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第3章
28 現れた協力者 ※妃莉
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有近の跡取りが婚約者を決めた――それも相手は惣菜屋の娘。
反発する人間は多いはず。
「夕愛さんなんて有近……いいえ、都久山から追い出してやるわ!」
二度と配達にも来れないくらい笑い者にすれば、自分の立場を思い知るに違いないもの。
夕愛さんは都久山の住人じゃないし、同じ年頃の女性は私の友人ばかり。
今日はみんなでショッピングをし、有名ホテルのアフタヌーンティーを楽しんでいた。
個室のようになっている客席はそれぞれ区切られて、誰かの目に留まることはない。
だから、おしゃべりも遠慮する必要がなく、とても盛り上がっていた。
「妃莉さん。有近の本家を敵にしないほうがよろしいわ」
「そうよ。いくら妃莉さんが本家の方に気に入られていると言ってもねぇ……?」
私の味方のはずの友人たちは、有近の本家が恐ろしくて、夕愛さんを追い出す計画にのってくれなかった。
「夕愛さんとはデリカテッセン『オグラ』の繋がりで顔を知っているし、まったく知らない方ではないもの」
「控えめで気がつく方だし、玲我さんもそういうところが気に入ったのではなくて?」
都久山の悪いところは、鷹沢や有近の本家が決めたことに対して、強く反対する人間がいないところかもしれない。
「違うわ! 図々しい女よ!」
「妃莉さんはずっと玲我さんを追いかけていらしたから、ショックなのはわかるけれど、最後に選ぶのは玲我さんだわ」
長年、私が玲我さんに近づく女性の邪魔をしてきたことを知っている彼女たちは、くすりと笑った。
「妃莉さんは金曜日、どうなさるの?」
「金曜日?」
「もしかして、ご存知ない? 午後から有近の奥様が主催される『初夏の花を愛でる会』があるのよ」
私は呼ばれていなかった。
毎回、呼ばれているのに、おば様は私を呼ばなかった。
――夕愛さんがいるんだわ!
「え、ええ。もちろん参加するわ」
「参加するのはよろしいけれど、夕愛さんと仲良くなさってね」
私がなにかたくらむ前に釘を刺された。
今まで私が玲我さんの妻になるかもしれないと、ご機嫌を取ってきた彼女たちは、その可能性がないとわかると、態度を豹変させた。
テーブルの下で拳を握りしめた。
――なんなの!
毎回、おば様が企画する会は、若い私にはとっても退屈だったけど、それでも我慢して参加してきたわ。
四年前、玲我さんが釣り合わない女と付き合ってるって、おば様に報告した時は、とても感謝されたし、おじ様だって喜んでた。
――二人が別れたと思っていた四年間は、いったいなんだったの?
私はまだ夕愛さんが、玲我さんの結婚相手として認められた本当の理由をつかんでない。
プロを雇って調べても出てこないのだ。
夕愛さんの学歴や生活、行きつけの美容院、昔からデリカテッセン『オグラ』で働いていることくらいしか情報はない。
「仲良くなれるとよろしいわね」
「本当ね」
今日のアフタヌーンティーは今までで一番つまらなかった。
「私、帰るわ」
ぷいっと顔を背け、席を立った。席を立ったのは私だけで、彼女たちはまだお茶をするらしい。
背中を向けた私に聞こえてきたのは、同情と蔑みの言葉だった。
「怖いくらい玲我さんに付きまとっていたから、いい機会だったと思うわ」
「かわいそうだけど、玲我さんが妃莉さんを選ばなくて本当によかった」
「有近の権力でなにをするかわからないもの」
――全部、聞こえてるのよ!
イライラしながら、ホテルを出て車を待つ。
「金曜日の集まりには絶対、参加するんだから!」
突然現れた私におば様があわてふためく姿が想像できた。
私と夕愛さんが顔を合わせて困るだろうけど、そんなの知らないわ。
ホテルを出て車を待っていると、突然声をかけられた。
「あっ! 妃莉さーん。お久しぶりです~!」
「光華さん?」
フランス帰りの帰国子女だった小椋光華さんは高校から大学まで同じで、お互い顔見知りだった。
隣に日本人場馴れした顔のイケメンの男性を連れている。
正直、この子は昔から苦手だった。
私たちに遠慮なく話しかけてくるし、気づけばこの子のペースになっている。
しかも、都久山に暮らしてないくせに私たちの一員になろうとするのも気に入らない。
――でも、使えるわ。
光華さんと夕愛さんは不仲だって聞いている。
なんでも、光華さんが片想いしていた男性は夕愛さんのことが好きだったのだとか。
それで、光華さんはフランスへ傷心旅行へ旅立った――そんな噂を耳にした。
隣にいる男性が気になるけれど、光華さんは私と同じように恨みを持っている。
「元気そうね。旅行帰り?」
スーツケースがそばにあったからわかった。
どうやら、タクシーで帰るつもりなのか、タクシーを待たせている。
失恋してフランスへ行ったと聞いていたから、傷心旅行帰りなのでしょうけど、隣の男性が気になる。
「はい、まぁ……」
光華さんははっきり言わず、言葉を濁す。
わかってるのよ、あなたは傷心旅行だったのでしょ?
かわいそうな光華さん。
「夕愛さんのことだけど……」
「夕愛?」
「あなたの片想い相手を奪っておいて、このまま結婚して幸せになっていいと思う?」
光華さんは驚いた顔をした。
自分が傷心旅行だと、噂されているなんてしらないから当然だ。
「どう? 私に協力しない?」
あなたも恨んでいるでしょう?
片想い相手を奪われ、恥をかかされたのは同じ。
夕愛さんに居場所を奪われてきた光華さん。
恨みは深いはず。
私は仲間を見つけた――そう思っていた。
反発する人間は多いはず。
「夕愛さんなんて有近……いいえ、都久山から追い出してやるわ!」
二度と配達にも来れないくらい笑い者にすれば、自分の立場を思い知るに違いないもの。
夕愛さんは都久山の住人じゃないし、同じ年頃の女性は私の友人ばかり。
今日はみんなでショッピングをし、有名ホテルのアフタヌーンティーを楽しんでいた。
個室のようになっている客席はそれぞれ区切られて、誰かの目に留まることはない。
だから、おしゃべりも遠慮する必要がなく、とても盛り上がっていた。
「妃莉さん。有近の本家を敵にしないほうがよろしいわ」
「そうよ。いくら妃莉さんが本家の方に気に入られていると言ってもねぇ……?」
私の味方のはずの友人たちは、有近の本家が恐ろしくて、夕愛さんを追い出す計画にのってくれなかった。
「夕愛さんとはデリカテッセン『オグラ』の繋がりで顔を知っているし、まったく知らない方ではないもの」
「控えめで気がつく方だし、玲我さんもそういうところが気に入ったのではなくて?」
都久山の悪いところは、鷹沢や有近の本家が決めたことに対して、強く反対する人間がいないところかもしれない。
「違うわ! 図々しい女よ!」
「妃莉さんはずっと玲我さんを追いかけていらしたから、ショックなのはわかるけれど、最後に選ぶのは玲我さんだわ」
長年、私が玲我さんに近づく女性の邪魔をしてきたことを知っている彼女たちは、くすりと笑った。
「妃莉さんは金曜日、どうなさるの?」
「金曜日?」
「もしかして、ご存知ない? 午後から有近の奥様が主催される『初夏の花を愛でる会』があるのよ」
私は呼ばれていなかった。
毎回、呼ばれているのに、おば様は私を呼ばなかった。
――夕愛さんがいるんだわ!
「え、ええ。もちろん参加するわ」
「参加するのはよろしいけれど、夕愛さんと仲良くなさってね」
私がなにかたくらむ前に釘を刺された。
今まで私が玲我さんの妻になるかもしれないと、ご機嫌を取ってきた彼女たちは、その可能性がないとわかると、態度を豹変させた。
テーブルの下で拳を握りしめた。
――なんなの!
毎回、おば様が企画する会は、若い私にはとっても退屈だったけど、それでも我慢して参加してきたわ。
四年前、玲我さんが釣り合わない女と付き合ってるって、おば様に報告した時は、とても感謝されたし、おじ様だって喜んでた。
――二人が別れたと思っていた四年間は、いったいなんだったの?
私はまだ夕愛さんが、玲我さんの結婚相手として認められた本当の理由をつかんでない。
プロを雇って調べても出てこないのだ。
夕愛さんの学歴や生活、行きつけの美容院、昔からデリカテッセン『オグラ』で働いていることくらいしか情報はない。
「仲良くなれるとよろしいわね」
「本当ね」
今日のアフタヌーンティーは今までで一番つまらなかった。
「私、帰るわ」
ぷいっと顔を背け、席を立った。席を立ったのは私だけで、彼女たちはまだお茶をするらしい。
背中を向けた私に聞こえてきたのは、同情と蔑みの言葉だった。
「怖いくらい玲我さんに付きまとっていたから、いい機会だったと思うわ」
「かわいそうだけど、玲我さんが妃莉さんを選ばなくて本当によかった」
「有近の権力でなにをするかわからないもの」
――全部、聞こえてるのよ!
イライラしながら、ホテルを出て車を待つ。
「金曜日の集まりには絶対、参加するんだから!」
突然現れた私におば様があわてふためく姿が想像できた。
私と夕愛さんが顔を合わせて困るだろうけど、そんなの知らないわ。
ホテルを出て車を待っていると、突然声をかけられた。
「あっ! 妃莉さーん。お久しぶりです~!」
「光華さん?」
フランス帰りの帰国子女だった小椋光華さんは高校から大学まで同じで、お互い顔見知りだった。
隣に日本人場馴れした顔のイケメンの男性を連れている。
正直、この子は昔から苦手だった。
私たちに遠慮なく話しかけてくるし、気づけばこの子のペースになっている。
しかも、都久山に暮らしてないくせに私たちの一員になろうとするのも気に入らない。
――でも、使えるわ。
光華さんと夕愛さんは不仲だって聞いている。
なんでも、光華さんが片想いしていた男性は夕愛さんのことが好きだったのだとか。
それで、光華さんはフランスへ傷心旅行へ旅立った――そんな噂を耳にした。
隣にいる男性が気になるけれど、光華さんは私と同じように恨みを持っている。
「元気そうね。旅行帰り?」
スーツケースがそばにあったからわかった。
どうやら、タクシーで帰るつもりなのか、タクシーを待たせている。
失恋してフランスへ行ったと聞いていたから、傷心旅行帰りなのでしょうけど、隣の男性が気になる。
「はい、まぁ……」
光華さんははっきり言わず、言葉を濁す。
わかってるのよ、あなたは傷心旅行だったのでしょ?
かわいそうな光華さん。
「夕愛さんのことだけど……」
「夕愛?」
「あなたの片想い相手を奪っておいて、このまま結婚して幸せになっていいと思う?」
光華さんは驚いた顔をした。
自分が傷心旅行だと、噂されているなんてしらないから当然だ。
「どう? 私に協力しない?」
あなたも恨んでいるでしょう?
片想い相手を奪われ、恥をかかされたのは同じ。
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恨みは深いはず。
私は仲間を見つけた――そう思っていた。
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