けてみたら、中からレオンにそっくりな犬が飛び出してきた。
パッと膝に飛びついて、千切れんばかりに尻尾を振っている。
そっくりな犬じゃない。レオンだ。
その奥には、ものすごく見慣れた光景…我が家にも等しい改造済み石牢が広がっていた。

「あー!嘘っ!?繋がってる!」
「まあ!これは便利ですね!」

思わずサリナと手を取り合って喜ぶ。
ということは、ランダムなテレポートアイテムなんて使わなくても、サリナにお願いしなくても、街に出ることが可能になったということか。
そう言うと、一転してサリナはなんだかガッカリした表情を見せた。なんで?

地下牢側から見ると、封印された出入り口の横に、買った家の玄関扉とそっくりなドアが現れていた。

「ギルドハウスって、どっちがギルドハウスかわかんない感じねえ」

地下牢と家の間を行ったり来たりしながら、変わったところを探す。
追加で増えた設備の辺りが、変化しまくっていた。
まずはトイレが男性用と女性用に別れている。
男性居ないけど…え?私のこと?
お風呂も男湯と女湯が別れている。
寝室も、1人一部屋仕様になっていた。
ベッド、クローゼット、棚の類も1セットずつなので、必然的に前より狭い。
でもダブルサイズのベッドが悠々と置けているので、前世の部屋よりは断然広いけれど。
サリナはどちらの部屋も確認して、主人の部屋は奥と相場が決まっておりますので などとのたまっていた。

「これからは別々の部屋を使わなきゃダメ?
私、サリナと一緒じゃないと、眠れる自信がないんだけれど」

心細い気持ちになってサリナの上着をつんつんと引っ張ると、サリナは珍しく物理的に笑顔を浮かべて頷いた。

「ご心配なさらず。これからもご一緒いたしますとも。」
「やったあ!ありがとう!」

やはり、石牢の中を含めてのギルドハウス仕様になっているようだ。
ギルドメンバーが増えたら、部屋が増えていく仕様なんじゃないだろうか。
増やす予定なんて、全くないけれど。

「はー。なんだか今日は疲れたね。
乳牛は明日にして、お茶でも飲んで休もうか。」
「それでは、お湯を沸かしてまいります。
お湯が沸くまでの間、新しく購入した家の全容を確認してまいりますので、少々お待ちくださいませ」
「あっ、それは私も一緒に行きたい!」

休みたかったけど、新居の確認はしたい。
こじんまりとした造りなので、見て回るところはほとんどなく、そこまで負担でもないだろう。
レオンに、沸いたら教えてね と言うと、勇ましく返事をしてくれたが、火をつけっぱなしで離れるのは怖かったので、ささっと終わらせることにした。
ここは、夫婦二人暮らしの家だったのだろうか。
小さな釜戸、流し、パンなどをこねるのに使っていたのかわずかに粉っぽさの残る台、食器や調理用具を置けそうな棚、大きな瓶が2つ、天井近くに小さな窓があいたスペースがベッドを置いていた場所ではないかという。
いわゆるワンルームである。

「ん?水道やトイレは?」
「水は近くの共同井戸を利用するそうです。契約の際に、井戸の使用料も請求されました。」
「家の中にないの?」

有料なのに?
なにそれ、めっちゃ大変。

「汲んだ水を貯めておくがこちらの水瓶で、こちらが恐らく肥壺ですね。」
「…お料理やトイレは、石牢の方を使おうね。」
「そうですね。」

石牢が快適すぎて、新居はほぼ街への通路にしかならなさそうだ。
中古の肥壺なんて、家の中にあるだけで嫌なので、アイテムボックスにぶち込んですぐさま削除する。
さて。新居はこれで、全て見たわけか。

「ん?でも、ここが玄関でこれが石牢行き…このドアは何?」
「小さいけど庭があるそうですよ。そこに続いているのでしょう。」
「へー!」

白いペンキでざっくり塗った、ちょっと可愛いドアだ。
外の空気を吸えるのに自分達の敷地だなんて、石牢暮らしが長かったせいかロマンを感じてしまう。
嬉しくなって、サリナを振り返った。

「じゃあお茶を淹れて、お庭でいただきましょ!」
「マーガレット様…民家の庭は、公爵家の庭園のように快適なものではございませんよ」

サリナは苦笑しながらも、ヤカンを火にかける。
私もお茶請けを吟味するするべく、アイテムボックスを開いた。

「サリナ、なんのお茶を入れるの?」
「新居開設のお祝いに、金薔薇のお茶を入れようかと思っております」
「いいわね!」

薔薇の限定クエストをやった時のレアアイテム料理だ。
あれからもちまちま薔薇を収穫して、薔薇のジャムやらポプリ、入浴剤やらを増やしていたので、金薔薇が貯まっていたのだ。
赤薔薇のお茶より重厚感はないけれど華があって、優しく香るお茶だ。
ガツンとした濃さではないのに、ふんわりと高貴な薔薇の芳しさが残る。
美味しくて好きだけど、お茶請けには悩むやつだ。

「じゃあ…ストロベリーチップスにしよっかな」

縦に輪切りにした苺をフリーズドライにしたような見た目で、流石に自作は出来ない。
お庭ゲームの中でのみ、生産ができるオヤツだ。
食感は軽くて、サクサクほろほろ。
もぐもぐしてると口の中でじゅわっと戻って、焼き立てのケーキのような香ばしさをまといながら、生苺の強い香りと甘酸っぱさが広がるのだ。
薔薇のお茶と大変に相性がいい。
白いお皿に並べながら、ここにホイップがあれば…!と改めて思う。
あー!早く牛乳欲しい!
ガラスの茶器をセットしているサリナを確認し、先に立って庭に向かう。
小さいと言っても、椅子二脚とミニテーブルくらいは置けるだろう。
お庭のクエストでゲットした小さなテーブルセットを、先回りして設置しておくことにした。
扉を開けた途端に、レオンが喜んで私の前に飛び出してくる。

「危ないよ、レオン」

なんて言いながら顔を上げた私は、目の前に広がる景色が余りにも想像と違ったせいで、思考停止して立ち竦んでしまった。

「…公爵家の庭より広くない?」


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