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(閑話)七年後の王宮生活
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王宮で暮らしていたのは七年前のこととはいえ、お妃候補時代から過ごしていた場所だからか、王宮に戻ると懐かしく感じた。
華やかな物に囲まれ、暮らしたいルドヴィク様らしい王宮のきらびやかさ。
それは、ルチアノの興味を引いたようだった。
「お母様。ザカリア様のお城より、きらきらした物がたくさんあるね」
今日もジュストを連れて、王宮内を探検していたルチアノ。
『きらきらした物』を運んでは、『これ売れますか?』と、買取りにやって来た商人に尋ねていた。
お金のやり取りの勉強になっているようで、『ぼく、高値の物がわかるようになってきた!』と、得意顔だった。
ルチアノはたくさん動いて疲れたらしく、眠そうに目をこすった。
「ルチアノは、ここを好きになれるかしら?」
「わからない。でも、ずっと好きなのはザカリア様のお城だと思う」
「そうね」
七年間、楽しかったのは私も同じ。
あの暖かい場所にずっといられたら、と思った。
「お母様には、ぼくもザカリア様もいるから、平気だよ」
「ルチアノ……」
ルチアノをぎゅっと抱き締めた。
王宮に戻り、過去を思い出して不安になってしまうこともある。
でも、ルチアノがいるから、私は頑張れる。
それにザカリア様も――
「ザカリア様がいてくださって、本当に心強いわ」
ザカリア様は住居として、王族が暮らす王宮内の一角を要求した。
当然、デルフィーナは反発し、大騒ぎになった。
けれど、ルドヴィク様は自分の子であるルチアノを狭い部屋に閉じ込めたくなかったのか、渋々了承したのだった。
ザカリア様が連れてきた兵士たちの存在もあり、逆らえなかったというのもあるだろうけど……
「そうだっ!」
もうすぐ眠るはずだったルチアノが、カッと目を見開いた。
「どこへ行くの? もう眠る時間でしょ!?」
寝台からルチアノが、勢いよく飛び降りると、部屋の外へ走っていく。
「ルチアノ! 待って!」
ガウンを羽織り、ルチアノの後を慌てて追いかけると、 ザカリア様の部屋へ飛び込んで行った。
私の部屋とザカリア様の部屋は、中庭を挟んだ向こう側にある。
部屋からは灯りがこぼれ、まだ起きていらっしゃる。
昼間ならともかく、夜にザカリア様の部屋へ私が入れるわけがない。
「困るわ……。ルチアノ……」
護衛のため、部屋の周辺を見回りしていたジュストの部下たちは、ザカリア様の部屋に許可なく入って行った可愛らしい侵入者の姿を見送り、微笑みを浮かべていた。
止めてほしかったと思いながら、彼らに頼むしかなかった。
「ザカリア様の部屋に、ルチアノがお邪魔してしまって……。ルチアノを連れてきていただけないかしら……?」
「ルチアノ様は少し遊んで、満足されたら部屋から出てきますよ」
「でも、ご迷惑でしょう?」
「ご安心を。ザカリア様は、ルチアノ様を迷惑に思うことはありません。セレーネ様はお疲れでしょう。お部屋に戻り、お休みください」
そう言って、慰めてくれたけど、私は気が気ではなかった。
護衛たちによって、部屋に戻されたけど、ルチアノがザカリア様と遊んでいるのか、庭から楽し気な声が聞こえてきた。
「わかった。ちゃんと眠るって約束するよ!」
「本当だな? 部屋まで送ったら、おとなしく寝台に入って、朝まで眠るんだぞ」
そんな会話をしながら、ルチアノが部屋のドアを元気よく開けた。
「ルチアノ。送るのは部屋の前までだと言っただろう」
「前じゃなくて、部屋までって約束したよっ!」
「普通に考えたら、前までだろ!?」
ぐいぐいと、ルチアノはザカリア様の腕を引っ張る。
乱暴にルチアノの手を振りほどけないザカリア様は、困った顔をしていた。
「すまない。セレーネ。これは……」
「お母様、ザカリア様を連れてきたよ」
「申し訳ありません。ルチアノが眠れず、部屋から飛び出して行ってしまって……」
「いや。俺も部屋に入るつもりではなかったが……悪かった」
謝るのは、ザカリア様でなく私のほうなのに、気まずい空気の中、お互い謝った。
「お母様がね、怖いみたい。ザカリア様と一緒なら平気なんだって」
「そ、そ、そんなこと私、言ってたかしら?」
「言ってたよ! ザカリア様はがいてくれてよかったって言った!」
それで、ルチアノはザカリア様を連れてきたというわけ……
固まって動けない私に、ルチアノはにっこり微笑んだ。
「ぼく、偉いでしょ? ちゃんとザカリア様を連れてきたんだから」
褒めるに褒められない。
だって、これからどうしたらいいの?
ザカリア様の顔を見れなかった。
「そうだな。ルチアノ、偉かったぞ」
ザカリア様がルチアノの頭をなでて、褒めた。
「セレーネになにかあった時は必ず、呼ぶ約束だからな。それじゃあ、もう平気だろう? 眠れるな?」
「うん!」
褒められたルチアノは満足そうにうなずいて、やっとおとなしく横になってくれた。
「ザカリア様。お忙しいのに、わざわざ申し訳ありませんでした」
「構わない。王宮に戻り、落ち着かない気持ちもわかる」
「ええ、そうですね……」
私もザカリア様も、同じ方角を一瞬だけ見た。
その方角には、私やザカリア様が閉じ込められた小さな部屋があった。
辛かった日々――でも、あの場所を思い出す時、辛いだけではないことに気づいた。
あの場所で、ザカリア様に初めて出会った。
私を迎えに来たザカリア様を、今も思い出せる。
隣にいるザカリア様のルチアノを見る目は優しく、七年前よりも、ずっと穏やかになった。
「ザカリア様、お母様! 一緒に寝ようよ!」
ルチアノは一人で眠っているのが嫌になったのか、一度は横になったのに起き出して、私とザカリア様の手を引いた。
「あのね、ザカリア様の領地にいた時、友達が言ってたんだ。お父様とお母様の真ん中で眠るんだって」
ルチアノは穢れのないキラキラした目で、私とザカリア様を交互に見る。
「あ、あのね、ルチアノ。そ、それはさすがに……」
「わかった。でも、今日だけだぞ」
「ザカリア様っ!?」
「しかたない」
ザカリア様は小声で言った。
「ルチアノが眠るまで、だ」
「そ、それなら……そうですよね」
ザカリア様は落ち着いているのに、動揺しているのは、私だけのようで恥ずかしい。
ルチアノを真ん中に眠ることになり、ルチアノは大満足だった。
「これでいいだろう? ちゃんと眠れよ?」
「はいっ!」
ルチアノは満面の笑みで目を閉じた。
子供は無邪気で羨ましい。
ルチアノは嬉しそうな顔で、すやすやと眠りについた。
平和な顔で眠るルチアノの顔を見ていたら、眠くなってきて、私も眠ってしまった。
◇◇◇◇◇
「ザカリア様! なにをなさっているんですか?」
「違う。これは、説明しよう、ジュスト!」
朝日が部屋を照らした頃、目が覚めた。
目覚めたのは、ジュストの大声とザカリア様の言い訳をする声が聞こえたからだった。
「どうして……? ここにジュストが……」
「うーん、まだねむいー」
ルチアノはシーツの中に深く潜り込んだ。
私もルチアノも、朝はあまり寝起きのいいほうではない。
目を開けると、同じ寝台にザカリア様がいて、ジュストが護衛していた部下を叱っていた。
「えっ!? わ、私……そのっ……違うのです! ジュスト!」
「そうだ。勘違いだ!」
「結婚していない男女が、一夜を同じ寝台でともにするとは、ルチアノ様の教育上、よろしくない」
ジュストの顔が怖い。
乳母の息子だったジュストは、ザカリア様の手本として育ったからか、ルチアノの教育には私より厳しいところがある。
「ご、ごめんなさい」
「すまない」
私とザカリア様は素直に謝った。
誤解なのに……と思いながら、反論を許さず、ジュストは部下たちにも怒っていた。
「一夜を過ごしたいのであれば、けじめをつけなさい、けじめを!」
「だ、だから、それは違うの……」
「ジュスト、これはルチアノがな……」
ぎろりとジュストはザカリア様を睨みつけた。
普段はあんなに忠犬なのに、叱る時は容赦のないジュスト。
「ルチアノ様がお願いされたとでも?」
「そうだ!」
「そうですっ! ルチアノ、お願い。起きて!」
ルチアノに説明してもらおうと、引っ張り出すも、無理やり起こされて機嫌が悪く、ぼんやりしていた。
「ルチアノ様がザカリア様を部屋へ招いたのですか?」
「んー……そうだったと思う……」
「思う?」
ジュストはじろりとザカリア様を見る。
「ルチアノ! 起きろ!」
「起きてるー」
「ルチアノ。昨日の夜のこと、ジュストに説明して!」
「きのう……? お母様が寂しいって言うから、ザカリア様を連れてきたんだ。領地のみんなに会いたいんだって」
ストレートすぎるルチアノの言葉に、眩暈がして、寝台の上にドサッと倒れた。
「それなら仕方ないですね」
ジュストは恥ずかしそうに、顔を埋める私を見て、笑っていた。
「そうか。セレーネ。王宮が落ち着いたら、領地の皆に会いに行こう」
誤解はとけたものの、ザカリア様とジュストから、子供と同じ扱いをされてしまった。
でも、こんなふうに弱音を吐いて、優しくされるのは初めてだった。
生まれ育った侯爵家でも、王宮でも、私は完璧を求められていたから――顔を上げると、ザカリア様とジュストがいて、ルチアノがいた。
「では、こちらの部屋に朝食を運ばせましょう。三人分でよろしいですね」
「やったぁ! ザカリア様と一緒に朝ごはん、食べられるんだね! ありがとう、ジュストっ!」
「でも、ザカリア様。ルチアノ様に免じて今日だけですよ。次はありませんからね?」
「わかった」
三人で朝食が食べられると知って、ルチアノは飛び跳ねて喜んだ。
喜ぶルチアノを、ジュストは笑顔を浮かべ、見つめる。
結局――みんな、ルチアノに甘い。
そして、私にも。
優しい朝日が私たちを包み込み、いつもの日差しより暖かく感じた朝だった。
華やかな物に囲まれ、暮らしたいルドヴィク様らしい王宮のきらびやかさ。
それは、ルチアノの興味を引いたようだった。
「お母様。ザカリア様のお城より、きらきらした物がたくさんあるね」
今日もジュストを連れて、王宮内を探検していたルチアノ。
『きらきらした物』を運んでは、『これ売れますか?』と、買取りにやって来た商人に尋ねていた。
お金のやり取りの勉強になっているようで、『ぼく、高値の物がわかるようになってきた!』と、得意顔だった。
ルチアノはたくさん動いて疲れたらしく、眠そうに目をこすった。
「ルチアノは、ここを好きになれるかしら?」
「わからない。でも、ずっと好きなのはザカリア様のお城だと思う」
「そうね」
七年間、楽しかったのは私も同じ。
あの暖かい場所にずっといられたら、と思った。
「お母様には、ぼくもザカリア様もいるから、平気だよ」
「ルチアノ……」
ルチアノをぎゅっと抱き締めた。
王宮に戻り、過去を思い出して不安になってしまうこともある。
でも、ルチアノがいるから、私は頑張れる。
それにザカリア様も――
「ザカリア様がいてくださって、本当に心強いわ」
ザカリア様は住居として、王族が暮らす王宮内の一角を要求した。
当然、デルフィーナは反発し、大騒ぎになった。
けれど、ルドヴィク様は自分の子であるルチアノを狭い部屋に閉じ込めたくなかったのか、渋々了承したのだった。
ザカリア様が連れてきた兵士たちの存在もあり、逆らえなかったというのもあるだろうけど……
「そうだっ!」
もうすぐ眠るはずだったルチアノが、カッと目を見開いた。
「どこへ行くの? もう眠る時間でしょ!?」
寝台からルチアノが、勢いよく飛び降りると、部屋の外へ走っていく。
「ルチアノ! 待って!」
ガウンを羽織り、ルチアノの後を慌てて追いかけると、 ザカリア様の部屋へ飛び込んで行った。
私の部屋とザカリア様の部屋は、中庭を挟んだ向こう側にある。
部屋からは灯りがこぼれ、まだ起きていらっしゃる。
昼間ならともかく、夜にザカリア様の部屋へ私が入れるわけがない。
「困るわ……。ルチアノ……」
護衛のため、部屋の周辺を見回りしていたジュストの部下たちは、ザカリア様の部屋に許可なく入って行った可愛らしい侵入者の姿を見送り、微笑みを浮かべていた。
止めてほしかったと思いながら、彼らに頼むしかなかった。
「ザカリア様の部屋に、ルチアノがお邪魔してしまって……。ルチアノを連れてきていただけないかしら……?」
「ルチアノ様は少し遊んで、満足されたら部屋から出てきますよ」
「でも、ご迷惑でしょう?」
「ご安心を。ザカリア様は、ルチアノ様を迷惑に思うことはありません。セレーネ様はお疲れでしょう。お部屋に戻り、お休みください」
そう言って、慰めてくれたけど、私は気が気ではなかった。
護衛たちによって、部屋に戻されたけど、ルチアノがザカリア様と遊んでいるのか、庭から楽し気な声が聞こえてきた。
「わかった。ちゃんと眠るって約束するよ!」
「本当だな? 部屋まで送ったら、おとなしく寝台に入って、朝まで眠るんだぞ」
そんな会話をしながら、ルチアノが部屋のドアを元気よく開けた。
「ルチアノ。送るのは部屋の前までだと言っただろう」
「前じゃなくて、部屋までって約束したよっ!」
「普通に考えたら、前までだろ!?」
ぐいぐいと、ルチアノはザカリア様の腕を引っ張る。
乱暴にルチアノの手を振りほどけないザカリア様は、困った顔をしていた。
「すまない。セレーネ。これは……」
「お母様、ザカリア様を連れてきたよ」
「申し訳ありません。ルチアノが眠れず、部屋から飛び出して行ってしまって……」
「いや。俺も部屋に入るつもりではなかったが……悪かった」
謝るのは、ザカリア様でなく私のほうなのに、気まずい空気の中、お互い謝った。
「お母様がね、怖いみたい。ザカリア様と一緒なら平気なんだって」
「そ、そ、そんなこと私、言ってたかしら?」
「言ってたよ! ザカリア様はがいてくれてよかったって言った!」
それで、ルチアノはザカリア様を連れてきたというわけ……
固まって動けない私に、ルチアノはにっこり微笑んだ。
「ぼく、偉いでしょ? ちゃんとザカリア様を連れてきたんだから」
褒めるに褒められない。
だって、これからどうしたらいいの?
ザカリア様の顔を見れなかった。
「そうだな。ルチアノ、偉かったぞ」
ザカリア様がルチアノの頭をなでて、褒めた。
「セレーネになにかあった時は必ず、呼ぶ約束だからな。それじゃあ、もう平気だろう? 眠れるな?」
「うん!」
褒められたルチアノは満足そうにうなずいて、やっとおとなしく横になってくれた。
「ザカリア様。お忙しいのに、わざわざ申し訳ありませんでした」
「構わない。王宮に戻り、落ち着かない気持ちもわかる」
「ええ、そうですね……」
私もザカリア様も、同じ方角を一瞬だけ見た。
その方角には、私やザカリア様が閉じ込められた小さな部屋があった。
辛かった日々――でも、あの場所を思い出す時、辛いだけではないことに気づいた。
あの場所で、ザカリア様に初めて出会った。
私を迎えに来たザカリア様を、今も思い出せる。
隣にいるザカリア様のルチアノを見る目は優しく、七年前よりも、ずっと穏やかになった。
「ザカリア様、お母様! 一緒に寝ようよ!」
ルチアノは一人で眠っているのが嫌になったのか、一度は横になったのに起き出して、私とザカリア様の手を引いた。
「あのね、ザカリア様の領地にいた時、友達が言ってたんだ。お父様とお母様の真ん中で眠るんだって」
ルチアノは穢れのないキラキラした目で、私とザカリア様を交互に見る。
「あ、あのね、ルチアノ。そ、それはさすがに……」
「わかった。でも、今日だけだぞ」
「ザカリア様っ!?」
「しかたない」
ザカリア様は小声で言った。
「ルチアノが眠るまで、だ」
「そ、それなら……そうですよね」
ザカリア様は落ち着いているのに、動揺しているのは、私だけのようで恥ずかしい。
ルチアノを真ん中に眠ることになり、ルチアノは大満足だった。
「これでいいだろう? ちゃんと眠れよ?」
「はいっ!」
ルチアノは満面の笑みで目を閉じた。
子供は無邪気で羨ましい。
ルチアノは嬉しそうな顔で、すやすやと眠りについた。
平和な顔で眠るルチアノの顔を見ていたら、眠くなってきて、私も眠ってしまった。
◇◇◇◇◇
「ザカリア様! なにをなさっているんですか?」
「違う。これは、説明しよう、ジュスト!」
朝日が部屋を照らした頃、目が覚めた。
目覚めたのは、ジュストの大声とザカリア様の言い訳をする声が聞こえたからだった。
「どうして……? ここにジュストが……」
「うーん、まだねむいー」
ルチアノはシーツの中に深く潜り込んだ。
私もルチアノも、朝はあまり寝起きのいいほうではない。
目を開けると、同じ寝台にザカリア様がいて、ジュストが護衛していた部下を叱っていた。
「えっ!? わ、私……そのっ……違うのです! ジュスト!」
「そうだ。勘違いだ!」
「結婚していない男女が、一夜を同じ寝台でともにするとは、ルチアノ様の教育上、よろしくない」
ジュストの顔が怖い。
乳母の息子だったジュストは、ザカリア様の手本として育ったからか、ルチアノの教育には私より厳しいところがある。
「ご、ごめんなさい」
「すまない」
私とザカリア様は素直に謝った。
誤解なのに……と思いながら、反論を許さず、ジュストは部下たちにも怒っていた。
「一夜を過ごしたいのであれば、けじめをつけなさい、けじめを!」
「だ、だから、それは違うの……」
「ジュスト、これはルチアノがな……」
ぎろりとジュストはザカリア様を睨みつけた。
普段はあんなに忠犬なのに、叱る時は容赦のないジュスト。
「ルチアノ様がお願いされたとでも?」
「そうだ!」
「そうですっ! ルチアノ、お願い。起きて!」
ルチアノに説明してもらおうと、引っ張り出すも、無理やり起こされて機嫌が悪く、ぼんやりしていた。
「ルチアノ様がザカリア様を部屋へ招いたのですか?」
「んー……そうだったと思う……」
「思う?」
ジュストはじろりとザカリア様を見る。
「ルチアノ! 起きろ!」
「起きてるー」
「ルチアノ。昨日の夜のこと、ジュストに説明して!」
「きのう……? お母様が寂しいって言うから、ザカリア様を連れてきたんだ。領地のみんなに会いたいんだって」
ストレートすぎるルチアノの言葉に、眩暈がして、寝台の上にドサッと倒れた。
「それなら仕方ないですね」
ジュストは恥ずかしそうに、顔を埋める私を見て、笑っていた。
「そうか。セレーネ。王宮が落ち着いたら、領地の皆に会いに行こう」
誤解はとけたものの、ザカリア様とジュストから、子供と同じ扱いをされてしまった。
でも、こんなふうに弱音を吐いて、優しくされるのは初めてだった。
生まれ育った侯爵家でも、王宮でも、私は完璧を求められていたから――顔を上げると、ザカリア様とジュストがいて、ルチアノがいた。
「では、こちらの部屋に朝食を運ばせましょう。三人分でよろしいですね」
「やったぁ! ザカリア様と一緒に朝ごはん、食べられるんだね! ありがとう、ジュストっ!」
「でも、ザカリア様。ルチアノ様に免じて今日だけですよ。次はありませんからね?」
「わかった」
三人で朝食が食べられると知って、ルチアノは飛び跳ねて喜んだ。
喜ぶルチアノを、ジュストは笑顔を浮かべ、見つめる。
結局――みんな、ルチアノに甘い。
そして、私にも。
優しい朝日が私たちを包み込み、いつもの日差しより暖かく感じた朝だった。
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