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第二章
6 真相
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「温泉旅行に行ってきたんですか」
温泉旅館から帰った日曜日の午後、有里さんから、お茶に招待され、温泉のお土産を持ってきた。
「雅冬さんが途中で帰ってしまって……迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした」
「それで、あのバカはまだ部屋で寝ているんですか?」
「はい、疲れたみたいで」
八木沢さんは呆れた様子だった。
「まあ、仕事は終わらせてありましたから、いいですよ」
夕飯をどこかの店で食べるはずが、温泉まで連れてかれ、帰ってきたのは日曜日の朝だった。
雅冬さんはけろりとした顔で嘘はついていないと言ったけれど、結局、連泊した。
酷い目にあった………。
「菜々子さん、なに飲みます?緑茶、紅茶、コーヒー、コーラがありますけど」
うん?コーラ?
「えっと、紅茶をお願いします」
「はーい」
八木沢さんがなにか言いたげな顔で有里さんを見ていた。
仕事をしているのか、八木沢さんはパソコンと書類を横に置き、忙しそうだった。
「美味しいチーズケーキもらったのでどうぞ」
ドンッとチーズケーキを置いてくれた。
元はホールサイズのケーキは四等分にされて、とても大きい。
なんて男らしい。
「有里さん、それで話したいことって?」
「綾香さんのことなんですけど。聞きたいことあるなら、直真さんに聞いたらいいかなって思って」
「おい!?」
八木沢さんは有里さんを見た。
「その……それじゃあ、有里さん。八木沢さんはきっとモテますよね?その、昔、付き合っていた女性とか気にならないですか」
「あんまり」
「少しは気にしろよ!」
「直真さんはどちらかというと、損得で付き合うタイプですからね。雅冬さんは素直で可愛らしい感じだから、きっと直真さんよりモテますよ」
八木沢さんはじろりと有里さんを見て、ため息をついた。
「華やかさでは瑞生様よりは上でしょうね。付き合いたいと言っていた女は多かったと思いますが。まあ、来るもの拒まず、去るもの追わず。そんなかんじですよ」
「直真さんと同じですね。はー、モテるって一つの自慢ですか」
ひくっと八木沢さんは頬をひきつらせていた。
「心配することはないですよ。雅冬さんが仕事を放ってまで、追いかけるのは菜々子さんだけですから」
「直真さんもたまにはいいこといいますね」
うんうん、と有里さんは頷いた。
その時、ピンポーンとチャイムが鳴り、八木沢さんが立ち上がった。
「有里。獲物がきたぞ」
獲物!?
二人は来客を予想していたようだった。
「やっぱり、きましたか。菜々子さん、隠れますよ」
手早くテーブルの上のお茶とケーキをキッチンに置き、有里さんは私の手を掴んだ。
「えっ!?」
リビングの隣にあるカウンターバーに有里さんと姿を隠した。
な、なぜ!?
そして、八木沢さんは綾香さんを招き入れた。
「直真。奥様は?」
「ああ。出掛けているんですよ。すぐに戻りますが」
「ふうん。ねえ、直真。雅冬が金曜日からいないのだけど」
「温泉旅行だそうですよ」
「雅冬が温泉?似合わないわね」
くす、と綾香さんは笑った。
隠れていなかったら、浴衣がどれだけ似合って、素敵だったかを説明してあげたいくらいだった。
人生損してますよ!!!って声を大にして言いたい。
「気づいていると思いますが。あなたが入る隙はありませんよ。いつまで、勝ち目のない醜態をさらすんです?」
「酷いこというわね。わかってるわよ。じゃあ、直真が慰めてくれる?」
綾香さんは首に腕をからめ、八木沢さんを抱き締めた。
ちょっと!あんなことされて!
有里さんはいいの?
バッと振り返り、隣の有里さんを見ると、真剣な顔をし、スマホのカメラで写真を撮っていた。
いったい、何をしているの?
しかも、二台もある。
八木沢さんはこちらにちらりと視線を送り、有里さんは親指をたてた。
綾香さんは八木沢にキスを迫り、それを八木沢さんが、さらりとかわすと言った。
「私にも選ぶ権利がありますからね。綾香さんは正直、タイプじゃないんですよ。昔はまあ、利害関係で付き合いましたが、あなたとはそれだけですね」
にこにこと微笑み、綾香さんの両腕をひょいっと解いた。
「相変わらず、性格悪いわね!」
「知っていたでしょう?だから、私でなく、まずは雅冬さんに近づいた」
「なんのこと?」
「とぼけないで頂きたい。今回の帰国には裏がある」
有里さんはスマホを操作し、撮った画像を加工し、八木沢の顔を隠したものを作るとパソコンのメールアドレスに送っていた。
「私がなにも調べていないとでも?あなたのお祖父様、前副社長が保有している宮ノ入の株はこちらで購入させてもらいましたよ」
「なんですって!?」
「理由をお話したら、快諾されました」
「そんな!」
「大方、雅冬さんと私が持つ宮ノ入グループの株を手にいれるつもりだったんでしょう?」
冷えた目が綾香さんを睨み付けていた。
「それは」
「こちらを敵に回すとはいい度胸です。今回の件は会長にも伝えた上で、その処遇を決めさせてもらいますよ。あなたを唆した人間にもそう伝えなさい」
「会長に!?」
「当たり前です。社長である瑞生瑞生様を蹴落とそうなど、言語道断。絶対に許しません」
す、と八木沢さんは玄関を指差した。
綾香さんはなにも言い返せず、唇を震わせながら、真っ青な顔で部屋から出て行った―――
温泉旅館から帰った日曜日の午後、有里さんから、お茶に招待され、温泉のお土産を持ってきた。
「雅冬さんが途中で帰ってしまって……迷惑をかけてしまい、申し訳ありませんでした」
「それで、あのバカはまだ部屋で寝ているんですか?」
「はい、疲れたみたいで」
八木沢さんは呆れた様子だった。
「まあ、仕事は終わらせてありましたから、いいですよ」
夕飯をどこかの店で食べるはずが、温泉まで連れてかれ、帰ってきたのは日曜日の朝だった。
雅冬さんはけろりとした顔で嘘はついていないと言ったけれど、結局、連泊した。
酷い目にあった………。
「菜々子さん、なに飲みます?緑茶、紅茶、コーヒー、コーラがありますけど」
うん?コーラ?
「えっと、紅茶をお願いします」
「はーい」
八木沢さんがなにか言いたげな顔で有里さんを見ていた。
仕事をしているのか、八木沢さんはパソコンと書類を横に置き、忙しそうだった。
「美味しいチーズケーキもらったのでどうぞ」
ドンッとチーズケーキを置いてくれた。
元はホールサイズのケーキは四等分にされて、とても大きい。
なんて男らしい。
「有里さん、それで話したいことって?」
「綾香さんのことなんですけど。聞きたいことあるなら、直真さんに聞いたらいいかなって思って」
「おい!?」
八木沢さんは有里さんを見た。
「その……それじゃあ、有里さん。八木沢さんはきっとモテますよね?その、昔、付き合っていた女性とか気にならないですか」
「あんまり」
「少しは気にしろよ!」
「直真さんはどちらかというと、損得で付き合うタイプですからね。雅冬さんは素直で可愛らしい感じだから、きっと直真さんよりモテますよ」
八木沢さんはじろりと有里さんを見て、ため息をついた。
「華やかさでは瑞生様よりは上でしょうね。付き合いたいと言っていた女は多かったと思いますが。まあ、来るもの拒まず、去るもの追わず。そんなかんじですよ」
「直真さんと同じですね。はー、モテるって一つの自慢ですか」
ひくっと八木沢さんは頬をひきつらせていた。
「心配することはないですよ。雅冬さんが仕事を放ってまで、追いかけるのは菜々子さんだけですから」
「直真さんもたまにはいいこといいますね」
うんうん、と有里さんは頷いた。
その時、ピンポーンとチャイムが鳴り、八木沢さんが立ち上がった。
「有里。獲物がきたぞ」
獲物!?
二人は来客を予想していたようだった。
「やっぱり、きましたか。菜々子さん、隠れますよ」
手早くテーブルの上のお茶とケーキをキッチンに置き、有里さんは私の手を掴んだ。
「えっ!?」
リビングの隣にあるカウンターバーに有里さんと姿を隠した。
な、なぜ!?
そして、八木沢さんは綾香さんを招き入れた。
「直真。奥様は?」
「ああ。出掛けているんですよ。すぐに戻りますが」
「ふうん。ねえ、直真。雅冬が金曜日からいないのだけど」
「温泉旅行だそうですよ」
「雅冬が温泉?似合わないわね」
くす、と綾香さんは笑った。
隠れていなかったら、浴衣がどれだけ似合って、素敵だったかを説明してあげたいくらいだった。
人生損してますよ!!!って声を大にして言いたい。
「気づいていると思いますが。あなたが入る隙はありませんよ。いつまで、勝ち目のない醜態をさらすんです?」
「酷いこというわね。わかってるわよ。じゃあ、直真が慰めてくれる?」
綾香さんは首に腕をからめ、八木沢さんを抱き締めた。
ちょっと!あんなことされて!
有里さんはいいの?
バッと振り返り、隣の有里さんを見ると、真剣な顔をし、スマホのカメラで写真を撮っていた。
いったい、何をしているの?
しかも、二台もある。
八木沢さんはこちらにちらりと視線を送り、有里さんは親指をたてた。
綾香さんは八木沢にキスを迫り、それを八木沢さんが、さらりとかわすと言った。
「私にも選ぶ権利がありますからね。綾香さんは正直、タイプじゃないんですよ。昔はまあ、利害関係で付き合いましたが、あなたとはそれだけですね」
にこにこと微笑み、綾香さんの両腕をひょいっと解いた。
「相変わらず、性格悪いわね!」
「知っていたでしょう?だから、私でなく、まずは雅冬さんに近づいた」
「なんのこと?」
「とぼけないで頂きたい。今回の帰国には裏がある」
有里さんはスマホを操作し、撮った画像を加工し、八木沢の顔を隠したものを作るとパソコンのメールアドレスに送っていた。
「私がなにも調べていないとでも?あなたのお祖父様、前副社長が保有している宮ノ入の株はこちらで購入させてもらいましたよ」
「なんですって!?」
「理由をお話したら、快諾されました」
「そんな!」
「大方、雅冬さんと私が持つ宮ノ入グループの株を手にいれるつもりだったんでしょう?」
冷えた目が綾香さんを睨み付けていた。
「それは」
「こちらを敵に回すとはいい度胸です。今回の件は会長にも伝えた上で、その処遇を決めさせてもらいますよ。あなたを唆した人間にもそう伝えなさい」
「会長に!?」
「当たり前です。社長である瑞生瑞生様を蹴落とそうなど、言語道断。絶対に許しません」
す、と八木沢さんは玄関を指差した。
綾香さんはなにも言い返せず、唇を震わせながら、真っ青な顔で部屋から出て行った―――
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