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13 友人
び、びっくりしたー!!
大人な会話で二人の間に入っていけなかった。
しかも、お似合いでドラマのワンシーンを見ていたようだった。
はぁっとため息を吐きながら、コピーした書類を机に置いた。
水和子お姉ちゃんが言うようにコピーはこれから一人で行こう。
確かに専務である壱哉さんが私を手伝うなんておかしい。
きっと見かねて水和子お姉ちゃんが注意したんだ。
他の人が言い出しにくいから。
深く反省した。
「お姉ちゃんと壱哉さん……やっぱり二人で飲みに行く関係なんだ」
当り前だよね。
わかっていたのに胸が苦しい。
落ち込む方がおかしい。
私と壱哉さんはなんでもないし、専務と秘書っていうだけの関係でプライベートは幼馴染、もしくは妹の同級生っていうだけだし。
帰る用意しよう。
終業時間になったのに壱哉さんは戻ってこなかなった。
「どうしたのかな」
見に行こうとした瞬間、役員室のドアがバンッと開いた。
入ってきた壱哉さんの顔が怒っているように見えて驚いたまま、固まってしまった。
「あ、あの」
「日奈子」
「はっ、はい」
怒られるの?私?
何かした?
思わず、背筋を伸ばした。
「呑海とは友人だ」
お姉ちゃんと友人?
どうして今それを言うのかわからなかったけど、うなずいた。
「俺がす―――」
「ドン子、いるっ!?」
バンッと役員室のドアが開いて、壱哉さんに入ってきた人がぶつかった。
「杏美ちゃん?どうしたの?」
「まだいたわね。送ってあげるから、ちょっと顔貸しなさいよ」
「呼び出しっ!?」
杏美ちゃんが怖いんだけど。
「杏美。俺は日奈子に話が」
「お兄様。それ、急ぎなの?」
「急ぎと言えば、急ぎだが」
「違うのなら、後にして」
杏美ちゃんに言われて、壱哉さんは恨めしい顔をしていた。
「行くわよ、ドン子。もたもたしないで」
「う、うん。お先に失礼します」
ぺこっと壱哉さんに頭を下げると、去り際、渋い顔をして見えた。
そういえば、何を言おうとしていたんだろう。壱哉さん。
杏美ちゃんに引きずられるようにして部屋を後にすると、杏美ちゃんは言った。
「言っておくけどっ、あんたのためなんかじゃないんだからね!」
「うん??」
何が言いたいんだろう。
早足で杏美ちゃんは歩いてエレベーターに乗ると社長の娘だけあって、みんな、エレベーターに乗るのを遠慮して乗ってこなかった。
杏美ちゃんの顔が怖かったせいもあるだろうけど。
駐車場に行き、『ほらっ!はやくっ!』と私の背中を押して車に乗せた―――というより、車に詰め込んだ。
「ひ、ひどい。なにも突き飛ばさなくても」
「ごちゃごちゃとうるさいわね」
運転手さんが困惑気味に私と杏美ちゃんを見たけど、杏美ちゃんは気にしていない。
「貴戸。なるべく会社から離れて」
「はい」
運転手の貴戸さんは杏美ちゃんの無茶ぶりに慣れているのか、会社から遠ざかり、尾鷹家のある町を出ると、離れた河川敷横に車をとめた。
「降りるわよ」
「うん?」
まさか、決闘?
この河川敷で私と杏美ちゃんの決闘でも始まるの?
身を守るようにバッグを抱えていると杏美ちゃんが振り返った。
な、なに!?
「ドン子。水和子さんが秘書室にきて、今園室長に妹の専務付き秘書を辞めさせてくださいって言ってたわよ」
決闘ではなかったことと、水和子お姉ちゃんの行動に驚いてバッグを落としかけ、慌てて、バッグを抱え直した。
「ど、どうしてお姉ちゃんが?」
「知らないみたいね。まあ、私も盗み聞きしてたんだけど」
お嬢様だよね?杏美ちゃん。
「水和子さんはお兄様のことを好きなのよね」
「二人は付き合っているんじゃないの?」
「今のところは友達。尾鷹の人間が簡単に恋人を作れるわけないでしょ。それにお兄様は私と違って厳しく育てられたの。尾鷹の跡取りとしてね」
「そうなんだ……」
だから、杏美ちゃんはこんな我儘に……。
「ドン子。今、なにか私に対して失礼なことを思わなかった?」
「うっ、ううんっ!全然っ!」
「まあ、いいわ。お兄様は上に立つ者として教育されてきたの。自分の感情を表に出さないでしょ?好き嫌いも言えずに生きてきたお兄様は多分、もうずっとあのままよ。私にしたら、あんな人間と一緒にいて何が楽しいかわからないわ」
「そんなことないよ!壱哉さんは笑うし、好き嫌いもちゃんとわかるし……」
「そうよ。ドン子の前ではね。バカだから、大丈夫って思われるのよ」
バ、バカってそんなことっ……否定できない自分が悲しい。
「壱哉さんは優しいし、一緒にいて楽しいよ」
杏美ちゃんの言うような人じゃない。
「ドン子がお兄様を好きになるのは自由よ。けど、お兄様には自由は少ない。それを覚えておくのね」
「杏美ちゃんは?」
「私?」
「うん。杏美ちゃんは大丈夫なの?」
一瞬、杏美ちゃんは泣き笑いのような表情を浮かべた。
「バカね。人の心配してる場合じゃないでしょ」
「で、でも。壱哉さんの自由が少ないなら、杏美ちゃんだって」
「私のことはいいの」
杏美ちゃんは笑った。
「はあ、ドン子と話してると疲れるわ。帰るわよ」
私の腕を掴み、車に戻った。
私と杏美ちゃんが車に乗るなり、貴戸さんが聞いてきた。
「なにをなさっていたんですか?杏美さん」
「友人同士の語らいよ。話は終わったから。ドン子を送って行って」
「はい」
まるで杏美ちゃんは監視されてるみたいで驚いたけど、これがお金持ちの生活なのかな?
杏美ちゃんの顔を見たけど、不機嫌そうにしているだけで何も言わなかった。
自分の事は。
大人な会話で二人の間に入っていけなかった。
しかも、お似合いでドラマのワンシーンを見ていたようだった。
はぁっとため息を吐きながら、コピーした書類を机に置いた。
水和子お姉ちゃんが言うようにコピーはこれから一人で行こう。
確かに専務である壱哉さんが私を手伝うなんておかしい。
きっと見かねて水和子お姉ちゃんが注意したんだ。
他の人が言い出しにくいから。
深く反省した。
「お姉ちゃんと壱哉さん……やっぱり二人で飲みに行く関係なんだ」
当り前だよね。
わかっていたのに胸が苦しい。
落ち込む方がおかしい。
私と壱哉さんはなんでもないし、専務と秘書っていうだけの関係でプライベートは幼馴染、もしくは妹の同級生っていうだけだし。
帰る用意しよう。
終業時間になったのに壱哉さんは戻ってこなかなった。
「どうしたのかな」
見に行こうとした瞬間、役員室のドアがバンッと開いた。
入ってきた壱哉さんの顔が怒っているように見えて驚いたまま、固まってしまった。
「あ、あの」
「日奈子」
「はっ、はい」
怒られるの?私?
何かした?
思わず、背筋を伸ばした。
「呑海とは友人だ」
お姉ちゃんと友人?
どうして今それを言うのかわからなかったけど、うなずいた。
「俺がす―――」
「ドン子、いるっ!?」
バンッと役員室のドアが開いて、壱哉さんに入ってきた人がぶつかった。
「杏美ちゃん?どうしたの?」
「まだいたわね。送ってあげるから、ちょっと顔貸しなさいよ」
「呼び出しっ!?」
杏美ちゃんが怖いんだけど。
「杏美。俺は日奈子に話が」
「お兄様。それ、急ぎなの?」
「急ぎと言えば、急ぎだが」
「違うのなら、後にして」
杏美ちゃんに言われて、壱哉さんは恨めしい顔をしていた。
「行くわよ、ドン子。もたもたしないで」
「う、うん。お先に失礼します」
ぺこっと壱哉さんに頭を下げると、去り際、渋い顔をして見えた。
そういえば、何を言おうとしていたんだろう。壱哉さん。
杏美ちゃんに引きずられるようにして部屋を後にすると、杏美ちゃんは言った。
「言っておくけどっ、あんたのためなんかじゃないんだからね!」
「うん??」
何が言いたいんだろう。
早足で杏美ちゃんは歩いてエレベーターに乗ると社長の娘だけあって、みんな、エレベーターに乗るのを遠慮して乗ってこなかった。
杏美ちゃんの顔が怖かったせいもあるだろうけど。
駐車場に行き、『ほらっ!はやくっ!』と私の背中を押して車に乗せた―――というより、車に詰め込んだ。
「ひ、ひどい。なにも突き飛ばさなくても」
「ごちゃごちゃとうるさいわね」
運転手さんが困惑気味に私と杏美ちゃんを見たけど、杏美ちゃんは気にしていない。
「貴戸。なるべく会社から離れて」
「はい」
運転手の貴戸さんは杏美ちゃんの無茶ぶりに慣れているのか、会社から遠ざかり、尾鷹家のある町を出ると、離れた河川敷横に車をとめた。
「降りるわよ」
「うん?」
まさか、決闘?
この河川敷で私と杏美ちゃんの決闘でも始まるの?
身を守るようにバッグを抱えていると杏美ちゃんが振り返った。
な、なに!?
「ドン子。水和子さんが秘書室にきて、今園室長に妹の専務付き秘書を辞めさせてくださいって言ってたわよ」
決闘ではなかったことと、水和子お姉ちゃんの行動に驚いてバッグを落としかけ、慌てて、バッグを抱え直した。
「ど、どうしてお姉ちゃんが?」
「知らないみたいね。まあ、私も盗み聞きしてたんだけど」
お嬢様だよね?杏美ちゃん。
「水和子さんはお兄様のことを好きなのよね」
「二人は付き合っているんじゃないの?」
「今のところは友達。尾鷹の人間が簡単に恋人を作れるわけないでしょ。それにお兄様は私と違って厳しく育てられたの。尾鷹の跡取りとしてね」
「そうなんだ……」
だから、杏美ちゃんはこんな我儘に……。
「ドン子。今、なにか私に対して失礼なことを思わなかった?」
「うっ、ううんっ!全然っ!」
「まあ、いいわ。お兄様は上に立つ者として教育されてきたの。自分の感情を表に出さないでしょ?好き嫌いも言えずに生きてきたお兄様は多分、もうずっとあのままよ。私にしたら、あんな人間と一緒にいて何が楽しいかわからないわ」
「そんなことないよ!壱哉さんは笑うし、好き嫌いもちゃんとわかるし……」
「そうよ。ドン子の前ではね。バカだから、大丈夫って思われるのよ」
バ、バカってそんなことっ……否定できない自分が悲しい。
「壱哉さんは優しいし、一緒にいて楽しいよ」
杏美ちゃんの言うような人じゃない。
「ドン子がお兄様を好きになるのは自由よ。けど、お兄様には自由は少ない。それを覚えておくのね」
「杏美ちゃんは?」
「私?」
「うん。杏美ちゃんは大丈夫なの?」
一瞬、杏美ちゃんは泣き笑いのような表情を浮かべた。
「バカね。人の心配してる場合じゃないでしょ」
「で、でも。壱哉さんの自由が少ないなら、杏美ちゃんだって」
「私のことはいいの」
杏美ちゃんは笑った。
「はあ、ドン子と話してると疲れるわ。帰るわよ」
私の腕を掴み、車に戻った。
私と杏美ちゃんが車に乗るなり、貴戸さんが聞いてきた。
「なにをなさっていたんですか?杏美さん」
「友人同士の語らいよ。話は終わったから。ドン子を送って行って」
「はい」
まるで杏美ちゃんは監視されてるみたいで驚いたけど、これがお金持ちの生活なのかな?
杏美ちゃんの顔を見たけど、不機嫌そうにしているだけで何も言わなかった。
自分の事は。
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