22 / 43
22 番人
しおりを挟む
窓の外は暗い。
とっぷりと闇の中に沈むビルの灯りが見えた。
あの灯りの下、まだ働いている人がいるのだと思うと複雑な気持ちになる。
夏向が出て行ってから、連絡がない―――いったい、どうなったの?
きっと夏向は飲まず食わずでパソコンの画面の前に座り、頑張っているんだろう。
そう思うと、落ち着かない。
落ち着かないのはそれだけじゃない―――『結婚』の二文字が頭に残っていた。
こんな時に夏向は私になんてことを言ってくれたんだろう。
そう思う反面、窓ガラスに映った自分の頬が緩んでいる気がした。
正直、嬉しかった。
でも―――倉永の家は許しはしないだろう。
記憶の中にある夏向の叔父夫婦が私に向けた目を今も鮮明に思い出せる。
思い出したくはないのに。
振り払うように窓の外を見るのを止めた。
暗くなっている場合じゃない。
「夏向達になにか持って行こう!」
邪魔かもしれないけど、と思いながら、お茶を沸かしてポットにいれた。
「おにぎりでいいよね」
おにぎりの具はウィンナーを炒めたのと、鮭フレーク、昆布、梅干しなど。
他の人も集まっているかもしれないから、数は多めに作って後はコンビニで甘いものとインスタントの味噌汁を買おう。
部屋を出て、一階に行くと警備員さんが驚いていた。
「こんな遅くに電車を使うのは危ないですから、時任の運転手を使ってください。なにかあったんでしょう?先ほどから重役の方々が慌ててマンションから出て行くので、もしかしたら、まだ誰か出るかもしれないと思って運転手を待たせてありますから」
さすが時任が所有するマンションだけあって、異変には敏感だった。
「ありがとうございます」
警備員さんにお礼を言って、車を使わせてもらった。
やっぱり夏向だけが会社に向かったわけじゃなかった。
大変なことが起きている。
そんな気がした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時任の本社に着くと上の階の灯りがついているのが見えた。
エレベーターに乗り、重役のフロアに行くと、全員が揃っていた。
「桜帆ちゃん!」
真辺さんが私を見つけて、驚いていたけど、差し入れを見てにっこりほほ笑んだ。
「うわぁ、ありがとう!」
「甘いものも買ってきましたよ。あと、飲み物とインスタントのお味噌汁」
「温かいものが嬉しいよー。夕飯食べる時間なくてさ。倉永先輩は手が離せないけどね」
先輩呼びになっている時の真辺さんは余裕がない。
夏向は怖い顔をして画面を睨んでいた。
「なにがあったんですか?」
「ウィルスに感染してね」
「どこから!?」
真辺さんは笑っていたけど、怒っているのか、目は笑っていない。
「秘書室のパソコンだね」
そんなところから?
不審なメールでも開いてしまったのだろうか。
「部下が囮ファイルをつかませて倉永先輩が到着するまでの時間稼ぎができたから、本当によかったよ。最悪、サーバを落とすつもりだったけど、間に合った。今は誰がウィルスを仕掛けたか、調べているみたいだよ」
「そうですか。よかった」
「うん。危うく顧客情報が流出するところだったよ」
「そ、それって!」
「そう。社長会見モノの重大案件だった。社長が出張で不在なことも知っていたのかもしれない」
「わざわざ狙って…?」
真辺さんは頷いた。
夏向を見ると私がいることも気づいていない。
あの様子では水すら飲んでいないだろう。
「あの……夏向に近づいても大丈夫ですか?」
「もちろん!むしろ、何か食べさせないと倒れるかもなって思ってたところだったんだ」
「そうですか。皆さんもお腹空いたでしょう?おにぎり作ってきたので、よかったら食べてくださいね」
「ありがたいです!」
真辺さんは嬉しそうにおにぎりの前で手を合わせた。
邪魔にはならないようで、ホッとした。
食べ物を広げていると疲れた顔をした倉本さんがやってきた。
「副社長はコードを読んで犯人を特定する気だ」
「コード?」
「同じ人間が書くプログラムはどうしても癖がでる。それを見つけるんだ」
「あんな作業をよくやるよ……」
げんなりと倉本さんは言った。
夏向は険しい顔をしたまま、画面から目を離さない。
そっと後ろに行き、驚かせないように気づくのを待っていると、気配がしたのか夏向は振り返った。
「桜帆、いつのまに」
さっきまでの表情が嘘みたいに優しく微笑んだ。
「夏向が倒れると困ると思って、おにぎり食べる?」
「食べる」
「じゃあ、テーブルのところまでいかないとね。パソコンに味噌汁こぼしたら、それこそおしまいよ」
「うん」
夏向が机の下で食べたりするのは安心だからというのもあるけれど、自分にとって武器でもある大切なパソコンを壊さないためという理由が一番大きいのかもしれない。
机の下ではなく、テーブルに座った夏向をにやにやしながら、他の人達が見ていると、夏向はちょっと怒ったように言った。
「なに?」
「べつにぃー」
メカニックで参与の宮北さんは夏向にほら、ウィンナー入りのおにぎりを渡した。
「桜帆ちゃんがいると夏向はちょっと大人なとこ見せようとするんだなと思ってさ」
「ムカつく。桜帆のおにぎり食べるな」
「なんでだよ!?俺はお前のありのままの姿を言っただけだろ?」
高校の同級生でもある宮北さんは夏向にとって言いたいことを言える存在でもあるけれど、一言多いせいか、夏向の信頼を得にくいようだった……。
お湯を入れ、ワカメと豆腐の味噌汁を渡すと、夏向はおにぎりをすでに口の中に入れていた。
お腹が空いていたのか、無言で食べていた。
「犯人の目星はついたか?」
倉本さんに聞かれ、夏向は食べながら、頷いた。
「諏訪部だよ」
「だろうな」
「諏訪部ってあの佐藤君がいた会社の?」
「そうだよ。ミツバ電機の時とおなじクセがある」
「えっ!?ミツバ電機を攻撃したのは諏訪部さんの会社なの?」
「そうだよ。その時のログを持っている」
「ログ?」
「証拠を持っているってことだよ」
「うん……。佐藤君はミツバ電機にわざと痛い目にあわせて契約しようとしていたってこと?」
「そう」
「教えてよ!そういうことは!」
「いざという時に使おうと思ってたから」
「いざ、なんて時ある?」
「それをネタに桜帆に近づくなって言うつもりだった」
夏向は味噌汁を飲み、そういうことです、と言うように首を縦に振った。
どういうことよ。
「諏訪部からの挑戦状かな」
夏向は楽しそうだった。
「いやいや、若いっていいねー。俺らに挑もうなんてさ。可愛いなー」
本部長の備中さんがやってきた。
「備中さんも十分若いですよ……」
「おー。桜帆ちゃん。来てたのかー!いつも差し入れありがとう」
備中さんは秘書室でメールの履歴を確認していたらしい。
「いやー、秘書室の女の子に諏訪部が近づいたみたいだね。会社のメールアドレスを聞き出したっぽいね。ただ会社のメールアドレスでのやり取りは一回だけだったよ。受信してから削除したみたいだけど。普通の女の子は復元できることを知らないんだからさ、そこもちゃんと教えてあげないとね」
「詰めが甘いね」
もぐ、と夏向はウィンナーが入ったおにぎりを早いスピードで食べ終わると、二個目の鮭のおにぎりに手を伸ばした。
その横で備中さんが昆布のおにぎりを手にして笑った。
「諏訪部達、俺らのことを大好き過ぎるだろ?困っちゃうなー、ファンが多くて。秘書室から話が抜けてるなら、社長出張も向こうにバレちゃってるね」
真辺さんはわしゃわしゃと頭をかきむしった。
「危うく明日からずっとお詫び行脚になるとこだったよ!」
「もう大丈夫だよ。皆は帰っても。あとは俺が後処理をしておくから。二度と入れないようにね」
「ああ。任せる」
「倉永先輩、こういう時は頼りになりますね」
おにぎりを食べると、二人はお礼を言って、帰って行った。
「そんじゃ、俺も帰るわ。おにぎりもらってくわ。明日から、秘書室は閉鎖な」
「ムサイ空間にやっと女性が入ってきたと思ったら、コレだよ。頼んだからな、副社長!」
備中さんと宮北さんがおにぎりをいくつか手にして、夏向に手を振った。
「夏向にはいい友達がいるね」
「悪友だよ」
はあ、とため息を吐いた。
夏向にため息を吐かれる友人ってどうなのよ……。
本当に個性的な人達だなと思っていると、夏向はご飯を終えて立ち上がった。
「桜帆も帰っていいよ」
「もう少しだけいてもいい?」
「うん?もちろん」
夏向は嬉しそうな顔をして、いそいそと自分の席の後ろに椅子を持ってくると、どうぞと座らせた。
今は夏向を眺めていたかった。
背中が見えて、ホッとした。
ぼんやり、その背中を眺め、カチカチという規則正しくキーを叩く音が眠気を誘って、私はいつの間にか眠ってしまっていた。
とっぷりと闇の中に沈むビルの灯りが見えた。
あの灯りの下、まだ働いている人がいるのだと思うと複雑な気持ちになる。
夏向が出て行ってから、連絡がない―――いったい、どうなったの?
きっと夏向は飲まず食わずでパソコンの画面の前に座り、頑張っているんだろう。
そう思うと、落ち着かない。
落ち着かないのはそれだけじゃない―――『結婚』の二文字が頭に残っていた。
こんな時に夏向は私になんてことを言ってくれたんだろう。
そう思う反面、窓ガラスに映った自分の頬が緩んでいる気がした。
正直、嬉しかった。
でも―――倉永の家は許しはしないだろう。
記憶の中にある夏向の叔父夫婦が私に向けた目を今も鮮明に思い出せる。
思い出したくはないのに。
振り払うように窓の外を見るのを止めた。
暗くなっている場合じゃない。
「夏向達になにか持って行こう!」
邪魔かもしれないけど、と思いながら、お茶を沸かしてポットにいれた。
「おにぎりでいいよね」
おにぎりの具はウィンナーを炒めたのと、鮭フレーク、昆布、梅干しなど。
他の人も集まっているかもしれないから、数は多めに作って後はコンビニで甘いものとインスタントの味噌汁を買おう。
部屋を出て、一階に行くと警備員さんが驚いていた。
「こんな遅くに電車を使うのは危ないですから、時任の運転手を使ってください。なにかあったんでしょう?先ほどから重役の方々が慌ててマンションから出て行くので、もしかしたら、まだ誰か出るかもしれないと思って運転手を待たせてありますから」
さすが時任が所有するマンションだけあって、異変には敏感だった。
「ありがとうございます」
警備員さんにお礼を言って、車を使わせてもらった。
やっぱり夏向だけが会社に向かったわけじゃなかった。
大変なことが起きている。
そんな気がした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
時任の本社に着くと上の階の灯りがついているのが見えた。
エレベーターに乗り、重役のフロアに行くと、全員が揃っていた。
「桜帆ちゃん!」
真辺さんが私を見つけて、驚いていたけど、差し入れを見てにっこりほほ笑んだ。
「うわぁ、ありがとう!」
「甘いものも買ってきましたよ。あと、飲み物とインスタントのお味噌汁」
「温かいものが嬉しいよー。夕飯食べる時間なくてさ。倉永先輩は手が離せないけどね」
先輩呼びになっている時の真辺さんは余裕がない。
夏向は怖い顔をして画面を睨んでいた。
「なにがあったんですか?」
「ウィルスに感染してね」
「どこから!?」
真辺さんは笑っていたけど、怒っているのか、目は笑っていない。
「秘書室のパソコンだね」
そんなところから?
不審なメールでも開いてしまったのだろうか。
「部下が囮ファイルをつかませて倉永先輩が到着するまでの時間稼ぎができたから、本当によかったよ。最悪、サーバを落とすつもりだったけど、間に合った。今は誰がウィルスを仕掛けたか、調べているみたいだよ」
「そうですか。よかった」
「うん。危うく顧客情報が流出するところだったよ」
「そ、それって!」
「そう。社長会見モノの重大案件だった。社長が出張で不在なことも知っていたのかもしれない」
「わざわざ狙って…?」
真辺さんは頷いた。
夏向を見ると私がいることも気づいていない。
あの様子では水すら飲んでいないだろう。
「あの……夏向に近づいても大丈夫ですか?」
「もちろん!むしろ、何か食べさせないと倒れるかもなって思ってたところだったんだ」
「そうですか。皆さんもお腹空いたでしょう?おにぎり作ってきたので、よかったら食べてくださいね」
「ありがたいです!」
真辺さんは嬉しそうにおにぎりの前で手を合わせた。
邪魔にはならないようで、ホッとした。
食べ物を広げていると疲れた顔をした倉本さんがやってきた。
「副社長はコードを読んで犯人を特定する気だ」
「コード?」
「同じ人間が書くプログラムはどうしても癖がでる。それを見つけるんだ」
「あんな作業をよくやるよ……」
げんなりと倉本さんは言った。
夏向は険しい顔をしたまま、画面から目を離さない。
そっと後ろに行き、驚かせないように気づくのを待っていると、気配がしたのか夏向は振り返った。
「桜帆、いつのまに」
さっきまでの表情が嘘みたいに優しく微笑んだ。
「夏向が倒れると困ると思って、おにぎり食べる?」
「食べる」
「じゃあ、テーブルのところまでいかないとね。パソコンに味噌汁こぼしたら、それこそおしまいよ」
「うん」
夏向が机の下で食べたりするのは安心だからというのもあるけれど、自分にとって武器でもある大切なパソコンを壊さないためという理由が一番大きいのかもしれない。
机の下ではなく、テーブルに座った夏向をにやにやしながら、他の人達が見ていると、夏向はちょっと怒ったように言った。
「なに?」
「べつにぃー」
メカニックで参与の宮北さんは夏向にほら、ウィンナー入りのおにぎりを渡した。
「桜帆ちゃんがいると夏向はちょっと大人なとこ見せようとするんだなと思ってさ」
「ムカつく。桜帆のおにぎり食べるな」
「なんでだよ!?俺はお前のありのままの姿を言っただけだろ?」
高校の同級生でもある宮北さんは夏向にとって言いたいことを言える存在でもあるけれど、一言多いせいか、夏向の信頼を得にくいようだった……。
お湯を入れ、ワカメと豆腐の味噌汁を渡すと、夏向はおにぎりをすでに口の中に入れていた。
お腹が空いていたのか、無言で食べていた。
「犯人の目星はついたか?」
倉本さんに聞かれ、夏向は食べながら、頷いた。
「諏訪部だよ」
「だろうな」
「諏訪部ってあの佐藤君がいた会社の?」
「そうだよ。ミツバ電機の時とおなじクセがある」
「えっ!?ミツバ電機を攻撃したのは諏訪部さんの会社なの?」
「そうだよ。その時のログを持っている」
「ログ?」
「証拠を持っているってことだよ」
「うん……。佐藤君はミツバ電機にわざと痛い目にあわせて契約しようとしていたってこと?」
「そう」
「教えてよ!そういうことは!」
「いざという時に使おうと思ってたから」
「いざ、なんて時ある?」
「それをネタに桜帆に近づくなって言うつもりだった」
夏向は味噌汁を飲み、そういうことです、と言うように首を縦に振った。
どういうことよ。
「諏訪部からの挑戦状かな」
夏向は楽しそうだった。
「いやいや、若いっていいねー。俺らに挑もうなんてさ。可愛いなー」
本部長の備中さんがやってきた。
「備中さんも十分若いですよ……」
「おー。桜帆ちゃん。来てたのかー!いつも差し入れありがとう」
備中さんは秘書室でメールの履歴を確認していたらしい。
「いやー、秘書室の女の子に諏訪部が近づいたみたいだね。会社のメールアドレスを聞き出したっぽいね。ただ会社のメールアドレスでのやり取りは一回だけだったよ。受信してから削除したみたいだけど。普通の女の子は復元できることを知らないんだからさ、そこもちゃんと教えてあげないとね」
「詰めが甘いね」
もぐ、と夏向はウィンナーが入ったおにぎりを早いスピードで食べ終わると、二個目の鮭のおにぎりに手を伸ばした。
その横で備中さんが昆布のおにぎりを手にして笑った。
「諏訪部達、俺らのことを大好き過ぎるだろ?困っちゃうなー、ファンが多くて。秘書室から話が抜けてるなら、社長出張も向こうにバレちゃってるね」
真辺さんはわしゃわしゃと頭をかきむしった。
「危うく明日からずっとお詫び行脚になるとこだったよ!」
「もう大丈夫だよ。皆は帰っても。あとは俺が後処理をしておくから。二度と入れないようにね」
「ああ。任せる」
「倉永先輩、こういう時は頼りになりますね」
おにぎりを食べると、二人はお礼を言って、帰って行った。
「そんじゃ、俺も帰るわ。おにぎりもらってくわ。明日から、秘書室は閉鎖な」
「ムサイ空間にやっと女性が入ってきたと思ったら、コレだよ。頼んだからな、副社長!」
備中さんと宮北さんがおにぎりをいくつか手にして、夏向に手を振った。
「夏向にはいい友達がいるね」
「悪友だよ」
はあ、とため息を吐いた。
夏向にため息を吐かれる友人ってどうなのよ……。
本当に個性的な人達だなと思っていると、夏向はご飯を終えて立ち上がった。
「桜帆も帰っていいよ」
「もう少しだけいてもいい?」
「うん?もちろん」
夏向は嬉しそうな顔をして、いそいそと自分の席の後ろに椅子を持ってくると、どうぞと座らせた。
今は夏向を眺めていたかった。
背中が見えて、ホッとした。
ぼんやり、その背中を眺め、カチカチという規則正しくキーを叩く音が眠気を誘って、私はいつの間にか眠ってしまっていた。
46
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
フッてくれてありがとう
nanahi
恋愛
「子どもができたんだ」
ある冬の25日、突然、彼が私に告げた。
「誰の」
私の短い問いにあなたは、しばらく無言だった。
でも私は知っている。
大学生時代の元カノだ。
「じゃあ。元気で」
彼からは謝罪の一言さえなかった。
下を向き、私はひたすら涙を流した。
それから二年後、私は偶然、元彼と再会する。
過去とは全く変わった私と出会って、元彼はふたたび──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる